おおきくなる
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思い出の広場へと久々に訪れる。広場は昔来た時よりも、とても小さく見えた。きっと私が、大きくなったからだろう。
「ね、キミ、一人なの? アタシと、トモダチになろうよ!」
あの人とは、よくこの広場で一緒に遊んだ。今、どうしているのだろうか。とても気がかりだ。私の大切な人。ずっと、ずっと、元気でいて欲しい。
◇ ◇ ◇
トレーナー達が、戦いを繰り広げている。彼らは互いのパートナーと共に雪駄琢磨し、実力を高めていくのだろう。
『お、おい……あれ』
『うおっ……ビックリした!』
そのトレーナー達がこちらを見て、言葉を呟く。しまった、怪訝に思われたか? 私はそそくさと、その場を後にした。
そう言えば、私は戦いなどあまりしたことが無かった。戦うことは野蛮だという思いがどこかにあり、好んでいなかったのだ。少なくとも、あの人といる時は……。
◇ ◇ ◇
いつしか粉雪がひらひらと舞い始め、寒くなってきた。そうか、今は冬なのか。
あの人と出会ったのは、丁度こういう冬の時期だった。最初に会った時、あの人はみすぼらしい身なりで、メソメソと泣いていた。あれから、どのくらい経ったのだろうか……。
『アタシね、ここにお花をいっぱい植えたいの!』
あの人が想いを語る時、あの人はいつも笑顔だった。その笑顔を見るたび、私は嬉しい気持ちになるのだ。この人を護りたいと、誇らしい使命感に駆られたのを覚えている。
『アタシ、足が悪いし、力も無いし、アナタにばっかり、迷惑かけちゃう……。ごめんね……』
──だが……。
(……おや?)
ポケモン達が群れをなして、身を寄り添って暮らしていた。私は思わず側に駆け寄ったが、逃げられてしまった。
『グルルル……』
威嚇している者もいる。やはり私は、私は……大きくなり過ぎてしまったのだろうか。相容れないだろうなと直感した。
ならば……。
私はこの時初めて、『戦い』をした。
◇ ◇ ◇
かなりの月日が経った。
寒い、痛い、寂しい。最近は、そんな感情ばかりが身も心も支配する。
(ハァ、ハァ……)
視線を感じる様になる。様々な場所から、多く、数多く。もしやこの中の一つが、あの人なのだろうか?
会いたい……。あの人は今、どうしているのだろうか? どこに行けば、会えるのだろうか?
◇ ◇ ◇
私の足は、とある場所へと向かっていた。
その場所とは……あの、広場……。広場に着く……。広場は、前よりも、ずっと、ずっと……小さくて…………。
『撃てーーーーッ!!』
──ドォン、ドン、ドン……。
鉛玉を喰らった私は、その場に倒れ込む。私の体に風穴が空き、そこから一筋の血が流れる。
『ここまで巨大化していたとはな……』
『ああ、早く対処しなくては』
(ここまで、か……)
運命を悟り、私が観念した時。
『待って! そのコ、アタシの友だちなんです!!』
(……その、声は!)
ようやく会えた。私の、大切な人。
『え? 君は、この巨大ポケモンのトレーナーなのか?』
『うん……』
車椅子に乗る、とある少女。私はかつて、あの子を背中に載せ、様々な所へと駆けた。歩くことの不自由なこの子のため、この子の望むままに。
この広場は、昔は広い広いただの荒れ地だった。
『キミと出会った場所だから、いっぱいお花を植えて、キレイな広場にしたいんだ!』
(あれから、色々な花を見つけて、ここに植えたなぁ……)
しかし、旅を続ける内に、私の体はどんどん大きくなっていった。いつしか私のことを恐れる者が出始めた。この少女にまで怪奇な目を向ける者が出始める前にと、私はこの子の元を去り……。
「なんで、なんで……居なくなっちゃったの! アタシ、アタシ……心配したんだから……!!」
私の選択は、この子を悲しませてしまっていたのか。だが、もうこの子と私は一緒になれない。一匹で旅を続ける中、私は生きるため、腹を満たすため……禁忌を犯してしまったのだから。
「ごめんね、アタシのせいで、本当にごめんね……」
彼らも撃退しようと考えたが、この子の泣きじゃくる顔を見て、どうしても出来なかった。
済まなかった……最後まで。どうか、げ……ん…………。
◇ ◇ ◇
数カ月後。広場の中央には、あのポケモンの像が置かれていた。新聞やゴシップが、少女とポケモンの話を美談に作り上げた為だ。巨大ポケモンは一転して悲劇のポケモンに成り上がった。そのために、広場に花を手向ける者が続出した。皮肉にもポケモンが死んだことで、だ。
(アタシ……)
あのコが居ない今、アタシが、自分の足で歩かないと。少女は決心し、最初の一歩を踏み出した。
……。
「わぁ……」
ふらつきながらも、少女は歩くことができた。最初の一歩を、しっかりと。少女は思う。
「ここって……」
──こんなに、広かったんだ!!
