『ニャースが死んだ!このひとでなし!!』

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作者:jupetto
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ガラル炭鉱の昔話です。ハーメルン等にも投稿した作品になります。
『ニャースが死んだ このひとでなし!!』

これはちょっとしたガラルの昔話さ。

朝刊の一面見出しを見て、当時の炭鉱会社のオーナーは困り果てて頭を抱えたんだ。

記事の内容は、炭鉱で働かされるニャース達のことと。その状況にポケモン愛護団体が抗議しているというもので。ダイナマイトの爆風で吹っ飛び岩壁を血で汚すニャースの写真まで添えられていたものだから。おかげでその日は朝からひっきりなしに一般人からもニャースを働かせるのをやめさせろと電話がかかってくる始末。

 

「どうしてこうもみんな自分勝手なのだ。炭鉱の労働環境はひどいもので至急改善が必要だと私は訴え続けていたじゃないか」

 

百年以上前の炭鉱ってのは危ない、暗い、汚いのひどいものでね。

爆弾はちょっとの刺激で勝手に暴発するし、足を踏み外して掘った穴に落ちるなんて日常茶飯事。ラッタ達に体を齧られたところから菌が入って病気になる。そんなだからオーナーとしても政府や民衆に対して対策をしていきたいと訴えていたし、できることはやっていた。

ただ、それはなかなかうまくいってなかった。当時炭鉱の現場で働くのは犯罪者の罰か身分が極端に低い人たちの仕事だったから、政府も民衆もそんなやつらがどうなろうが知ったことじゃなかったのさ。

 

「君が、体は丈夫で夜目も聞いてネズミ捕りにもなるニャース達を働かせたらいいというからやってみれば。ニャース達はいい加減でろくな仕事をしない上にこのありさまだ。一体、どう責任を取るのかね?」

 

 オーナーは同じ朝刊を見ながら呑気にニャースの写真をスケッチしている男を、じろりと見つめた。その男は流浪の絵描きで、名前をバンク。ふらりと炭鉱に現れて、ここをよくするために協力したいと言ってきた謎の人物さ。

 

「そう怖い顔をなさるなオーナーさん。所詮、ネコが死んだと報道されただけだ。これがあなたの大切な労働者たちじゃなくてよかったじゃないですか」

 

 バンクはスケッチしたニャースを見せる。彼の描く絵はキッズ向けのトゥーンのようにデフォルメされたニャースが壁にめり込んで変形していた。実物と違って、血は流れていない。

 

「確かに危険度の高い作業はニャース達にやらせることで少しはましになったが、根本的な解決にはなっとらん。ニャース達を連れてくるのだってタダじゃない。そのあげく無責任な世間からのバッシングだぞ」

「はっはっは。あのニャース達、何見て安全ヨシ!とか言ってるんでしょうね? 本当にすぐ死ぬ」

「笑いごとじゃない!」

 

 何せニャースというのは気まぐれなポケモンだから。導火線に勝手に火をつけて爆死する、持っているスコップを振り回して頭にぶつけて死ぬ、トロッコに轢かれて臓物をぶちまける。いないよりはましなだけで、仕事を教育する手間に見合っていないのが実情だったのでオーナーはかんかんさ。

 

「……ま、良いんですよ。どうせもうじき、ポケモン愛護団体が炭鉱にやってきます。さんざん文句を言った後、ああしろこうしろと改善命令を突き付けてくるでしょう」

「これっぽっちも良くないが?」

「おや、もっと積極的に炭鉱を改善したいのに世間が認めないと嘆いていたのはオーナーでは?」

 

 そこで、オーナーはハッとした。確かに世間は今回大きな非難を向けてきた。だが今までは、いくらこちらから訴えても見向きもされなかったのだ。これを機に炭鉱の状況に目を向けされれば、ニャース達を守るという名目のもと炭鉱夫たちの環境も改善できるチャンスかもしれない。

 オーナーが慌てて対応を考え始めたのを見て、バンクはたっぷりと嘲りを込めた笑みを朝刊の向こうにいる民衆に向けた。

 

 

「立派なオーナーさん。だいたいの人間なんてものはね、汚れた人間よりも可愛いポケモンちゃんの方がだいすきなんだよ。同じ人間の惨状から目をそらしてこんな不気味な生物を可愛がるなんて、本当に気持ち悪い。ま、それも使いようだけどね?」

 

 

 とまあ、こんな感じのやり取りがあったかどうか知らないが。ともかく今じゃ炭鉱は男女ともに人気の職場だし、ニャース達はポケジョブでも人気のポケモンになったとさ。めでたし、めでたしだね。

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