箏曲部の真実

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オウカ「きッ君は!」
?「あっ、昨日の…」

オウカは驚いていた。席替えをして隣になったのが、なんと昨日箏曲部に先に来ていた子だったのだ。昨日はそこまでクラスメイトとふれ合う機会がなかったので、その子が同じクラスとは思わなかったのだ。一方、相手の方も覚えているようで驚きの表情をしている。その子は少し間を開けて首を傾げながら言った。

?「誰だっけ?」

どうやら、覚えているというのはオウカの思い違いだったらしい。オウカは拍子抜けして転びそうになるのをなんとか堪え、彼女に言った。

オウカ「昨日君の後から箏曲部に来た子やよ!」
?「ああ、そういえばいたような…」

彼女は少しばかり天然なところがあるようだ。気を取り直してオウカは自己紹介をする。

オウカ「私、オウカ!あなたは…」
?「ヒスイ…」
オウカ「ヒスイちゃんっていうんや。」
ヒスイ「ヒスイでいい…」
オウカ「あっ、分かった。じゃあ、よろしくね、ヒスイ!」

ここの学校でのオウカの初めての友達が出来た。













長い長い授業が終わり、放課後になった。終礼が済んで、出ていこうとするヒスイをオウカが呼び止めた。

オウカ「ヒスイ、今日箏曲部行く?」
ヒスイ「うん…」
オウカ「私も一緒に行っていいかな?」
ヒスイ「いいけど…」

ヒスイはそう言うと、歩いていく。
オウカはその後を追うように走る。

オウカ「ちょっと、置いてかんといてよ…」
ヒスイ「ごめん…」
オウカ「ヒスイさ、箏曲部入る?」
ヒスイ「今のところは入ろうかなって思ってる…」
オウカ「…そうなんや。」

正直、オウカはまだ決められないでいた。でも、箏の演奏に引き込まれたのは嘘ではないため、どうすればいいのか分からないでいた。しかし、自分はこの部活が合っているのか。そして何より、この6年間続けられるか。それがオウカの決断を妨げていた。















箏曲部の部室、それが作法室だ。とはいっても、茶道でも使われているため、完璧な部室とは言えない。今日も来た2人をコハクは暖かく迎え入れてくれた。しかし、この時は彼女達は知らなかった。
箏曲部の本当の姿を…

コハク「よく来たね。さっ、上がって上がって。」

コハクに促され、2人は部室に入る。
ヒスイは部室に入るなり、コハクに言った。

ヒスイ「あの、先輩…私、箏曲部に入りたいです!」

ヒスイはいつもより大きな声で言った。その茶色く澄んだ目には、決意の色が見えた。その声を聞くと、コハクは震え上がった。

コハク「ほッ本当!?」
ヒスイ「はい!本当です!」

ヒスイは迷いなく言った。それを聞くと今度はオウカの方に向かった、コハクは問いかけた。

コハク「オウカちゃんはどうする?」

オウカは押し黙った。まだそれは分からない。しかし、ここ以外行くところもないし、箏にも興味が出てきていた。しかし、先程の思いがオウカの心に蓋をしてしまった。

オウカ「私は…まだ分からない…」
コハク「そっか…焦らなくていいからね。ゆっくり考えてからでいいから。」

コハクはそう言って優しく微笑む。すると、その時

ピンポンパンポーン!

放送がなった。内容は

『只今から、緊急職員会議を行います。生徒の皆さんは、速やかに下校してください。』

というものだった。今週しかない部活体験の1日を潰されたオウカは少し不機嫌だった。

オウカ(今週中に決めなあかんのに、何してくれんねん…)

しかし、放送で言われたからにはしょうがない。二人揃って帰ろうとした。
が、コハクは二人を呼び止めた。

コハク「待って、二人とも!」

自分達を呼び止めたコハクを二人は不思議そうに見つめる。

オウカ「どうしたんですか?先輩。」
コハク「二人は帰っちゃだめ。」
オウカ・ヒスイ「「えっ!?」」
コハク「二人には知ってもらわないといけないから。」
ヒスイ「どういう事ですか?」

二人に向かって訳の分からない事を言い出すコハク。すると、彼女は二人から少し離れた。そして、大きな声で言った。

コハク「我が名は守人、コハク!!神よ、我に真の力を!!」

その瞬間、彼女の身体は茶色の透き通った綺麗な宝石、琥珀によって覆われた。そして、琥珀が全て消えた時、コハクの服装は様変わりしていた。柔道着のように見えるそれ。しかし、所々が現代風だった。袖はノースリーブになっており、右腕は手首までの指ぬきグローブ。左腕は肘上までの指ぬきグローブ。靴はブーツを履き、ズボンをその中に入れている。そして、何よりも目を引くのは、彼女の服を飾る琥珀達。素朴な色のそれらは、コハクの部長としての心を表すかのようだった。
一方、オウカとヒスイは固まっていた。オウカに至っては、口をあんぐりと開けていた。

ヒスイ「先輩の姿が…」
オウカ「変わった…」
コハク「二人とも、これが箏曲部のもう1つの姿だよ。」

コハクによると、これが箏曲部のもう1つの姿らしい。訳の分からない事を続けざまに言われ、ありえない光景を目の当たりにし、もうオウカの思考はショート寸前だった。しかし、現実は待ってくれないもの。今度は自分達がいた教室が歪み始めた。

コハク「そろそろ来るね…2人とも、私の後ろにいるんだよ!」

オウカは何が始まるのか聞こうとしたが、それは何者かの咆哮によって、掻き消された。

オウカ「なっなんや!?」

思わずヒスイに飛び付くオウカ。すると、完全に今いる場所の風景が変わった。鳥居が見える。おそらく、神社であろう。そして、再度野太い咆哮が聞こえたと同時に、コハクの目の前が歪み、そこからありえないものが出てきた。
それは、自分達より何倍も大きい化け物だったのだ。
本編2作目でございます。
初めて今回、怪を出しました。怪がどんなものなのかは、次回明かされるので、お楽しみに!
コハク「次回も見てね!」

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