つきのうさぎ

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読了時間目安:20分
白と黒ばかりの世界が広がっていた。



「なんだここ」



右見て左見て上を見て、きれいなまんまるが目に入った。

青い星。テレビや教科書なんかで何回も見た。ネットサーフィンしてれば画像を見かけることもある。

我ら人間が住んでる星。

そんな青い星にたいしてここはあまりにも素っ気ない。

石ころと“くぼみ”ばっかで、緑も青もありゃしない。

生きているものなんかいない、ただただ静かで、静謐な世界。

天のあれがぼくらの青き星ならばここは……と考えると、すぐにピンときた。

月の世界。



「どーも!」



場違いすぎる陽気な挨拶に、何の表情をすりゃいいのかもわからないまま、そちらを見やった。



「はじめまして、アナタ誰っすか?」

「※※※※※」



相手が何者なのかもよくわからないうちに、反射的に答えてしまった。しまった、と思った直後に、違和感にのどを押さえた。

自分の名前を言ったはずなのに、テレビの砂嵐のような、ガサガサのノイズ音じゃなかったか、今。



「へー、※※※※※さんっすか。個性的な名前っすね」

「あたしは見ての通り、ミミロップっす!」

「なんで……ポケモンが、こんなとこに」

「まるで前から住んでたのは自分みたいな物言いっすね」

「こっちからしたら※※※※※ッチがお客さんみたいなもんっすよ?」

「※※※※※ッチ?」

「※※※※※ッチ。」



バニプッチみたいな呼び方するじゃん。

発音も丁寧に再現する。口にした自分ですらもう二度とまったく同じ発音はできないだろうに。



「ミミロップ、ここは……」

「住みにくいとこっすよねー。食べもんには困るしアクセスにも困るし娯楽も少ないし」

「……なんで月に?」

「好きで来たんっしょ?」

「アクセスじゃねえよなんだよボーゲンで月に来るかよ」

「キライキライキライーっすか?いじっぱりさん?」

「????」



今、なんか徹底的にすれ違った気がする。

でもなぜか、それ以上会話の内容を気にする気分にはなれなかった。

そういえば、こんなに無意味にだらだらと雑談しているにも関わらず苦しさを感じない。宇宙なのに。



「お前、宇宙でも平気なの?」

「平気じゃない宇宙なんてあるんっすか?」

「あたしはここ以外知らないんっすけど」



平気ではいられんだろ、宇宙。

パーンってなるっていうじゃん。体。



「パーンて。そんな風船みたいに」



ケラッケラ笑っている。って言ってもそういうもんだろ宇宙って。



「ハジけることはないんじゃないっすか? あたしら平気だし」



確かに……。そう……なの、かもね。

真空の世界だとじんわり血が沸騰する、とか聞いたことあるような気がする。いままさにそうなのかもしれない。

ゆーっくりと、死に向かっている。

でもだとしたらどうなんだ、それ。

普通に生きてるのと、そんなに大差ないのでは。



「ま。どーせ生きてりゃそのうち死にますし、探険しましょーよ探険。月は初めてっすよね。あたし、秘密基地まで案内しますよ」


「……よろしくおねがいします」



なんで───ミミロップなんだろう。

別に、コータスとかバチュルとかマダツボミとかライチュウとか、ウツドンでもいいのに。

なんでミミロップ?

そんなことを考えたけど、ミミロップじゃなかったからってこの状況が好転するわけでもない。

なら考える必要もないことだろう。月にはうさぎがいるものだし。

それに、このウサ公がどんなキャラしてるのか、気になるところもある。月なんてミミロップが言うよりももっと何もないだろうに。ニンジンとかないじゃん?

石でもかじってんの?

なんで平然と暮らしてるの? どういう情緒してんだコイツ。



「お前、ここでなにしてんの?」

「暇潰しっすよ。死ぬまでやることもないし」

「※※※※※ッチはやることあるんっすか?」

「まぁ、あるよ。あるけど」

「やりたくなさそうっすね」

「ん。あぁー……」



情緒不明のくせに表情の機微を読み取るのはやたら得意らしい。図星だった。

どうしても、否が応でもやんなきゃいけないことがあって、でも、それ以上にやりたいって思ってることがあって……あれ。

〝それ〟ってなんだっけ?

