第肆拾参話 Where is the treasure?

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

ラキア「……2018年に滑り込み」
 夜までゲームの内容が思い付かなかった僕だけど、どうにか形になったゲームを提案し、ローズさん達に提出した翌日。僕達は再び昨日と同じ部屋に集められた。そこには、大きなホワイトボードに、トーナメント表が書かれていた。

「早速ですが、皆々様にクジを引いてもらいます」

 ローズさんがそう言うと、ワカシャモは僕達にクジの入った箱を差し出してきた。僕は……2番だ。トーナメント表をみると、1vs2、3vs4、5vs6、7vs8とあるので、1番を引いた誰かと戦うのだろう。

「引きましたでしょうか、では1番と2番の方は前へ出てきて下さい」

 指示通り、僕は前に出る。対戦相手は……

「……初戦からエルフィと、か」
「ラキアか……よろしくね」
「では、エルフィ様とラキア様、どちらかが代表してこちらの箱の中にあるボールを取ってください」

 詳細な説明がなく、少し困惑したもののラキアの方を向き、僕が引いていいかと目で尋ねると、ラキアはコクリと頷いたので、箱の中からボールを1つ取り出す。
 そのボールには4という番号が書かれていた。

「4番、エルフィ様とラキア様は『宝探し』で勝負していただきます!」
「……へぇ」

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『宝探し』 ルール
1:プレイヤーは“トレジャー”と“ガーディアン”に分かれる
2:ガーディアンは、3つの宝箱の中からいずれかに宝を隠し、トレジャーはその3つの宝箱の中から1つ選択する
3:質問タイムを経て、互いに選択は宣言してから1度だけ変える事が出来る(ただし、ガーディアンはトレジャーの選択変更後には変更出来ない)
4:ガーディアンは宝を守る事が出来れば1pt、トレジャーが宝を見つける事が出来れば3pt
5:これを5回戦行う
6:なお、トレジャーを3回やるプレイヤーは、ゲーム中1度だけガーディアンにハズレの箱を開けさせる事が出来る

 何処かで見た事があるゲームだ。昨日ラキアとやったミニゲームに似ている。ふとラキアの方を向くと、自分が作ったと言わんばかりにニヤリと笑った。

「こちらのゲームでは、ガーディアンを3回、トレジャーを2回やるプレイヤーAとトレジャーを3回、ガーディアンを2回やるプレイヤーBに分かれていただきます。そちらは、両者の話し合いの上で御選択下さい」
「……分かってると思うけど、これは僕が作ったゲームだからね。エルフィが選んで良いよ」

 開発者の余裕とも言えるのか、選択権を譲られ、僕はしばし考え込む。このゲーム、6番のルールが無ければ断然プレイヤーAが有利なんだけど、6番のルールをラキアが付け足した意味を考えなくては……

「…………僕はプレイヤーBで良いよ」
「……へぇ、あえてかな?」
「それでは、プレイヤーAはラキア様、プレイヤーBはエルフィ様で『宝探し』、ゲーム開始です!!」

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 1ターン目、僕がトレジャーでラキアがガーディアンの番だ。僕とラキアは互いに向き合う様に座っていて、僕はラキアが宝を隠すまで目隠しをしている。ご丁寧にエスパーの力を封じる効力も付いてるけど、僕に透視は出来ない。ついでに言うと、そんな卑怯はする気はない。

「……隠しました」

 ラキアの宣言で、僕の目隠しが外される。まずはファーストチョイスだ。右か左か、真ん中か。勿論ノーヒントだ、ここは単純な直感勝負。

「真ん中でお願いします」
「……選択を変えます」

 僕の選択に被さる様に宣言するラキア。あまりにも露骨過ぎる。
 ラキアの宣言で再び僕は目隠しを付けられる。果たして、本当に真ん中だったのか、あるいは真ん中じゃないのに真ん中だと見せたのか。

「……これでお願いします」
「はい、それではエルフィ様、選択を変えますか?」

 僕は黙って首を振る。正直、1度でも落とすと厳しいとは言わざるを得ないんだけど、それでもここはラキアの出方を窺うターンだ。そういうのは早く決めてしまった方が良い。
 僕の選択に、ローズさんは僕の選んだ真ん中の箱を開けた。中には……何も無かった。

「……正解はここ」

 そういうと、ラキアは右側の箱を開ける。そこには宝石が入っていた。

「1回戦は、“ガーディアン”ラキア様の勝ちでございます。ラキア様に1ポイント与えられます」

 僕はふっと息をつく。この敗北は意味のある敗北だ、ラキアの傾向を見れたんだから。この敗北を引き摺ってはいけない。
 2回戦は僕が宝を隠す番だ、ここからは先程ラキアが隠した場所に隠すかもしれない、という思惑も見え隠れするだろう。

「……はい、隠しました」
「では、ラキア様御選択をお願いします」

 ラキアは目隠しを外し、首をフルフルと振ると、それぞれの宝箱をジッと見つめ始めた。そして、視線は宝箱に向けたまま口を開いた。

「……1回戦は僕はエルフィから見て右側に隠した、エルフィの選択は真ん中に固辞した」
「そうだね」
「……僕と同じ場所に隠した可能性もあるし、あるいはエルフィがさっき選んだ真ん中かもしれないね」
「その裏をかいて左に置いたかもしれないよ?」

 ラキアはフッと笑って、左側の箱を選択した。

「……じゃあ、それに乗っかろうかな」
「エルフィ様、選択を変えますか?」
「いえ、結構です」
「……僕はやっぱりこっちにします」

 僕の宣言を受けて、ラキアは右側の箱に選び直した。その中には、宝石は入っていない。

「2回戦、“ガーディアン”エルフィ様の勝ちでございます。エルフィ様には1ポイント与えられます」
「正解は真ん中だよ、僕がさっき選んだ所」
「……ふーん」

 なんとなく緊張感が出てきた3回戦、再び僕がトレジャーの番だ。もし、4回戦まで互いにガーディアンでしか取れなかった場合は、僕が不利な状況になってしまう。……あのルールの使い所だろうね。

