守るべきもの

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作者:ハクロー
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読了時間目安:14分
前回投稿した短編「兄を超えるために」を再編集して、兄のラティオスを物語に含めた作品です。内容はほとんど同じなので、そこらへんはご了承ください。
 「ついに辿り着いたぞ…!多くの探検隊が挑んでは敗れ、最強のポケモンが待ち受けているというダンジョン!」

 「お兄様、とうとうここまで来ましたね。このダンジョンを攻略して、財宝を持ち帰りましょう」

 探検バッジと探検バッグを装備して、ダンジョンの入口で心の準備をする、ラティオスとラティアス。二人がこれから挑むのは、数あるダンジョンの中で唯一、誰も攻略した記録がない未知のダンジョン「神域の山」。
 この大陸で一番高い山と言われており、その頂上には伝説の秘宝が隠されている。それを求めて多くの探検隊が挑戦したものの、ほとんどが失敗に終わっている。しかも帰ってきた探検隊の中には、仲間のポケモンを見捨てて逃げたという、信じがたい証言もあった。

 「ラティアス、いつも通りサポートをよろしくな!」

 「はい、お兄様。力を合わせて探索をしていきましょう」

 昔から一緒に探検隊として活動してきたラティ兄妹は、お互いに戦闘と探索を分担しており、高い戦闘力で敵を倒すラティオスに対して、持ち物の管理や空間把握など、常にサポートに徹するラティアス。
 完璧なコンビネーションで一気に頭角を現したラティ兄妹は、ついに探検隊連盟から、神域の山の挑戦を許可された。探検隊仲間からも盛大に送り出され、史上最大の挑戦が始まろうとしていた。

 ダンジョンへ入ったラティ兄妹だったが、意外にも探索は順調に進んでいた。その理由は、このダンジョンにはレベル1スタートがなく、持ち物縛りもなく、一人での挑戦もないからだ。
 この縛りに苦労した経験もあるラティ兄妹は、自由に戦えることもあって、意気揚々と山を登っていく。途中モンスターハウスに遭遇するも、慌てずに最適な対処で敵を倒して、逆にアイテムを補充できたこともあり、想像以上に探索が進んでいく。

 「これほど歯応えがないと、逆に不安になってくるな…。出てくる敵もそんなに強くないし、罠もそんなに多いってわけでもない…。どうして今まで挑戦した探検隊は、攻略できずに失敗したんだ?」

 「さあ…私も分かりません。もしかして頂上で待っているボスポケモンが、伝説級のポケモンなのかもしれません」

 そんな不安を抱きながら、ラティ兄妹はどんどん先へ進んでいく。
 そして階層は95Fまで到達して、ラティ兄妹は神域の山の頂上へ辿り着いた。ダンジョンの構造から一気に景色が変わり、大きく開拓されたような広場になっていた。既に太陽は傾いていて、夕陽が空に暁色のカーテンを広げているようだ。

 「ここが頂上なのか?誰もいないようだが…」

 「確かに景色は大秘宝と呼ぶに相応しいものですが…まさか宝の話は嘘だったのでしょうか?」

 今までの苦労が水の泡にならないことを願い、二人はさらに奥へと進んでいく。しばらく進むと、階段の前で倒れ込むポケモンの姿があった。

 「待ってラティアス、ポケモンが倒れてる!もしかしてあれって、仲間に見捨てられたポケモンなのか?」

 正義感の強いラティオスは、すぐに倒れ込んでいるポケモンに近づく。そのポケモンは、金色の毛並みと九本の尻尾が特徴的な、きつねポケモンのキュウコンだった。
 ラティオスはキュウコンをゆっくり起こして、意識があるか確認する。

 「おい、しっかりしろ!何があったんだ!」

 ラティオスが声をかけると、キュウコンはゆっくりと目を開いて、赤い眼をラティオスに向ける。

 「ああ…助けが来たのですね。この階段を登った先に、あの恐ろしい怪物が…」

 「やっぱりボスポケモンがいるのか!ラティアス、戦闘準備だ!」

 「は、はい!」

 ラティアスは持ち物の確認を始めて、ラティオスはキュウコンをゆっくり寝かせて階段の上に向かう。

 「ここは俺達に任せて、君は安全な場所に避難してくれ!」

 キュウコンに背を向けながら、ラティオスは前方の怪物がいるという場所を警戒する。そのせいでラティオスは、背後でゆっくりと立ち上がるキュウコンの気配に気づけなかった。

