希望の戦士

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読了時間目安:9分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

中は異世界のようだった。赤いリボン達で飾られた廊下。それは永遠に続いているようだった。

オトハ「ここは…」
アリサ「ねえ…出ようよ…」
オトハ「あっ…だけどもう…」

私が後ろを向くと、先程まで開いていたはずの空間は口を閉じていた。これは、先に進むしかなさそうだ。

アリサ「うそでしょ…」

アリサは先に行くのが嫌なようで、少し涙目になっている。私は彼女の頭を撫で、落ち着くように言う。

オトハ「アリサ、私が着いてます。大丈夫ですよ!」
アリサ「うっうん、そうだよね…」

私は廊下を歩く。自分達のコツコツという靴の音だけが響く。やがて、一つの扉の前にたどり着いた。お屋敷などでよく見る、木製の二枚扉だった。

アリサ「これを開けるんだよね…」
オトハ「恐らく…」

何が飛び出してくるかも分からない扉の前で、私達は暫く立ち竦んでいた。しかし、開けないと何も始まらないので、私は思いきって扉に手を掛けた。
扉はギィィィと軋む音を響かせながら開いた。そこは大きく開けていた。しかし、廊下とはうって変わってレンガの壁が顔を覗かせている。それには所々、赤黒いシミのような物があった。

オトハ「これって…」
アリサ「オトハ、あれ!!」

すると、アリサが何かを指差し叫んだ。それを辿った先にあったのは

オトハ「何…あれ…」

それは女の人だった。体のラインがはっきりと分かる黒色のドレスを見に纏い、黒いパンプスを履いている。頭には黒薔薇が飾られている。その瞳はどことなく虚ろだった。
ふと、アリサを見ると違う方向を見て、信じられたいという表情をしていた。

オトハ「アリサ、どうしたのです?」
アリサ「あそこ見て…」

アリサが差した先を辿り私が目にしたものは、白い糸で手足などを巻き付けられ、宙吊りにされた女性だった。しかも、先程この空間に引きずり込まれた人影にどことなく似ているような気がするし、さっきまで見ていた女性とそっくりだ。

アリサ「あれ、さっき引きずり込まれた人じゃ…」

アリサも同じ事を思っているようだと思った時だった。

?「そうだよ、お姉ちゃん。」

どこからともなく声が聞こえてきたのだ。アリサを見ると、驚いたような顔をしている。まるで、その声の主を知っているかのように。
それは、女性の影から姿を現した。茶色の髪をリボンで二つに結い、茶色のブラウスにスカートと、茶色一色でまとめた女の子だった。
女の子はアリサをお姉ちゃんと呼んでいる。

アリサ「マリサ?」
マリサ「そうだよ、お姉ちゃん。」

どうやら、本当にこの二人は姉妹だったらしい。しかし、二人共嬉しそうな顔は一切せず、アリサは戸惑っているような顔をし、マリサはまた違う笑顔を作り、殺気のようなものを感じた。
どうやら、昔この二人の間で何かあったらしい。マリサに至っては、相当アリサの事を憎んでいるようだ。彼女から溢れ出す殺気に思わず私は身震いした。

マリサ「何だかお友達がいるみたいだけど、二人ともここの事知っちゃったから消えてもらわないと。」

マリサは笑顔で言う。
えっ!?消えてもらう!?
私達は身の危険を感じ、身構える。すると。マリサは女性のドッペルゲンガーに向かって命令を下した。

マリサ「ヘルヘイム!あいつらをやっちゃって!!」

どうやら、あの女性のドッペルゲンガーはヘルヘイムというらしい。それは私達に突進するように走ってくる。このままじゃ、私もアリサもやられる…神も仏も信じない質だったが、こうも死が近づくと人は願ってしまうものなのだなと、改めて実感する。もし、叶うのなら…このドッペルゲンガーと戦う力を…

アリサ「へっ!?」
マリサ「何!?」

突如、私の体から光が放たれる。その眩さにマリサは思わず目を覆う。アリサを見ると、彼女からも光が放たれていた。すると、すうっと体の感覚が無くなっていくのが感じられた。私の意識は途切れた。

















ここはどこだろうか。辺り一面真っ白。殺風景だ。それはどこまでも続いているような気がした。すると、私の目の前に扉が現れた。此方も二枚扉であり、上はステンドグラスで飾られている。私はそれを開けた。何だか開けないといけない気がしたから…
その瞬間、扉の中から光が放たれ、私の意識は再度途切れた。










