第2話 ポケモンのタマゴ

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 この話はフェルータよりも前作のサブキャラのその後がメインとなります。前作の主人公(現在行方不明)のパートナーのあのポケモンも登場します。
 フェルータとラティアスは元気いっぱい、遠足気分で1番道路に足を踏み入れる。
 菜の花咲き乱れるこの道路は、その菜の花が茂みとなりその中に野生ポケモンが住む。
 直線状の道路だが、その菜の花を避けることは出来ない仕組みになっている。ここを通る初々しさが抜けぬ新人トレーナーにポケモンバトル、というものを体験させるためだ。
 菜の花ゾーンは3ヶ所。

 フェルータが茂みに入るとすぐにコラッタが飛び出してきた。
「ラティアス、お願い!えーっと...サイコキネシス!」

 ラティアスはクスッと笑ってからコラッタ目掛けて念波を送る。まだバトルに不慣れなフェルータが可愛かったみたいだ。
 流石はジークと共にバトルフロンティアで腕を鳴らしただけあってラティアスのレベルは相当高い。野生のコラッタなど一撃で吹き飛ばした。
「凄い!流石ラティアスだね!」
 ラティアスに向かって嬉しそうに話すフェルータ。今のバトルは地味ではあるがフェルータの初ポケモンバトル、初勝利なのだ。

ーーそう?
 ラティアスはフェルータに微笑み返す。
 とても和やかな雰囲気だった。その平和さとは対称的に、茂みの中ではコラッタを始めとする野生ポケモンが慌てて逃げ出していた。こいつらただ者じゃねぇ!

 なーんて和やかな雰囲気は何時までも続かない。大抵邪魔が入るものだ。勿論フェルータとラティアスも例外ではない。
「そこの君たち」
 急に声がかかる。振り向くと、冒険者の装いをした人だった。
「このポケモンのタマゴを預かってくれないかね?私はエストのポケモンから君たちにこのタマゴを渡すよう言われたのでね。ーー礼?勿論要らない。これは私の罪滅ぼしだ。」
 謎の男はこう語りながら自身のリュックサックからポケモンのタマゴを取り出す。

「何故僕に...」

 フェルータは案の定驚いていた。
 なんであんな有名な人のポケモンさんが僕にタマゴを預けるんだろう...






ーーそれはね、貴方にエストと同じ雰囲気を感じたからよ。

 その声に導かれ左手にある池を見ると、そこにはかのエストのパートナーとして有名なポケモン、カプ・レヒレがいた。エストが行方不明となってからは世界各地を放浪し、どうにかエストを見つけようと必死に探していたーーそういう噂だ。

ーーだからこそ貴方がこのタマゴを受け取るに相応しいと思ったの。ポケモンのタマゴはそのタマゴの親か心優しいトレーナーが持っていないと孵らないから...この仔を宜しくね。

 カプ・レヒレはニコリと笑う。それは自身の役目を1つ果たすことができた満足からだろうか。それとも、やったと言いながら跳び跳ねるフェルータに行方知らずのパートナーの姿を重ねたのだろうか。それはカプ・レヒレ自身にしかわからない。

ーーそれじゃ。私はまだやるべきことが沢山あるから。

 カプ・レヒレはフェルータとラティアスに別れを告げ、ハジリの方へ向かう。フェルータの家の隣の川を下って海へでるのだろう。それと同時に謎の男もそれじゃとのみ告げハジリの方へ歩いて行った。フェルータがありがとうございました!とお辞儀して叫ぶが、謎の男は右手を挙げ、振るのみだった。


 残されたフェルータとラティアス。貰ったタマゴを見つめていた。そして大事そうに抱えるフェルータ。その時、タマゴがブルッと震えた。フェルータとラティアスは顔を見合わせ微笑み合った。