どっちか、じゃない。やんなきゃいけないこととやりたいこと、その両方のことについてだ。それにガチガチに縛られていたはずだったのに。

ふたつにはさまれて? 縛られて、締め付けられて、思考も心もからだも何もかもガチガチに固まったあげく、あげく……

今……何考えてたんだっけ。



「※※※※※ッチの地元、ここじゃないんっすよね? たぶん、すぐには帰れないと思いますし───ほら、アクセス最悪なんでここ───どうせならやりたいことやったらいいんじゃないっすか?」

「ほら見てくださいっすアレ! 石をあたしの身長と同じくらい積んだんっすよ!」

「やめろよ縁起でもない……まるで賽の河原のアクティビティじゃないか」

「じゃあ、いしのつぶて合戦します? ゴローンのいし合戦でもいいけど」

「石しかないのも考えもんだな……遊びがことごとく乱暴だもの。積むだけの方がまだいっか」

「じゃあ積みます?」

「積まねえよ?」



あるいは、以前からもっと宇宙に興味を持っていて、ある程度の知識もあったなら、月に行けたらこんなことがしたいあんなもの探してみたい、と思うアテがあったのかもしれないが、所詮たらればだ。よもやま話の域を出ない。

ここにきてわかることなんて、持っていたのはせいぜいポケモンの知識くらいのものだったってことくらいだ。だからこんなのとふたりっきりになっているんだろう。杵と臼もありゃしない。餅だって水だって無い。うさぎのくせに餅つきをしていないのだ。

んん?? 待て。

〝だから〟ってどういうことだ?

なんでポケモンの知識もってたらミミロップと月でふたりっきりになるんだ?

ははぁーん、わかった。わかってしまったぞぅこれは。




「あっれ。ひょっとして、これ夢なんじゃねえの?」



それなら全部納得だ。この世界に広がっているものに自分が知っている以上のことはないのだから。ロマンもファンタジーもないんだよ。

だーけど夢と気づいてしまったからにはもうそうはいかないぜ。無意識のブレーキを外せ? ここは自身の心象風景そのままってことだ。

ならばすべてまるっと、我が心の思うがままってことだろうが!!



「それならまずはせっかくポケモンがいるんだからバトルしなくっちゃな! マイフェイバリットポケモンちゃん、ヘイかもーんぬ!」


















ミミロップ「」ニガワライ





「なに見てンだよ見せもんじゃねえぞゴラァ!」

「ぼうりょくはんたーい」



でたらめに振り回す拳をヒュンヒュンと軽快にかわしながら抜かしおるミミロップ。

あっれぇー……おぉっかしいなぁ……無敵じゃないの我ェ……????

全然自由じゃないし、全然思い通りじゃない。話が違うじゃんか。どの話だっけ?



「※※※※※ッチのポケモンってどんな子なんです?」

「どんな子……って」



そりゃあもう目に入れても痛くない、かわいいかわいい…………ええっと。

ええっと。



「ええっと」

「あぁーはぐれちゃったんっすね。仕方ないなぁ※※※※※ッチはー。あたしが一緒に探してあげますよ」



おめでとう! この石以外なにもない世界で目的ができたよ!

物理的に達成可能かどうかはさておいてな!



「いるのかなぁ……」

「トレーナーがパートナーのこと信じなくてどーすんっすか? ほら歩く歩く」

「そういう精神の話じゃないだろコレ。問題の場所が違うんだよってか居場所が違うっていうか。月じゃなくてあっちの星かもって」



言葉が絶えた。落ちてた。

足の裏の感覚がなくなって天地がひっくり返る。

立ってられないような急斜面を滑っているらしい。ぐるんぐるん世界が回る。グレーな世界がぐるんぐるん回るので上下の感覚が一瞬で滅裂になった。

2度3度と体を強打しながら、茶色い影が同じように転がっているのを目が捉えた。目が合った。お前も落ちたんかい。落ちてるんかい。エヘヘじゃないよ何を照れてんだ、あなたの羞恥、どこから?

