夢を見る者

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
作者:エクション
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:16分
こちらはジェードさんの企画、「バトル書きあい大会」という企画に遅刻で参加させていただいた作品です。
注意事項
・独自設定
・勝手すぎる解釈
それでもいいという方がいたら、読んでいただけたら幸いです。
……皆さんッ、お待たせいたしました!

数々の戦い、ドラマ、そして友情!

時にはアツく、時には儚い……

美しき物語が繰り広げられたこの大会ですが、

遂に今、終わりを告げようとしています……


ですので


どうか


最ッ高にアツい歓声をもってッ!!

最後を飾る戦士たちをお迎え下さい!!!





「スターエリア第一回トーナメント決勝戦!
 ライボルトVSエースバーンッ!!!!!」


**********


歓声と熱狂が渦巻くスタジアムの中央に、二匹のポケモンたちが整然と相対している。しかし、彼らの心の中にははそれとは対極の位置における程に、それこそ現実に発現したら観客など悠に飲み込む感情が渦巻いているだろう。

彼らはそれぞれ、この時をずっと待ち望んでいたのだ。

「……オレには夢がある」
前奏ともとれる心地よい雑音が渦巻く中、そこに響かせるには些か小さすぎる声が炎の兎から漏れた。
それはしかし、彼を見据える雷の犬に届かせるには充分だった。
ほう、と、ライボルトから出てきた声を聞き、エースバーンは口を続ける。
「遂に、スポーツとして扱うことが許されたこの力で、オレは頂点をつかみ取るッ!それがオレがここに立つ理由だ!!!」
締めに天高く拳を掲げると、ギャラリーは一層湧き立ち一際大きい叫び声を上げた。ここに至るまでの彼や大会設備の道のりはそれは過酷だったのだが、今、この場において、そんなことは重要ではないだろう。
「……言っておくが」
対するライボルトは、落ち着いた声でエースバーンに語りかける。
「夢とは、それはそれは苛烈なものだぞ?ときに私達を縛ることもあるし、劣等感を感じさせることも
「知ってるさ」
否定せず、彼はそれを認めた。
しかし、
「けど」
彼は続ける。
「オレは知っているし信じているんだ。夢は、叶えるためにあるって!そのためにオレは努力してきたんだ!!!」


わあッ……!!!


戦いすら始まっていないというのに、スタジアムのボルテージは最高潮にまで達する。
「いいだろう」
ライボルトは彼の熱を受け、満足したように首をうなずけた。
それを聞き、または言ってすぐに彼らはお互いに背を向け、ゆっくりと指定された場所まで歩き始める。これ以上話すことはないとお互い理解しているのだろう。

それと同時に雑音は消え去り、本当の前奏がスタジアムに響き始めた。

連続する金管楽器の音に、高鳴る鼓動が混ざる。それは最初から音楽の一員であったかのように深く適合したが、それを聞くのは戦場の中心に立つ二匹だけだろう。


彼らが歩を止めた時に金管楽器の終わりが響き、駆け下りるような弦の弾かれる音を聞いて


「「“でんこうせっか”!!!」」
大太鼓が叩かれた時には、既に彼らは余波を出しながら稲光の速さで激突していた。
『まずはお互い、速攻で仕掛けにいったといったところかーッ!?』
「ぐっ……」
「へへっ」
同じわざであるはずなのだが、ライボルトがエースバーンの威力に対し対応できず、押し負けている。力の差は確かにあるのだが、それを考慮しても劣勢すぎる。
「ふっ!」
風のような金属を叩く音とともに、ライボルトは強く足を踏み切って真横に飛び退いた。
「それが噂に聞く”リベロ”とかいうものか……」
『ライボルト選手ッ、調べてはいたようだが予想以上の威力だったのかッ!険しい表情をしているーーー!!!』
金管楽器が盛り上がりをかけているのとうるさい解説をよそに、ライボルトは事前に相手をリサーチして得た情報を元にたった今起きた現象について分析をし始める。

