プロローグ オンブラ

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やったぜ新連載ー
「おかーさん!あのお話、読んでー!」
「また?まあいいけど…。」

むかしむかし、オンブラと呼ばれる島がありました。
そこは酷く痩せた土地ばかりで、作物もわずかなものしか育たず、人が生きるのは難しいと言われていた土地でした。

しかしオンブラはどの大陸とも離れており、ただただそこで人が生きて死ぬ…。それを繰り返すだけの島となっていました。

そこへ現れたのは、真紅の瞳を持つ金髪の少女。
彼女はオンブラに生きる民とポケモンを守るために、自らが犠牲となり、エネルギーをこの土地に注ぐことで、土地を肥えさせようとしました。

彼女の犠牲のおかげでオンブラはみるみる自然が育ち、美しい川が流れるようになり、作物も沢山育つようになりました。
オンブラの人々は彼女を、こう讃えました。

『真紅の救世主』と。




1つの犠牲の上に成り立った幸福。それを象徴しているのがオンブラだ。自然が豊かで作物もたくさん育ち、平和に暮らしているオンブラの民たち。その民達を支えているのは『真紅の救世主』。

表では、犠牲は『真紅の救世主』ただ1人だと伝えられてきた。ただ1人で、ここまで栄えたのだと、伝説には記されている。

それがオンブラ。
1つの犠牲の上に成り立った幸福の島。




「チルタリス。ここで降りてくれ。」

綿にくるまっているようなポケモンーチルタリス。
その上に乗る青年ーとはいいがたい、齢20位の男性。黒髪で、1本の髪がぴょんって跳ねている。白いTシャツの上に黒いパーカーを着ている。跳ねた髪がよくなびいている。

その男性が降りたとうとしているのは、自然豊かなあまり大きくない島ー流浪の島通称オンブラ。

「さて、あそこが流浪の島だ。あそこは白髪が多いと言うし、フードを被って行くか…。」
「チール♪」
「はいはいご機嫌ですねぇ。久しぶりに飛んだもんな。着いたらボールだぞ。」
「チルっ!?」
「どうせここから立つ時にまた乗せてもらうから…。」
「チ~ル~♪︎」

チルタリスはオンブラに向かって降下し始める。男性はパーカーのフードを被ると、できるだけ現地の人の目につかないように体勢を低くする。島に空経由で来てること自体、とても目立つのだが。

「ふぃー、とーちゃく。チルタリス、戻ってくれ。」

ガサゴソとチルタリスのモンスターボールを取り出すとチルタリスを仕舞う。ここからは男性1人で進む。
オンブラは住民がすごい多い訳では無い。むしろ結構少ない。しかし団結力は高いと言うし、何やら秘密を隠しているとも聞く。男性はその秘密を探りに、どの大陸からも離れているこのオンブラにやってきたのだ。

行き交う人は皆白髪。黒いパーカーの自分は目立つばかりだったが、特に声をかけられる訳でもなく、オンブラの都市を抜けた。都市といっても、栄えている訳では無い。店があって、人がいる。それだけ。それだけの町。

「…ふぅ。…さて、と。あの伝説の通りなら、地下にあの存在は居るはずなんだが…。そんなに都合よく見つかる訳ないよな。さあどうしよう。」

男性はくるりと周囲を見渡す。めぼしいものは無い。そもそも地下に通ずる道なんて、大っぴらにあるのだろうか?
ーいや、そもそも地下っていう概念が間違っているのではないか…?

