5話 オレソの実

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読了時間目安:12分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

2019年7月9日改稿
2020年7月21日改稿
時は少し遡ってエイパムが捕まる少し前――――

ハルキは逃げたエイパムを捕まえるためにヒカリからこの森の道をざっくり聞くと、とにかく木が多くあり、エイパムが逃げやすい環境だということがわかった。
この情報と頻繁にこの森にそよかぜ村のポケモンたちが出入りしていた、という情報を合わせると、エイパムにとって、歩き慣れた、いや渡り慣れた木がたくさんあることになる。
普通に考えたら、この情報はハルキ達にとって不利な情報のように思えるが、ハルキはこの情報をチャンスであると考えた。
日常的に使う道を意識して、注意を払いながら毎日歩く人はそうそういない。
それは、きっとポケモンにも言えるはずだ。
ならばその道にこっそりと罠を仕掛けたら?
歩く側からしたら、いつも通りの道をいつものように歩くだけ。
そんな普段通りの道に罠が張っているなんて思うわけがないと思うだろう。
その隙を突く作戦だ。
そのため、ヒカリに罠として使える技、『エレキネット』が使えるかどうかを確認したのだ。
作戦内容としては、足の速いヒカリが先行して、この先にある木の上に足場となるような場所があればそこにエレキネットを仕掛ける。
ハルキはなるべくエイパムを見つけたら会話で罠をしかける時間を稼ぎつつ、エイパムが罠をしかけたポイントに行くよう、他の道に行きそうになったらすかさずそのルートに攻撃をすることでエイパムを牽制して、罠のあるポイントまでつれていく。 というものだった。

「わかったよ。 でもハルキは技使えるの?」
「これでも僕もポケモンだから使える……と思う。 まあ、いきなりそんな強力な技は使えないと思うけど、とりあえず牽制ができればいいから大丈夫なはず」

技が出るか試すため、ハルキは息を大きく吸い込み、吐き出す瞬間にあわのイメージを強くもちながら息を吐き出すと『あわ』がでた。

「うん! 問題なさそうだ! ヒカリの方は大丈夫? 木に何回も登ってもらうから結構きついと思うけど」
「私は大丈夫だよ! 木登りならよくやっていたからね!」
「それならよかった。 ヒカリ、この作戦に置いて重要な事は2つだ。 1つは木の上にできるだけ多くの罠をはること。 2つ目はエイパムに悟られないように上手く追い込むこと。この2つが満たせればきっと成功するよ。 僕を信じて!」
「ハルキのことはいつも信じているよ! つまり、私はたくさん罠を仕掛ければいいんだよね? 頑張るよ!」

ヒカリは両手でガッツポーズをしながら、笑いかけてくれた。
ヒカリの反応に、頼もしさを感じたハルキは、ふとヒカリの肩から下げている鞄に目がいった。

「あっ、鞄は僕が預かるよ。 たぶん動きの邪魔になるだろうし」
「そうだね! ハルキも頑張ってね!」

ヒカリは鞄をハルキに預けると罠を仕掛けに走っていった。

「さてと。 こっからは僕しだいかなー」

ハルキはエイパムに悟られないよう、道を塞ぎつつ、一定の方向にエイパムを誘導しなくてはならない。
いかにも闇雲に攻撃をしていると思わせるため、辛そうな表情をしながら、果たして上手く追いかけられるだろうか?
考えても仕方ないし、今はどんなに不格好でも自分の役目を果たすだけだ。
こうして、ハルキはエイパムを見つけ、作戦通りにヒカリが罠を仕掛けた地点にエイパムを
追い込むことが出来た。

――――――――――――――――――――

そして今に至る。
『エレキネット』で両手を縛られたエイパムだが、その手にはしっかりと盗んだと思われる木の実を持っていた。

「そろそろなんでこんなことをしたのか、言ってもらうよ!」

ヒカリが腰に片手を当てながら問いつめる。

「ふん! 単純に木の実が美味しそうだから盗んだだけだよ!」

―――ドックン

「!?」

エイパムが話し終えた瞬間、ハルキの動悸が一瞬高鳴り、何か強烈な違和感を覚えた。

「どうしたのハルキ?」
「いや、なんかこう言葉にしにくいような違和感がしたんだ」
「……やっぱり、ハルキはその能力を持っているんだね」
「能力?」
「そう。 心がある生き物って、嘘をつくときに大体、無意識に緊張が体に現れるものなの。 ハルキのその能力は相手が嘘をついた際に表れる、無意識の緊張を違和感として感じとっているんだよ」

