episode7━15 雷を纏う者 3

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

そろそろ反転世界編、終盤です
どうかお付き合い下さいませ!
「痛…」

訳もわからないまま吹き飛ばされ、なんとか体を起こして周りを見ると…皆が倒れていた。

「ぐっ…!足、が…!」

ルトは意識があり、起き上がろうとしてはいるけど…両足に怪我を負って立つことすらままならない様だった。
シャルやミリアンも倒れており、近くにいたヤイバは…全員の中で一番怪我をしていた。

「っヤイバ!ヤイバ!」

「…生きて…いる…」

勢いよくヤイバの体を揺すると、目を開いて返事をした。胸を撫で下ろし、ラピの方を見てみると…まだその場から動けない様子だった。

「そうだ、今のうちにラピを倒さないと…っ!く…!?」

急いでラピの元へ走ろうとするが…足に激痛が走り膝を付いてしまう。

「そんな…私まで…!」

足から血が出ており、周りと比べれば軽傷とはいえ、走ることが出来ない。そんな、急がないと!今度ラピが動き出したら…皆倒されてしまう!

「私が…私がやらないと…!ぐ、うぅ…!」

歯を噛みしめ、一歩ずつラピへと向かう。…でも、間に合わない…!

「…ルーナ…!」

「っ!」

背後からヤイバに呼び掛けられ、振り向く。

「ルーナ、お前も私と一緒に強くなったんだろう!修行を思い出せ!お前なら…倒せる!」

「…!」

………

ミロカロスが出した修行から何日も経過し…目標の的を遂に撃ち抜く事に成功した。

「お、やったね。おめでとう!」

「…はい!有難うございます、ミロカロスさん!」

たまたま時間が空いていたミロカロスさんが、私の修行を見ていたときに成功させることが出来た。何回やったか分からない。それ故、成功した瞬間に力が抜けて倒れそうになる。

「っと!あはは、気が抜けちゃったかな?」

それをミロカロスさんが咄嗟に庇い、私はミロカロスさんの柔らかい尻尾に倒れてしまう。

「す、すいません…」

「良いよー。…こんなに短期間で成功させるなんて、よっぽど練習したんだものね。私の柔らかーい尻尾でちょっと休みなよ?」

と言われ、そんな無礼なこと…と思ったが…確かに柔らかい。疲れている私にとって、悪魔の誘いだった。

「お、お言葉に甘えて…」

「フフ、どうぞ?」

そしてつい、提案に乗ってしまった。

………

「た、助かりました…もう大丈夫です」

数十分後に立ち上がり、ふぅ、と息を付く。

「もう良いの?それじゃ、一旦戻ろうか?ちょっと話そうよ」

「…?はい、分かりました」

…話とはなんだろう?そう思いながらミロカロスさんの後を追っていく。

「とりあえず、落ち着ける場所に…と。私がいると何かと目立つからなぁ。…良し、部屋に行こうか」

「は、はい」

訓練場から少し歩いた後、ミロカロスさんの持っていたデバイスでテレポートで移動をする。視界が開けると…そこは、高級そうなテーブルや大量の書庫が並ぶ大きな部屋だった。…口振りからして、恐らくミロカロスさんの部屋だろう。

「さ、座って?」

「…はい」

ぎこちない動きになりながら、高級そうな椅子に座る。…この椅子一つで、私の貯金の何倍の値段なんだろうか…。

「話ってのはさ、個人的な興味なんだけどね?…ルーナちゃんさ、もしかして姉がいないかい?」

「…!」

…何故、それを。

「やっぱり。…『紅の魔女』のリーダー…マフォクシーでしょ?本名は『ラグネラ・ルーナ』か。知り合いなのよ」

「……姉の話は、あまりしたくありません」

「そうなの?」

ミロカロスさんは不思議そうに首を傾げる。

「姉は、私と違って優秀です。歳は離れていたけど、いつだって周りから比べられていました。…そして姉は紅の魔女のリーダーとなり…いよいよ私とは比べ物にならないくらい偉大な存在になりました」

「私は、姉のことは嫌いではなかったんです。でも、周りから比べられるうちに…嫉妬の感情が逆巻いて、姉を私自ら突き放したんです。…その時の姉の顔が…忘れられない。あんなに強くてカッコいい姉が、泣きそうな程悲しそうにしていたのが」

「姉妹故の…ね」

ミロカロスさんにも心当たりがあったのか、少し暗い表情で私から目線を反らした。

「それで、何故今…その話を?」

「あ、えっとね。ルーナちゃんがやってきた訓練さ、実は…その姉であるラグネラが提案したものなのよ」

「えっ…!?」

思わぬ言葉に、驚いてしまう。

「で、でも私の訓練はミロカロスさんが考えたものだって…」

「ごめんね。あれは嘘。ヤイバとルーナちゃんがベルセルクの試練を行っていた際…情報を伝えに着たラグネラと会ったのよ。それで、今ヤイバとルーナの話を伝えたら…物凄く驚いてたんだ」

「でね。ラグネラは考えた後、貴女の訓練のメニューを作って私から伝えて、と言ってきた。勿論私は、姉妹なら直接伝えれば?って聞いたよ。するとね」

「『私はあの子に嫌われてるから、私が考えた訓練だと絶対にやらないでしょう?』…だと」

「……また、私は…」

…結局、私は姉の後ろを追うばかり…なの…?

