23話 特訓

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:10分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

2020年7月30日改稿
翌朝、アイトとヒビキの2匹ふたりは、昨日、ヒビキをいじめていたタイショーと呼ばれていたイーブイの元に行き、ハルキ達がレベルグに帰る日である滞在4日目に勝負するよう約束をしてきた。
勝負の内容は普通のポケモンバトル。
ヒビキが勝てばヒビキを2度と馬鹿にしない、タイショーが勝てばこの里の食べ物を好きなだけこちらが奢るという条件で約束を結んできたようだ。

「と、いうわけで今日から特訓開始だ!」
「「お~!」」
「けど、特訓って何をするんだ、アイト?」

ハルキ達は、ヒビキと出会った森で特訓することになっていたが、具体的な方針や計画はアイトが考えるとの事でまだ何をするか知らない。

「昨晩いろいろと考えたが、まずは互いに何ができるかの認識合わせが大切だと思うんだ。だから、各々使える技や得意な事を言ってほしい!」
「了解!」
「りょうかーい!」
「りょ、りょうかいです! ……これで合ってるです?」

アイトが格好つけて敬礼をしたので、なんとなくハルキとヒカリも動きを真似ると、ヒビキも戸惑いながら敬礼の真似をしてくれた。

「それではまずハルキから言ってもらおうか?」
「うーん。 僕が使える技は、『たいあたり』とか『はたく』といった基本技と『あわ』みたいにポッチャマが覚える技は大体使えるはず。 まあ、まだ『バブルこうせん』は使えないから強力な技は無理みたいだけどね。 あ、あと『きあいパンチ』も使えるよ」
「え? 『きあいパンチ』使えんの?」
「うん」
「マジかよ。 俺、パンチ系の技まだ使えないっぽいんだけど。 ちくしょう! 羨ましい!」
「アイト君、しょんぼりですね」

肩を落としてガックシうなだれるアイトにヒビキが同情の目を向けた。

「……オホン! 気を取り直して次だ。 次! ヒカリ、お前は何が使えるんだ?」」
「私? 私は電気タイプの技なら使えるよ!」
「そりゃあ、ピカチュウなんだし、そうだろうな。 そうじゃなくて、もっとこう、具体的にないのか?」
「う~ん。 …………ない!」
「ないのかよ!」

満面の笑顔で答えるヒカリに思わず、ずっこけるアイト。

「もういいわかった。 それじゃあ、最後にヒビキは何が使えるのか教えてくれ」
「は、はい! わ、わたしも『とっしん』や『たいあたり』といったイーブイの覚える技ならだいたい使えるはずです。 あと『ずつき』や『でんこうせっか』も使えるです!」
「お、おおぉ……。 やけに体を張った技ばかりだな」

ヒカリと違って具体的な技名を挙げたが、技の内容が物理技に偏っていた。

「つまり、ここまでの話をまとめると、みんな基本的に種族が覚える技を使えるってことでよさそうだな」

そこから、アイトが考えた特訓内容は使える技を増やすよりも、今、使える技を確実に強くするというものだった。
無理に手数を増やすよりも、最初は基礎を固めたほうがいいし、短期間で技を習得するよりも堅実的だと判断したからだ。
基礎がしっかりすれば、自然と応用もできるようになって発展系の技も覚えられるだろうし、焦る必要はないだろう。

「というわけで、こっからは2組に別れて特訓だ。 技を受ける側は技を出す側の悪い点や改善点を言ってやる。 単純だが、1匹ひとりでやるより効率がいいからな。 それで組み分けだが……」
「アイトがヒビキと組めばいいんじゃないかなー?」
「え?」
「確かに。 そもそもこの特訓はヒビキがあのタイショーって子ををギャフンと言わせるのが目的だし、スポーツ経験豊富なアイトが見てあげた方がいい気がする」
「そ、そうか? さすがに女の子同士で組ませてあげた方がいいと思ったんだが。 ……ほら、男が女と接触するとセクハラとかになりかねないし」

アイトの言いたいこともわかる。
実際に人間の世界では男女がちょっとした接触をしただけで、大きな揉め事に繋がることもあるし。

「えー、そんな事、気にしないよー。 ねぇ? ヒビキ?」
「そうです! わたしはアイト君と一緒にいて楽しいですし、大丈夫です! ……ちなみに、そのセクハラ? って何です? 背と腹の事を言ってるんです?」

どうやら、この場にいる雌ポケモン、もとい女の子達は、男女の接触などそこまで気にしていないようだ。
そもそも、人間の世界の言葉の意味をヒカリとヒビキが知るはずもないだろう。

