十八話 消滅

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あらすじ
ツタージャたちは、時空の裂け目の中でディアルガとパルキアと戦った。一時はツタージャとピカチュウ以外は倒されてしまうのだが、ルカリオがメガシンカすることによって再起し奮闘するのだが、再び倒されてしまう。その姿をみたツタージャとピカチュウはスカーフの力を使って遂に撃破したのだった…
 自分たちはシューキタウンに帰ってきた。 シューキタウンでは、数多くのポケモン達が自分たちの帰りを待ち構えていた。そのポケモンたちの中には、 ワルビアル親子といったような、仮死現象の患者として本部を訪れていた。ポケモンたちもたくさんいた。
「私たち、やり遂げたんやね。」
(うん。)
自分たち、調査班の一行は、そのポケモン達の 声援に対して丁寧に答えながら、自分たちの拠点へと戻っていった。

「ええ?!一回マシトイ村に帰れだって!?」
その夜、自分とピカチュウは、ルカリオに呼び出された。 何の用があるんだろうと思いながら ルカリオの部屋に行ってみたら、 このようなことを言われたのだった。
「だって、そりゃそうだろ!お前らはずっと頑張りすぎだ! 少しは休め! この機会だから、気晴らしにマシトイ村に帰ったらどうだ?」
「それはそうなんだけど…。まだ調査団に仕事があるでしょ?」
「大丈夫だ!今までを考えてみろよ。最近は仮死現象が始まったから忙しかったが、それまではそんなに無かったろ。何かあったら俺達で対処する。ここは任せろ。そして休め!」
ルカリオは全力でピカチュウを説得しようとしている。 ルカリオの言っていることは正論で、自分も久しぶりにマシトイ村に帰りたいと思っていたため、ここはルカリオの方に加勢することにした。
(ほら、イーブイやペロッパフたちがピカチュウに会いたいと思っているかもしれんよ。ここは一回、帰ってみたらどう?)
「…ツタージャがそこまで言うんだったら…。分かりました。しっかり休んできます。」
「よしそうか。じゃあ出発明日にするか? 今日の夜は、俺たちの帰りを祝って色々なお祭りが開かれているからな 。ゆっくりと見て回って、それから帰るといいよ。」
自分たちはルカリオにそう勧められたため、夜のシューキタウンに出掛けて行ってみた。 夜の街では、たくさんの出店が開かれていたり、コロトックたちの演奏会やルンパッパのダンスショーなどが行われていたりしていた。 その行く先々で たくさんのポケモンたちの笑顔が見られたことで、自分達はこの世界の平和を守ったということを実感した。

その次の日の朝、自分達はシューキタウンを出発し、懐かしのマシトイ村へと向かった。 その行く先々でも、多くのポケモン達から称賛の声を受けその一つ一つの声に応えながら、マシトイ村へ向かっていった。
途中、シューナン湖に立ち寄ろうと思ったのだが、自分達は一刻も早くマシトイ村に帰りたかったため、立ち寄るのは次の機会にと思い、立ち寄ることはなかった。
そして、懐かしのマシトイ村の建物が見えてきた。 村の入り口には、既に沢山のポケモンたちの姿があり、自分たちの到着を今か今かと待ち構えていた。
「みんな、ただいま!」
ピカチュウが大きな声でそう言うと、出迎えてくれたポケモンたちが、一斉に大歓声を返してくれた。
「ツタージャ、ピカチュウ、よく帰ってきてくれたね。」
懐かしいその声は、自分とピカチュウから向かって左側の集団の方から聞こえた。そちらの方を見ると、いつも自分のことを第一に考えてくれたあのハヤシガメが優しく微笑みながら語りかけてくる姿があった。
(ハヤシガメ!!!元気だった!?)
ハヤシガメは、その質問に対して優しく頷いて答えた。そして、その背後の集団からも聞き慣れた声が聞こえた。
「ツタージャ、ピカチュウ!ひさしぶりね!」
そちらを振り向くと、学校のクラスメイトのみんながいたのだが、そこにイーブイの姿はなく、代わりにたくさんのリボンのような毛が生えている、白とピンクが印象的なポケモンがいた。
「私よ!…っ言ってもわからないか。そう、私はイーブイよ。二匹がいないうちに、私はニンフィアというポケモンに進化したのよ。」
「ほんとに!イーブイ…じゃなかった。ニンフィア、おめでとう!」
そう言われてニンフィアとても嬉しそうだ。他にも周りには、ミネズミやフカマル、リーシャンやアマカジと言ったクラスメイトに加え、ガルーラ先生や、アシレーヌ先生までも出迎えに来ていた。
(みんなぁ…。)
自分は、嬉しさで涙が出そうになってしまった。 そうマシトイ村のポケモンたちは、みんな、自分たちの活躍を嬉しく思っているようだ。
「よっしゃー!!二匹が帰ってきたってなったら今日はお祝いだ!!さあ急げ、急げ!!」
「もう、あなたったら。」
サンダースが、お祝いの準備をしろとせかすのを隣にいるシャワーズが制した。 しかし、お祝いをしろという騒ぎは、出迎えに来ていたポケモン全員に伝播して、 最終的には村全体がお祭り騒ぎとなったのだ。
「でも、こうしてみんなの笑顔がまた見られるようになったのは、本当に嬉しいことだよね。」
(そうだね。みんな変わってないみたいだし、本当に帰ってきてよかったよね。)
自分たちの視線の先には、お祝いとして用意されていた料理を一心不乱に食べまくるペロッパフの姿があった。そして、そのペロッパフをニンフィアが制しようとするのだが、その勢いは全く収まらない。その様子を見て、回りにいたクラスメイトたちは大笑いしていた。
(…自分達も行こうか。)
「そうやね。」
そう言って、自分たちはクラスメイトの元に向かおうとした。