ーーーーーーーーーー
………
……
…
これからもこの広場には、花を手向ける者が後を立たなかった。
「ね、キミ、一人なの? アタシと、トモダチになろうよ!」
あの人とは、よくこの広場で一緒に遊んだ。今、どうしているのだろうか。とても気がかりだ。私の大切な人。ずっと、ずっと、元気でいて欲しい。
◇ ◇ ◇
トレーナー達が、戦いを繰り広げている。彼らは互いのパートナーと共に雪駄琢磨し、実力を高めていくのだろう。
『お、おい……あれ』
『うおっ……ビックリした!』
そのトレーナー達がこちらを見て、言葉を呟く。しまった、怪訝に思われたか? 私はそそくさと、その場を後にした。
そう言えば、私は戦いなどあまりしたことが無かった。戦うことは野蛮だという思いがどこかにあり、好んでいなかったのだ。少なくとも、あの人といる時は……。
◇ ◇ ◇
いつしか粉雪がひらひらと舞い始め、寒くなってきた。そうか、今は冬なのか。
あの人と出会ったのは、丁度こういう冬の時期だった。最初に会った時、あの人はみすぼらしい身なりで、メソメソと泣いていた。あれから、どのくらい経ったのだろうか……。
『アタシね、ここにお花をいっぱい植えたいの!』
あの人が想いを語る時、あの人はいつも笑顔だった。その笑顔を見るたび、私は嬉しい気持ちになるのだ。この人を護りたいと、誇らしい使命感に駆られたのを覚えている。
『アタシ、足が悪いし、力も無いし、アナタにばっかり、迷惑かけちゃう……。ごめんね……』
──だが……。
(……おや?)
ポケモン達が群れをなして、身を寄り添って暮らしていた。私は思わず側に駆け寄ったが、逃げられてしまった。
『グルルル……』
威嚇している者もいる。やはり私は、私は……大きくなり過ぎてしまったのだろうか。相容れないだろうなと直感した。
ならば……。
私はこの時初めて、『戦い』をした。
◇ ◇ ◇
かなりの月日が経った。
寒い、痛い、寂しい。最近は、そんな感情ばかりが身も心も支配する。
(ハァ、ハァ……)
視線を感じる様になる。様々な場所から、多く、数多く。もしやこの中の一つが、あの人なのだろうか?
会いたい……。あの人は今、どうしているのだろうか? どこに行けば、会えるのだろうか?
◇ ◇ ◇
私の足は、とある場所へと向かっていた。
その場所とは……あの、広場……。広場に着く……。広場は、前よりも、ずっと、ずっと……小さくて…………。
『撃てーーーーッ!!』
──ドォン、ドン、ドン……。
鉛玉を喰らった私は、その場に倒れ込む。私の体に風穴が空き、そこから一筋の血が流れる。
『ここまで巨大化していたとはな……』
『ああ、早く対処しなくては』
(ここまで、か……)
運命を悟り、私が観念した時。
『待って! そのコ、アタシの友だちなんです!!』
(……その、声は!)
ようやく会えた。私の、大切な人。
『え? 君は、この巨大ポケモンのトレーナーなのか?』
『うん……』
車椅子に乗る、とある少女。私はかつて、あの子を背中に載せ、様々な所へと駆けた。歩くことの不自由なこの子のため、この子の望むままに。
この広場は、昔は広い広いただの荒れ地だった。
『キミと出会った場所だから、いっぱいお花を植えて、キレイな広場にしたいんだ!』
(あれから、色々な花を見つけて、ここに植えたなぁ……)
しかし、旅を続ける内に、私の体はどんどん大きくなっていった。いつしか私のことを恐れる者が出始めた。この少女にまで怪奇な目を向ける者が出始める前にと、私はこの子の元を去り……。
「なんで、なんで……居なくなっちゃったの! アタシ、アタシ……心配したんだから……!!」
私の選択は、この子を悲しませてしまっていたのか。だが、もうこの子と私は一緒になれない。一匹で旅を続ける中、私は生きるため、腹を満たすため……禁忌を犯してしまったのだから。
「ごめんね、アタシのせいで、本当にごめんね……」
彼らも撃退しようと考えたが、この子の泣きじゃくる顔を見て、どうしても出来なかった。
済まなかった……最後まで。どうか、げ……ん…………。
◇ ◇ ◇
数カ月後。広場の中央には、あのポケモンの像が置かれていた。新聞やゴシップが、少女とポケモンの話を美談に作り上げた為だ。巨大ポケモンは一転して悲劇のポケモンに成り上がった。そのために、広場に花を手向ける者が続出した。皮肉にもポケモンが死んだことで、だ。
(アタシ……)
あのコが居ない今、アタシが、自分の足で歩かないと。少女は決心し、最初の一歩を踏み出した。
……。
「わぁ……」
ふらつきながらも、少女は歩くことができた。最初の一歩を、しっかりと。少女は思う。
「ここって……」
──こんなに、広かったんだ!!
ーーーーーーーーーー
………
……
…
これからもこの広場には、花を手向ける者が後を立たなかった。