 「…クックック、愚かなヤツよ」

 キュウコンは無防備のラティオスに向かって、悪の波動を放った。死角からの攻撃を受けてしまい、ラティオスはそのまま階段の段差に倒れる。

 「お兄様!そ、そんな…」

 「ククク、まったく馬鹿な男じゃ。わっちの演技に見事に騙されおって、後ろに本当の敵がおるのにも関わらず、なんとも情けないことじゃ…」

 妖艶な笑みを浮かべながら、キュウコンは、ラティアスの方を振り返る。突然の展開にラティアスの顔から、焦りの表情が見える。

 「なるほど、おぬしらが噂の兄妹で結成された探検隊か。兄の方はなかなかの力を持ってそうだったが、妹の方はなんとも言い難いのう」

 「ほ、本当にあなたが、この神域の山のボスなんですか?」

 「フフッ、そうじゃ。
 この地に身を置いて数百年、多くの探検隊がわっちに勝負を挑んできたが、どいつもこいつも骨のないヤツばかりじゃ…。あまりにも退屈じゃったから、戦いに敗れた探検隊に、わっちはある取引を提案したのじゃ。

 探検隊の中から一匹だけ生贄を渡せば、残りの仲間は助けてやる、とな。

 …まぁこれは単なる余興じゃがな。探検隊の絆を試す儀式みたいなものじゃがな、呆れたことに本当に仲間を見捨てて逃げる探検隊がおっての。
 罰としてその探検隊には、祟りを受けてもらうことになり、仲間を裏切ったあ奴らは、ずっと苦しめられることになるじゃろう」

 遊んでたかのように、今までの経緯を楽しそうに語るキュウコン。ラティアスは恐怖心を感じながらも、探検隊としての使命感と、兄を助け出すための正義感で心を持ち直す。

 「あなたのような存在を放っておくわけにはいきません。お兄様を守るために、私があなたを倒します!」

 「ククク、面白い。わっちを倒せると思っておるのか?その自信、へし折ってやろうかや!」

 いきなりキュウコンはラティアスに向かって、火炎放射を放ってくる。ラティアスはそれをかわして、空中を浮遊しながらキュウコンにミストボールを打つ。
 キュウコンはそれを正面で受けたが、まるで何事もなかったような様子を見せて、ラティアスに火炎放射を放ち続ける。攻撃が当たったのに、まるで効いてないように見えるが、それでもラティアスは攻撃を続ける。
 しかし戦闘が長引くにつれて、火炎放射がラティアスの体をかすり始める。そしてついに、キュウコンの火炎放射がラティアスの翼を直撃する。

 「ううっ…そんな…」

 「空中なら優位に立てると思っておったのか?残念じゃが、おぬしの飛行してる時の動き方を観察しておれば、今のように動く方向を予測して当てることも可能じゃ。片翼がやられてしまえば、自由に飛ぶこともできまい」

 ラティアスは痛みで顔をしかめながら、地面に下りていく。しかしそれでも諦めることなく、ラティアスはキュウコンに竜の波動を放つ。
 キュウコンは冷静に悪の波動で技を打ち消し、電光石火の早さでラティアスに接近する。そして動けないラティアスに対して、キュウコンは右前脚でラティアスの顔を踏みつける。

 「翼をもがれた鳥は、地を這いつくばるしかできぬ。所詮おぬしは、兄がおらぬと何もできない、その程度の存在というわけじゃ」

 屈辱的なことを言われたラティアスだったが、彼女自身も薄々感づいてはいた。
 探検隊になりたいと言ったラティオスに、ついていくような形でラティアスも探検隊に入った。ずっと兄の背中を追いかけるだけの毎日で、一緒にいればいつか追いつけるとラティアスは思っていた。
 しかしラティオスは、どんどん探検家として有名になっていくのに対して、ラティアスは特に周りから評価されることもなく、力の差はどんどん離れていった。それでもラティアスは、兄を支えたいという一心で、彼の後ろを離れることはなかった。

 「おい、性悪狐。俺の大切な妹から、その汚い足をどかせ」

 なぜならラティアスは、兄のラティオスを一番理解していたから。どんな困難に陥っても、最後には必ず勝つ姿がそこにあるから。

 「ククク、てっきり一撃で倒したかと思ったら…案外しぶといやつじゃのう」

 ラティアスを踏みつけている足を離して、キュウコンはラティオスの方を向く。その間にラティアスは、自己再生で体力を回復する。

 (私だってまだやれる…!お兄様に頼ってばかりじゃだめ…)

 ラティアスが回復している間、ラティオスとキュウコンの戦いは苛烈を極めていた。

 「ククク、よいぞ。やはり戦いというのは、こうやってある程度、実力が近くなくては面白くないからのう」

 「俺が倒れてる間に、妹がずいぶん世話になったからな。礼はきっちりさせてもらうぞ!」

 キュウコンの火炎放射が地形を焦がせば、ラティオスのサイコキネシスが大気を揺るがす。お互いの実力は拮抗していたが、徐々にキュウコンから疲れが見え始める。先程までラティアスと戦っていたこともあり、ラティオスとの激戦で一気に体力が消耗したようだ。