「……隠しました」
「では、エルフィ様御選択をお願いします」

 何も言わずに僕は真ん中を指す。

「……真ん中好きだね、選択を変えます」

 ラキアが宝の位置を動かした。戦況を動かすなら今だ。

「エルフィ様、いかがなさいますか?」
「えっと、今ここで外れの箱を1つ開けさせる事は可能ですか?」
「ええ、ではラキア様、外れの箱を開けてください」

 コクリと頷いたラキアは、中身が空っぽの右側の箱を開けて、僕にニヤリと笑った。

「……これで、2分の1だ」
「…………いや、ラキア。2分の1じゃないよ」

 僕は真ん中の箱から、左の箱に選択を変える。

「この左の箱に宝が入ってる確率は、3分の2だ」
「はぁ!? 何ゆうとんねん!?」
「え? 2分の1ですよね?」
「エルフィ、お前馬鹿なのか?」

 今まで黙っていたオーディエンスが僕の発言で突然湧き始めた。そういえばいたね、君達。僕の発言に、ラキアも怪訝そうな顔で僕を見ている。

「……エルフィ、君って賢いよね?」
「ああ、少なくとも君よりは」
「……じゃあ普通に考えて3つの箱の中にある2つの外れの箱の内1つ開けた訳だよ。そしたら、当たりの箱と外れの箱で2分の1に……」
「いや、違うよ。まず、僕は真ん中の箱を選んだ。この時点でこの真ん中の箱が当たりの確率は3分1だね? 逆にいうと、他2つは3分の2の確率で当たりになる。ここまでは良いよね?」

 ラキアと一緒に後ろにいた異を唱えたワーズ君達も頷く。

「じゃあ、その2つの箱の内、1つは開けてもらって外れが確定したんだからその箱は3分の0だ。そしたら、僕が選んでないもう1つの箱に3分の2が集中する訳だよ。これが、モンティ・ホール問題」
「え? どういうことやねん?」
「この問題は一種の心理トリックでね。最初に選択するっていうのが重要なのさ」
「パラドックスみたいな所もあるし、恐らく詳しく説明しても首を傾げちゃうと思うよ」

 まだ理解出来ない(しょうがないんだけど)ワーズ君達の反論からイシアさんとダースさんの援護が入る。

「試してみれば分かるよ、開けてみて」
「………………」

 納得がいってないのか、それとも当てられた悔しさか、ラキアは黙って宝箱を開ける。そこには、案の定宝が入っていた。

「3回戦、“トレジャー”エルフィ様の勝ちでございます。これでエルフィ様は合計4ポイントでございます」

 どうやら、ラキアはこの事実を知らなかったみたいだ。お陰で僕が有利な状況になった。何故なら、今僕は4ポイントで、ラキアは1ポイント。ラキアが勝つ為には残りの2回を両方とも勝たなくてはいけない。
 だが、4回戦は僕がガーディアンの番だ。そして、僕と違ってラキアは先程の技は使えない。

「はい、隠しました」
「……じゃあ、真ん中で」
「うん、じゃあ変えさせてもらいます」

 ラキアの選択に、僕は初めて選択を変える事を宣言する。ここが正念場だ、これが僕の戦い方。

「……はい、これで良いです」
「では、ラキア様。選択を変えますか?」
「…………エルフィから見て右側でお願いします」

 予想通りラキアは選択を変えた。

「…………4回戦、“ガーディアン”エルフィ様の勝ちでございます。また、この時点でラキアの逆転の目が無くなったので、エルフィ様の勝利です!」



1回戦
ラキア選択:左側→右側
エルフィ選択:真ん中

2回戦
エルフィ選択:真ん中
ラキア選択:左側→右側

3回戦
ラキア選択:真ん中→左側
エルフィ選択:真ん中→左側

4回戦
エルフィ選択:真ん中→真ん中
ラキア選択:真ん中→右側



 結果はこんな感じだ。まぁ、見てくれたら分かる通り、僕はずっと真ん中に固辞してるんだよね。そうなると、ラキアとしては真ん中を警戒する事になる。3回戦は恐らく、あえてラキアは真ん中を選んだんだろうけど、それでも僕が真ん中を選んだから選択を変えざるを得なかった。そして、4回戦、ラキアは完全な疑心暗鬼と焦りに支配された。再び僕が真ん中を選ぶ、そう信じて真ん中を選択すると、僕の選択変更宣言、ラキアには2つの考えが生まれた筈だ。

1、僕が本当に真ん中で、別の場所に変えた可能性
2、僕が別の場所を選んだけど、ラキアの宣言を受けてあえて真ん中にした

 結局、ラキアは1の可能性に賭けて別の場所に変更したけど、僕はそうはしてない。答えは、真ん中から真ん中に変えた、だ。別にルールに違反はしてないからね。

「……昨日の時点ではエルフィ、ゲームに関してあまり強くなさそうに見えたのに……」
「えっと、僕が苦手なのはゲームを作る事であって、プレイするのは苦手じゃないよ?」

 そういう事で、ラキア対僕の対決は、僕の勝利で幕を閉じた。
エルフィ「モンティ・ホール問題、似たような物で3囚人問題があるね」
イシア「しかし、作者も完全に理解しているわけでは無いから、『はえー、そうなんだー』ていう感じで思って欲しい」
ダース「詳しく知りたいなら調べてね!」

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