第十八話 パルキア襲来!

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

お待たせしました。第十八話です。
[第十八話 パルキア襲来!]

地響きと轟音を起こし、突如として現れたポケモン。それはその場にいる全員を威圧し、黙らせるのには十分な迫力だった。

「ハ、ハヤテ……このポケモンは…?」

デンリュウの動揺で掠れた声での質問に、ハヤテも呼吸を荒げて答えた。

「パルキア。空間の支配者とも呼ばれる伝説ポケモンだ。」

その名前は、どんな田舎から出てきたポケモンでも、聞いたことがあると言われる程に、世界に知れ渡っている。無論、調査団員たちも例外ではなかった。

「パ、パルキアだって!?」

「そんな…嘘だろ!」

「あんなのと……どう戦うんだよ!?」

当然の反応である。かつてパルキアと戦ったことのあるハヤテやツバサはともかく、会ったことすらないデンリュウたちが、このような反応を見せるのは必然的だった。更に……

「ハヤテ、あれを…!」

ツバサが指差したのは、パルキアの顔だった。

「あの目を見ろ…!」

パルキアの目は常時、赤色である。今も、その色は変わっていない。だが、

「あの目…!まさかパルキアまで!?」

普段よりも目が赤く、強く光っている。闇に支配されている証拠だった。

「パ、パルキア様!助けてください!俺たちはここです!」

ハヤテとツバサがパルキアと睨み合う中、縄で縛られたバシャーモが大声で叫んだ。それを聞いたパルキアが、ゆっくりと声のした方向を向く。

「ここです!俺たち3匹います!」

バシャーモが必死に叫ぶ。

「そこか……じっとしていろ…!」

パルキアが右腕を横に伸ばす。するとその腕の周囲に紫色の小さな光の粒が無数に現れ、パルキアの腕に吸い込まれていく。

「あれは…!」

ハヤテはそれが何なのか、気づいたようである。

「パルキア様…?」

一方、その様子を見たバシャーモはパルキアに対し、やや怯えるような素振りを見せながら、後ずさりした。

「役立たずが……消え失せろ…!」

パルキアの腕が紫色に強く光る。そのまま腕を後ろへ大きく振りかぶった。

「まずい!全員離れろ!奴の直線上には入るな!」

ツバサの叫びに応じ、皆が退避した次の瞬間、パルキアが腕を前に、大きく振り抜いた。

「亜空切断!!」

その途端、腕の光が纏まり一つの斬撃となった。斬撃は、垂直に地面に突き刺さり、地面を切り裂きながら真っ直ぐにバシャーモたちに向かっていく。

「逃げろ!バシャーモ!」

ハヤテが叫ぶが時遅し。避ける暇もなく……

「う…ああっ……!」

斬撃は威力変わらず、バシャーモたちを巻き込みながらその先にある建物を二、三軒破壊して消えた。

「あいつら……」

パラ…パラ…と崩れる瓦礫の下で横たわる3匹。最早動く気配はない。

「さて、こいつらが失敗したお前らの抹殺……俺が成し遂げよう。」

薄気味悪い笑顔を浮かべたパルキアは、再び紫色に光る腕を構えた。

「ハヤテ…気をつけろ……次が来るぞ…!」

じっとパルキアの動きを見つめる2匹。腕を振り上げた状態から、パルキアが技を放とうとした、その時、

「…待ちなさい。」

突然、どこからか声が聞こえ、同時にパルキアの動きも止まった。

「ここでハヤテとツバサを仕留めることがあなたの使命ではないでしょう?」

その声はパルキアの後ろから聞こえてくる。

「だが、殺すなら早いうちにやったほうが…!」

「言ったでしょう?彼らにとどめを刺すのはあなたではなく、闇王様だと。黙って指示に従いなさい。」

次第に声は大きくなり、やがて声の主がパルキアの後ろから姿を現した。

「お前は…?」

警戒しながらハヤテが低い声で聞く。

「おっと、これは失礼。」

そのポケモンは、パルキアの前まで来ると、真っ直ぐに立って一礼した。

「初めてお目にかかります。私は闇王の側近、ムウマージという者です。以後、お見知りおきを。」

丁寧口調のそのポケモン、ムウマージは怪しげな笑みを浮かべた。

◆◆◆

「側近か……遂に幹部クラスのポケモンが出てきたな……。奴なら闇王について何か知っているだろうな。」

「だが気をつけろ…!これだけの力を持つ闇王の側近だ。高い実力を持っているに違いない。」

ハヤテは棍棒を持ち、ツバサは手のひらに火球を作り、ムウマージを睨みつけた。

「おやおや、御二方ともそこまで本気にならなくてもよろしいのですよ。私は戦う為に此処に来た訳ではない。」

フフフフ……と相変わらずムウマージは、怪しげな笑みを浮かべている。

「ならば、何が望みだ。」

「報告事項が一つ。間もなく我らの主、闇王がこちらへ参ります。」

ムウマージはあっさりとそう述べたが、ハヤテたちにとっては重大な事柄であった。

「へっ、幹部に次いでボスまでがお出ましか。」

「だがツバサ、闇王が自ら出てくるということは、奴は多くの部下を率いてくるかもしれないぞ。そうなれば圧倒的にこちらが不利になる。」

「ああ、だから早いうちにこいつらを倒す必要がある。」

ハヤテは棍棒を真っ直ぐにムウマージに向ける。だがムウマージは全く動じていない。