気がつくと、元の場所に戻っていた。何だか服がゴワゴワする。何故だろう。そんなゴワゴワするような服は着ていないはずだ。そして、手に何かを握っている。確認してみると、服装が変わっていた。アリサも変わっているようで、戸惑っている。無理もない。今私達が着ているのはフリルやリボンなどが大量にあしらわれたドレスなのだから。私は黒と白を基調としたゴスロリ風の服装。アリサはピンクと白を基調としたロリータ風の服装だ。そして、私が握っていたのはドレスとは似ても似つかない死神が持っていそうな大きな鎌だった。可愛らしく装飾されてはいるが、やはり似つかわしくない。一方アリサは、持ち手に金色のハートがあしらわれた赤い弓を持っていた。

マリサ「まさか…お姉ちゃん達が希望の戦士になるなんて…」

一方マリサは、一人ブツブツと独り言を言っていたが、再度私達を見た後口元を歪めて笑いながら言った。

マリサ「まあいっか…目的は此れだったし…」

マリサはヘルヘイムに指示を出す。私達はまだ使い慣れない武器を構えた。私はヘルヘイムの腹部辺りを斬り込みにいく。

ヘルヘイム「ッ…」

ヘルヘイムは私の攻撃により、腹部に傷を負った。さすがに血は出なかったが、それなりのダメージはあったらしく、その場でうずくまる。それをすかさずアリサがピンクの光の矢で撃ち抜いていく。

アリサ「やった!!」
オトハ「お手柄です、アリサ!!」

喜んでいるのも束の間だった。あれだけの攻撃を受けてもヘルヘイムは倒れなかった。それどこか、私達の目の前まで一瞬で移動し、回し蹴りを食らわされた。私達は後方の壁に激突し、崩れ落ちた。ヘルヘイムはいつの間にか出していた黒薔薇があしらわれた剣を私に向け、そこにある物をそっくりそのまま映すだけの鏡と化したその瞳で見つめながら言った。

ヘルヘイム「あなた達も一緒に逝きましょう。」
オトハ「何処に…」
ヘルヘイム「アルカディアへ。」
アリサ「何で…」
ヘルヘイム「アルカディアの三幹部の一人、マリサさんは救われない私に手を差し伸べて下さったのです。」
オトハ「救われないって、何があったのですか?」
ヘルヘイム「会社では上司にパワハラを受け、家では夫に暴力を振るわれていたのです。」
二人「「!?」」

どうやら、ヘルヘイムは彼女のように心に痛手を負った人がなってしまう物なのかもしれない。彼女は外でも中でも嫌がらせを受け、生きる事が嫌になってしまったのだろう。少し共感してしまって、胸が苦しくなった。しかし、そうとなると余計に放っておけない。どうにかして、彼女を苦しみから救いだしたい。その思いが届いたのだろうか。私の鎌が輝きだしたのだ。私は鎌を前につきだしてみた。すると、鎌の先端から光が放たれ、ヘルヘイムに向かう。それはヘルヘイム全体を包み込んでいく。そこに彼女より少し背の高い女性が現れた。彼女の服装は変わっていた。まるで神話などに出てくるような女神のような服装だ。彼女はヘルヘイムを抱きしめる。突然、ヘルヘイムは目を見開き、唖然とする。全ては一瞬の事だった。そして、私は叫んでいた。

オトハ「パルス・レゾンデートル!!」

すると、ヘルヘイムは一筋の涙を流した。そして、光となって消えていった。彼女の流した涙は悲しい時に流す涙ではなく、とても美しかった。

マリサ「くっ…今回は諦めるよ…だけど、また来るから…」

そう言ってマリサは瞬間移動をするかのように、消えた。私達の変身も解けた。すると、空間が元に戻った。何が起こったか、全く見当がつかなかったが、一つ気になっていた事があった。それはヘルヘイムにされていた女性だ。辺りを見回すと、少し離れた所で女性が倒れていた。心配になり、揺さぶってみる。

オトハ「大丈夫ですか?」

女性はすぐに目を覚ました。ヘルヘイムにされていた時と比べて明るい顔になっていた。あの浄化技?が効いたのだろう。彼女は私達に礼を言うと、去っていった。
マリサ_彼女はまた来ると言っていた。暫く、ツユハ達に迷惑を掛けそうだ。それだけが、気掛かりだった。そして彼女が言っていた希望の戦士というもの。一体何なのだろうか。
ヘルヘイム…死者の国
パルス…鼓動
レゾンデートル…存在理由
オトハ「今回出てきた単語の意味です。」

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