第十五話 ワイワイタウン

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

お待たせしました。第十五話です。
[第十五話 ワイワイタウン]

「ツバサ、足の調子はどうですか?」

「ああ、大丈夫だ。もう痛みはない。普通に歩けるぜ。」

「そうですか、それはよかったです。」

デンリュウがにこやかに笑う。ツバサも軽く笑い返すと、隣で寝ているハヤテを見た。

「それにしてもハヤテはいつまで寝てるんだ。もう半日は寝てるぞ。」

「仕方ないですよ。昨日あれだけ動いたのですから。相当疲れているのでしょう。」

「それにしても寝すぎだと思うが……いくら倒れたとはいえ……」

そう、ツバサを背負ってずっと歩いてきたハヤテは、この町、ワイワイタウンに入ってすぐに倒れてしまったのだ。ワイワイタウンは調査団の町として有名で、ハヤテやツバサも幾度となく足を運んだ。その為、調査団のメンバーたちとも面識がある。

「ったく、ハヤテは俺たちの為に自分の身体を犠牲にするから……。もっと自分の身体を大切にしてもらいたいもんだぜ。」

「ふふっ、ハヤテから大切に思われているということですよ。」

そう言うと、デンリュウは急に真剣な顔になり、視線をツバサに戻す。

「それより今回はまた、どのような経緯でこのようなことに?」

「ああ、実はな……」

ツバサはトレジャータウンから始まる自分たちの旅路をデンリュウに話した。

「成る程、つまりあれはそういうことだったのですか。」

話を聞いたデンリュウは、妙に納得したような顔をして頷いた。

「あれ?」

デンリュウのその言葉にツバサは反応した。

「昨日、これが全世界へ向けて配布されたのです。」

デンリュウは後ろの棚から何かを取り出す。

「2匹の…手配書です。」

パラッ…とデンリュウが見せた紙にはハヤテ、ツバサの顔と名前がはっきりと記されていた。

「うげ……俺たちの手配書…!もうここまで…!」

手配書の端には「探検隊連盟」と書かれている。「闇王」の力がそこまで及んでいる証拠だった。

「貴方たちは現在、Sランク越えのお尋ね者として、何よりも最優先で捜索されています。匿った者は仲間と見なされ、最悪の場合は始末されるでしょう。」

デンリュウはツバサから目を逸らし、難しい顔でそう言った。ツバサはそれを聞いて、焦りを隠せない様子である。その顔には、若干汗が滲んでいる。

しかしデンリュウは、すぐに視線をツバサに戻した。

「しかしツバサ、我々調査団は貴方たちを信じます!共に悪と戦いましょう!」

デンリュウが胸に手を当て、力強く叫んだ。ツバサはそれを聞いて笑顔になり、礼を言おうと口を開いたが、

「ありがとう!デンリュウ、感謝するよ!」

いつから起きていたのか、先にハヤテがデンリュウの手を握りしめた。

◆◆◆

「…という訳で、我々調査団はレスキュー探検隊と共に謎の敵との戦いに挑むことになりました。」

調査団本部のエントランスにて、デンリュウが今回の事件について、調査団員たちに説明している。

「…異論はありますか?」

誰も首を振らない。皆が事件のことをよく理解したからだ。

「では、我々ポケモン調査団は、ハヤテ、ツバサと共に事件の調査を行います。しかし彼らは今、お尋ね者として追われている身です。彼らを匿っていることが知られると、我々まで追われることになります。」

デンリュウの説明を皆が真剣に聞いている。

「ワイワイタウンのポケモンたちはハヤテとツバサを信じていますが、彼らがいるという情報はすぐに広がります。情報収集の際には、他所のポケモンにそのことをくれぐれも悟られないように。では、解散!」

