『許さない』

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作者:しぇいく
読了時間目安:11分

この作品は小説ポケモン図鑑企画の投稿作品です。

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 「わー!見てお母さん!ピカチュウがいっぱいいる!」

 
 ここはピカチュウがいっぱいいる公園。

 いつも大勢の人間がいるけど、今日はどこかの幼稚園の小さい子供達が来ていた。

 「見てみて!かわいい!」

 「先生!あのピカチュウの尻尾!ハート型!」

 「そうねぇ、あのピカチュウはきっと女の子よ」

 「へぇ!」

 
 ピカチュウ……人気者だな……




 ____僕もあんな風になりたい




 「ミミ……(でも恥ずかしいな……)」



 みんなから見えない位置からこっそり隠れてみている。

 お昼はピカチュウ達と一緒にお弁当……僕もモモンの実、たべたい……

 みんな笑顔で楽しそうだ……


 「!」


 そんな僕にチャンスが現れた。


 「はーい、じゃぁ今から1時間、公園のピカチュウ達とあそんでらっしゃーい」

 「「「はーい」」」

 みんながバラける自由時間。

 この時間なら僕も!


 「キュ……」

 
 しばらく待っていると友達に「おといれ〜」と言って一人になった子が居た。

 「キュ!」

 よし!おトイレから出てきたところに居よう。

 
 「キュッキュ♪」


 僕の気配を察知してか、トイレの周りのピカチュウはいなくなった。

 別に良いもん、今から僕はあの子に可愛がってもらうもん。



 何してくれるかな?ナデナデしてくれるかな?それとも抱っこしてくれるかな?一緒に遊んでくれるかな?

 

 そして______



 「キュ!」
 


 その時が来た。



 さっきの子供がトイレから出てきて目の前の僕を見る。


 「あれ……君は……」

 
 「ぴっ、ピッキュ!」

 
 頑張って練習したピカチュウの声真似をしてアピールし今か今かと待っていたが……





 結果は僕の思っている事とは真反対だった。




 「プ、クク!みんな見て!来てきて!この子!ピカチュウの真似してる!」

 「キュッ!?」

 子供は僕に指をさしてみんなを呼び笑ったのだ。

 「え?なになにー?」

 「どうしたの〜?」

 「キュ!?キュ!?」

 続々と周りの子供達も大勢やってきて笑い出す。

 さらには__


 「へたっぴな変装だなー!」

 「っ!?」

 頑張って何日もかけて作った僕の服をバカにしたのだ。

 「ほんと!これで隠れてるつもりなのかなー?」

 それに呼応するように他の人間も僕を馬鹿にして笑いものにする。

 それに対して僕は…………


 「キュ……」


 悲しみしか出てこなかった。


 「おーい、どこいくんだよ〜?一緒に__」

 「キュ!」

 「うわ!」

 立ち去ろうとする所を引っ張られそうになったので咄嗟に手が出て引っ掻いてしまった。

 「うわぁあああああん、いたいよぉ」

 「あー!このポケモンがナル君をいじめたー!」

 「私先生呼んでくる!」

 「ミミ__(ごめんなさ__)」

 「あ!またナル君を攻撃するつもりだ!」

 「倒せ倒せー!」

 「キュ!?」

 周りの子供達は騒ぎ立て、砂をかけてきたり空き缶を投げてくる。

 さらに__

 「どうした!大丈夫か!」

 大人も何事かと来て……

 「!?、まさか!ミミッキュの中身を見たのか!?ライチュウ!10まんボルト!」

 何かを勘違いしてかトレーナーはライチュウで攻撃してきた。

 「キュ!?キュルルルル!」

 逃げないと!

 「逃すか!ライチュウ!」

 !?

 回り込まれた!

 「10まん__」

 「ミミッ……」

 「何!?ゴーストダイブ!?」


 僕は影の中に隠れ逃げていった。


 「……」

 「あの!?すいません!」

 「アナタが先生ですね?」

 「はい……何があったんですか?」

 「はい、子供達が……ミミッキュの中身を見た可能性があります」
 


 ________




 ____




 __


 《夜》





 どうして……



 僕はどうしていつもこうなんだろ……


 
 「キュ……」


 ピカチュウ達みたいに可愛がって欲しかった。
 話して欲しかった。
 ナデナデ……してほしかった。
 
 涙で前がボヤボヤする……


 誰も僕に近付かない。


 こんな時に支えてくれる友達もいない。


 「……」


 

 「おーーい、ミミッキュ〜」




 !?

 泣いていたら昼間の子供の声が聞こえてきた。


 「ミミッキュ〜おーい」


 大人もいない。

 彼一人だ。

 手にはいっぱいのモモンの実を持っていた。


 「出ておいでー」

 
 何しに来たんだ。

 僕を捕まえて笑い物にするつもりだ。

 絶対に出ていくもんか!

 「ミミッキュ〜」

 呼ぶな!僕を!

 「おーい……」

 彼の声は次第に小さくなっていった。

 「……」

 やっと行った……

 「……」

 もう信じない。

 人間なんか……


 ________


 ____


 __


 《深夜》

 
 「キュッ……」

 泣き疲れて寝ちゃってた……あれ?

 「ナルー!?ナル君ー!?」

 なんだか騒がしいな。

 「居ましたか!?」

 チラッと見ているとパトカーとおまわりさんが来ていた。

 「私の……私の息子が!」

 「落ち着いてください奥さん、きっとお子さんは無事です」

 「でも!先生が昼間にミミッキュの中身を見てしまったって!」

 「大丈夫ですよ!お子さんは見てないって言ってたんですよね?きっと大丈夫です」

 
 !?


