虚夢SELECTION

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読了時間目安:7分
目覚めた時、ボクは、ポケモン達の世界に居た。

「あ、キミ? 大丈夫!? 怪我とかない……?」

「う、うん……」

これは、ボクはもしかして、ポケモンの世界に転生してしまったのだろうか。
……しかし。この姿は。

………
……


このポケモンから世界のあらましを聞く。
この世界に流れ着いた生物は、皆、『何者でもない』のだという。

鏡で自身の姿を見ると、正に平凡だった。何のポケモンだとも、言えなかった。
目つきも、姿形も、声色も、それ程までに特徴がなかった。特徴がない事が特徴とも言えた。

「キミはつまり今、真っ白なマサラ色なの。なんにでもなれる存在。この世界で他のポケモンを見て、関わり合って、その内に何かのポケモンになれるよ」

「そうなんだ……」

ボクの心を、不安が襲った。

ーーーーーーーーーーーーーーー

それから、いくらか月日が経った。
あのポケモンから、当然といえば当然の疑問を受ける。

「キミ、どこから来たの?」

「……」

「思い出せないの?」

「……うん」

ここに来る以前の記憶がないのだ。
だから、なのだろうか? ボクは未だに、何のポケモンにもなれないでいる。

努力はしてきた。
かくとうポケモンたちと地面を鳴らしたり、ほのおポケモンたちと火を使って料理をしたり、エスパーポケモンたちと超能力の特訓もした。
しかし、何の感情も沸かない。心は空虚に、僕の姿は平凡なままなのだ。

(……なんで、なんだろう)

焦りや劣等感が芽生えてくる……と、言いたいのだが。

(まぁ、いいか……)

そんな現状に、ボクは、安堵していたのだ。

………
……


ある時。

「キミ、どうしてここに来たの?」

「どうしてって……。どうしてって……」

「皆、強い思いを持ってここに来るの。理由は人それぞれだけど、『ポケモンになりたい』って……。そう願い続けたら、ここに来れるのよ」

「さぁ……」

思いだしたくもないことだったのだろう。
まるで、思いだせないのだから。

………
……


さらに月日が経った……ような気がする。
僕は依然として何者にも慣れていないが、この生活に甘んじて、漠然と過ごしていた。

そんな、ある日。

「う、うぅ……」

「! キ、キミ……大丈夫!?」

あのポケモンが、うずくまっていた。

ーーーーーーーーーー

「ありがとう……」

ポケモンの看病をする。
が、このコの状態は芳しくない。

「ここに来たら、ポケモンの世界に来たら、病気が治るかなーって思ってたけど……。そんなに、甘くなかったみたい……」

「キミ、病気なのか? だけど、あんまり弱気なこと言わない方がいいよ……。ボクだって、この世界に来た時……」

(……来た、時……)

……あ。
…………思い、だした。


《ポケモンになりたい……。ポケモンになって、『この』現実から逃げたいよ……》

《キミ、あんまり弱気なこと言わないで! 男の子なんでしょ!》

あの、励ましてくれたコのことも……。

ーーーーーーーーーー

「ボクは……生まれた時から……」

外に出たことがなかった。ずっとずっと病気がちで、病院のベッドで過ごしていた。
いつからか、隣のベッドに同じ年頃のコが移ってきた。そのコも体は弱かったが、気が強かった。

ある時、そのコにポケモンの人形を貰った。

「アタシの人形あげるから、一緒に、元気になろうね」

その貰った人形だけが、心の拠り所だったんだ。
それで、夢を持った。
いつか、本当のポケモンを持って、元気な体で旅をしたい……って。

そしたらある時、お医者さんに言われたんだ。
「手術をしたら、病気が良くなるかもしれない。外に出られるかもしれないぞ!」って。

「……でも、怖かった」

ポケモンに打ち明ける。

「ボクは……ポケモンになりたいって、ポケモンになって……なんていうか、それだけでよかったんだ。……それだけで……手術が怖かったから、外にも出なくていいやって……」

「……そうだったんだね」

「でも、結局は、この世界でも選択から逃げることはできなかったよ。僕は、怖がりの、ダメなコなんだ……」

「でもさ、ほら、キミの姿を見てごらんよ」

「……? ……あ!」

あの人形の姿に。
ピッピの姿になっていた。

「あなたの大事なお人形の姿でしょ? キミは今、変わったのよ。アタシに打ち明けてくれて……」

「……キミは」

「アタシ、思うの。君には、その手術を受ける権利がある。ポケモントレーナーになるっていう夢もある。だったら、躊躇するのはもったいないよ!」

「……そう……だね。……ありがとう」

「コホッ、ゴホッ……。アタシも、もし、病気が治ったら、したいことがあるの……」

「き、聞かせてよ! キミのしたいことって……?」

「アタシ、○△タウンに住んでるの……。あの町で、アタシは……」

………
……


****

目覚めた時、ボクは、現実の世界に居た。

(……夢、だったのか……?)

しかし……。
傍らのピッピ人形が、なくなっていた。

ーーーーーーーーーー

それから、ボクは手術を受けた。
以上が数ヶ月前の話だ。今は車椅子を漕ぎながら、歩くためのリバビリに励んでいる。

そして今日来たのは……○△タウン。

《アタシ、○△タウンに住んでるの》

おそらくあのコは、隣のベッドのコだったんだ。お医者さんに聞くと、病気が良くなったから○△タウンに戻ったのだとか。

(あのコがしたい事……聞く前に、意識が飛んでしまった。あのコは今、どうしているのだろうか)

(……)

(元気でいるのなら、それでいいかな。帰ろう……か)

その時。


「  バ  ァ  !  !  !  」


「うわぁ!! オバケ!!?」

「オバケじゃない!!」

いや、目の前に居たのはあのコだった。
どうやら……病気はすっかり良くなったらしい。

「キミに会いたかったんだ! ……これも返したかったし」

「あ、ボクのピッピ人形……やっぱりキミが」

「アタシのポケモンのスリープちゃんを使って、キミとアタシは夢を見てたんだよ! キミにハッパかけて、手術、受けてほしかったから」

「そうだったんだ……」

「ホントに、良くなって……よかった……」

「?」

彼女は、泣いていたようだ。

****

しばらくして。

「ほら、車椅子押したげるからさ! 今からちょっと、冒険に行こうよ!」

「え、うん……。あ、そうだキミさ」

「ん〜?」

「結局、やりたいことって、なんだったの?」

「……フフフ」

「え……???」


「い・ま・!!」


よくわからなかったけど。
パワフルなこのコとなら、どこへでも冒険できそうな気がした。

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