毛糸でぐるぐる

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:3分
毎日ハロウィン企画:6日目のお話
 ある日のこと。カゲボウズとジュペッタが仲良く洋館の廊下を歩いていると、今までなかったはずの部屋が新しく出来ていました。部屋が増えたり消えたりすることは日常茶飯事ですが、たくさんの布や糸が見えたので、入ってみることにしました。中にはジュペッタが好きそうな柄や色の生地がたくさんありました。これは使えそうだと思ったものを、持ってきたポシェットに入る分だけ詰め込みます。

ねえ、これはどう。カゲボウズが興味を示したのは、ふわふわで大きな毛糸玉でした。これだけ大きなものなら、あみぐるみやみんなの寝袋を作るのに良いかもしれない。二匹が持っていこうと毛糸玉を籠から出すと、コロコロと転がっていきました。一つが出た拍子に籠の中から全部転がり出てしまい、どれでもいいから捕まえなくちゃと、二匹は毛糸玉を追いかけていきます。毛糸玉はまるで意思ある生き物のように、飛んで跳ねて廊下を転がっていきます。カゲボウズが体当たりして止めようとするのをすっと躱し、ジュペッタのかげうちで更に速度を上げて、どこまでも転がっていきます。

そのうち糸がほどけてきて、毛糸玉はだんだん小さくなっていきます。そうだ、このまま転がっていけば、糸が終わって止まるはず。そう考えたカゲボウズが追いかけるのをやめてじっとしていると、毛糸玉もピタリと動きを止めました。カゲボウズが少し前に出ると、同じく前に進みます。これじゃあ追いかけていくしかない。カゲボウズはまた後ろを追うことになりました。

じゃあ、先回りして壁にぶつかるのを待っていればいいだろうと、ジュペッタが廊下の角で待ち構えていると、毛糸玉は身軽に角を曲がっていきました。二匹はムキになってきて、どんなことをしても捕まえてやろうという気持ちになりました。それを知ってか知らずか、毛糸玉は同じ道を何度もまわっていくのでした。

追いかけているうちに毛糸玉がどんどん増えていることに、二匹は気がついていませんでした。カゲボウズは後ろから転がってきたものに、ジュペッタは前から跳ね返ってきたものに巻き込まれ、いっしょに転がることになってしまいました。やっと糸の終わりが見えた頃、二匹は身動きが取れないほどぐるぐるに巻かれていました。最初の部屋の真ん中くらいで顔を見合わせた二匹は、なんだそのかっこう! そっちだって、おかしいよ! と、お互いの姿がおかしくて、ゲラゲラ笑うのでした

きょうのおはなしは、これでおしまい

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想