Metamorphosed
しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
妹が、いなくなった。何の音沙汰もなく、いなくなった。俺の前から、いなくなった。まさか、何かの事件に巻き込まれたのか? 大変だ。アイツは俺がいないと駄目なのに。俺はアイツがいないと駄目なのに。
『メタタ?』
後に残るのは、俺たちと暮らしてきたポケモン……メタモンのみだった。
◇ ◇ ◇
警察に連絡してからかなり経つが、進展は何もなし。俺はもどかしくなった。泣いた、怒った、喚いた……が、妹は帰って来ない。
『メタァ〜〜……』
その内、そんな俺の様子を見て、メタモンが慰めてくれるようになった。彼(彼女?)に、どこか救われる。
◇ ◇ ◇
そんな日々を過ごしている内に、俺は思った。“妹はもう、二度と帰ってこないのではないか”と。そんなのイヤだ! 俺には耐えられない!! カミサマッ、どうかッ、妹を返してください!!
……。
更に思った。“だったら、妹の代わりを作ればどうか?”
『メメ?』
メタモン……彼(彼女?)は、妹と仲が良かったからか、どこか妹の面影がある。そう……だ。メタモンを、妹にしてしまおう。俺はメタモンに、妹の写真を見せる。
『メータ?』
──アイツに変身するんだ。いいかい?
『メタァ!!』
命令通り、メタモンが妹に変身する。が……イヤ、駄目だ! そう思った瞬間、俺はメタモンを蹴飛ばした。
『! ……?!?』
メタモンは戸惑っているようだが、俺は憤る。姿形こそ似ているが、それだけだ。中身が全然伴っていない!! ……イチから、仕込んでやる。どんなにかかっても、彼女を必ず、妹そのものにしてやるんだ。
◇ ◇ ◇
──数カ月後
彼女はもうほぼ、妹に近づいていた。血の滲むような特訓により、彼女は多少の人語をも身につけた。
『オ……ニイチャ……』
『今日モまタ……。色々と、教えてくダさいネ』
あぁわかったよ、と、笑顔で応える。だが、実は最近、悩んでいることがある。以前に居たあの妹は、ちょっと頭が悪かった。ちょっと勝ち気な性格だった。『ちょっと』、お金にだらしがなかった。『『 ち ょ っ と 』』、俺に反抗することがあった!! そうだ、欠点は……。欠点は、直してあげなければ。それが、お兄ちゃんの役割……。
ーーーーーーーーーー
………
……
…
◇ ◇ ◇
──数年後
とある廃屋に、とある少女が訪ねて来た。
(お兄ちゃん……)
彼女はポケモントレーナー。何かと束縛してくる兄に嫌気が刺し、かつて家出の様な形でこの家を後にした。だが、チャンピオンになる夢を諦め、この家に帰って来たのだ。
「……すごい。家も。こんなに、荒れて……」
“私が悪かったよお兄ちゃん”と、謝ろうと思った。……しかし。
『あら。どちら様ですか? お待ち下さいませ、ね』
「……え……」
玄関から出てきたのは、少女に瓜二つ……いや、そのものな女の子。そして、『兄』がやって来る。
「……ん?」
「お……おにい……ちゃ。だ、だれ……その……コ」
「誰だアンタ」
「!!?」
「お前の友だちかい?」
『いえ、存じ上げません』
「だよな! こんな、頭も性格も悪そうな女なんか、お前の友だちのワケないよな!!」
「どういう……こと……」
「だけど……なんだかお前に似てるなぁ。でも、お前は……」
「ちょ、ちょっと! なに、なんなの……」
男の表情は……。
「……二人も要らねぇよなぁ」
男の表情は、不気味に歪んでいた。彼が手に持つのは、イトノコやハンマーの類。
「い……い゛やあぁア゛ァ゛――!!」
ーーーーーーーーーー
………
……
…
『お兄ちゃん、これらは、どうしましょうか』
「あぁ、そうだな。……まぁ、冷蔵庫にでも。それと、これは……使い道ないかな? お前はどう思う?」
『そちらに置けば、良い装飾になるのでは?』
「おぅおぅ、いい事を言う! やっぱりお前は、理想の妹だよ!!」
そう言い男は、血塗れの骨片をテーブルに載せた。