11話 一件落着

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読了時間目安:13分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

2019年8月28日改稿
「こんな森の奥で、君は1匹で何をしているんだ?」
「みんなを傷つけたくないからひっそり暮らしているんだ。 ほっといてくれ」
「なぜ他者を傷つける?」
「俺だって傷つけたくないさ! だけど、すぐカッとなっちゃうんだ...だから、俺がみんなから離れれば傷つけることもない」
「なるほど。 種族的な特性、というものか。...これは興味深いな」
「わかったら、さっさと帰ってくれ」
「いや、俄然興味がわいたよ。 君のその価値観を変えたらどうなるのか..ということにね」
「どういう.....

――――――――――――――――――――
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「やったね! ハルキ!」
「....うん。 伝わったかな...僕の思い....」

ハルキは自分の拳を見つめながら、ヒカリに返事をした。

「うん。...ちゃんと伝わったと思うよ」
「....そっか」

ハルキは少し離れたところで地面に背を向けて、気を失っているアングの方を見る。
僕は自分の思いを込めた『きあいパンチ』をアングにぶつけた。
けど、気持ちがちゃんと相手に伝わったという確証はない。
届いてくれているといいけど。

「なるほど『きあいパンチ』か。 確かに俺が気を引いていればあの技の弱点を補える。 悪くない戦術だ。 だが、なんであの技なんだ?」
「それはね! 1番思いがこもる技だからだよ!」

少し離れた位置からこちらに向かって歩きながらザントが質問してきた。
どう答えようか迷っていると、代わりにヒカリが笑顔で答えてくれたので、それに便乗することにする。

「....らしいです。 正直、僕もヒカリの言葉を信じただけなので、詳しくはわかりませんが、あの技には僕の思いが込もっていたのは確かだと思います」
「よくわらねぇが、手ごたえみたいなものが合ったというわけか。 とにかくよくやった。 さて、こいつが目を覚ます前に拘束しておかないとな」

ザントはポーチから縄を取り出し、気絶しているアングの両手を強く縛り、もう1つの縄で体をぐるぐる巻きにした。
少し情けない姿だが、これなら気がついてもすぐには抵抗できないだろう。

「それじゃ、村に戻ろうぜ。 リルも心配してるだろうし、お前たちもエイパムが心配だろ? 話は歩きながらだ」
「そうだね」
「おっと、そうだ。 こいつを返しておかないとな」
「あっ、私の鞄! ありがとう!」

ヒカリが笑顔で鞄を受けとると、それを肩から下げた。
一方、ザントはぐるぐる巻きにしたアングを米俵のように肩に担いだ。

(同じ肩にかけているのに、この差はなんなのかな....)

ハルキはそんな光景に思わず苦笑いしながら、村に向かうべく歩きだした2匹の後ろをついていった。

――――――――――――――――――――

「なるほどな。 少し前にあったオレソの実騒動がヒントになったってわけか。 俺とリルじゃ気づかなかっただろうな。 なにせ、本家のオレンの実もそうだが、緑の草の中に濃い青色はあんまり目立たないからな。 最初からオレソの実が手がかりになると関連付けてないと見つけるのは困難だっただろう」
「ザントもハルキと話しながらでも、アングの攻撃をいなしてたのすごかったよ!」
「そうですよ。 なんか余裕がある感じでしたよね」
「まあ、接近戦が主体の俺はたまに団長に稽古をつけてもらう関係上、ああいう状況は慣れてるし、コイツは頭に血が上って攻撃が単調になっていたからな」

左肩にのせたアングを右手で軽く指差しながらそう話すザント。

「団長に稽古つけてもらうってことは、やっぱり団長も強いんですか?」
「ああ、めちゃくちゃ強いぞ。 たぶん..いや、俺が本気をだしても団長には全然敵わないだろうな」
「へえ~。 そんなに強いポケモンなんだ」
「そんなことより、ハルキ。 最後の『きあいパンチ』はわかるが、最初に煙玉使った時に使った技も同じ技だよな? あの技は動いていたら発動できないって聞いていたんだが、なんでお前は走りながらでもできたんだ? いや、それ以前に溜める時間もすげぇ短いのに十分な威力を発揮していたのも気になるな」