なんでも、今対峙しているポケモンにはかの神と呼ばれるアルセウスの力の断片とも言われているわざ、“ほごしょく”に似た性質を持つ特性を抱えているだとか。

「“エレキフィールド”!」
「来たか!」
『おttv、こkdrmあってまttきzghブッ
出し惜しみをする必要はない。そう考えたライボルトは己のフィールドを作り出すために電気を地面に駆け巡らせはじめた。機材にトラブルが出たようだがそんなことを気にしている余裕は今の彼には無い。というかうるさい解説聞かなくてすむので一石二鳥である。エースバーンはその様子を見て数歩後ろに飛び込むが、
細い笛のような音が鳴り始める頃には、観客席にまで薄い電気が地面を覆っていた。
「“でんこうせっか”!」
「ふっ!」
ライボルトがエースバーンに速攻を仕掛ける。エースバーンはこれを避けようとせず、腕を斜め十字に組み防御の姿勢を取った。
「“エレキボール”!」
「おっと!」
ライボルトのでんこうせっかを受け止め、横に受け流したエースバーンはそれに向かって電気で作り出した珠を思い切り蹴りつけ、ライボルトに向かって放つ。
ライボルトはこれを危なげなく避けた。
「エレキボールを避けたとすると“ちくでん”ではないか……けど、体が当たった時に痺れるような感覚もない……?」
「ふむ……エレキフィールドが切れるまで、強化されている電気わざを軽減しようとしているのか?」
気品がある弦の弾く音が緊張を煽る中、二匹は冷静に相手方の分析を広げる。
「“かえんボール”!」
「そうでもないか!“ボルトチェンジ”!!」
なんの楽器か素人耳には判断がつかない音のメロディが流れ始めると同時に、その場を支配していた重圧はあっけなく崩れる。エースバーンの小さい予備動作と共に放った燃え盛る小石を、エレキフィールドの恩恵もあってかでんこうせっかを使ったときよりも身軽になった動きで軽々と躱し、そのままエースバーンに突撃する。
「“エレ
「はっ!」
「ぐっ!」
エースバーンは無理やり電気の珠を作り出していたが間に合うはずもなく、ライボルトの強化されたわざを諸に食らってしまった。
しかし、その狙いは攻撃ではないことをライボルトは理解している。
「軽減はしたけど……それにしても重いな……」
「そいつはどうも、タイプ変更を間に合わせるのもなかなかだが」
観客、ましてや解説にすら理解できているのかも分からない攻防戦を繰り広げている内に、再び大太鼓の音が聞こえてきた。
「仕掛けるぞ、“ボルトチェンジ”!」
「ぐっ……」
重く、それでいて速すぎるライボルトの連撃にエースバーンは防戦を強いられる。電気タイプになっているというのにこの威力を誇られると意識すると、どうしても他の技を使うことに気後れしてしまうのだ。
「夢を語るというのに、お前はその程度なのか?」
「……」
「正直に言うが、私はお前が羨ましいんだ。才能に恵まれているからな」
「……ッ」
ゆっくりと、ライボルトは言葉でエースバーンの心を折りにかかる。いや、これは彼の本心なのだろう。
エースバーンの特性は稀にも見ない希少なものであり、尚且自由や機転が効きやすく強力だ。
それに対して、ライボルトはどうだろうか?
投げられた電気の珠を吸収する能力もなければ、触れた相手を痺れさせる力もない。

そんなポケモンが、才能ある者を圧倒しているのだ。

期待したのに、いい相手だと思っていたのに。
その思いは、失望された者を重く押し潰す。
最終戦にふさわしい曲がエースバーンの心臓をより強く締め付けた。
「……終わりにしよう」
これ以上はただの無駄にしかならない。そう判断したライボルトは一層足に力を込めてエースバーンに突進する。
ライボルトは出ごたえを感じなかった。
「……なっ!?」
そこにエースバーンの姿はなく、ただ彼の影がライボルトの真上に落とし込まれている。
一つの弦楽器しか流れない時間が無限に感じられた。
「ッ!」
本能で危険を感じ取り、ライボルトはボルトチェンジでその場から離れる。


「“とびひざげり”!!」


「ぐおっ……!」
隕石でも落ちるかのように繰り出されたそのわざは、直撃を免れたライボルトにも余波として届き決して少なくないダメージを与えた。
「だが、ここまで勢いよく外したのなら……」
「……」
「……まだ立つか、良き根性は持ち合わせているようだな」
おぼつかない足取りで揺らめくエースバーンは、しかし確かに立っていた。
地面に亀裂が入るほどの威力で放たれたとびひざげりを外したというのに、その反動を強く全身に響かせても諦めないその姿勢に、ライボルトは先程の発言を暗に撤回する。