とても手や足を踏ん張った程度で止まれるような斜面じゃない。もはや壁だ。寒気の伴う浮遊感が常に付きまとう。

落ちてる時間が長い。重力が低いからなのか穴が長いのか極限状況で脳が見せた錯覚か。

自分の制御から完全にはなれてぶらんぶらん振り回されてる手。その先にみえた壁が地面だと気づいたときには、もう叩きつけられた後だった。

じんわり痛い。夢じゃないんかい。

なんとか寝返りをうって、仰向けで寝そべる態勢をとった。嫌な予感がするので手とか足とか見たくない。空をずっと見ていた。

こんなに克明に星が光る空を見つづけていたのは今までの人生で初めてだ。青い星まで見えるときてる。だけど残念ながら、長い長い断崖が空のほとんどをおおっていた。

目と鼻の先にこんな深い穴があったのに気づかなかったなんて。



「クレバス落ちしちゃいましたねぇ。見えにくくてあたしも時々落ちちゃうんっす」

「ミミロップ。月在住のうさぎ。案内役としての能力はあまり高くない」

「ところで何のポーズっすかソレ。ヨガ?」

「誰がヨガのポーズしてるか。積み技に困ってないんだよ」

「ずいぶん柔軟っすね。膝がまるで逆関節みたいっす。獣の後ろ足リスペクトっすか? ポケモンになりたい人でした?」

「怪我したことないやつには怪我してる奴の気持ちがわからないってことなんだろうな。助けてくんない?」



ミミロップに背負われる形で、移動を再開した。



「あの、足引きずってんだけど……痛いんですけど」

「じゃあ引きずらないようにたたんどきますね」

「子供向けギミックフィギュアじゃねえんだよやめろやめろやめろ!!!やめろ!!」



どうしてこんなことになってしまったんだろう。じわりじわりと痛む手足を引きずりながら、後悔ばかりが頭をよぎる。そんな頭を抱えることもできない。

辛くて痛くて苦しくて、悲しい。なのに不思議と涙はこぼれなかった。きっと強い子なんだ自分は。偉い偉い、と褒めてあげたいところだ。



「※※※※※ッチは意外と、枯れ系なんっすね」

「枯れ系? 何で? パキッと折れてるから?」

「迷子になってるのにピーピー泣かないし、怪我してるっぽいのに泣かないし、今まさにピンチってところで、堰切ったように泣き出したりしないし、石積みも石合戦もしようとしないし。そのくせずっと文句は言ってるし」



泣かないづくしだが、そんなしょっちゅう泣いてられるかって話だ。あたしみたいなのがむせび泣いてたら哀れとか可哀想とか助けようとか思う以前にヒくだろう。あたしだってヒく。

石遊びしないとか理屈っぽい、とか……子どものような振る舞いをしないのだなってことか? そりゃ、まぁ……



「あたしは大人だからな。弱いところを人に見せるのはみっともないことだし、自分のことは自分で解決するのが当然のことだからだ」

「えぇ? できてなくないっすか?」

「不可抗力だ。生きている上で迂回することのできない、よりにもよって無理筋ってものはある。それで言えば、お前に案内してもらってるのも、こうしてかついでもらってることも、申し訳ないとは思ってるさ」