その時、天候が急変してあたりはすぐに暗くなってしまった。
(なんだなんだ?)
自分が空を見上げると、そこには暗転現象が発生したことを表す黒い雲が立ち込めていた。
「ツタージャ、これって…。」
(うん。なにかが来るぞ!)
そう思ったその時、黒い雲の中からある一匹のポケモンが現れた。そのポケモンは、赤と黒がとても印象的な鳥のようなポケモンで、一直線にこちらの方に飛んできていた。 このことで、周囲は瞬く間に大混乱に陥った。多くのポケモン達は建物の中に避難した中、 残っているポケモン達はそのポケモンを迎え撃つため、じっと空を睨んでいた。
「なんだ、アイツは?返り討ちにしてやる。」
「あなた、気を付けてね。」
サンダースは臨戦態勢であるが、どうやらシャワーズは建物の中に避難するようだ。
「お父さん、私も戦う!」
「おーそうか、お前も成長したな。」
どうやら、ニンフィアも共に戦うつもりのようだ。ニンフィアは、父親のサンダースの隣で同じように臨戦態勢を取った。
「フフ、僕もお相手しますよ。」
アシレーヌ先生は若干ワクワクしたような表情を浮かべながら言った。
「俺もやってやるよ!ツタージャたちだけにいい気はさせるか!」
そう言ってフカマルも、 戦闘態勢に入った。こうやってクラスメイトが一緒に戦ってくれることを考えると、自分はとても心強く感じた。
「私も戦うよ!ツタージャ頑張ろうね!」
(もちろん!)
ピカチュウと自分も勿論戦うつもりであり、共にじっとそのポケモンをにらんでいた。
そのポケモンは、空中から、いきなり悪の波動を放ってきた。その悪の波動は、フカマルに対して見え命中し、フカマルは大きく吹き飛ばされてしまった。
「うわーー!!」
「フカマル!」
ピカチュウは大きな声を上げてフカマルのことを心配したが、空からそのポケモンが無差別に悪の波動を撃ってくるため、 どうしても、近づくことができなかった。
(悪の波動、そしてあの姿、あのポケモン…もしかしてイベルタルか!?)
自分は調査団の機密古文室で読んだ文献に、イベルタルについての記述があったことを思い出した。 イベルタルは、生きているポケモンの生命を吸い取って長生きするポケモンであり、古代のポケモンからは破壊の化身として恐れられていた。 しかも、よく見てみたら黒いオーラを放って、暗転化しているではないか。
「そんなの知ったこっちゃねー!!くらえ!十万ボルト !!」
サンダースは十万ボルトを放ったが、イベルタルはその十万ボルトをあっさりとかわした。 それに対して、イベルタルはサンダースに向かって悪の波動を放って反撃した。
「ぐぁぁ!!…やるじゃねーか!!」
「お父さん!こうなったら、行くよ!ハイパーボイス!!」
ニンフィアのハイパーボイスは広範囲にわたって攻撃ができるため流石のイベルタルも回避することができず、ニンフィアのハイパーボイスはイベルタルに直撃した。 しかし、イベルタルは ハイパーボイスを受けても、それをもろともせずに平然と飛び続けた。
「次は僕の番ですね、行きますよ。うたかたのアリア!!」
その声に呼応したかのようにアシレーヌ先生の周りに無数の水泡が発生し始め、その水泡はやがて一つに合わさり、巨大な水の塊となってイベルタルに向かって襲いかかった。 しかし、イベルタルはそのアシレーヌ先生の攻撃を急激な旋回によってかわし、逆にこちらに向かって悪の波動を放ってきた。 アシレーヌ先生はその攻撃を回避することができずに、マトモに悪の波動の攻撃を受けてしまった。
「うっ…。フフ、やりますねぇ。」
自分は、他のポケモンたちがイベルタルに対して攻撃しているのをずっと見ていたが、自分もいてもたってもいられなくてイベルタルに攻撃を仕掛けた。
(リーフストーム!)
自分はイベルタルに向かってリーフストームを放とうとしたが、 リーフストームが放たれる直前に、イベルタルがいきなり影分身を繰り出して自分に標的が定まらないようにした。
(くそ!)
自分は闇雲にリーフストームを放ったが、それは虚しくもイベルタルの分身に命中してその分身はすぐさま消えてしまった。しかも、リーフストームを繰り出すためには相当な集中力が必要となるため、一度繰り出してしまうと精神的な疲労がその後の攻撃に影響して来てしまう。
イベルタルは分身をしたまま、悪の波動を放ってきた。その数は十本ほどになるため、一緒に戦っていたポケモンたちは次々と倒されていった。
「きゃぁぁ〜〜!!」
「うわぁぁーー!!!」
(ぐあぁーー!…うっ、力が…。)
自分も悪の波動をまともに受けてしまい、うまく力が入らなくなってしまった。
すると、分身していたイベルタルが一体になった。そのまま、イベルタルはある一点で滞空をし、 膨大な黒いオーラを溜め込み始めた。
(なんだ?何かをやってくるぞ!)
すると、自分のとなりのピカチュウのいるはずの方向から何やら光が発せられた。 そちらを見ると、ピカチュウの首に巻かれているスカーフが激しい光を放っていた。
(ピカチュウ、まさか…。)
「私がこのマシトイ村を守るんだ! もうニンフィアやペロッパフたちには、絶対に怖い目は見させない!!」
そう言うと、ピカチュウは身体全体に大量の電気エネルギーを溜め込み始めた。そして、そのエネルギーを全て放出して、自らが電気の球となって、イベルタルに向かって大きくジャンプして突っ込んでいった。
(ピカチュウ!!!)
自分はピカチュウに向かってそう叫んだが、ピカチュウには自分の声が聞こえていないようだ。 そして、イベルタルがピカチュウに対して その膨大な黒いオーラを一気に放出して、巨大な光線を発し攻撃を仕掛けた。
「いっけぇぇぇーーー!!!!」
そう叫び、ピカチュウの声がマシトイ村の上空に大きくこだました。イベルタルが放った光線は、ピカチュウの電気の球に直撃したのであるが、ピカチュウが発する膨大な電気エネルギーによって、その光線はかき消されてしまっているみたいだ。 そして、そのままピカチュウの電気の球はイベルタルに突っ込んで、激しい光とともに大爆発を起こした。
(ピカチュウ!!!)