「…で、こうも言ってた。『あの子は私よりも幅広く視野を持てるポケモンだから、きっと…超射程魔術を使いこなせる』ってね」

「あの、姉が…私を…?」

ミロカロスさんは私を見て、こう告げた。

「…ルーナ。君は自分よりも姉が全てにおいて優れていると信じ、結果的に自分の成長を抑えてしまっていると思うんだ。…だからね」

ミロカロスさんは前に乗り出し、こちらの目を見て話す。

「貴女は貴女。ラグネラはラグネラ。自分より全てにおいて優れている存在なんて存在しない。自分を信じ、自分の長所を伸ばせば…きっと、唯一無二の存在になれるよ」

と、ニコッと笑い…その言葉に、涙が出てしまった。

「…あり、がとう…ございます」

「うん。頑張ってね?」

「…はい!」

救われた。と、思った。
まだ、姉に追い付けるとは思えない。…けれど、追い付けないとは二度と考えない。

………

「…『ロングレンジ・フレイム』!」

小さな火球を自身の周りにいくつも設置し、ラピに狙いを定める。
距離は決して近くはない。でも、この魔術なら届く。…しかし、これでは威力が足りず、倒しきれない可能性がある。

「いけ、ルーナ…!」

「いいえ、まだよ!」

「なに…?」

ヤイバは驚く。…ここから先は、まだ未完成。だけど、賭けるしかない。

…私の唯一無二を、見せてやるわ!

「はぁっ!」

火球に別のエネルギーを送り込み、更に圧縮していく。

…これで…どうだっ!

「『ロングレンジ・ブラスト』!!」

火球を一気にラピへと放ち、ラピへと当たる。本来なら貫通して終わりだけど…私のこれは、一味違う。

「爆ぜろ!!」

火球はラピに当たった瞬間、爆発を起こした。

…出来た!

「今のは…?」

ヤイバは思わず驚く。…秘密にしてたものね。

「どう?私の『ロングレンジ・ブラスト』は。…本来射程のある魔術は爆破しないのが普通らしいけど、私だけは射程と爆破の両方を両立した魔術を使えるのよ。…ミロカロスさんが言うには、私が生まれついて持っていたエネルギーの性質によるもの…って言ってたわ」

「凄いな…。本当に、助かったよ」

ヤイバは笑みを浮かべる。

…いつも助かっているのは、私の方。そのお礼をしたかった。…とは、言えないわね。なんだか気恥ずかしくて。

………

「ルーナ…!助かったよ」

なんとか体を起こし、ルーナに礼をする。ルーナがいなければ、あのまま負けていた。

ルーナは笑い、肩を支えてくれた。

「お礼は後よ!それより…最後に、あの子と話をしなさいよ」

と、ラピの元へと俺を運んでいく。ラピの前に着き、そっと俺から離れてルーナはシャル達の治療へと戻った。…自分だって、怪我をしているのにな。

「ラピ…」

踞るラピの顔を覗くと、ポロポロと涙を流していた。

「ぐすっ…良かったぁ…。このまま、アタシが勝ったらどうしようって…」

「おいおい、泣くなよ。お前らしくないぞ?」

「う…そうね…確かに…」

ラピは涙を拭い、深呼吸してから…こちらを見た。
もう、いつものラピに戻っていた。

「…ルト、皆。これで、ギラティナから協力を得られる筈だよ!」

「ああ、そうだな。そして、本当にお前とは…お別れだな」

胸に込み上げてくる哀傷に、心が苦しくなる。今、こうやって何気無く話せるのは…本当に最後なんだ。

「ええ。…その、一つだけ頼める?」

「?…なんだ?俺に出来ることなら良いけど…」

ラピは微笑し、告げた。

「バネッサを、たまにで良いから見てあげてね。あの子はもう悲しみを乗り越えた。けど…あはは、やっぱりまだ心配なんだ。心残りがあるとすればそれだけね。…頼めるかしら?」

「……ああ。任せてくれ。バネッサが困っていれば助けるし、悲しんでいれば一緒に泣いてやる。ラピもバネッサも、いつまでも俺の仲間だからな」

「安心したよ。…時間かな」

すると、こちらの体が淡く光り始める。もう、戻らなければならないということか。

「…じゃあな、ラピ」

「うん、ルト。見守るからね。負けるんじゃないよ?」

「ああ!当然だ」

ラピはまた笑い、こちらの視界がどんどん消えていく。

「…さよなら、皆。世界を、頼んだよ!」

そうラピは言い、俺は…無言で頷いた。
言葉はもういらない。結果で示す。…必ず、ディザスタを倒し…そして、ナイトともう一度会う。

俺達はもう、負けられないんだ。
紅の魔女。表向きは占い師。裏では傭兵や殺し屋として活動しているギルド。
そのリーダーがマフォクシー。本名はラグネラ・ルーナ。マフォクシー族である。
アルセウスとの戦いでミロカロスに雇われ、戦果を上げた実力者。
今はギルドの仕事をこなしているが、ミロカロスからの仕事の誘いがあればそれを優先するように契約をしている。

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