「でもな。不可抗力だから、事故だからって〝あたしにはどうしようもない〟〝誰か助けて〟なんて甘えは許されないんだよ。それが大人ってものだ」

「はぁ……」



心底、あたしの言ってることがわからない、という様子でミミロップは歯切れの悪い相槌をした。

そうして、何か考え込むようにしてだまりこむ。

静かにあたしは担がれていた。



「※※※※※ッチの社会って、さみしいやつらの集まりなんっすね」

「さみしいなんて言ったか?」

「狭量をヒニクっただけっす」

「……てか、あれだ。あたし、やることあるんだった」



そういえば、頭を揺すぶりたおして思い出したことがあった。

あたしのやらなきゃいけないこと。



「ここが夢じゃないなら、あたしはたぶん、地獄に落ちたんだろうな」

「地獄? こんなに天が綺麗なのに?」

「地の獄なら空もきれいに見えるだろうね。また落っこちたのも納得だよ」

「あたし、身投げしたんだった」

「……あまりにもふわっと、出来心でさ」

「ミミロップみたいにぴょんっ、て。かるーく遠くに渡れそうな気がして」

「あたりまえのように落ちた。それがあたしの最期だった」

「覚えてなかったのはやっぱり頭を打ったからなのかな。体もこんな風になってしまって」

「魂だけ浮わついてどこまでも昇りきって、たどりついたのがここで。ここがあたしの地獄だったんだ。誰かにもらった義理も恩も全部無駄にしたあたしがたどり着いたのがここ。誰とも言葉を交わすこともできなくなって、さまよって」

「……ある人に憧れて先生になった。いじめで自殺とか、教師陣が不祥事の隠蔽にはしるとか、ニュースで聞くような悲劇を未然に防ぐ。生徒たちみんなに愛されて、わかれをおしまれながら、こどもたちを未来へ送る」

「……理想を追いかける過程でぶつかる壁は覚悟してた。自分自身をどれだけ食い潰すことになるか。それも視野に入れてた。あたし自身のすべてを犠牲にしてでも、理想を現実のものにするんだって」

「理想を見すぎてたんだろ、それ」

「うん、そうだね。最期にはもう、実際に目の前にいるこどもたちが、視野に入ってなかった」

「結局ぶっこわれて、遠いところを見すぎて、足元が見えなくなってて、そして、死んだ」

「取り返しのつかない大失敗……しちゃったっす!」テヘッ

「餅もつけないウサギになっちゃってんだから、たしかに失敗だな」

「思い出した同士でちょうどいいな。実はあたしも大失敗したんだよ」

「パートナーを死なせた」

「それが大失敗だったってことに気づいたのは、ついさっきだけどな」

「ここに来るまで、あたしはなんとも思ってなかった。あいつは不出来だったから死んだんだって。別の強いポケモンを用意してバトルすりゃいいだけだって」

「だから、他の手持ちに見限られた」

「自分以外を大切にできないやつなんて、誰から大切にされるわけもないんだ。そんな当たり前のことを見ないフリしてた」

「あたしのポケモンなら、トレーナーを助けるのは当たり前だろって思ってた。当たり前って何だよおかしいのはお前だってことだったんだな」

「ミミロップがくっちゃべりながら助けてくれたから、自分がおかしかったんだって気づけた」

「もう死んでるから意味ないけどな。……呼んでも誰も来ないわけだよ」


生前、手持ちをないがしろにしたあたしの呼び声に応えるポケモンなんか、いない。

それだけの話だったのだ。



「ごめんな、ミミロップ」

「あたしは※※※※※ッチのミミロップじゃないっすよ?」

「違うよ。あたしのポケモンはミミロップじゃない。名前思い出せないから謝ったんだよ、先生」



先生の最期を、風の話に聞いた……のを、思い出した。

もうしわけないけれど、当時のあたしにとってはどうでもいいことだった。

先生のことが、フツーに嫌いだったから。

言ってることが上っ面ばかりでまったく心を打たない、いい歳こいて夢みがちなやつだと、教壇に立つ彼女を見て思っていたものだ。

良き教育者を目指してた人間(ミミロップか)。その教え子が薄情でポケモンを1匹死なせている。ひねくれた因果にもほどがある。

死後、背中を突き合わせておしゃべりしてるんだから、巡り合わせとはわからないものだ。ミミロップみたいに跳ぼうとしたやつはミミロップになってしまっているし、滑落して死んだやつは滑落して手足を動かせなくなっている。どんだけー。