デンリュウの掛け声と共に、建物の奥へ向かう者、出口へ向かう者と、各自がそれぞれの行動に移った。

「では、ハヤテとツバサはこちらへ。」

クチートが奥へ向かう。2匹は黙ってその後をついていった。

しばらく歩くと、クチートは扉を開け、ある部屋に入った。

「こちらへどうぞ。」

クチートは2匹を部屋に入れると、扉に鍵をかけた。

「さて、まずはこれを見てもらいたいのだが……」

クチート机の引き出しからある紙の束を取り出した。

「それは?」

「ここ最近の調査の依頼書だ。これらは大量にある調査依頼のうちの一部だが、ある事が共通しているのだ。」

クチートは机の上にその依頼書と世界地図を広げた。

「まず、調査の内容。どの依頼書も『自分を襲った謎の敵を特定し、倒して欲しい』といったものだ。そして、」

クチートはそれらの依頼の場所を地図の中に丸で書き入れていった。

「場所はバラバラだが、依頼順にこれらの場所を線で結んでいくと、」

クチートは丸で囲んだ場所を一本一本線で結んでいった。すると、

「円になった……。」

「うん、そしてその円の中心に有るのがトレジャータウンだ。」

クチートが結んだ線は、トレジャータウンの周りを囲んでいる。

「この事件の被害者たちの話では、黒いもやもやしたものが見えたらしい。それで我々は犯人がゴーストタイプのポケモンだと予測したのだが……」

「………………」

この時、ハヤテは不安だった。もしもその犯人がレスキュー探検隊の仲間だったら…その心配が頭を(よぎ)って離れないのだ。

その時、ポン…とハヤテの肩に手が置かれた。振り返ると、

「…ツバサ……」

「ハヤテ、お前の気持ちはよく分かる。俺も同じ心配をしていたところだ。だが、そんな不安げな顔するな。お前らしくないぞ。」

ツバサの言葉にハヤテも少し緊張が解れた様子である。

「犯人が俺たちの仲間かどうかは分からない。だが、必ず犯人は俺たちの手で止めなければいけないんだ。」

「ああ…ありがとな、ツバサ。」

ハヤテの顔から焦りが消えた。クチートはその様子を見て、小さく笑うと立ち上がった。

「それより、2匹とも少し町を散策してみてはどうかな?疲れの溜まった身体をリラックスさせることも大切だよ。」

それを聞いてハヤテとツバサもハッとした。確かにここ最近は戦い続きで、まともに体を休める暇もなかった。

「そうですね……。確かに少し身体に脱力感がある。ではツバサと町へ行ってきます。無論、格好を変えてね。」

「くれぐれも正体を見破られないように。」

「勿論。」


暫くして服装を変えた2匹は、周りに注意しながら町へ出た。辺りを見渡すが、幸い他所から来たポケモンはいないみたいだった。ワイワイタウンのポケモンたちは、彼らを見てすぐにその正体に気づいたようだが、彼らの服装から少なからず事態に気づいたようで、彼らに対し、同情的な視線を向け、あえて誰も声を掛けなかった。

「あっ!おーい!」

そこに、聞き込みをしていたブイゼルがやって来た。ブイゼルは彼らの元へ走ってくると、嬉しげに笑みを浮かべながら口を開いた。

「ちょうど良かった。今のトレジャータウンの状況が分かったんでな。2匹には早い内に伝えておいた方が良いと思って。」

「本当か!それは!」

ツバサが興奮した様子でブイゼルの手を掴む。ハヤテはツバサを落ち着かせると、ブイゼルに聞いた。

「それで、どんな状況なんだ?」

「ああ、実はな……」

ブイゼルが説明しようと口を開いたその時、

バタッ…

何か、倒れる音がした。ハヤテたちがその方向を向くと、

「おい、誰か倒れてるぞ……。」

「だ、大丈夫か!」

ハヤテたちが、そのポケモンの元へ駆け寄る。旅の途中らしいそのポケモンは、体中に傷を受けており、弱々しい呼吸を繰り返している。

「何があった!」

ブイゼルが必死に呼びかける。周りのポケモンたちも集まってきた。

「…うっ…お、襲われた……紅い…目をした……」

紅い目…その言葉を聞いて、ハヤテとツバサは固まった。

「それで…そいつらは何処に!」

「む…向こうの森……」

そこまで言うと、そのポケモンはガクッ…と力尽きた。

「ハヤテ…まさか…!」

「ああ……間違いなく闇の敵だろう。行くぞ!ツバサ!」

彼らは門を抜け、その森の方へ走り出した。その様子を見ていたブイゼルは、ハヤテたちの強さを知っていながらも、やはり心配だった。

何故なら、地図上でトレジャータウンとワイワイタウンを直線で結んだ時、ハヤテたちが向かった森はその直線がその森の中心をちょうど、射抜いているからだ。

(つまり敵は…トレジャータウンから……)

ブイゼルはゴクッ…と唾を飲んだ。

◆◆◆

[ポケモン調査団団員]

デンリュウ (♂)
ポケモン調査団団長。
のほほんとした性格で、誰に対しても丁寧語で話す。天然で、極度の方向オンチ。「笑顔がカワイイ!」とよく言われるそうだが、戦闘時には見た目とは裏腹の実力を発揮する。ハヤテたちとは数年前に出会い、互いに拳をぶつけ合って実力を確かめ合った仲である。他の団員からの信頼も厚い。

クチート(♀)
ポケモン調査団調査員。
考古学者。男勝りの口調で話すが、性別は♀。冷静な性格で、団長のデンリュウを的確にサポートすることも。戦闘の腕もあり、他の団員からはデンリュウに次ぐNo.2の存在として認められている。

ブイゼル(♂)
ポケモン調査団調査員。
水中の調査を担当している。面倒見のいい性格で、ワイワイタウンの子どもたちの面倒をよく見ている。ハヤテ、ツバサとも親しく、彼らとはタメ口で話す。
いかがでしたでしょうか。現在別のサイトに投稿している続編小説と比較すると、この作品はやたら展開が早いと感じさせられます。

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