おばけいぬポケモンボチと自他ともに認める天才

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作者:ベリー
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読了時間目安:5分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

新ポケモンボチに関する何かを書きたいなと思って勢いで書いたSSとなります。
「君、寿命吸えるんだって?」

 空は真っ暗、月明かり一つない墓地に僕は立っていた。目の前には白く、ろうが溶けたような形をしている毛、頭には蝋燭が乗った犬型のポケモンが居た。

「ブフッ!」

 僕の声なんて聞こえてないようで、そのポケモンは元気よく吠えた。
 ボチーーゴーストタイプのおばけいぬポケモンだ。人懐っこく寂しがり屋で人の生気を少しづつ吸うと聞かされている。
 この前、学校の女子生徒一人がこのポケモンのせいで倒れたらしい。
 人懐っこく、遊ぶのが好きなようで警戒せずに僕の足元に擦り寄ってきた。

「僕がこれから遊んでやる。その変わり、僕を殺すぐらいの生気を吸ってくれないかい?」
「バフン?」

 そう問いかけるとボチは首を傾げた。こちらの言葉なんて分からない。それは分かっているが、それでも問いかけてしまった。
 まあ、嫌と言われようが遊ぶんだけどね。

「ほら」

 僕は持ってきていたボールを軽く投げた。『遊んでくれる』そう理解したボチは顔を明るくして投げたボールを取りに行く。
 遊ぶのに乗り気はしない。早く生気を吸い取って欲しいのだが、そんな都合のいい道具は早々ない。仕方なく、遊んでやるのだ。

 賢い、天才、明徹。
 僕の頭脳を褒め称える言葉の数々を浴びて育った。別に嫌ではない。むしろ嬉しいぐらいである。
 自分自身天才であることを自覚しているし、褒められるのは気分がいいし、名誉が増えていくにつれ僕の好奇心を満たす環境が整っていくため、この頭脳に、努力できた過去の自分に感謝している。
 父、母、兄にクラスメート、沢山の温かい人に囲まれ最高の環境である。
 僕は幸せだ。そう断言出来る。

「バフッ!!」

 ボチがボールを取ってくる。僕は何も言わず、無表情でボールをまた投げた。放物線を描いて暗闇に飲まれるボール。体力が無い僕のボールは力なく地面に落ちていく。

『もう、俺の居場所を奪うのはやめてくれよ……』
 兄さんが、ふと僕に言った。声を絞り出すように、助けを乞うように。
 僕は兄さんの居場所を奪っているつもりなどない。むしろ暖かく僕を見守ってくれる兄さんが好きだ。
ーーなのに、何故憎悪の目を向けられる? 羨望の目で僕を見る?
 考えなくてもわかる事だった。なのに僕は気づかなかった。
 僕は天才だ。それは紛れもない事実。だからこそ僕と比べられる兄さん。僕の前ではしないが、きっと裏で色々と言われてきたのだろう。
 だから、僕は兄さんの凄さを広めることを提案した。兄さんは優秀だ。勉学も運動も。僕が居て霞むだけで兄さんも優秀なのだ。
 すると兄さんは僕に怒声を浴びせて平手打ちをしたよ。なんで気づかなかったんだろうね僕は。
 天才の僕がいうと皮肉にしか聞こえないことに。

「あっ……」

 ふと力が無くなってその場に倒れた。苦しく無ければ痛くもない。ただ、力が思うように入らなくて大きな違和感がある。

「バフッ!バフバフ!」

 ボチが心配そうに僕の傍に駆け寄り僕の顔を舐めたり、その場でクルクルと回り始める。

「無知は罪だ。無自覚であっても、僕は人のものを奪うのは良くないと思ってる」

 誰に言ったのだろう。
 この目の前の呑気で無自覚で見てるだけてイラつくボチか? 
 天才と自負しておいてそのボチより低能なことをしている僕か?
 誰なんだろうね。

ーー奪ってるつもりなんて無かったのに
 ふと会わなくなる友達が居る。ふと僕を嫌い始める友達がいる。何故だろう。答えは明確だった。僕のせいで居場所を奪われた人達だ。
 考えれば分かることなのに、僕は『そういうものか』とその場で思考放棄をして気づかなかった。
 ボチも自分の能力に気づいたら同じことを思うのだろうか。

「僕は君が悲しむことを知って利用しに来た。
 それを知っても君は僕を恨んでくれないのだろうね」
「……」

 そう、笑みを零しながら言うとボチは唐突に動くのをやめて僕を見つめ始めた。
 意味が伝わってようが伝わってなかろうがどっちでもいいや。僕はここで終わるのだから。

「どこだ! 俺が悪かった、俺が無神経だった! ごめん!」

 遠くから男性の声がする。最近声が変わり違和感が抜けないのに瞬時に主が分かる声。
 奪ってるのに憎まれないし、憎めない。そんな所までボチと似ていなくても良いと思うんだけどなぁ……

「し……く……よ……」

 声にならない声、もしかしたら声を出してたと錯覚してるだけだったかもしれない。けど、僕の最期の言葉は、天才とは思えない情けない声だった。

「ーーお前、人の寿命吸えるんだったな……」

 おわり

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