確かに人間でも嘘をつく際に目線をそらしたり、手を隠したりする心理的動作をするのでヒカリが言いたいことはよくわかる。
でも、人間時代のハルキにはそんな能力はなかった。
これもポケモンになった影響なのだろうか?

「なんにせよ、このタイミングで感じたってことは、エイパムが嘘をついているってことでいいのかな?」
「そういうことになるね」
「オ、オレは、う、嘘なんか……つ、つ、ついてないゾ! ほ、ホントだゾ!」

明らかに動揺した口ぶりのエイパムに少し苦笑いを浮かべながらも、ハルキは自分でも今始めて知ったこの能力をなぜヒカリが知っているのかという疑問が少しわいた。
だが、今はエイパムの事情を聞くことが優先だと思い、とりあえずは保留にしておく。

「エイパム~? 正直に本当のことを言わないと、もっとビリビリするよ~?」

ヒカリはニコニコしながら、手に持った『エレキネット』に電流を少し流した。

「イタタタッ! 話す! 話すから! ヒカリ姉ちゃん勘弁してくれぇ~」
「それでよし!」

よほど電撃にこりたのかそこからエイパムは素直に話始めた。

「オレが盗んだ木の実は見た目からじゃ分かりにくいけど、とても食べられたものじゃないんだ。 それに気づかないで普通にカモネギさん売っていたから、誰かが食べたら危ないと思って」

事情を話すエイパムの言葉に今度は違和感を覚えることはなかった。
こちらに目線を向けているヒカリに無言で首をふり、嘘をついていないことを伝えて、問題の木の実を見てみる。

「ちょっとその木の実、見せて」
「ん? まあいいけどよー……よそ者のお前にわかるとは思えないなー」

エイパムから受け取った木の実は、見たところ何の変哲もない普通のオレンの実だ。

「あれ? このオレンの実、なんか色が少し濃いね?」
「色が濃い?」

ヒカリは僕が肩からかけている鞄をあけると、中からオレンの実を1つ取り出し、右手に取り出したオレンの実、左手に盗まれたオレンの実を持って見せてくれた。
確かにこうして見比べてみると色が1段階ほど濃い。

「さすがヒカリ姉ちゃん! そうなんだよ。 それはオレンの実じゃなくてオレソの実っていう木の実なんだ」
「あっ、ほんとだ! これオレソの実だ」
「オレソの実?」
「オレンの実とよく似ているんだけど、オレンの実が体力回復効果があるのに対して、オレソの実は逆に食べるとお腹を壊す効果があるんだよ。 私も昔、間違えて食べて苦しんだっけ~」

目を閉じて昔のことを思い出すようにしみじみと話すヒカリ。
なるほど。 確かにこれは見分けがつきにくい。
もし、食べたらお腹を壊す木の実なんて売っていたら大変なことになっていたも知れない。

「でも、なんで事情を話してカモネギさんに伝えなかったのー?」
「わかってないな~ヒカリ姉ちゃんは。 ポケモンが知らない所で、平和を守った方がカッコいいだろ!」
「あー、なるほどね。 なんとなくわかるよその気持ち」
「え? ハルキは今のでわかったの?」

