アルデルの小瓶

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毎日ハロウィン企画:3日目のお話
 そろそろハロウィンが近づいてくる。ゴーストポケモン達はニンゲンを驚かせたり、怯えさせて恐怖の感情を集め回ります。ムウマもいつも以上に怖がる心を集めようと、自分でも使えるような魔法がないか部屋の棚をゴソゴソ漁っているところでした。そこへいいものを探してきたとムウマージが入ってきました。渡されたのは、白くまあるい本体に、薄ピンク色の宝石で蓋がしてある、不思議な不思議な小瓶でした。

ムウマージに使い方を教わって、試しに魔法を作ってみることにしました。蓋を開けて、種となる小粒の星と好きな香りのポプリをひとつまみ入れます。

魔法よこいこい 生まれてこい 私の心の 鏡になあれ

呪文を唱えながら蓋をしてカラカラと振れば、もやもやした雲が小瓶から飛び出しました。ムウマがわくわく様子をうかがっていると、雲は4つに分かれて、小瓶と同じサイズのムウマに成りました。これはお供を作る魔法よ、魔女たるものお供がいなくちゃとムウマージに教えられ、ムウマは張り切って洋館を出ていきました。本当は寂しがりの魔女が暇つぶしの相手を作るための魔法なのですが、思いのほかムウマが乗り気になって出ていってしまったので、ムウマージは黙っていることにしました。

おちびな四匹のムウマを連れて、洋館のムウマは暗い夜道を歩くニンゲンを驚かせようと命令します。けれども生まれたばかりのちびたちは、なかなか言うことを聞きません。勝手に飛び出して挨拶してみたり、歌い出したり、浮いたまま寝ていたり。結局ニンゲンは足早に去ってしまい、最初の獲物を狩るのに失敗してしまいました。洋館のムウマは怒りましたが、ちびたちは気にしていません。これでは朝まで誰も怖がってくれないかもしれない。洋館のムウマはため息をつくのでした

いやいや、落ち込んでなんかいられない。こいつらを使えるようになって、ムウマージにえらいねって褒めてもらうんだ! 洋館のムウマは頭を横にふって気合を入れなおし、次のターゲットを探すのでした。ふわりふわりと浮かんでいくと、おさげの可愛らしい女の子が一人、ペロペロキャンディを持って歩いていました。ちびたちが飛び出さないように意識を集中すると、さっきまで騒がしかったちびたちがピタリと動きを止めました。

もしかしてと思い、ちびの一匹を女の子に向かって、ちょうどシャドーボールと撃つのと同じ感覚で飛ばすと、思惑通りちゃんとおさげに噛みついて悲鳴を上げさせることが出来ました。足元に冷たい空気を流して、じわじわと怖い気持ちを高まらせたところで、揃ってすすり泣くような声を出せば、女の子はわんわん泣き出して逃げていきました。抜け出した怖がる心を紅い珠に取り込んで、ついでにペロペロキャンディもいただいて、洋館のムウマは満足そうです

ちびたちも一仕事終えたような満足そうな顔をしています。これはご褒美だとちびたちにキャンディを渡して、さあて次は誰を狙おうかな。コツがわかってきた洋館のムウマは歌いながら揺れるのでした。丸まった寂しそうな背中のニンゲンを見つけ、今度はこいつにしようと近寄ると、運の悪いことにポケモントレーナーの少年でした。ボールからクチートを出して、攻撃してきます。

かみつかれそうになったところをひらりと躱し、瞑想を深めてちびたちを動かすことに集中します。ちびとはいえ、パワーはムウマ一匹分。あやしいひかりで混乱させたところへシャドーボールを連続で叩きこむ、なんて芸当も出来るわけです。四方から放たれる技に、クチートはひとたまりもありません。勝てないと悟ったトレーナーはボールにクチートを戻すと、悔しそうに歯を食いしばって逃げていきました。

バトルにも勝って、洋館のムウマはちびたちと一緒に喜びました。
どうなったか気になって後をついてきたムウマージは、たまたま買い物帰りに通りがかったと装って、よくできましたとみんなを褒めるのでした。

もっともーっとやってやるぞ!とムウマが浮き上がった途端魔法の効果が終わり、ちびたちは消えてしまいました。この魔法はね、使い切りなのよ。あなたが強くなれたら、その分長く出せるわとムウマージに慰められましたが、ムウマはちびたちが消えてしまったことが悲しくて、泣いてしまうのでした。

きょうのおはなしは、これでおしまい

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