オレは、ゴルーグ

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作者:Mr.Hara-Wata
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読了時間目安:6分
昔々の、ゴルーグとその主人の話
 オレは、ゴルーグ。愛する主人に造られた、ゴルーグ。生まれて最初に見たのは、主人の嬉しそうな顔。主人の最初の言葉はこうだった。

「やったぞ、完成だ! ゴルーグ。私と共に、国を作ろう!!」

 大事な主人の命令だ。遂行しなければならないと思った。

『……ビット』
「おお、わかってくれたか!」

 その後、主人から色々聞いた。
 主人は天才科学者。オレの力で、悪事を働く王を倒すのだそうだ。そして、理想の国を新たに作る。主人は、建国の素晴らしい理想に燃えていた。また、悪が蔓延る事はないという真実を見据えていた。
 そんな主人に、ついていこう……とは思わなかった。いや思いたくても思えないのだ。なぜならオレは、ロボットだからだ。感情などない。ただ、主人の命令に忠実に従うのみだ。

  ◇  ◇  ◇

「さぁ、あなたも共に、悪しき王を倒そう!」
「うぅ、ありがとうございます……」

 主人は聖人君子であり、様々な人に好かれた。そして、様々な人が集った。
 そんなある時、オレは主人に尋ねられた。

「なぁゴルーグ、全ては順調に進んでいるな。君たちのおかげだ……ありがとう」
『ゴルー……』

 と言われただけ。命令された訳ではない。が、妙に、内部のシステムの何かがどこか狂うような……。

『……?』

 何なのだろう、か……? 良く分からないが、これが『感情』というものだろうかと、思った。

  ◇  ◇  ◇

 ある時、王の率いる軍隊が我々の省察にやってきた。オレはその時、王の顔を見た。

「……お主ら、か。最近、我々に歯向かおうとしている者共は」
「そうだ! 王よ、今にお前を打ち倒し、世界に安寧を取り戻す!!」
「おぉッ!!!」

 主人たちは、一丸となり王政打倒を掲げるが。

「…………私を打ち倒して、平和……か。……皆の者、引くぞ!」

 そう言い残し、王たちは撤退した。

「フッ。王よ、我らの威勢に怖気づいたな!!」

 だがオレは、王の表情が悲しげに見えた。その表情をオレは、忘れることはなかった。

  ◇  ◇  ◇

 主人と王との戦争は、長く続いた。そして、遂に、王の軍は敗北した。

「本当にありがとう、君たちのおかげでここまでこれた!」
『ゴルゥー』

 『君たち』の中に、オレも含まれていた。

「……遂に、この日が来たか」

 王は観念し、お縄にかけられた。

「あぁ、そしてこの日より、私が理想の国を納めていくのだ」
「……懐かしいな」
「?」
「似たような理想が、私にもあったさ」
「……なんだと!?」

 王の予想外の呟きに、激昂する主人。

「あった……筈なのにだ。その理想の顛末がこれだ。『歴史は繰り返す』のだ。世の真実などこんなものさ、ハハハハ!!」
「ふざけやがって! 悪政を働いた大罪人の癖に……この大嘘付きを、即刻処刑する!!」

 その場で王は処刑され、主人が新たな王となった。しかし……。

  ◇  ◇  ◇

「旧政の幹部共は何も処刑することなどないのでは……。元凶たる者は、もうこの世に居ません」
「駄目だ! 理想の国のために、奴らは生きていてはならないのだ!」
「王よ、あなたは変わりました……。あれ程までに清い心の持ち主だった、あなたが……。」
「正しき私に歯向かう者は、悪だ! すなわちお前たちも悪! 処刑しなければならぬ!!」

 オレは、常に主人の為にあろうとした。最前線で敵をなぎ倒してきたし、他の皆をまとめてきた。それが、主人の命令だったからだ。

「くそっ、なんで……。こんな、こんな事を私は……。やりたかったわけでは……」

 処刑された王の言葉は、正しかったのだろう。かつては正しかった筈の国も、時の経過につれて腐敗し、新たなる勢力に打破される。そして、その勢力も次第に……。
 そんな世の流れに、主人も飲まれていたのだ。

  ◇  ◇  ◇

 いつしか、主人が『悪』になっていた。皆、主人の元を離れていった。やがて、どこぞやの『正義』のドラゴン使いが、国を焼き尽くした。『理想郷』だった筈の国が焼き尽くされた。そしてドラゴン使いの若者が、『理想郷』を作ると宣言した。
 ……どこから、おかしくなっていったのだろう?
 主人の国に残ったのは、大量の瓦礫と、死体。傷を負い、主人に残された命ももはや僅か。そんな主人が、オレに、こう命令した。

「すまなかった、ゴルーグ……。私の元を離れて、これからは自由に生きてほしい……」

 命令に従った。それが主人の命令なら。

  ◇  ◇  ◇

 が、他に、オレに行く場所などなかった。アテもなく空を飛んでいる内に、オレは気づいた。あの時王が浮かべた悲しげな表情を、主人も浮かべていたことを。そして命令に従ったオレの『感情』が今、『哀しみ』に包まれていることも。
 ある意味皆、運命の悪戯に蹂躙された、被害者なのだ。王も、主人も、オレも。いつかは、あの若者も。

  ◇  ◇  ◇

 結局オレは、主人の元に戻った。

「……お前」

 主人はもはや悪であり、大罪人だ。そんな主人にもう何も残っていないし、誰も付いてこない。

『ゴルーッ!』

 だったらせめて、オレが付いていよう。

「あり、がとう……ゴルーグ。一つ、お願いして……も……いい……か……?」

『ゴルル』

 それが……主人の最期の命令となった。オレはずっと、その命令を守り続けた。

  ◇  ◇  ◇

──数千年後 とある砂漠地帯

「おい、遺跡を見つけたぞ!大昔の国の跡だ!!」
「これは、墓標か? 人の……?」
「お、おい、コイツは大昔のポケモンだぜ! もう動かないようだが、コイツ……この墓標を守っていたのか?」

 墓標を守っていたのではない。『側にいてほしい』。それが、男の最期の命令だったからだ。

「にしても、このゴルーグ……」
「あぁ。誇らしげな、そんな表情だな」

 そんな事情を知るものは、もういない。止まることのない非常な時の流れは、まるで砂嵐のようだった。延々と舞い続ける、この砂嵐に似ていた。

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