「……まだ」

「ぬっ?」
しかし、彼の変化はまだ止まっていなかった。
厳密に言うのであれば、彼が作り出した亀裂。

そこから、紫色の光が強く漏れ始めた。

「なっ……!?」
予想外のことにライボルトは目を疑うが、エースバーンは構わず続ける。


「負ける訳には……いかねぇんだ!!!」


彼の感情に呼応するように、
あるいは、彼の“夢”というものを体現させるように。
紫色の光は全てエースバーンに吸収されていき、それに応じてエースバーンの体が巨大化していく。
それだけではなかった。
彼の足元から巨大な火球が出現し、本体を地面、すなわちライボルトから大きく離してしまったのだ。こころなしか、耳も長くなったような気がする。ライボルトが知る由ははないが、エースバーンは限られた個体しか成る事ができない、“キョダイマックス”をしたのだ。
三度目の大太鼓の音が、より壮大感を引き立たせている。


『オオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』


地を比喩抜きに震わせる雄叫びが響いた。


**********


摩訶不思議な現象が起こった時、観客の大勢は最高に沸き立った。
神が彼に微笑んだと、
あんな感じ悪いやつやっつけちまえ、と。

そして、
「ひどい話だな……」
その圧巻を目の前にしたものの大部分は諦めるだろう。
理不尽だと嘆き、圧倒的な存在の前に、膝をつくだろう。


だが、


「だが、あれぐらいなら充分だろう」


ライボルトはそれを見て、いっそ好戦的な笑みを引き裂くように浮かべた。
「“かみなり”」
細い笛のメロディと共に、キョダイエースバーンの前に一筋の太い閃光が落ちる。それはエースバーンに届くことはなく、ただずっとそこに電流の滝が流れ落ちているだけだ。
「“でんこうせっか”」
しかしこれは狙って行ったのか、ライボルトは落ち続ける光に近づき、



「……“ボルトチェンジ”!!!」



次にとったライボルトの行動に、スタジアムにいる者全員が目を奪われた。
体に電気的エネルギーを纏わせたライボルトが、一筋の稲妻を勢いよく駆け上がり始めたのだ。



「はあああああぁぁぁっ!!!!!」
強烈に昇りゆくその様は、『雷登りライジングボルト』と形容するに相応しいだろう。

吹奏楽器のクレッシェンドが最高潮に達した時、エースバーンより遥かに高い位置に上り詰めたところで、滝のように降り注いでいたかみなりが消える。
そこにいた彼は、たてがみが大きく発達していた。
姿こそ変わってはいるが、彼はメガシンカを引き起こそうとした訳ではない。引き起こしたのは、本来であれば特殊な力を持つ宝石やタネがないと発動しないしかし条件さえ揃えば誰でも引き起こすことができる“かくせい状態”であり、彼がたまたまその時に姿が変化するポケモンだっただけである。

偶然ではない。


これは全て、ライボルトが努力や研鑽をした末に得た賜物なのだ。


「“かみなり”!」
今度はエースバーンに当たるようにかみなりを、己も巻き込むように斜めに落とす。
『グッ、“キョダイカキュウ”!!!』
もちろんエースバーンも黙ってはいない。空に上り詰めた犬を撃ち落とすために、自分が乗っている火球を雷の始発点の方向へ全力で蹴り飛ばす。
それに対しライボルトは、挑戦するように笑ってわざを繰り出した。

「“でんこうせっか”!!!」

それ自体は弱いわざだ。基本、素早い動きをするためだけにしか使われない。
しかし、今の彼には己の力を最大限に引き出した状態と、雷で出来た黄金の道があった。



それは、かの太陽を食らう伝説のポケモンが扱う、『メテオドライブ』にすら見紛うそのわざは、彼を飲み込まんとする太陽を容易く貫いた。



『なっ……ぐぅっ!!!」
弦楽器のソロが余韻として響く中、勢いの衰えない閃光はそのままエースバーンに直撃し、彼の夢はみるみるうちにしぼんでいった。
「はぁ……はぁ……」
元の大きさに戻ってしまったが、それでもそれと同時にライボルトからはかなり距離を離せた。エースバーンは今のうちに体制を整え、落ちてくるライボルトに最後の力を振り絞ってかえんボールを放とうとする。

