ワタシの人形 アタシの人形

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気がつくと、ゴミの埋め立て場に居た。

ぬいぐるみ(あーー……)

あれからどのくらい経ったんだろう、と思った。
オレ棄てられたんだな、とも思った。

まぁ、そりゃ、そうだよな。
シミだらけ、ほつれだらけのぬいぐるみ、誰だってそうするだろう。

ぬいぐるみ(……はぁ)

でも、頭では分かっているが、かなり悲しい。
アイツに、棄てられたんだな……と。

~1年前~

女の子「お母さん、このコもう要らない……」

お母さん「え、どうしたの? あんなにかわいがっていたのに」

女の子「友だちに、バカにされたの……。そんな汚いぬいぐるみを持ってるの、アナタだけよって……」

お母さん「そっか……。確かにもうソレ、買ってからだいぶ経つもんね。うん、新しいの買ってあげる!」

ぬいぐるみ(!)

ぬいぐるみ(そう……なのか)

オレを持っていると、恥ずかしいのか……。

ぬいぐるみ(アイツとオレ、仲良しだったと思ってたけど……。そう思ってたのは、オレだけ……だったのか……)

『ママー! あのコかわいいー!』

『ふーん、どれどれ……。あ、かわいいわねぇこのぬいぐるみ。あなたにぴったりよ!』

『やったー! ありがとう!! ワタシ、ずっと大事にするから!!』

ぬいぐるみ(……あれだって、何年前だったかな)

よく覚えていないが、アイツと過ごしている時は、とても楽しかった。いつも楽しかった。
アイツも、きっと同じだったハズだ。

ぬいぐるみ(『ずっと大事に』……か)

その時。

???「あー! やっぱポケモンのジュペッタだ!! なんでこんなゴミ置き場にいるんだろ?」

素っ頓狂な大声が、聞こえた。

ぬいぐるみ(だ、だれだ……?)チラッ

女の子「んーー??」

ぬいぐるみ(イヤ、アイツじゃ、ない……)

モノマネむすめ「ねぇジュペッタ、トレーナーに棄てられたのかな? 残念だけど、アタシはキミのトレーナーじゃないよ」

ぬいぐるみ(ジュ、ジュペッタ?)

ぬいぐるみ(……!!)

なんとオレは、憎しみの思いからか、ポケモンに変化していたのだ。

ジュペッタ(まぁ、どの道オレは棄てられる運命なのだが……)

モノマネむすめ「でも、今からアタシのポケモンにしたげる! それーーっ!!」ポンッ

ジュペッタ(え)

カチッ。

パンパカパンパカパンパカパンパカパーン♪

ジュペッタ(おい、おい……)

なんと、このコに捕まってしまった。


モノマネむすめ「さ、ジュペッタちゃん。さっそくだけど、アタシに着いといで!」

ジュペッタ(え。え? ん……?)

なんとなく状況を理解するに。
今からこの子は、誰かの墓参りに行く所だ。

~数分後 シオンタウン ポケモンタワー~

モノマネむすめは、お墓に合掌し。

モノマネむすめ「ピッピちゃん、今年も来たよ。ほら、今日はね、アタシの新しいからかい相手を連れてきたの!!」

ジュペッタ(ひどい)

モノマネむすめ「……ピッピちゃん、もうあんなに経ったんだね。アナタがいなくなってから」

ジュペッタ(……)

コイツは表情こそ変えないが、悲しそうな目だ。
きっとコイツとピッピとやらは、硬い絆で繋がっていたのだろう。

ジュペッタ(かたやオレは、棄てられた身。なんだか、うらやましいな)

~その夜 モノマネむすめの家~

ジュペッタ(……眠れないな)

キレイに洗われ、食べものも与えられ、フカフカの布団に寝かされている。
本当はオレは今頃ゴミとして回収され、処分されている身だというのに。

ジュペッタ(優しいのだな、このコは)

モノマネむすめ「クー……クー……」

ジュペッタ(そういえば、オレを棄てたアイツは今なにをしているのだろうか……)

『ワタシ、ずっと大事にするから!!』

『そんな汚いぬいぐるみを持ってるの、アナタだけよって……』

ジュペッタ(……)