エイパムの理由を聞いてもいまいちピンとこないヒカリ。

「つまり、ちょっとしたヒーローみたいな存在に憧れているんだよ。 僕も子供の頃、絵本とか小説を読んで憧れた記憶あるからね」
「そういうものなのかな~?」
「まあ、これは個人の好みにもよるかな。 たぶんエイパムは物語で言うと、悪事を働く悪い貴族のお宝を盗んで、貧しいポケモンを救うような正義の怪盗とかに憧れているんじゃないのかな?」
「おお! そこのポッチャマ! 話がわかるじゃん!」
「僕の名前はハルキ。 一応君よりも年上だよ」
「じゃあ、ハルキ兄ちゃんだな! ところでさっきの作戦ってハルキ兄ちゃんが考えたのか?」
「まあね。 あの時は作戦とはいえ、いきなり攻撃して悪かったね」
「いやいや気にしないでくれよ! オレも見事に作戦に引っ掛かって逃げていたつもりが誘導されているとは思わなかったからな! 今度、作戦とか考えるコツとか教えてくれよ!」

『エレキネット』に縛られながらもキラキラした目でこちらを見てくるエイパム。
まだ幼いこともあって、自分を負かしたうえに、自分の趣味に理解を示してくれるハルキにすぐ懐いたようだ。

「とりあえず、まずはカモネギさんに謝ろうか」

ハルキは笑顔でエイパムの頭をポンとかるくたたき、そんなハルキの姿をヒカリは嬉しそうに見ていた。

「よくわからないけど、2匹ふたりが仲よくなってよかったよ! さあ、そよかぜ村に戻ろうか」
「で、でも……」
「大丈夫。 僕とヒカリでちゃんと事情を説明するから。 だから、君はちゃんと謝るんだよ?」
「ハルキの言うとおりだよ! 悪いことしたんだから謝らないとね」
「……うん。 わかったよ」

エイパムの返事を聞いたヒカリは『エレキネット』を解除して、ハルキ達はそよかぜ村に戻った。

――――――――――――――――――――

「ごめんなさい!」
「そういうことだったら別に構わねぇよ。 だけど今度からはちゃんと教えてくれよ。 混ざっていた事にすら気づけなかったら今後、気を付けようがないからな。 さあ、もう暗くなってきたし、さっさと帰りな」
「うん。 ありがとうな! ヒカリ姉ちゃん! ハルキ兄ちゃん!」

笑って許してくれたカモネギに帰るよう促されたエイパムは、ハルキとヒカリにお礼を言うと、走って家に帰っていった。

「今回はありがとうな。 助かったぜ。ヒカリとあとー」
「あっ、ハルキっていいます」
「ハルキ。 2匹ともありがとうな! お礼にこれやるよ」

そういって、カモネギはオレンの実を2つくれた。
ハルキは受け取ったオレンの実がオレソの実ではないかまじまじと観察した結果、オレンの実だとわかって一安心したが、ここで1つイタズラをしてみようと思った。

「カモネギさん、これオレソの実じゃないですか?」
「なに!? 俺としたことが早速間違えちまったか……ってちゃんとオレンの実じゃねぇか! さっそく試すような真似しやがって、こいつ!」
「いや~、アハハー」
「あっ、カモネギさん! これオレソの実だよ!」
「ヒカリもか! もうその手には乗らねえぞ……ってこっちは本当にオレソの実かよ。 紛らわしいな!」
「エヘヘ~」

そんな茶番じみたやり取りをしながら、ハルキとヒカリは楽しげに笑っていたが、当のカモネギは「こりゃあ1度全部見直さないとな」とこれからの苦労を考えて少し落ち込んでいた。

「じゃあ、私達そろそろ帰るね~」
「仕分け作業、頑張ってください」
「お前ら他ポケモン事だからって……ああもう! じゃあな!」

若干、やけくそぎみに挨拶をしたカモネギと別れた後、2匹ふたりはヒカリの家に戻ることにした。
気づけば太陽が半分ほど沈んだ夕暮れ時で、あたりは少しずつ夜の景色に溶け込み始めていた。

「なんか長いようで短く感じた1日だったなー」
「ハルキにとってポケモン生活初日なのに色々あったからね~。 あっ、今夜は私が美味しいアップルパイ作るから期待しててね!」
「それは楽しみだ!」

ハルキが今日の出来事を振り返りながらボソッと呟くとそれにヒカリが嬉しそうに相槌をいれる。 時折、笑い声も聞こえる楽しそうな会話をしながら、2匹は帰路を辿っていった。
オレンの実とオレソの実はゲームでも紛らわしかったですね(-ω-;)

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