42話 狂気

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読了時間目安:7分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

介護福祉士になって仕事に慣れ始め、やっと投稿出来る余裕が生まれましたわ…現実とセットで頑張りますわぁ…。
〜ヴェレーノアジト内 二階廊下〜

ガシャーン…!………パリン…。

アバゴーラとキングドラが外で戦っているその頃、アジト内部でも戦闘は始まっていた…廊下の窓ガラスは既に粉々に割れており、壁と一緒にもう復旧できないくらいの惨状…少し殴れば崩壊する程の…ヴェレーノの触手はそんなのはお構い無しと言わんばかりに銃弾のように速く鋭い触手をコードの力で上乗せしてシャルルに襲いかかる。

ヴェレーノ「ふんっ…!」

シャルル「………。」

だがシャルルはいつも以上に落ち着いていた…ヴェレーノの触手に戸惑うことなく、瞬きすらせずに最低限の動きでそれを避け、あるいは裁く。

ヴェレーノ「このっ…!」

ただ見ているだけ…それだけなのにヴェレーノの心は普段の冷静を欠いていた…思考が…まとまらない…あの忌み子(シャルル)のあの緑の目で見られると…まるで自分の身体が地面に力強く根を張る木のように動けない錯覚に陥る…。

シュンシュン…シュン!

シャルル「甘いっ…!」


ガキンッ!

ヴェレーノ(またか…!)

何故だ…何故だ何故だ何故だ…!!、何故私の攻撃は忌み子に届かない…その目は…その身体は一体どうなっている…!その緑の目に未来が映るかのような…その身体を覆う風はお前を守るかのような…!これじゃあまるで…。

ヴェレーノはそこまで考えてハッとなり、一度思考を止めた…それ以上先はたとえ思考でも語るな…その思考は私の行動を…栄誉を…誇りを…敗北…恐れへと導く…!

ズズズ…。

シャルル「!?」


再度大量の触手を構え、シャルルと身体を引きずるように不気味な音を立てながら間合いを取る…ここはどこだ…私のアジトだ…そしてここは…隠れ場所のない廊下…!


ヴェレーノ「死ね…!」

シャルル(ここで一気に来るか…!)

シャルルがそう考えて逃げ場がないことを悟り、後ろに下がる瞬間をヴェレーノは見逃さなかった…一本一本が確実に標的を仕留めようとする猟犬のように…風を裂くような音と共に大量の触手がシャルルに目掛けて飛んでくる。


ヴェレーノ「取った…!」

壊れかけの壁を打ち壊して脱出しようにもここは二階…更には鋭い岩石が並ぶ崖となれば飛び降りれば確実な死…!

ドゴォォンッ!

触手はシャルルだけでなく奥の壁まで粉砕した…パラパラと落ちる無残な欠片…霧のように視界を防ぐ目障りな瓦礫の煙幕…そしてその弾丸(触手)を直に浴びた忌み子が…。


シャルル「………見切った…。」

ヴェレーノ「………!?」

驚きで言葉が出ないとはこういう時に使うものなのか…目の前にいる忌み子は周りの世界が崩れても尚、そこに「無傷」で立っていた…真上に落ちた筈の天井は奴(忌み子)を避けるかのように不自然な崩れ方をしている…その周りにはやはり…(風)が舞っていた。

シャルル「これが…今のお前か…。」

ヴェレーノ「…それは…!」

光る拳…メタルクローを解除し、シャルルはヴェレーノにあるものを放り投げる…カコンカコンと転がるそれはヴェレーノについているはずの大量のコードの一部だった…瞬時に自分の触手を確かめる、コードがついていた所には代わりに血という対価が流れていた…。



シャルル「さぁどうだ…強さの源(コード)は減りつつあるぞ!」

シャルルの言葉に冷や汗が流れる…ついていけない…誰が…?この私が…?完璧な強さを得た筈のこの私がか…!?


