おやぶんの おやくにたつぞ!

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毎日ハロウィン企画:21日目のお話
 ジュナイパーには趣味があった。仕留めた獲物の影を、かげぬいで地面や木の幹に縫い付けて、ザックリ切り取ってしまう。それを本に閉じ込めて、コレクションするのが楽しみなのだ。図書室の一角は、もはやジュナイパーのコレクション本専用になっていた。たまに読み返して、この時こういうやつを取ったなと、しみじみ思いをはせることもあるようで、今日も一冊を手に取って不敵な笑みを浮かべていた。

ところが、本を戻そうとしたときうっかり落としてしまい、開いたページに閉じ込めておいた影が逃げ出してしまった。こんな初歩的な間違いなどするはずがないと高を括っていたジュナイパーは、慌てふためいた拍子に別の本も落としてしまった。たくさんの影が我先にと逃げ出して、ジュナイパーは急ぎ追いかけた。影の速さは元の持ち主に依存するので、重たいものや遅いものはすぐに捕まえて本に戻したが、すばしっこいものがなかなか捕まえられずにいた。

部屋に入られでもしたら、捕まえることが難しくなる。なんとか絵の飾られた廊下あたりまでには捕まえたいと飛んでいると、ジュナイパーを探しにきた子分のモクローたちがやってきた。

おやぶん おやぶん どうしたんですか なにか おもしろいことですか おれたちも あそべることですか
わらわら寄ってくるモクローたちの足元をすり抜けて、影はさらに遠くへと逃げていった。

モクローたちの相手をしていて、ふとジュナイパーは考えた。子分たちに影を捕まえる手伝いをさせたらいいのではないか。ここのところ比較的平和で、刺激が欲しいだろうと。ジュナイパーはモクローたちに、自分の失態だとは隠して、悪い影が逃げ出したことを伝え、捕まえる手伝いをするようにいった。モクローたちは、おやぶんからの期待に応えるぞと気合を入れて影を探すのだった。

とはいえモクローたちは、まだゴーストポケモンではないので、影を察知することが出来ない
ジュナイパーは、怪しいと思うところにこのはを当てさせて、影が出てきたところでかげぬいを放ち、捕まえるのだった。その射抜く瞬間がモクローたちには格好良く見えるのか、影が仕留められる度に歓声を上げていた。

順調に本に戻していたが、あと一体だけがどうにも見つからない。部屋も見て回ったが気配がしない。モクローたちも、最初はおやぶんの役に立ってると喜んでいたが、最後が見つけられず次第に落ち込んでくるのだった。このままではまずいと思ったのか、ジュナイパーはモクローたちに、きのみを与えて休憩を取ることにした。しゃくしゃく食べるモクローたちを眺めて、三匹しかいないはずなのに、四匹分の影があることに気がついた。

ジュナイパーはモクローたちに動くなと厳しめの声で命じると、モクローたちは皆カタカタと震えだした。もしかして、見つけられないことに怒ってお仕置きされてしまうのではないかと思ったらしい。ジュナイパーは矢を構えて、一瞬のうちに三匹の足の間を抜けて影だけを射抜いた。モクローたちは、あまりにも速すぎて何が起きたのかわからないでいた。顔を後ろに回して、影が床に縫い付けられていることを知るのだった。

やっぱりおやぶんはすごいんだと、モクローたちはジュナイパーを讃えるのだった。ジュナイパーは影を本に戻し、全てが揃ったことを確かめると、よくやった、お前たちのおかげだとモクローたちをふかふかと撫でて労った。モクローたちは、おやぶんのおやくにたてたんだ! と嬉しそうにパタパタと飛び回り、何をしに洋館に来たのかもすっかり忘れて、帰ってしまうのだった……。


きょうのおはなしは、これでおしまい

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