 それから暫くもしないうちに、ハジリにあるポケモン研究所では、ジークは庭にあるテーブル挟んでとある誰かとコーヒー片手に話していた。
「で?成功したのかい?」
 ジークは身を乗りだし訊ねる。
「ああ。カプ・レヒレが現れたおかげですぐに信じてくれたよ。」
 と前にいる誰かは返す。
「成程ねぇ...まだカプ・レヒレは君との交友関係は残ってるって思ってるのかな?ガンマくん。」
 そう。ジークの前にいるのは元?島キング、ガンマだった。かつてエストがポニ島を訪れた時、カプ・レヒレを虐めていた張本人だ。
「まさか。私は海神様を、守り神様を裏切ったんだぞ!いくらダークライに洗脳されていたとはいえど、それは私の心が弱かったからだ。もとより私は海神様と仲良くなる資格など無かったのだ!!」
 ガンマは力を込め語る。自らを戒めるように。ジークにこれ以上カプ・レヒレとの間について問わせぬさせぬように。
「勿論、君の心が弱かったせいもあるだろう。だけどね、君は手持ちポケモンの力を借りたとはいえ、ダークライの洗脳を自らの力で解くことができた唯一の人間だ。ましてや君はポケモンと話せる力を持っている。5年に一度の能力者だ。かのエスト君やさっき君が出会ったフェルータ君のように!そんな人間と孤独な守り神が出会って君に親近感を得られぬ訳はない!間違いなくカプ・レヒレはまだ君を友達だと思っている!その証拠に、君はZリングを返して貰っているじゃないか!」
 ジークは語気を強め、続ける。
「カプ・レヒレは恐らく君に島キングの務めを続けて欲しいと思っているはずだ。君はポケモンが沢山棲むポニ島の中で人間とポケモンの間を取り持つことのできる唯一の存在だ。守り神不在の中、あの島を治められるのは君しかいない、とカプ・レヒレはわかってる...と思うよ。」

 ガンマはかつて、人間たちから忘れられ孤独であったカプ・レヒレと出会い、仲良くなった。その後、ポニ島の自然保護員を経て数百年振りのポニの島キングとなったのであった。島キングの復活はカプの力の復活ももたらし、カプ・レヒレはすっかり孤独から解放された。
 が、とある人物が島を訪れることとなり、ガンマの運命はどん底に落ちる。
 エストがこの世界に来、ポニ島を経由しバトルフロンティアに向かう船に乗る、と決まった直後、世界征服を目論んでいたギラティナに従っていたダークライは、ガンマの(ポケモンの)強さに目をつけた。
 ガンマを洗脳し、カプ・レヒレを彼の手持ち、ドククラゲの力で叩きのめさせ、エストへの囮と使った。そうしてエストをガンマの下へ誘導させ、エストを打ち負かし、あわよくばエストの命をも狙う、という作戦だった。
 結局ガンマの手持ちポケモンであるジャローダがガンマをビンタしたことによりガンマが我に返ったため、この恐ろしき計画は失敗したのだが。


 そういうこともあり、ガンマはカプ・レヒレに合わせる顔が無く放浪の旅に出ていたところ、ジークに見つかり彼の研究の手伝いを時々していた。すると、ふっとカプ・レヒレが現れ、このポケモンのタマゴをあの子に預けて、とタマゴを置いていった次第だったのだ。







「わかった。また海神様と出会ったらしっかり話してみるよ、博士。ありがとさん。」

 ガンマはまた放浪の旅を始めるため、研究所の扉を開けるが、そこにはカプ・レヒレが待っていた。

ーー少し話がある...歩きながら話しましょ。

 カプ・レヒレとかつて共に遊んでいた子供時代の時のように話すガンマを窓越しに見て、満足気にニヤリとするジークだった。




 その後、ガンマはもう一度島キングになったらしい。カプ・レヒレがエストを捜索している間、という条件付きでガンマがカプ・レヒレの申し入れを呑んだのだ。
 カプ・レヒレはガンマを後ろを任せられる人間、とまで信頼していたのだろう。


 ガンマから送られてきた島キング就任の知らせのメールを見ながら、パソコンの前で無事二人の間を取り持つことができた、と優越感に浸っていたジークであった。
 次話もお楽しみに!

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