「さて、私から一つ、拝見したいことが。ハヤテ、ツバサ、貴方方の実力は把握しています。しかし、貴方方の戦う様子を私は実際に見たことはありません。」

ムウマージは首を横に振った。

「そこで、この機会に是非、私に貴方方の真なる力を見せて頂きたい。この、パルキアでね!」

そう叫ぶとムウマージは、小声でパルキアに「殺さない程度に暴れなさい。」と指示した。

「そうでなくてはな!」

それを聞いたパルキアのテンションは一気に最高潮にまで達した。パルキアは紫色に光る腕を横に広げると、真っ直ぐハヤテたちに突っ込んできた。

「来たぞ!気をつけろ!」

ハヤテが棍棒を振りかざし、皆に注意を呼びかける。

「俺たちがやる!お前らは逃げろ!」

先頭に立ったツバサが、調査団のポケモンたちに対し、撤退するよう指示した。

◆◆◆

パルキアが光る両腕を振り回す。すると、辺り一帯に紫色に光る斬撃が現れた。

「亜空切断!!」

それら全ての斬撃が、ハヤテとツバサ目掛け一気に飛んだ。

「ツバサ!」

「分かっている!」

ツバサはハヤテを抱え、空に飛び上がった。ハヤテの驚異的な跳躍力でも、避けきることは恐らく出来なかっただろう。それだけ技の効果範囲が広いのだ。

ズシャアァァァン……

ハヤテとツバサという標的を失った大量の斬撃は、地面を抉り、辺りの建物を砕いて消えた。

「まだまだぁ!」

パルキアは空中にいるハヤテとツバサに《亜空切断》を放った。

「空中では避けられない。さあどうしますか?」

ムウマージはパルキアの後ろでニヤニヤと笑っている。

「ツバサ!」

「おう!」

ハヤテとツバサは目を合わせると、空中で体を向かい合わせ、両手を前に突き出すと、お互いにその手で相手の手を押しあった。

「成る程、そうきましたか。」

ハヤテとツバサは空中でお互いに作用・反作用の力を掛け合ったのだ。

「行くぞツバサ!」

着地したハヤテが低い体勢で高速で走り、パルキアに急接近する。反対側からはツバサが来た。

「おのれ…!ちょこまかと…!」

パルキアはハヤテとツバサに連続で斬撃を投げるも、2匹はそれを走りながら、体を反らして避けた。そのままパルキアの目の前で2匹は同時に跳び上がる。

「行くぞ!瓦割り!」

「鋼の翼ぁ!」

ハヤテが力を込めた強烈な手刀打ちを、ツバサは右の翼を銀色に硬化させ、パルキアに叩きつけた。

「ぐぐっ…!」

パルキアは腕で防御するも、勢いまでは抑えきれず、後ろに下がりながらよろけて尻餅をついた。

「くそ……やりやがったな…!」

立ち上がったパルキアが再び、ハヤテたちを襲おうとするが、

「ぐっ…!?…何故止める!」

ムウマージがパルキアへ向けて伸ばした手を握りしめる。その途端、パルキアの動きが止まった。

「もう良いのです。彼らの力は十分わかりました。」

ムウマージは冷たい目でパルキアを見た。

(あのムウマージ、闇を操れるのか……)

ハヤテの思う通り、ムウマージはどうやら闇の操作が出来るようである。今、パルキアの中にある闇を操り、実際にパルキアを止め、動かして見せたからだ。

ムウマージは握りしめた手をそのまま自分の元へ引き寄せた。操られたパルキアは不本意な表情で大きな足音を立てながら後退した。

「さて、貴方方の実力は十分把握できました。やはり伝説のポケモンに匹敵する強さを持つという噂は本当のようですね。」

「ふん、あれだけでよくわかるもんだな。」

「私は観察力は優れていましてね。あとは闇王様に任せようとおもいまして。」

そう言うとムウマージは背を向けたが、何かに気づいて向き直った。

「そうそう、貴方方は闇王が多くの部下を率いて現れるとお思いのようですが、実は闇王様の部下は私1匹だけなのですよ。」

「なんだと?いきなり何を……」

「嘘ではありませんよ。闇王様は基本、周りのポケモンを信用していません。つまり仲間を作っていないのですよ。私は唯一、闇王様の信頼を得てその側近として尽力しています。」

「その通りだ。ムウマージは本当によくやってくれている。」

突然、その場に別の声が大きく響き渡った。ハヤテたちは辺りを見回し警戒する。

「ここまで私の為に働いてくれるポケモンなど、他にはいないからな。」

ハヤテたちは声の聞こえる方向、町の西側を向いた。

「随分と時間がかかったが、ようやくここまでこれた。」

そこには黒い何か……闇を纏った1匹のポケモンがいた。後ろ姿でわからないが、ハヤテとツバサはそのポケモンに見覚えがあった。

「ハヤテ!あいつは……」

「ああ、間違いない…!」

ハヤテは一歩踏み出すと、大声で叫んだ。

「お前はかつて我々が倒し、記憶を失ったはず……何故お前がここにいる……





……ダークライ!」

ダークライ……そう呼ばれたポケモンは、ゆっくりとこちらを振り向いた。その目は空色に、恐ろしくなるほどに光っていた。
いかがでしたでしょうか。割と早い段階でボスを登場させてしまいました。そしてここからが長いのです。

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