第118話 お祭り騒ぎに身を任せ

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「ポケモンリーグ出場おめでとう! 今夜は祭りだぜー!」
「わぁーい! ありがとーう!」

 対戦相手のオレンジとよく分からない二人組のチーメーカーとの戦いを終えて控え室に戻り休憩をしているとリーグ運営の関係者であるウツギ博士が入って来てマイ、コウ、アヤノ、ソラが正式にポケモンリーグの出場者になった事を聞きいた。それをゴールドに伝えると、夕方に帰る頃にはポケモン屋敷の庭は祭り会場となっていた。

「マイちゃんおめでとう。可笑しな人達が乱入して来た時はどうなるかと思ったけど咄嗟の判断で上手くいってよかったわね」
「はいっありがとうございます! わたし、導く者ですから!」
「ええっと? そうなのね……? 導く者として相応しかったわよ! うん!」

 クリスが左手にはコーヒーが入った紙コップ、右手にはリンゴジュースが入った紙コップを持って近寄って来た。ゴールドはクリスを見ても珍しく何も野次を飛ばさず黙っていた。
 それを確認するとマイはクリスからありがたくリンゴジュースを受け取り、紙コップを軽くぶつけ合って一口、口に含む。褒められる事になれていないマイはくすぐったそうに身体をあっちこっちに揺らしながらお礼を述べる。

「……目覚しい成長だな」
「おーシルバー! てめぇ何父親ぶってんだよ。マイをここまで育てたのは俺だからな!」

 女子二人のトークに耳を傾けていると後ろから声がするので振り返ると奴がいた。夕焼けに照らされる赤い髪がどことなく哀愁を感じさせる。
 マイを見定めるようにしているシルバーを遮る様にしてゴールドはそう言い放つ。

「どうだかな。今のマイとバトルしたらお前は負けるかもしれないぞ」
「んなこたァねえ!」
「試した事があるのか? む? その顔はないな……?」

 育てたとかはどうでもいいらしくシルバーは探る様に問う。マイには通じるゴールドのポーカーフェイスもシルバーの前では意味がない。

「ちょっと二人共! せっかくの日なのに喧嘩しないの! ほら、シルバーもマイちゃんに何か一言、ほら言ってあげて?」
「ああ、そうだな。マイ、おめでとう」
「えへへ、ありがとうございますシルバーさん!」
「実践の練習になるか分からないが、このアホとバトルしてみたらどうだ?」
「え? ゴールドとバトルですか? 考えた事なかったです!」

 目から火花を散らす二人に気づいたクリスはコーヒーをマイに手渡してから、割る様に間に入って喧嘩を止めた。
 思い出したようにシルバーがマイに言えばまた照れ臭そうにマイは頷いて、右手には持たされたコーヒーを間違えて口にしてして目を瞑るとクリスに謝られてコーヒーを返した。

「オイコラシルバーァ! 勝手に決めてんじゃねぇ!」

 マイが大きなどんぐり眼をぱちぱちと瞬きさせているとゴールドが声を荒げた。
 それでもマイには届いておらず何も言葉を発しない。口を一文字に結ぶままだ。

(ゴールドとポケモンバトルかぁ)

 あれこれ思考を巡らせるがゴールドはポケモンバトルが強いと記憶に残っている。
 旅に出る前、自分こそバトルには参加しなかったもののワカバタウンにいる友達とポケモンバトルをして生き生きとしているゴールドがマイの脳裏には印象ついていた。

「俺とバトルなんて今更だよな? そんな暇ないよな? そんな事より――」
「やっぱりゴールドとバトルしたい」
「いやいや何でそうなるんだ? やめとけやめとけ! 後悔するぞ」

 後悔するのは俺なんだけどな、と言うのは口が裂けても言えない。マイの両肩を持ち、荒く揺さぶって考えを改めさせるが無駄だったようで、彼女は目を爛々と輝かせるだけだった。
 溜め息をついてゴールドは「今日は祭りだから、明日にでもバトルしよう」と言って周りにいる目から少しでも自分の負けバトルを見せないようにした。

「うん。明日、ゴールドとバトルする!」
「おーおー。ポケモンリーグは来週からだしな、良い特訓になるだろうよ」

 一気にリンゴジュースを飲み干して紙コップを持った左手を大きく上に掲げて宣言。 ゴールドは頭の後ろに手を持って行き胡座をかいて座ってしまう。拗ねている訳ではない、目線を泳がせて作戦会議をしているようだ。

「マーイ! ちょっといいか? って俺がそっち行けばいいのか! たはは、急にごめんなー。オーキド博士がマイと話したいって電話きてさ、ポケモンセンターまで来てくれよ!」

 ポケモン屋敷の柵の外側からレッドが口元に手を当ててメガホン代わりにして呼んだ。駆け足でマイ達の元に行くとそうレッドが言う。
 ポケモンセンターにはオーキド博士が映し出された電話モニターが起動していて待ちくたびれた様子。

「もしもし? オーキド博士?」
『ん? おおっ待っていたぞ! レッドから聞いたんじゃがピカチュウの新技を生み出したそうだな、ワシが直接目撃した訳ではないから詳しく聞きたいんじゃがーー』

 マイが電話モニターの前に設置してある一人掛けの緑色のソファーに座って声を掛けると後ろを向いていたオーキド博士が驚いたように振り返り、そう述べた。

「うーん、新技と言うか……合体技みたいなやつなんですけど、ライチュウのロケット頭突きで空に飛ばしてもらって、その間に電気エネルギーを身体中に放電して、えっとー」
『ふむふむ、成る程な。すまん混乱させてしまったようじゃな。はて、レッドやイエローとは違う電気技じゃのう……』
「イエローさん? ん? ん? あっイエロー先輩?」

 腕組みをして目を瞑ってその時を思い出しながらオーキド博士に説明するが上手く言葉に出来ないようでマイは眉を眉間に寄せる。
 それに対してオーキド博士は詫びると最後の方は独り言のように呟いた。レッドやマイは目にした事はないがイエローと言う図鑑所有者も、ピカチュウの新技を生み出したらしい。

「レッド先輩が生み出した技ってなんですか?」
「俺も必死だったからあんまり覚えたないんだけどな、俺はモンスターボールの中で電気エネルギーを貯めてもらって、ボールから出ると一緒に最大ボルトを放出する技だよ」
「へ、へえ。よくわからないけどすごいですね。かっこいいです!」
「へへーそうかな。でもまぁ、こいつも嬉しがってるさ」

 図鑑所有者である先輩の話を必死に聞くが理解できずに頭の上からハテナマークが飛び散る。鈍いのかレッドは気付かずにモンスターボールをマイを見せ、中にはピカチュウが入っているのが分かった。

「わあ、レッド先輩のピカチュウなんだか強そう! わたしのピーくんと顔が少し違って可愛いなぁ。ピーくんはかっこいいけど」

 二の腕らしき物をレッドのピカチュウは見せつけるようにするが、マイからしたら可愛らしい顔が目に行くようでまるで効果がなかった。

「残念だったなピカ。さ、ゴールド達の所へ戻ろう! じゃあまた連絡するするよ博士!」
「あ、そうでした! またです!」
『おー。ポケモンリーグ頑張るんじゃぞー!』

 風のように去って行く子供二人を満足げに見届けてオーキド博士から電話を切った。
 ポケモン屋敷に戻るとゴールドが不足そうな顔をしてマイを迎えてまた祭りだと騒ぎ出した。今夜は中々眠れそうにない。
言わなきゃわかんないと思うんですが「ん? ん?」っていうのは、本誌のゴールドの口癖のオマージュでした。

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