まあいい。地下だろう。

発達しているとはいえない観察眼で、もう一度周囲を見渡す。そよそよと風が吹く中、一つだけ、この自然という背景に似合わない建物があった。
鉄の建造物。そこに、2人の男が入っていくのが見えた。別に何という訳でも無い。ただ、あの建造物が気になっただけだ。

鉄の建造物には窓があった。そこから跳ねた毛をぴょんぴょんさせながら建造物の中を除く。
そこには白髪の男2人と、手枷や足枷をつけているぐったりとした金髪の少女が居た。よく見るとその少女には宿り木の種のツルが腕と足に巻きついている。それでエネルギーを吸い取られているのか…?白髪の男2人は、壁に背中をつけて座る金髪の少女に相対するように立っている。
次の瞬間だった。

部屋の奥に居る方の男が、金髪の少女を蹴りつけた。2回だ。鈍い音が、部屋の中に響く。
少女は腹と顔を蹴られ、ケホッ、ケホッと咳をしながら、口元から血を出している。しかし抵抗する訳でもなく、人形のように黙っているだけだった。
しばらく男達が会話をすると、部屋を出ていった。何故彼女を蹴りつけた理由も分からぬまま去っていったり、とりあえず姿が見えなくなっていったので、、部屋の中に入っていった。

金髪の少女は俯いたままだった。口元から血は出ている。
彼女の服はぼろぼろで、髪も伸ばしっぱなし。金髪が土で汚れている。ケガも何個かある。
しばらくすると、こちらの存在に気づいたようで、顔を少し上げた。真紅の瞳。伝説の通りだ。
フードを外すと、敵ではないと伝わったのか分からないが、少女は何も期待していない、死んだ瞳でこちらをじっと見つめている。今、見極めているのだろうか?

「君は、ここで何をしているんだい?」

声を掛けて、コミュニケーションを取ることを試みた。彼女はしばらく目をぱちくりさせたが、「んー」と唸っている。声帯が取られている訳では無いらしい。声が発せている。

「私は、シャルロット…。皆はシャロって呼ぶ…。この土地の栄養源…。」

やはり。
やはり、この子が…。
シャロが…。

『真紅の救世主』の代わりとしてエネルギーの供給源としてこの部屋に居るのだろう。今までずっと、オンブラの栄養源として…この部屋に…。

「私…。忌み子…。忌み子だから、生きる意味、無くて…。エネルギー、取られてる…。」

忌み子?
むしろ救世主じゃないのか?『真紅の救世主』の代わりなら、讃えられるべき存在だと思うのだが…。

「…あなた、名前は…?」
「んえ、俺か?俺はな、カイ・シルヴィア。ポケモントレーナーだ。」
「…いかさん?」
「誰がいかさんだ。カイさん!」
「ぽけもんとれーなー…?ぽけもんって、なに?」
「んー…。ここから一緒に出てくれるなら、ポケモンが何か、教えてやる。」
「私、ここから出れない…。」
「馬鹿野郎。出ようと思えば出れるぞ。それともなんだ?お前を忌み嫌いながら裕福に暮らしてる奴らのためにこれからもここでずっとエネルギー吸い取られながら生きていくのか?そんなつまらない人生でいいのか?」
「…わからない。」
「外に出たいとは思わないのか?」
「…わからない。」
「…ポケモンを、知りたくないのか?」
「…!…ぽけもんは、知りたい…。」
「なら話は早い。出るぞ。」
「えっ」

カイは1つのモンスターボールを取り出すと、それを宙に投げた。それからは両手が赤と青の薔薇のブーケの、薔薇のようなポケモンが出てきた。ロズレイドというポケモンだ。

「ローズ、あの鎖を切れ。」
「ロズッ」

ロズレイドは葉っぱを宙に浮かせると、それで器用にシャロの足枷等をを切った。ガランっ!と大きな音を立てながら鉄の塊は落ちる。

「行くぞ、シャロ。」

カイが手をシャロの前に差し出す。
シャロは一瞬戸惑ったが、思ったよりもごつごつしているカイの手を握った。

「うん、いかさん」
「だからカイさん。」






何があった訳でもない。オンブラを、オンブラの伝説を知ったのも、偶然だったのかもしれない。必然かもしれない。
俺たちの、私たちの出会いが紡ぐ、物語。





さあ、紡ごう。
俺たちだけの、物語ストーリーをー!
毎回3000字くらいでお送りします( ˘꒳​˘)
1万字を目指したが、これからちょこちょこ伸びてきます( ˘꒳​˘)

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