バチッ、と。

足元から何かが跳ねる音と感触を感じた。
「っ?」
エースバーンはそれを不審に思い、音のした足元に目を見やる。
そこには電気でできたように見える、謎のリングが浮かんでいた。


「逃げ先が悪かったな」


ライボルトはかみなりを昇る時にボルトチェンジを使っていた。
このリングは、そのわざの始発点だったのだ。
「……ッ!!」
「遅い」
「ぐっ……!」
とっさに聞こえた声に飛び退こうとするが、消耗した体力では強化された俊敏さに敵うはずがなく、連続する金管楽器の音が流れる中であっけなくとどめを刺される。

エースバーンに、再び立ち上がる力は残されていなかった。

『……エースバーン選手、戦闘不能!よって勝者は、このトーナメントの優勝者はッ!ライボルト選手だーーーーー!!!』
今日一番に湧き上がる歓声を意に介さず、四度目も細い笛のメロディを耳に入れながら、ライボルトは倒れ込んだエースバーンを見据えていた。
何故、彼は絶望せず、目の前の夢を見る者を打ち砕けたのか?
「覚えておけ」
それは、ライボルトが、
「私の夢はな」
投げられた電気の珠を吸収する能力もなければ、触れた相手を痺れさせる力もない者が、


「……才能の無いものが、才能のあるものに追いつく様を見せつけることだ」


特性に“マイナス”を持つ彼が目の前の巨体だった者と同等か、またはそれ以上に巨大な夢を見る者だったからだ。


**********


「はぁ。立て、いつまで寝ているつもりなんだ」
すっかりかくせい状態が解除されて、元の姿に戻ったライボルトは、未だ仰向けになっているエースバーンにため息混じりで声をかけた。
一方のエースバーンはそれを聞いても反応せず、虚空を向いては泣きじゃくっていた。
「うっぐ……えっぐ……ちくしょ、まけちった……」
「まだ未熟だな」
ライボルトは呆れた声を出して、エースバーンの首根っこを咥えて、熱気が収まらないスタジアムを後にするべく引きずり始めた。
「ほっといてくれよぉ……!」
「あいにく様、そうは行かないな。忘れてはいけないがお前も表彰されるポケモンだぞ。それに……」
「なにさ……」
無愛想すぎるライボルトに文句をぶん投げてると、ライボルトからこんな声が返ってきた。


「未熟ということはまだ成長する余地があるということだ。これからも努力を続けるのであれば……あの滅茶苦茶な現象も使いこなせるのかもな」


「……」
エースバーンはそれを聞いて静かになった。しかし、それは決して悪い意味ではないだろう。


**********


「……そして次はッ、若くして決勝まで上り詰めたが、惜しくも届かなかった期待のルーキー、エースバーーーンッ!!!彼には夢があると言っていましたっ、是非ともその夢、叶えていただきたいッ!!俺たちは応援しているからな!!!とりあえず今は、
準優勝おめでとう!!!!!」
大会を主催したガオガエンから銀のメダルを首にかけられ、へへへっ、と頭をかくエースバーンの顔を見て、ライボルトは少し心が安らぐ。
「そして優勝者!」
と、自分の番が回ってきたので彼は真剣な面持ちに戻す。




「エースバーン選手の起こした奇跡すらをも打ち砕き、その奇跡とすら見間違う努力の結晶で頂点にまで上り詰めた男ッ!我々は彼に、敬意をもってこう呼ぼうッ!『無才の雷鳴』!!ライボルト!!!」
いつだったか
そのときは ゆめをみるもの のみが ふしぎなちからを あつかっていた
いまでは そのちからを あつかうものは めずらしく なくなったが
そのちから 『夢特性』は
ほんらいは さいのうでは なく
なにかを なしとげたいと
つよく ねがった ポケモンに あたえられた ちからだと
ここに しるしておこう

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

感想の読み込みに失敗しました。

 この作品は感想が書かれていません。