ザントの疑問は誰もが思うことだ。
しかし、ハルキ本人にもなぜそれが可能なのかはよくわかっていないので、答えようがない。
なんて答えようか悩んでいるとヒカリがニコニコしながら自慢げに語り始めた。

「それはね~、ハルキがある力を使うのが得意だからだよ!」
「なんだぁ? そのある力って?」
「う~ん。 今はまだないしょだよ~!!」
「なんだよ! 気になるじゃねぇか」
「あははははははははー」

ザントの追求を笑いながら受け流すヒカリを見ていたら、ハルキはあることをふと思い出した。

「そういえば、さっき戦闘の時にヒカリの口調がなんかいつもと違う感じだったよね。 戦闘中だったからかな?」
「えっ!? き、きっと...き、気のせいだよ! いや、そう! 戦闘に集中していていつもより真面目な口調になっちゃっただけ! うん!」

ハルキの発言にビクリとしたヒカリは汗をダラダラ流して、目線を上の方にさまよわせながら、明らかに動揺した素振りを見せながら答えた。

「なんか自分の事を僕と同じような呼び方をしていたような気も..」
「わああああああ! そ、そんなことよりハルキ! 最後に私の事、相棒って言ってくれたよね?」
「え? ん~....そんなこと言ってたかな? あのときは無我夢中で自分でもなんて言ったのかあんまり覚えてないや」
「ええ~! そ、そんなぁ~....もしかして、私の聞き間違いなのかな...。 また呼んでくれたと思ったのに...」

小声でボソボソと何かを言いながら、ヒカリのピンと伸びた細長い耳が力なく垂れ下がっていった。 明らかに落ち込んでいるのが目に見えてわかる。
なんだか少し申し訳ないな。

「いや、俺も聞いたぜ。 確かにハルキは相棒って言ってたぞ」
「ほ、本当!?」

あまりの落ち込みようにザントがフォローを入れると、その言葉を聞くやいなや、さっきまで力なく垂れ下がっていた耳をピンと立てながら、顔をバッと上げ、希望を見つけたようなキラキラした表情をし始めたヒカリ。

「え? 僕、そんな風に言ってましたか?」
「言ってたぞ。 なんだ? 無意識に言ってたのか?」

ザントの言葉にコクリと頷くハルキ。

「ハハハッ!!」
「な、なにが可笑しいんですか!?」
「そうだよ! なんで笑うのさー!? これは私とハルキにとって、すっっっごく重要なことなんだよ!!」
「えっ、だって僕が言ったか言わなかったってだけの話じゃ..」
「私達にとって大事なことなの!!」

そんな僕たちのやりとりを見て、ザントはますます笑った。
その態度に腕を組んで、頬をプクーっと膨らませて怒りをアピールするヒカリ。
うん。ヒカリには悪いが、相変わらずあまり怖くないなと少し思ってしまった。

「いや、わりぃ、わりぃ。 そんなこと気にしなくてもお前らは十分にいいコンビだよ。 だって、無意識に『相棒』なんて呼ぶってことは相当信頼している証拠だろ?」

確かにこの世界にきて、ヒカリと出会ってまだそんなに時間は経っていない。
けど、ヒカリといると不思議と安心できるし、とても楽しい。
こうしてヒカリのあんまり怖くない怒り顔もなんだか懐かしく感じてくる。
あの時もこんな風に頬を膨らませて怒っていたっけ...

(....ん? あの時? なんでそんな風に思ったんだろう?)

無意識に自分の思考の中で紡がれたその言葉。
しかし、それに紐づけられる記憶が今のハルキにはなかったので、今は考えても仕方ないと結論付けた。

「当然だよ! 私とハルキはベストパートナーってやつだからね!」
「ハハッ! ちがいねぇや!」

どや顔で「えっへん!」とでも言わんばかりに胸を張るヒカリに思わずザントも笑いながら答えた。
そんな会話をしながら森を歩いていると、だんだん出口に近づいていき、そよかぜ村が見え始めた。
村の入り口には、先ほどエイパムを運んでくれたマリルリのリルが不安げに待っているのが遠目でも見えた。
ザントが手をあげ、こちらの存在をアピールすると、それに気づいたリルは笑顔でこちらに手を振り返してくれた。

