本当はクレセリアの登場回だけにしようとしていたのに、結局2話分突っ込んでしまった。
「あ、なたは…?」
「…私はクレセリアです。まさかとは思いましたが、時空に入って見て正解でした。あなたに、会えたのだから…。っと、失礼しました。私はこの悪夢から、さまざまなポケモンを救う光となるものです。そして、あなたがニンゲンだった時の、唯一の相棒であったポケモンです。」
「クレ、セリア…。」
「あなたの記憶が無くとも、私はあなたに会えて、とても…。とても、嬉しいです。昔の主に、会えただけで…っ」
クレセリアはそう告げると、一呼吸置いて、話し始めた。
「アルト。あなたに提案があるのです。」
「てい、あん?」
「はい。それは、あなたのニンゲンの時の記憶を、今のあなたの器に入れることです。」
「っ!?」
記憶を取り戻すということは、つまり“自分”を知る、と言うことになるのだ。
けれどー。
その記憶が戻った、となると、もしもが起こりかねない。
もしも。
それは、ルナと…。プクリン達と、離れること。
ルナという、アルトという存在を見つけてくれた人物を裏切ること。
それだけは、絶対に、避けたい。
「ううん。結構悩んでいる様ですね。ここの世界に思い残りがある様ですね。」
「なんか、ごめんね。」
「…。では、お願いします。この世界を救う為に、記憶を、受け入れては貰えませんか?…こんな体ですので、土下座は出来ないのですが…。」
クレセリアは焦りの表情を浮かべながら、目一杯首を下げた。
その姿からは、焦り、緊張、緊迫ー。
いろんな感情が伝わってくる。
「世界を、救う為…?」
「…はい。アルト、あなただけが、この世界を闇に染めようとしている張本人を知っているのです。…アルトがこの世界にポケモンに変換、かつ、記憶のないまま転送したのが、張本人のようです。ですから…っ!」
「クレセリア、落ち着いて。」
アルトは深呼をして、息を整えながら決意を固めた。
ルナには悪いけど。
世界が闇に覆われてしまったら、元も子も無いじゃないか。
「クレセリア。記憶を、頼む。」
「いいの、ですか…!?あ、ありがとうございます…!」
クレセリアの瞳には涙が浮かぶ。
ぼろぼろと大粒の涙を零しながら、こちらへ笑顔で寄ってくる。
「あのぉ、クレセリアさんっ!?」
「あああっ、し、失礼いたしました…!い、今記憶を転送しますね…!心を落ち着けておいてください…!」
クレセリアは深呼吸をすると、涙に濡れた瞳を閉じて、気を貯める。
その貯めた気が体に現れて、紫やらピンクやら…。
オーロラみたいなものがクレセリアの体を包み込む。
オーロラは見たことが無いけれど、ドーブルさんという人が、オーロラというものを見て、描いてきたものを見たことはある。
ドーブルさんの腕がいいのか、はたまたほんとうにこんなものだったのかは分からなかったけど、すごかったことだけを覚えている。
たとえこれがオーロラみたいなものじゃなくても、これは心の宝箱にしまっておくことにする。
クレセリアはアルトの頭に静かに触れ、記憶を徐々に送り込んだ。
「すみません、記憶量が結構膨大なので、時間が少し…というか結構かかると思います…。」
「うん、分かった…。」
クレセリアが送ってくれる記憶は、入ってくる感覚が不思議なものだった。
回復の為のエネルギーを入れるようなものじゃなくて、言葉に言い表せないような、不思議な感覚。
強いて言うなら、眠る寸前のふわふわしてる時に、気を入れられる感じ。
例えが分かりづらい、か…。
アルトは入れられる記憶の中で、ふと、心に留まったものがあった。
それは、辺りが暗くて、進む方向がよく分からない場所に放り出されて、キョロキョロしていると、声を掛けられた。声の主は、闇の中で、静かに囁いていた。
うまく聞き取れなかったけど、こちらに語り掛けている様で。
話したことはよくわかった。
でも、理解は出来なかった。
ーわれは、闇の主。時空の塔のを越え、闇の火口で待つ。-
そこで意識は途切れた。
知らない場所。闇の火口。
ダンジョンだろうか?
時空の塔は、今から行く場所。
闇の火口に、何かが居るのだろうか?
クレセリアの手が離れるのが分かった。
情報も、入ってくるのが止まったようで、アルトは静かに目を開いた。
今ならやるべきことが、分かる。
黒幕が、誰なのかも。
そして、リーフ、ダーク、ルシア、そして、クレセリア。
お前たちの事も、分かる。
迷惑掛けて、すまなかった。
そして、
ありがとうー、クレセリアー!
短いけど頑張って書いてるんで、読了とか感想、評価がくると、飛んで跳ねるののを越えて、発狂して喜びますので、ぜひとも宜しくお願いしますm(_ _)m
祝 30話。創作垢にて、1話のURLを貼りますね。もう31話目だけど。