 もしかして、僕のこと?

 つまり……あの子が、行方不明?

 
 「キュッ!?」


 まずい!話を聞いてる限りこのままじゃ僕のせいになっちゃう!

 
 僕はその場で飛び起きて誰にも見つからないように公園を探し回る。

 
 「ミミ……キュ……」

 「キュ!?」

 少し探しているとか細い声が茂みから聞こえてきたので入る、すると__


 「すぅ……すぅ……」


 彼はフワフワの草の上で寝ていた。
 どうやらここはピカチュウ達の寝床だったようだ。
 肝心のピカチュウ達はいつも通り、僕の臭いを嗅ぎつけてどこかへ行ってしまってる。


 「キュッ……」

 
 とりあえず一安心。

 「あ……」

 「キュッ!?」

 「待ってミミッキュ!ごめんなさい!」

 「……」

 「僕、あの後考えたんだ……ミミッキュにひどいことしちゃったって……」

 「……」

 「そう考えると、僕、いてもたってもいれなくなって来ちゃった……」

 「キュ」

 振り向いてよく見ると彼の足や手には怪我をしているのが分かった。
 
 僕を探して……?


 「あ、これ……ピカチュウ達に食べられちゃってるけど、一個、無事だった」

 僕が見ているのはモモンの実かと思って差し出してきた。

 「キュ……」

 お腹が鳴る……し、仕方ない、あんなに泣いてたし疲れてるんだ。

 栄養補給の為……だ。

 「ミミ……」

 おそるおそる近づいて。

 「キュ」

 食べた。

 美味しい……

 「ミミッキュ、僕、君の事を少しお父さんに聞いたんだ……君は……その……寂しがり屋なんだってね」

 「……」

 「その……僕で良ければ……」

 

 僕はこの日__



 「お友達になろう?」




 初めてお友達が出来た。



 ____________




 ____




 __



 「ミミッキュ〜!」

 「キュッ!」

 それから僕とナルはいつも遊ぶようになり、今では1番の親友だ。

 「ミミッキュ聞いて!僕ね!ポケモントレーナーになったらゴーストタイプ専門のポケモントレーナーになるんだ!」

 「キュッ!」

 「だから、一番最初の相棒、君で良いかな?」

 「キュ〜♪」

 「はは、よせよ♪くすぐったい」



 幸せだ。



 僕は幸せ者だ!






















 だが、事件は起こった。








 「キュッ!」


 公園の人が帰っていく夕方。

 いつもこの時間にナル君は会いに来てくれていたが……

 「キュ?」

 遠くから来るナル君は黒い紐を片手にぐるぐるにしていてその先端には風船があった。

 どうやら風船に話してるみたいだけど……

 「ミミ……?」

 風船に話?なんだろう?

 あれ?話してたみたいだけど……急に嫌がってる?

 「やめて!やめてよ!どうしてこんな事!」

 「ミ!?」

 異常じゃない!助けないと!

 

 ……だが遅かった……



 ナル君はフワフワと空に飛んで行き……




 「っ!?」



 手に絡まっていた黒い糸はほどけた……



 「ぅゎぁぁぁぁあああああ__」








 ____パーン!










 破裂音が周囲に響き渡り。



 その音を中心に血と臓物がばら撒かれた__




 「ミ……」


 僕は何が起こったか理解できなくてその場に立ち尽くす。


 「ミ……ミ……」


 鳴き声で呼びかけてもナル君“だった物”は何一つ動かない。

 __だが、声が聞こえてきた。

 

 {ミミッキュ……}


 「ミ!?」

 浮かんでいる白い小さな光の玉……

 「ミ!キュッ!」

 {ごめんね……僕……ゴーストタイプのポケモントレーナーになる約束守れそうに__}

 ……だがそれすらも最後まで言えず、近づいてきた風船に玉は食べられた。

 「フワフワ〜♪けぷ」

 「____っ」

 
 風船の正体はポケモン。

 「……」

 そのポケモンは風に飛ばされ飛んで行った……













 ……………………あぁ。






 飛んで行くの?






 は?








 ふざけるなよ







 お前



















 オマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエコロスオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエユルサナイユルサナイユルサナイオマエオマエノロウコロス


 __________



 ____



 __



 風船ポケモンはどこかの発電場の屋根に降りて一休み……


 ………………………………………………………………………………………ツカマエタ


 「フワ____」


 __ユルサナイ


 「__ブシュ」

 
 ユルサナイ…………ユルサナイ…………ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセ◎△$♪×¥●&%#__________


 __________



 ______


 ____


 「キュ……」

 気がつくと相手は生き絶えていた。

 「ミミ……」

 ナル君……

 「……!」

 そうか!

 そうだ。

 そうなんだ!

 そこに居るんだ、ナル君。

 きっとこのポケモンの血肉にナル君の心が流れている。


 僕はいつも着ている服を治す道具。

 落ちていた錆だらけの断ち切りバサミを手に取った……
 
 ………………………….……



 ……………



 …一緒に行こう、ナル君。






 __________



 ______



 __


 
 《ポケモンニュースです。》

 
 「名もない暗い森の奥底で次々と行方不明者が出ていましたが、先日、そのうちの1人が森の前で倒れているのを警察が保護しました。」

 「その発見している人物は恐怖で身体を震えさせながらこう言いました。」












 「“ツギハギのフワンテの皮を被ったミミッキュが居る”と……」























 
 


 
 
 



 


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