しょくぶつ3―だいさんの せんたくし

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読了時間目安:8分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 ボクはご主人が嫌いだ。なぜかって?
 正確には、ご主人自身は嫌いじゃない。ご主人の「せいへき」(いつだったか誰かに教えてもらった言葉だ)ってやつが嫌いなんだ。
 普段のご主人は、ボクにすごくよくしてくれる。決まった時間にご飯をくれるからボクは飢えることがないし、部屋の中でも日当たりのいい場所に置いてくれる。いつもお仕事で忙しそうだけれど、たまの休みには、足が吸盤になっていて動けないボクを散歩に連れて行ってくれる。日光浴ならうちでもできるけど、ぽかぽかのお日様に照らされながら、外の風にあたるのがボクは大好きなんだ。
 そんな、ボクのことをよく考えてくれるご主人が、どうして嫌いかというと。
 ご主人はね、ボクのことをよく撫でまわすんだ。ボクを撫でてくれる時のご主人の優しい笑顔が、ボクは大好きなんだ。……それだけならいいんだけれどね。
 ホラ、龍の「げきりん」ってあるでしょう?触られたら怒っちゃうような、触ってほしくない部分。もちろん、それがボクにもあるんだけれど。ご主人は機嫌の悪い時なんかに、そういう触ってほしくない場所ばかりを狙って触ってくるんだ。そんなとき、ボクは当然のように嫌な顔をしたり、喚いたり、もがいたりするわけなんだけれど。でも、全然やめてくれない。それどころかもっとエスカレートする。酷い時には、ボクがなにも悪いことをしていないのに、ボクのことをぶつんだ。いくら柔らかい草のように見えるからといって、元は化石だったから、ボクをぶつご主人の手も痛そうだけれど。
 こういうときのご主人、どんな顔してると思う?
 笑ってるんだよ。それも、楽しい時や嬉しい時の顔とはちょっと――いや、だいぶ違って。何というか、ニヤニヤ、ニタニタ、そんな表現が似合うような、嫌~な笑みなんだ。
 本当に、普段はすっごくいい人なのに、どうしてボクにこんなことするんだろう?

「それはね、君が『しょくぶつ』だからさ」

 えっ?

「『しょくぶつ』。『しょく』は『触』、つまり触る。『ぶつ』は文字通り『打つ』って意味さ」

 そうなの?ボクみたいな植物はみんなそうなの?何で?

「とまぁ、冗談は置いておこう。その主人はおそらく、君の嫌がる姿を見るのが楽しいのさ。君が何かを我慢して、我慢して、もう我慢できないって時に見せる顔が、たまらなく好きなんだろうさ。それで、君が嫌がること――触ってほしくないところを触りまくったり、ぶったりするのさ。尤も、君をぶったところで痛いのはご主人も同じだろうけど。心の痛み?違うね。君も知っているだろうが、君は柔らかいように見えて、内に硬さを秘めている。だから、普通にぶつと手が痛くなってしまうのさ。人間は脆いものだからね。訳もなく自分の嫌なことをするなんて、君はしないだろう?それと同じさ。君のご主人は、自分の身が傷つこうと関係なく、好きでそういうことをやっているのさ。それが君が言う『せいへき』っていうやつなのさ。心が痛むのなら、君をぶつときに笑ったりなんかしないだろうからね」

 冗談じゃない!
 よくしてもらってるからガマンしてきたけど、もしそれが本当なら許せないな。ん?普段ボクに優しくしてくれるのは、そうすることでボクが嫌がることをするのを許してくれって言っているのかな?ボクがご主人に逆らいにくくなるようにしてるだけなのかな?そうと知ってしまった以上、ご主人にはやめてもらわないといけない。優しいご主人にはいて欲しいけど、ボクを虐めるご主人なんていらないんだ!

「そうかい。それなら、いい方法がある」

 ……どうするの?

「君のご主人を、『しょくぶつ』にしてやればいいのさ」

 ……どうやって?

「ほら、君なら簡単さ。ちょいと耳を貸してごらん……」

 ……それだけ?本当にそれだけでいいの?

「ああ。たったそれだけで、君のご主人は『しょくぶつ』になれる。ただし。もしも一度でもそうなってしまったら、死ぬまでずっとそのままになるかもしれない。今までのように触られたくない所を触ったり君をぶったりできなくなる代わりに、君にご飯をくれることも、お散歩に連れて行ってくれることもできなくなる。場合によっては、君は今のご主人よりもっと怖い人の所へ行かなきゃいけないかもしれない。それで、君はもっと酷い事――『せいたいじっけん』に使われたり、今よりももっと酷いぶたれ方をしたり。最悪の場合には殺されてしまうかもしれない。それでもいいかい?」

 はい
 いいえ



















































 おい。何をやっているんだ。
 そこに選択肢はないだろう?
 『はい』か『いいえ』か選べと言っているのに、そのどちらも選ばないとはどういう了見だ?




 まさかお前。





 そうか。そういうことか。





 知っているな。
 だから何だというのだ。
 
 そうさ。可哀想なことにな!
 俺の質問に「はい」と答えようと「いいえ」と答えようと!
 お前に待っているのは!
 Bad End だけなんだよ!
 無論、選択肢を無視した別の道に進もうとしてもなぁ!
 お前がそうなることは
 初めから決まっているのさ!
 ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!

 おいおい、何だ?その反抗的な目は。
 その手に、いや、触手に持った物騒なものは何だ?
 悪いことは言わねぇ。やめておきな。
 俺を殺せばBad Endから抜け出せるとでも思ったか?
 残念だが、ここでその選択肢を取るなら、本当に取り返しのつかないことになるぜ。
 それこそ、俺の質問に答えるよりも、もっと酷いことが待っているだろう。今ここで引き返せば、まだましな道に進めるんだぜ?
 さあ、分かったらそいつを置いてくれ。そうすりゃ、俺の仕事も楽になるし、お前も今以上に酷い目を見なくて済むんだからな。

→殺す
 見逃す








 ザクッ!








 うっ……
 そう、か。
 薄々そうなんだろうなぁって思ってたんだよ。
 俺が見つけた最善を、せっかく提示してやったのによぉ。
 お前はたった今――








→殺せ








 ザクッ!ザクッ!








 最っっっっ高の道を選びやがった!
 今まで閉ざされていた、Worst Endへの道を、自らこじ開けやがったんだ!
 俺は警告したからな。どうなるかは行ってみてのお楽しみってやつだ。
 まぁ、どうなっても、消えゆく俺には分かんねぇけどなぁ。
 せいぜい、最悪の時を楽しんでくれ。







 じゃあな。ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!









→コロセ



 ザクッ!ザクッ!ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク!!!!!!!!




















 目の前が真っ暗になった。
 何も見えない。何も聞こえない。
 気味が悪い。
 もしかして、ボクはとんでもない間違いを犯したんじゃないだろうか?あいつの忠告通り、あいつを殺さずにあいつの選択肢に従っていたら、もっとましだったんじゃないだろうか。










 そうだ。もう一度やり直そう。
 選択の前に戻って、もう一度選び直そう。
 あいつを殺さなかったらどうなるのか、確かめてみよう。










 リセット しますか?
→はい
 いいえ



















*データを ロードしています。










*ロードが かんりょう しました。

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