それからオレとモノマネむすめは、楽しい日々を過ごした。
大体、数カ月ぐらいだっただろうか。

モノマネむすめ「こんちは! ボクのマネをして楽しいかって? うん! たのしいーー!!」

男の人「お、おいおい……なんだいキミ」

モノマネむすめ「アンタ、私の彼になにしてるのよ! 変わったコね!!」

女の人「そ、それ、私のセリフ……」

モノマネむすめは、なんでも他人のモノマネが特技であり生きがいらしい。
人間ではないオレの目にも、とても凄く映る。

モノマネむすめ「へっへーんだ!!」

前の持ち主と暮らした日々。
それに劣らぬ、本当に楽しい日々だった。

モノマネむすめ(……)

でも、なぜだろう。

モノマネむすめ「ピッピ……ちゃん……」

ジュペッタ「!」

コイツのことを本当に理解できたとは、気持ちが通じ合ったとはオレには思えないのだ。

それに……コイツ、いつも気持ちを偽っている。
本当の気持ちを隠して、おどけた少女を演じている。

ジュペッタ(オレを棄てたアイツ。アイツと暮らしていた時は、そんなことは思わなかったのに……)

~ある日~

パパ「うーん、1年前、あの人形を失ってからというものの……」

ママ「娘のモノマネが更に上手くなってる……」

パパ「でも、年頃なんだから、もうそろそろモノマネは止めてほしいんだが……」

ママ「いつか男の子にもらったあの人形、そんなにも大事なものだったのね……」

ジュペッタ(……)

ジュペッタ(人形を、無くした……か)

薄々は感づいていたが、俺はこの日確信した。

やはり、そうだったか。
つまり俺は、その人形の代わりだったのだ!

『うん、新しいの買ってあげる!』

ジュペッタ(オレは、単なる代わり、か……。そうだ、思えば、いつかのピッピの代わりでもあるのか)

やはりオレは、ゴミとして処分されるのがお似合いなんだろう。
そうだ、モノマネむすめ……アイツは優しくしてくれたものの。

『ピッピ……ちゃん……』

アイツと本当に心を通わせることはできなかった。

ジュペッタ(……)ソーッ

モノマネむすめの目を盗んで、俺は家を出る。
そもそも1年前にオレは『棄てられた』んだ。本来オレには、存在している意味なんてなかった。

ジュペッタ(……クソッ!)

グチャグチャな気持ちで、埋め立て場を目指した。

~埋め立て場~

ジュペッタ「ん?」

そんな埋め立て場で、とある親子が何かを探している様子だ。

ジュペッタ(! あ、アイツは……!!)

女の子「……」キョロキョロ

オレを棄てた、アイツだ!
……また会うだなんて。

女の子「今日も、どこにも、いない……」

アイツは、ピッピの人形を抱えている。
どうせアレが、新しく買ってもらった人形だろう。

お母さん「もう1年も前の話よ。だから、諦めて……」

女の子「やだ! やだもん!!」

ジュペッタ(?)

女の子「だって、あのコは、あのコは……。やっぱり、やっぱり……ワタシの大事なコなんだもん!!」

ジュペッタ(……!!)

予想外、だった。

女の子「あのコにヒドイこと言っちゃった……。いっつも……いっっつも……一緒にいたのに!! 楽しかった時も悲しかった時も……一緒にいたのに……」

ジュペッタ(お前……)

女の子「今、すごく悲しいのに……。あのコじゃないと、ダメなの……。他のコじゃなくて、あのコじゃ……ない……と……」

ジュペッタ(……)

…………。

~モノマネむすめの家~

モノマネむすめ「ジュ、ジュペッタ……?」

ジュペッタ「ケケケケケッ!」

オレは、必死に訴える。

ジュペッタ(ごめん、やっぱりオレは、アイツのところに帰らないと!!)

ジュペッタ「ケケケッケケケケッ!!」

と言おうとしても、人間の言葉は難しい。

モノマネむすめ「んー……?」

ジュペッタ(ダ、ダメか! 伝わらないか)

モノマネむすめ「よくわからないけど、なんだか一生懸命だね、ジュペッタ」

モノマネむすめ「……一生懸命……だね。うらやましい」

ジュペッタ(……?)

モノマネむすめ「あのさジュペッタ、アタシ、あなたに謝らなきゃいけないことがあるんだ」

ジュペッタ(オ、オレに、謝る……?)