 「ククク、わっちをここまで追い詰めるとは、さすがの実力というわけか。こうなれば、もはや手段を選ばずにはいられぬ!」

 キュウコンはそう言うと、壁際で回復しているラティアスの方を向く。

 「なに?まさか…やめろ!」

 そのまま悪の波動をラティアスに放つ。回復に専念していたラティアスは、攻撃に気づくのが遅れてしまい、その場から動けずにいた。

 「ラティアス!!」

 全速力でラティオスは飛び立ち、そのままラティアスを技の範囲外まで吹き飛ばす。しかしそれによって、ラティオスが悪の波動を受けてしまい、技の威力で壁に叩きつけられて、そのまま地面に倒れ込む。

 「お…お兄様…」

 何が起きたのか一瞬分からなかったが、兄が身代わりになったことを理解したラティアスは、慌ててラティオスの側に近寄る。

 「ラティアス…怪我はないか?何とか間に合って良かった…」

 「そんな、何で私なんかを庇って…こんな弱い私を…」

 「いや、ラティアスは弱くなんかないさ。俺の自慢の妹が、本当は同じくらい強いってことは、俺が一番よく知ってる…」

 涙を流して顔を俯くラティアスに、ラティオスは右手を震えさせながら、自慢の妹の顔を触れる。

 「今まで俺を後ろから支えてくれて、本当に感謝してるよ。だから…今だけは…俺の前で戦ってくれ…頼んだぜ…相棒」

 そしてラティオスは意識を失った。自分の妹に希望を託したその表情は、安心しきったように安らかだった。
 もうラティアスに迷いはない。確固たる決意が、ラティアスの凛々しい表情に表れていた。

 「愚かな…おぬしではわっちに勝てぬ。先程の戦いでそれは証明されたはずじゃ」

 見下すように言い放つキュウコンだが、その直後にラティアスの体を光が包む。キュウコンとラティオスが驚愕しながら見守っていると、そこにはメガ進化した、ラティアスの姿があった。

 「さっきまでの私とは違うわ。なぜなら私は、お兄様の思いを受け継いだから」

 自信満々の様子に苛ついたキュウコンは、ラティアスに火炎放射を放つ。ラティアスはサイコキネシスで、向かってくる炎を途中で止めて、そのまま上空へ軌道を捻じ曲げた。

 「な、なんじゃと!?わっちの攻撃がこうもあっさり…」

 「次はこっちの番ね。覚悟してもらうわよ」

 ラティアスは自身のガラスのような羽毛を使い、光を屈折させて姿を消した。

 「き、消えたじゃと!?小癪な…」

 ラティアスを見失って周りを見回すキュウコン。その隙をついて、ラティアスはキュウコンにしねんのずつきをぶつける。
 顎にヒットした影響で、怯んでいるキュウコン。さらにラティアスはサイコキネシスで、キュウコンの自由を奪って攻撃を続ける。壁に叩きつけたり上空から地面に落としたりなど、ラティアスの攻撃はキュウコンの戦意が喪失するまで続いた。
 そして最後は、キュウコンを抱えたラティアスが、超高速で飛行しながら、その勢いでキュウコンを壁に思いっきり叩きつけ、彼女を完膚なきまでに攻撃した。戦闘が終わると同時に、ラティアスの姿も戻った。

 「な、なぜじゃ…。このわっちが、なぜこんな兄より弱い妹に負けたのじゃ…?」

 「私自身も不思議よ。どうしてこんな力があったのかなんて。多分それは、大切なものを守りたいという気持ちがあったから。
 今までお兄様の後ろにいるだけで、私は何もしていないと思っていたわ。でも本当は、お兄様を守るために色んなことを考えて、多くのことを経験してきた。守るべきものがあったから、私もここまで成長できたのかもしれない…」

 「…ククク、そうかや。最初から油断している時点で、わっちの負けだったようじゃな」

 満足したような表情で倒れるキュウコン。それを見届ける間に、ラティオスがふらふらしながらラティアスに近づく。

 「お兄様!怪我してるのに、無理しちゃいけません!」

 「大丈夫だ、何とか動けるくらいの体力は残ってるさ。それよりも、本当に財宝があるか確かめないと…」

 本来の目的を達成させるために、ラティ兄妹は階段を上がっていく。そしてその先に待っていたのは、古びた石碑だった。

 「これが…宝か?」

 「アンノーン文字ですね、解読します。

 『頂きに辿り着きし者よ。宝とは、己の経験と知識なり。
 この地に眠る悠久の時を渡りし宝を、自らの力とするが良い』

 もしかして、この宝って…」

 石碑を読み終えたラティアスは、これがどういう意味を表すのかをすぐに理解して、階段を下りて倒れ込むキュウコンに近寄る。

 「おいラティアス。急にどうしたんだ?」

 「お兄様、お宝ならここにありますよ。どんな財宝よりも価値がある、最高のお宝が!」

 「…クックック、すぐに理解するあたり、流石としか言えんわ。
 まあよい、おぬしら兄妹との旅なら、退屈することもなかろう」


 こうして神域の山を攻略して、最高のお宝を持ち帰ったラティ兄妹。後にこの探検隊は、多くの伝説と功績を残すことになるのだった…。

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