「先生は、どれだけの長い間、ここで過ごしたの?」

「数えてないっすねー。時間感覚はとっくにないっす」

「……自分の生き方が間違ってたって気付くほどなんて、よっぽどの時間だよね」

「あー。勘違いさせちゃったみたいっすね。あたし、自分の生き方を間違ってたとは思わないよ」

「えっ」

「最期にどーしょーもない失敗はしちゃったけどね。めざすものも確かに、ふわふわになってたし」



このお耳みたいに、とか言う。確かにさきっぽフワフワ。

そうじゃなくて。



「じゃ、失敗はしたけど後悔はしてないっての?」

「後悔はしてるっす。もっとうまくやれたはずだったのになーって」

「はずとかナイだろ。ここが着地点なんだから……なぁんだ」

「じゃ、※※※※※ッチは自分の生き方が間違ってたって思ってるんだ?」

「間違ってたって気づいたんだよ。ついさっき」

「だって、その行き着く先がここだろ? 綺麗な星空以外は石しかない、虚無虚無な世界。手持ちに見放されたやつにはお似合いでしょーよ」

「見放された?」

「そうだろ、現に呼んだって……」

「それはどうかな? だってここ月だよ?」


同じような景色が続いてて目印になるようなものはない。石しかないので遊びにレパートリーがない。そして、アクセスが困難。

その月だから何だってんだ?



「ほら」



ミミロップはツンと尖ったその鼻筋で天をしゃくった。



「ひときわ、ひかる星がひとつ」




あれ……は。




「アクセスがとぼしいから到着には時間かかったけど、めだつものもないからすぐ見つかる」



「あ……」


ゆっくりとこちらに落ちてくるのは、1匹のポケモンだった。

ポカーンと開いた間の抜けた口元。

頭でチョイと揺れるツタ。

もう見ることはないと思っていた。

きっと、さぞ憎まれているだろう。恨まれているだろう。と、そう思っていた。
 
薄情なあたしが死なせたポケモン。

ウツドンは嬉しそうに、あたしたちの元に突っ込んできた。

ゆっくりに見えたけど、かなり慣性がのってたらしい。あたしとミミロップはいい塩梅に弾け飛んだ。

立ちのぼる砂埃。さらに折れる手足。ミミロップはあたしを手落としていた。野郎。



「ウツドン」



 幼い頃進化させたくてリーフの石を探していた。なんの巡り合わせか見つけることができず、バトルの戦績も振るわず、結果手を切ったあたしの相棒。

 そいつは吹っ飛ばしたあたしたちのそばにぴょこぴょこと寄ってきて、にへーと笑う。

 どんな気持ちでそうしているんだろう。自分の体が薄らっていくのがわかる。どうして来てくれた? こんなあたしに何を思ってる? その答えが得られないまま───



「1名様お帰り〜」



 ミミロップの間抜けなコールの直後、意識が反転した。

白い天井。開け放たれた窓から気持ちのいい風と、月明かりが差し込んできている。動かしづらい体。マスクみたいなのをつけられて管を噛まされている。ベッドに寝ているのだ、ということに思い至るのに、10分くらいかかった。時間感覚が正常なのかはわからない。周囲の様子を窺おうとできるかぎりで顔を動かした。

 誰もいなかった。




 あたしの意識が戻った翌日、お医者さんといくつか質疑応答を交わした。障害が残っているような兆候は見られない、とのことで、ひとまず安心。

あたしが救助されたとき、複数のポケモンにいざなわれるように救命士の人たちはあたしを発見したとのことだ。そのポケモンたちは間もなくいなくなってしまったと。

 手持ちのポケモンたちだったのかどうかはわからない。救命士の人たちも闇夜で姿がよく見えなかったと言っていた。彼らはもうあたしの持つボールからいなくなっていた。あたしは彼らに捨てられたのだ。

 命までは見捨てなかったのか、あるいはたまたま居合わせていた知らないポケモンが親切をしてくれたのか。誰にもわからない。

 目覚めた夜は、満月がとても綺麗だった。

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