ヴェレーノ「………… …。」

シャルル「何…!?」

ヴェレーノ「………認……。」


ここで負ける…そう考えた時、ヴェレーノの中の何かが切れた…。



血…痛みは既に無くなっていた…いや、正確には痛みに対しての余韻がいらない…不要なもの…そんなことはどうでも良い…今はただ…目の前の忌み子が憎くて目障りで仕方がない…!奴を私は…俺は…!





気に食わない…!








きにくわない…………!







キニクワナァァァァ…………!!

シャルル(…威圧感がさっきと全く違う…!?)


認めない…認めないみとめないミトメナイ…!!ワタシガココデマケルコトハナイノダ!、ワタシガマケルコトナドミトメルワケニハイカナイノダ!!

シャルル「これが…全出力なのか…!」


ヴェレーノの周りを黒い邪気が覆い尽くす…ありえないくらいの負の感情…いや、思念は同時にヴェレーノの心も…ピシピシと音を鳴らすコードは強さの代償に奪っていたのだ…。

ヴェレーノ「コロス…コロシテ…ヤル…!」

シャルル「チッ…。」

舌打ちをしながら再度、メタルクローと強風を纏ってヴェレーノの前に立ちふさがる…。

シャルル(コードに理性を奪われた…と考えるのが妥当か…ここは殺すと言ってる俺に注意を向けさせ…)


ヴェレーノ「グルアァァァ!!!」

シャルル「なんだと…!速っ…!」


ドガアアァァンッ!!

冷静に事を進めるさっきまでとは全然違う…ヴェレーノは触手ではなく己の身体全体を武器にしてシャルルに突撃してきたのだ…その時間…ほんの1秒…それだけ…ただ突進してきただけだと言うのに…ヴェレーノという凶器は…二階という階層を衝撃だけで消し飛ばした…決して比喩などではない…事実だ…まともに食らえば…この自然の守りだけでは防ぎきれたかどうかも危うかった…。



ドシャッ…!

シャルル「ぐっ…!」

シャルルの自然の目はそれを捕らえ、回避という行動を促してくれた…シャルルを纏う風の刃はヴェレーノを食い止めるのではなく、床に穴を開けてシャルルを一階へと逃がしたのだ…反射で着地体制をとり、ヴェレーノがいるはずの上を見上げるが姿が見えない…あのスピードだ…さらに奥へと突撃したのだろう…もしあれを喰らったら今頃大穴を開けられた壁から落とされ、背中から崖に突き刺さっていた頃…。

シャルル「突撃…!?」

そこまで推測してシャルルは一つの誤算を導き出す…避けることを重点しずぎて気づけなかった…!ヴェレーノはあのスピードの突撃で俺を殺そうとしたんじゃなく…。



ズガアアアアァァァァン!!!

シャルル「しまった…出遅れた…!」


アジトの外から地面が揺れるほどの衝撃が伝わってくる…ヴェレーノは…アイツは…ただ狂気に呑まれたんじゃない…!!「わざと」だ…俺に対する思念を糧に…とんでもないものを付与しやがった…!!


ヴェレーノ「コロス…コワス…アイツノ…イミコノ…タイセツナモノヲ…モウイチド…!!」


シャルル(アイツ(ヴェレーノ)…自身のコードの狂化に意思を加えやがった…!!)


ヴェレーノが突撃したのはシャルルではなく破壊された壁(外)にだったのだ…つまりこれは攻撃ではなく逃走…!それも俺以外の者を残された意思を利用して次のターゲットにしている…その対象は俺の大切なもの…イーブイ達(人質)…それに俺を引き付けて再戦する気だ…!



シャルル「させるかァ!!」

アジトのドアを蹴り破ってシャルルも外に出る…緑の目を大きく身開いて風の力を強めると、シャルルの背中に追い風の形を作り、大切な仲間と家族を守る為、ヴェレーノに向かって走り出した…。

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