第10話 ポケモンバトルは出会いも産み出す

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 朝の光が窓から部屋に差し込んでくる。
 その光は、フェルータの瞼を越え目に入ってきた。それで目が覚めたフェルータ。寝起きの重い体をゆっくりと起こす。
 そのまま起きているのか寝ているのかわからない状態でしばらくベッドの上で座っていたが、何やら部屋に備え付けのコンロらしき音が。まさか消し忘れか!と思い飛び起きるフェルータ。
 すると、コンロの方から
ーーおはよ~
と。よく見るとラティアスがコンロの前で料理していた。
ーーいっつもフェルータが作ってくれてるからたまには私も朝ごはん作んなきゃって思って早起きしたの。もうすぐ出来るよ!顔洗って待ってて!
 なーんだラティアスか、と思いながらありがと、と言いそのまま顔を洗う。程よく冷たい水が気持ちいい。
「いただきまーす」
 ラティアス手作りのフレンチトーストをフォークを使って食べる。出来映えが気になるのかこちらをチラチラ見てくるラティアス。
 少し焦らしてみたかったが、折角作ってくれたので感想を伝える。
「おいしい。でも一つだけ。もう少し牛乳に浸す時間を長くしたほうがいいと思う。少し芯の方に牛乳が染み込んでないところがあったからね。」
 ラティアスは顔がパッと明るくなり、
ーーありがとう。私も思ってたの。牛乳に浸ける時間が短かったんじゃないのかな、って。参考になったよ。また明日もこれ作っていい?
「もちろん!楽しみにしてるよ。」
 やったー!と喜ぶラティアス。僕が朝ごはん作る手間も省けるし、何よりラティアスが楽しそうだから一石二鳥だな...なんて最近覚えたばっかりの四字熟語を思いだし、少しニヤッとするフェルータだった...

 ポケモンセンターを飛び出したフェルータとラティアス。勿論あの後エアロスターにもラティアス特製のフレンチトーストを食べさせた(叩き起こして、ではあるが...)。
 そのままおねむのエアロスターをボールに入れて、二人はジョーイさんに鍵を返してから飛び出してきたのだ。
「さーてあと少しでカキョウタウンだ。頑張ろ!」
ーーうん!
 フェルータとラティアスが元気一杯で歩く後ろで、どんよりとした空気で追跡している者たちもいた。昨日のコロナ団員たちだ。下っ端に専用のホテルなど割り当てられる訳が無く...野宿をしたのであった。しかも敵に見つからぬよう茂みの中で。
「班長~腰が痛くて堪らないッスよ...」
と昨日もいた男Aが呟く。
「仕方ないだろ...俺だって同じだよ。」
と班長が返す。
 しかし、不平不満を言いながらも特に気が立った様子も無く、平和に(?)尾行を続けていた。


 フェルータとラティアスも、相変わらず後ろにいる邪魔者に気づく素振りも無い。
 ただただ楽しそうに、手を繋いで鼻歌でハーモニーを奏でながらてくてく歩いていた。
 右手に『カキョウタウンまで残り2㎞』と書かれた看板が立ててあり、ますます二人の気分は上がって行った...


 この何とも言えない良い雰囲気をぶち壊す者は、コロナ団以外にもいるものだ。所謂空気が読めない、という部類の人間だ。
「おいそこの少年!儂は考古学一筋三十年の男じゃ!いざ、尋常に参る!」
 謎の考古学のおっちゃんがフェルータたちに勝負を仕掛けてきたのだ。
「行けい!三度の飯よりサンドパン!」
 相手がポケモンを出してきたならばポケモントレーナーとして勝負しない訳にはいかない。フェルータも渋々、
「ラティアス、宜しく。」
ーー了解。ちゃちゃっと片付けてあげる。

「ラティアス!サイコキネシス!」
「サンドパン、砂嵐じゃ!」

 二人のトレーナーの指示がぶつかり合う。先に反応したのはラティアス。額に念力を溜め、サンドパンに向け発射する。
がしかし、サンドパンも負けてはいない。指示を受けてすぐに辺りの砂を巻き上げ、砂嵐を作り上げる。
 サンドパンの特性はすながくれ。
 砂のおかげで素早くなったサンドパンは、目に砂が入ってそれでなくとも命中率が下がっているラティアスの念波を要因に回避する。

ーー面倒臭い...

 ラティアスは自身の周囲に、自分の念力で幕を貼る。これにより砂嵐の中でも安全に行動できるようになる。
「不味いぞサンドパン!ストーンエッジじゃ!」
 一瞬岩の剣がラティアスの体に刺さったように見えた。が、ラティアスの素早さを舐めてはいけない。瞬時に岩の剣に反応し、回避した。
「そのまま決めるよ!サイコキネシス!!」
 念波はストーンエッジの反動で少し動きが鈍くなっているサンドパンを襲う。
「サンドパン!」
 ラティアスはサンドパンを一撃の下に沈めたのだった。



「ほら。小遣いじゃ。これを使ってカキョウで何か食え。」
 考古学のおっちゃんは賞金をくれた。ざっと数えてみると、一万...一万円!?
「一応儂はオムニマルドと言う。宜しく。」
 一間空いて、
「オムニさん!?あの有名な!?」
 フェルータは叫ぶ。
 オムニマルド・ユレイズ。数々の化石ポケモンを発見し、さらには復元まで成功させたというポケモン考古学研究の第一人者中の第一人者だ。ざっと挙げただけでも、オムスター・アーマルド・ユレイドルの名に彼の名が使われている程だ。まさかこんな高名な方とバトルしていたとは...
「サイン下さい!」
 思わず叫んでしまうフェルータ。フェルータは実は古生物の密かなファンなのだ。
「勿論良いとも。あんな簡単に少年に打ち負かされるとはな...まだまだ精進が足らぬようじゃ。」
 そう言い残し、サインを書き終わった後、考古学のおっちゃん改めオムニさんは渡船場の方に向かって歩いていった。フェルータたちも、あと少しのところに迫ったカキョウタウンに向け、どんどん歩いていくのだった...

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