モノマネむすめ「アタシさ、ピッピの人形を無くしちゃって……。いつかのポケモンタワーのあのお墓、あれはそのコのお墓のつもりだったんだ」

ジュペッタ(……人形? ポケモンじゃなくて、人形だったのか)

ずっと前、お友だちとケンカしてね。
アタシのモノマネで、そのコのことからかいすぎちゃって。

そのコ怒って、アタシの人形を隠しちゃった。で、そのコは別の地方に引っ越しちゃった。
それきり、会えてない。会うのが怖いの。

ジュペッタ「!」

だから、アナタはその人形の代替えのつもりで捕まえたの……。ホントに、ごめんね……。

ジュペッタ(だから、か……)

モノマネむすめ「アタシの、アタシが、アタ、ア゛ダジの、せいっでっ……」

ジュペッタ(……)

モノマネむすめは泣いていた。
そこには表情の偽りはなかった。コイツはオレに、初めて本当の思いをぶちまけたんだ。

そして。

モノマネむすめ「そのコの、名前はね……」

ジュペッタ「!!」

聞き覚えが、あった。
いや、あり過ぎた。

ジュペッタ「……」

そう、か。
やはりオレは、モノマネむすめの家を出よう。

そしてオレがポケモンに変化した理由も、今ならなんとなくわかる気がする。

オレには、使命があったのだ。

ジュペッタ(“アイツ”の所へは、リニアを使えば……)

住所も教えてくれたが、やはり遠い。
正直、一匹で辿り着く自身がない。

でも。
……でも!!

ジュペッタ(オレが……二人を! 二人の心を救うんだ!! それが、オレの──)

~ある日~

お母さん「ね、ねえ! ちょっと来て!! ほら、このコ……このコッ……!!」

女の子「ぇ…………。……!!!」

野生のポケモンが、ボロボロのぬいぐるみを加えているのだ。
前以上にボロボロとなった、かつての女の子のぬいぐるみを……。

女の子「これ……は……?」

そしてそのぬいぐるみは、とある手紙を抱えていた。
いや大事に抱えているように見えた。

手紙は汚れ、水に濡れ、所々霞んでいるが、文面ははっきりと読み取ることができた。

女の子(……)

宛先人は……。


──そして


女の子「……久しぶり……だ……ね」

女の子はリニアに乗り、旧友の家を尋ねる。
その、旧友は。

モノマネむすめ「う……。う…………ん…………」

女の子「ごめん……。ごめんなさぃッ!! ワタシがこのコを持ってっちゃって……あなたには、すごく……!!」

モノマネむすめ「アタシも、そんな汚いぬいぐるみを持ってるの、アナタだけよって……あの時言ったから……。あの時、言わなかったら……。ごめん……本当に、ごめんなさぃ……」

お互いに泣きじゃくって抱擁し合って。
その後女の子は、ピッピ人形をモノマネむすめに返した。

二人は、仲直りが出来たのだ。

モノマネむすめ「……でも、なんで。なんであなた、その、手紙を……?」

『あなたに会うのが怖くて、アタシを恨んでるんじゃないかって。
ごめんなさい。
あなたのそのぬいぐるみ……大事なモノだってのはわかってたんだけど……。
あんなこと、言っちゃって……。
またあなたと仲良くしたいのに、アタシは臆病者で……』

モノマネむすめ「出せずじまいで閉まっておいたら、無くなっちゃって……それに、あのコも……」

女の子「あのコ?」

モノマネむすめ「……や、なんでもないの。……あ、そのコ……」

女の子のバッグには、ツギハギのぬいぐるみが飾られていた。

女の子「う、うん……。キレイにして、布も貼って……。ワタシとこのコで、大事なコンビだから!」

モノマネむすめ「……」

女の子「ど、どしたの?」

モノマネむすめ「なんだかこのコ、その……アタシと……前……?」

女の子「ん?」

……。

モノマネむすめ「……いや、何でもないの。なんだか……疲れてるんだ、きっと……。あなたに会えたから? 会えて……」


良かった……。


~夕暮れ~

モノマネむすめ「また遊びに来てね! いつでも待ってるからぁ~」

女の子「うん、ありがと!! 今度、そのモノマネもじっくり見たいなー!」

モノには、魂が宿るという。
いつまでも大切に、どうか大切にしてあげてほしい。

そしたら……きっと……。


「ケケケケケッ!」


フレンドは人形 フレンドの人形 ~完~

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