しばらくして、大爆発によって発生した煙が晴れた。そこには、さっきまであったはずのイベルタルの姿もなかったが、それと同じように、ピカチュウの姿も確認することができなかった。
(ピカチュウ…ピカチュウ!!)
周りのポケモン達もその事態に気づいたようで 、次第にざわざわと騒ぎが大きくなって言った。
しばらくすると、自分の元にクラスメイトのみんなが駆け寄ってきた。
「ツタージャ…これ…。」
ニンフィアは気まずそうにそう言って、自分に ピカチュウが身に付けていたスカーフを差し出してきた。 しかし、自分はそのスカーフに対して大きな違和感を抱いた。
(…あれ?このスカーフ…。)
そのスカーフは、自分が知っているスカーフの色とは全く異なっていた。元々、自分たちが付けていたスカーフの色は青色であったのだが、ニンフィアが持ってきたそのスカーフの色はピカチュウの体の色と全く同じである黄色であったのだ。 しかし、自分以外のポケモン達にはやはり白色に見えるようで、全く違和感を持っていないようだ。
「…ピカチュウ。…死んじまったのかよ。」
「フカマルくん、そんなわけあるわけないじゃないですか。そ…それは、この私…ミネズミが保証…。」
「でも、本当にそうだとしたら。ピカチュウはどこに居るのよ!!」
「リーシャンさん!!うっ…それは…。」
「ピカチュウ…もう美味しいもの食べれないのかなー?」
他のクラスメイト達も意気消沈しているようで、前向きな言葉を発しているものは誰もいなかった。

(…そりゃそうだ。…だってここには、ここには…。
もう、ピカチュウの…姿は…ないんだぁぁぁーーー!!)

自分はそう叫んで、その場に倒れこんでしまった。目からは大量の涙が溢れ出てきて、まるで目から滝が流れ落ちてきているような程の量であった。
「ツタージャ…、大丈夫か?…君が泣いていたら、…ピカチュウも悲しむぞ。」
ハヤシガメがそう言って自分のことを慰めてくれるが、今はその言葉も自分の心の中には残らなかった。
(うう…、うう……。)
ハヤシガメの他にもガルーラ先生やアシレーヌ先生、サンダースやシャワーズと言ったポケモンたちが自分のもとにかけ寄ってきて自分のことを慰めようとするのだが、どの言葉も自分の心の中には全く残らなかった。
(うわぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!)
自分のその叫び声は、マシトイ村中、いや、もしかしたらポケモン世界全体にまで響き渡ったのかも知れない。


お祝いムードでマシトイ村に帰ってきたツタージャたちを待ち構えていたのは、ピカチュウの消滅という大事件であった。 ピカチュウがつけていたスカーフを手に握りしめ泣き叫んでいるツタージャは、この後一体どのような運命を辿るのであろうか。
皆様いつもありがとうございます!今回はこの作品の一番の山場となる回です。さて、この後どうなるでしょうか。みなさん気になると思いますので、今回は短めにします。では、みなさん次回もお楽しみにしてください!

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