剣の終わり

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毎日ハロウィン企画:17日目のお話
 ヒトツキ、ニダンギル、ギルガルドの三匹は、どこか遠くにある場所へ来ていました。特に約束があるわけでも、呼ばれたわけでもないが、なんとなく今日はいなければならないと感じたようでした。砂が吹き付ける荒野の地面には、ありとあらゆる剣が突き刺さっていました。主の服の一部が巻いてあるもの、ひどく錆びたもの、乾いた血の跡がついているもの。そう、ここは剣の墓場。役目を終えるか捨てられると、剣は皆ここへやってくるのです。大昔、まだギルガルドが王に仕えていた時代のものもあり、ニダンギルと二匹で切なそうに眺めていました。

ヒトツキはいつか自分もこうなってしまうのだろうかと、ビクビクしていました。どんな歴戦の騎士の剣であっても最期はここに来るのかと思うと、体を縮こませてしまうのでした。

そこへ、一人のニンゲンがふらふらとやってきました。こんな場所にはポケモンすら寄り付かないというのに、モノ好きなやつもいたもんだと様子を見ていると、一振りの剣を目にした瞬間膝から崩れ落ち、おいおいと泣き出しました。

「可哀想に、可哀想に。王を守れず仕舞いだったのか」

その剣は少し長めの刀身で、柄頭には紋章が刻まれている、綺麗な物でした。戦闘用というよりは、象徴的な意味合いのある剣です。ニンゲンは涙を袖で拭うと、剣を引き抜こうとしました。
「お前だけは連れて帰りたい。愛するお前だけは」
しかし、剣は微塵も動かないのでした。

ニダンギルには、剣の声が聞こえていました。後悔と苦悩、使命を果たせなかった嘆きの声が。
ヒトツキとギルガルドに剣の意思を伝えると、ヒトツキはニンゲンの腕に巻きついて、待て待てと引き止めました。ニンゲンが手を離したので、ヒトツキが知っているよと剣を引き抜くと、頑なに拒否していた剣は、するりと抜けてヒトツキの布に包まれました。

ギルガルドはシールドフォルムからブレードフォルムにチェンジして、戦闘態勢に入っていました。ニダンギルはニンゲンが持っていた道具を示し、手入れをしろと促します。ニンゲンは刀匠でした。ヒトツキから剣を渡されて、ニダンギルのいう通り丁寧に心を込めて刀身を磨きいて装飾を施し、光を跳ね返すほど美しく仕上げました

しっかりと握りしめると、意思とは関係なくニンゲンの体が動き出して、ギルガルドに切りかかりました。ギルガルドは待ちわびていたかのように一刀の下に切り捨て、剣はガラスが割れてしまうように、粉々に砕け散りました。剣は、せめても戦って終わりたかったのです。

剣の心が伝わったかどうかはわかりませんが、ニンゲンは三匹に無言で頭を下げると、またふらふらと来た道を戻っていくのでした。

静まり返った剣の墓場は、乾いた風が撫でるように吹き抜けるだけでした。

きょうのおはなしは、これでおしまい

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