「みんな無事でよかった...みたところ大きな怪我もしてないみたいね。 安心したわ」
「ったく。 心配しすぎだぞ、リル。 俺が一緒だったんだから大丈夫に決まってるだろ?」
「それでも心配なのは心配なのよ! チームメイトを心配するのは当たり前でしょ! それに今回は子供達も一緒だから落ち着かなかったわよ!」
「すみません。 あの..エイパムは?」
「そうだよ!エイパムは? 無事なの?」

リルが僕たちの無事を確認し終えたタイミングでハルキが質問をし、ヒカリもその言葉につづいた。
リルにエイパムを託した後、ヒカリの無事がわかって、アングを捕まえることはできたがエイパムの容態次第ではまだこの事件が終わったとは言えない。
ハルキとヒカリが不安げな表情をリルに向けると、それに気づいたリルが優しく微笑みながら質問に答えてくれた。

「安心して。 あの子の治療はもう終わってるわ。 あとは目が覚めるのを待つだけだから大丈夫よ」
「「よかった~」」

ホッとした二人はそのまま地面にへなへなと座り込んでしまった。

「おいおい、こんなところで座ったら通行の邪魔だろ」
「す、すみません。 なんかホッとしたら力が抜けちゃって」
「ずっと心配で気を張った状態が続いていたんですもの。 ホッとしたら力が抜けちゃうのもわかるわ。 それに、この村なら通行量も大きな街と違って少ないし、ちょっとぐらいなら座り込んでても大丈夫よ」
「まあ、確かにそうだな。 リル、俺はコイル達に連絡をしてくるからこいつらの面倒は任せたぞ」
「わかったわ。 村の奥にある村長さんの家でエイパムの看病をしているからそこで合流しましょう」

リルの言葉にザントは振り向かず片手を上げて答えると、アングを担いだままどこかに行ってしまった。

「リルさん、ザントさんはどちらに? コイル達に連絡するとか言ってましたけど」
「ああ、コイル達は悪いことをしたポケモンを捕まえて反省させる施設を運営しているの。捕まえたおたずね者は私達が拘束したまま本部に連れ帰ってもいいのだけど、大体はコイル達に引き渡してそのまま施設に運んでもらってるわね」
「コイルが..ですか?」

こう言っては悪いが、正直コイルだけで暴れ者のポケモンを捕まえて、取り押さえている光景が浮かばなかった。

「フフッ、コイルだけで運営している組織じゃないのよ。 組織を取りしきっているのはジバコイルってポケモンで、その部下がレアコイルとコイルってポケモンなの。 それに彼らはこの道のスペシャリストだから下手に私達が施設まで連行するよりも安心なのよ」
「なるほど。 じゃあ、ザントさんはそのコイル達に連行してもらう手続きみたいなのに行ったってことですね」
「そういうこと」

つまり、この世界におけるコイル達は人間の世界でいうところの警察にあたるわけだ。
ちゃんと上司にあたるポジションということでジバコイルやレアコイルがいるみたいだし、組織としてしっかりしていると思う。
ただ、1つ気になるのはなぜコイルとその進化系で組織が設立されているのか?
後から聞いた話だが、何もコイルの進化系のみで作られている組織ってわけではなく他種族のポケモンもちゃんといるらしい。
ただ、圧倒的にコイル系列が多く、どうしてもそっちのイメージのが強いらしい。
なんでも昔、1匹のコイルが仲間達を率いて組織を設立した結果、自然とそういう流れになってしまったとか。

「さあ、そろそろエイパムのところに行きましょう。 この村の村長さんが治療と看病をしてくれてるのよ」
「アスタ村長だね!」
「アスタ村長?」
「そういえば、ハルキはまだ会ってなかったね。 とっても優しいんだよ! 私が家を建てるときも手伝ってくれたの! それに見た目の雰囲気と違って、とっても強いんだから!」

ヒカリが楽しそうに話すそのポケモンはどんなポケモンなんだろう。
家を建てるのを手伝って、強いポケモンか。
カイリキーとかドテッコツみたいに力自慢で手先が器用そうなポケモンかな?
ハルキは色々と村長と呼ばれるポケモンを想像しながら、ヒカリとリルと一緒に村長の家に向かった。

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