「いや、知らないならそれでいいんだ。 ヒビキみたいな純粋な子はむしろ知らないほうがいいかもしれない……」
「何でです? 気になるんですが……」
「なるほどー……、つまりその言葉の意味は、もしかしてエッチな!?」
「いや、ちげぇーよ!」
「えーと、つまり簡単に言うと、異性同士で接触するのを嫌う子もいるんだ。 アイトはそれを懸念しただけ」
「なーんだ」

何故か、がっかりしたヒカリに苦笑いを浮かべるハルキ。
一体、何を想像していたのだろうか。

「よし! そろそろ特訓始めるから、準備しよう! そうしよう!」

アイトが無理矢理話を終わらせると、先ほど説明したと方法で特訓する事になった。
ペアの組み合わせはヒカリの提案通り、人間の世界でスポーツ経験が多かったアイトがヒビキと組み、残ったハルキとヒカリで組むことになった。

「いいか、怪我とかに繋がるから、ちゃんと手加減しろよ。 しばらく技を受けあった後、軽く実戦形式をするつもりだ。 受け合うだけじゃ見えなかった欠点とかに気づけるかもしれないからな。 それじゃあ、特訓開始だ!」
「「おーー!」」

―――――――――――――――――――――――

特訓も一段落が着き、アイトとヒビキはお互いに、気になった点について話し合っていた。

「ヒビキは技を繰り出す時の、思いきりはいいんだけど、動きが直線的なのがダメだな。 あれだと簡単に避けられるぞ」
「うぅ……、気をつけます」
「それで、ヒビキからみた俺はどうだった?」
「アイト君は体の使い方が上手だと思います。 とても身軽で、間合いを一定に保つのが得意な気がしました! でも、『かえんぐるま』はダメでしたね!」
「やっぱりそうだよなー。 あの技、知識として知っていたから使ってみたんだけど、もう目が回る、回る。 あんな状態じゃ、相手に狙いつけるなんて俺には無理だわ……」

ハルキから聞いた話によると、『かえんぐるま』は口から炎を出し、体を縦に回すことで全身に炎を纏った状態で相手に攻撃する技らしいが、元が人間だからなのか全く狙いがつけられる気がしない。

「まあ、これは後でなんか考えるとするか。 ヒビキは俺が言ったこと直せそうか?」
「そうですね……、直線的ということはジグザグに相手に突っ込めばいいんです?」
「それも間違ってはいないが、何もバカ正直に相手に突っ込む必要はないと思うぞ」
「え? でも、わたしの技は近距離技が多いので突っ込まないと当たらないです?」
「よし。 それならここで1つ問題だ。 例えば突然ヒカリが襲ってきたとする。 ヒカリはジグザグに走りながらこちらに接近してきた場合と、電気をバチバチさせて、攻撃しながらジグザグに走って接近してきた場合がある。 相手にして嫌なのはどっちだ?」
「それはもちろん攻撃しながらの方です。 ……あっ! つまり技をうちながらなら……」
「正解。 まあ、これは1つの例だけど覚えていて損はないはずだ。 ヒビキは『スピードスター』も覚えているみたいだし、牽制しながら接近して『とっしん』や『たいあたり』を狙えば今よりも命中率が上がるだろ」
「なるほど! アイト君は物知りですね!」
「こ、これぐらいは普通だよ。 さて、ハルキ達の方はどうなってるかな?」

ヒビキの誉め言葉を照れた表情で軽く受け流し、ハルキとヒカリの方を見る。
どうやら2匹ふたりも特訓に一区切りついて、話し合っている最中のようだ。

「ヒカリは接近戦が少しぎこちないかな? なんか是が非でも近寄らせたくないような感じがしたよ」
「ありゃ。 やっぱりバレてるね。 接近戦したことあんまりないから苦手なんだー。 アハハハハ~」
「それで、ヒカリから見た僕はどうだった?」
「ハルキはね、是が非でも近寄りたい感じがしたよ~。 ただ近寄ることに集中しすぎて牽制の『あわ』が単調になりすぎかな~」
「そうだよね。 やっぱり牽制択が速度の遅い『あわ』だけだと単調な攻めになるし、他の技も覚えたほうがいいかもしれないな」
「おーい、2匹ふたりとも!ちょっと休憩してからペアを変えてまたやるぞ」

ハルキとヒカリが意見交換し終えたタイミングでアイトが声をかけ、その後、組み合わせを変えながら、ハルキ達は夕方まで特訓をした。
あのセリフは作者が言わせたかっただけなので大目に見てやってくださいm(_ _)m

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想