地底湖の歌姫

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毎日ハロウィン企画:14日目のお話
 ハロウィンも近くなり、プルリル二匹はお城に灯をともすための水晶を取りに、地底湖へやってきました。ぼんやりとした光で照らされる湖面は、生きるものもなく幻想的で美しい光景です。手頃な大きさの水晶を引き抜いて、これにしようあれにしようと話していると、泡を伝って歌声が聞こえてきました。澄んだ湖に負けないくらい透き通る声に、プルリルたちは思わずうっとりと聞き惚れてしまいました。

誰が歌っているのだろうと水面から顔を出すと、ピンク色の水晶と岩で出来たようなポケモンが歌っていました。プルリルたちが現れたことにびっくりしています。歌が上手くて聞き惚れてしまったのだというと、ピンク色のポケモンは恥ずかしそうに笑いました。することがなくて暇だけど、地下洞窟から出られないから、歌うくらいしか遊びを知らないのといいました。

それなら歌を盛り上げなくちゃ。プルリル二匹はピンク色のポケモンが歌うのにあわせて、泡を作り浮かべました。いいところへ差し掛かると、色が変わるようになっています。ピンク色のポケモンはプルリルたちの技を素敵だと褒め、楽しい心を込めて歌うのでした

そこへ誰がの声がして、ピンク色のポケモンはいけない、戻らなくちゃと帰ってしまいました。せっかくいいところだったのにと、プルリルたちは水晶を抱えて、残念そうにお城へ帰るのでした。ブルンゲルたちに歌の話をすると、是非聞きたいというので、翌日は四匹で地底湖へやってきました。ピンク色のポケモンは、こんなにたくさんのポケモンたちの前で歌うのは恥ずかしいといいましたが、いざ歌い出すと、ブルンゲルがぽよんぽよんになってしまうくらい美しい声を披露するのでした。

歌い終わって拍手を送るプルリルとブルンゲルに、ピンク色のポケモンは悩みを打ち明けました。みんなの期待が嬉しいけれど重たい。あなたたちのように、自由に水の中を泳ぎ回ることができたら、どんなに素敵だろう、と。それならこっちに来ちゃえばいいよとプルリルがいうのですが、ピンク色のポケモンは水タイプではなく泳げません。しばらく湖面を見つめると、悲しそうな笑顔で手を振って、帰ってしまうのでした

なんだか思いつめているね。どうにかしてあげたいわ。
プルリルとブルンゲルたちはお城に帰って話し合い、なにやらいいことを考えついたようでした……。

翌日。プルリルたちはまた地底湖へいって、麗しい歌を聞くのでした。歌が終わると、大きな泡でピンク色のポケモンを包み込んで、そのまま水中に潜っていきます。いきなりのことに驚いていましたが、泡の中なら自由に動けると、ピンク色のポケモンは喜んでいました。お城へ着くとプルリルとブルンゲルたちにもてなされ、しばらくの間楽しく海茶を飲みながら語らうのでした。この時、ピンク色のポケモンはお茶菓子を食べてしまいました。海の冥府である、このお城特製のシーソルトパイを。

それじゃあそろそろみんなが心配するから帰るわと、席を立とうとしたピンク色のポケモンは、自分の周りにあった泡の層が消えていることに気がつきました。あれっ、泡がなくても平気みたい。どうしてかしら?

プルリルとブルンゲルに別れを告げ、泳いで地底湖まで戻り地面に上がると、息ができなくなっていました。空気が苦しくて仕方ないのです。慌てて水中に戻ると、なにごともありません。これはどうしたことだろうと、湖の中を彷徨うピンク色のポケモンは見つけてしまいました。眠るように目を閉じている自分の体が、水晶に包まれ底に沈んでいる姿を。つまり今の自分は……。

その頃、お城ではプルリルとブルンゲルが新たな仲間ができたことを喜んでいました。ブルンゲルのオスはご機嫌でふよふよ揺れて、メスはパイをもう一つ作らなくちゃとキッチンへ向かうのでした。そろそろ頃合いだろうから、お前たちは迎えにいってあげなさいとブルンゲルのオスにいわれて、プルリル二匹は地底湖に出発するのでした

きょうのおはなしは、これでおしまい

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