ねがいごと

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ジェードさん主催の「ポケモンバトル書きあい大会」エントリー作品
キュウコン(原種)vsラティアスです
 一人の若い男が林の奥にひっそりとたたずむ清らかな池にやってきた。
 男は半年前に最愛の妻を亡くしており、それ以降悲しみに明け暮れる日々を過ごしていたが、この池には願いを叶えてくれる竜神『朱き夢鷲竜』がいると聞き、その噂にすがって唯一のパートナーである九尾(キュウコン)と共にやってきた。
 男は台を立てて、その台の上に九尾に背負って運んでもらった、大量の木の実の食料を中心にした供物を並べた上で、鈴を鳴らしながら熱心に祈り始める。

『なにようじゃ?』
 すると池の上に歪んだ空間が出現し、そこから朱き夢鷲竜(ラティアス)が姿を現し、男の心に直接語りかける。

「鷲竜さま鷲竜さま、お願いがあります、亡くなった妻を蘇らせてほしいのです」


 * * *


 それを聞いて我は口を噤む。

 死者の蘇生は我の力の範疇にない。

 朱き夢鷲竜とは呼ばれる我は、心,認識,記憶,夢などを扱う力には長けているが、万能ではない。それを願うならば、辰刻の龍の力で恋人が死ぬ前に時を巻き戻す、幽世の龍の力で恋人の魂を呼び戻して肉体に移す、願星の子の力で亡くなった因果を曲げる、などが相応しい。
 会わせるだけで良いならばこの男の記憶にある恋人を読みだして、『夢写し』で一時的に恋人の幻と会わせることはできるが、それでは満足はせぬだろう。
 よく兄者に「お前は浅慮だ、なのに優しすぎる」と叱られる。しかし頼られるからには我にできることは施してやりたいし、お人良しと呼ばれようとも構わない。それにこうした願いを受ける度に我が貰う食料を「うまいうまい」と言いながら嬉しそうに食うのは兄者であろう、その兄者に言われたくはない。

「どうか願いを聞き届けていただけませんでしょうか?」
[…………]
 男の隣に控える黄白色の九尾が寂しげな表情を浮かべる。どうした? 我の姿に怯えているのか?
 うん? ……むむ、どういうことだ? む、むむむ? ……まあ、戦いながら考えるとするか。


『事情は分かった』
「おお」
『願いを叶えたければ、我の前に力を示せ』
「ありがとうございます」
 男と九尾はそれを聞いて、戦闘の態勢へとつく。

 願いを叶えて欲しければ、我と戦って勝て。

 別に勝負などしなくとも報酬は受け取っているので叶えてやっても良いのだが、こういう条件でもつけてやらないと誰でも彼でも願いに来てしまうので、ふるいを掛ける意味もある。またそれが叶えたくない願い、叶えられない願いならば、全力で負かせばよい。
 願いを叶えるためには代償が必要で、強き力を見せつける必要がある。
 我は自分の細い羽毛から放たれる力を周りに四散させて、力の渦を作り出してそれを九尾を中心に集約させて[ミストボール]を作り出して包みこむ。九尾はそのミストボールから抜け出しながら。

  一閃

 まばゆく[あやしいひかり]を放つ。
『無駄じゃ』
 おおよそ手始めに幻術をかけて我を惑わそうとでも考えたのだろうが、我は夢幻の竜と呼ばれし者、その程度の術なぞ幻術使いの我には効かぬ。
 うまく決まらなかったので再び幻術にかけようと[あやしいひかり]を放ってきた。すかさず鏡の障壁を張って、その光をはね返してやると、九尾は千鳥足になり混乱してしまった。
「しっかりしろ! 火炎だ」
 男は大声で呼び掛けるがしかし、九尾は混乱しきっているようで、放射した火炎はこちらに向かうことなく自分に向けて放ってしまい、わけもわからず自分を攻撃してしまう。
 我は次の攻撃に備えて、羽毛に湧き上がる精神波動をかき集めていく。
「もう一度、放て」
 九尾は混乱しながらも男の声に応じて、火炎を吹いて攻撃をしてくる。
 混乱の千鳥足でふらついて狙いが定まらないのか、我はそれを楽にかわすことができた、再び羽毛の精神波動を霧状に放出し、全方位から相手を包み込むように[ミストボール]を生成させる。
 だが、ミストボールは九尾に命中したのだが、我にその瞬間を見ることができなかった。

『なぬっ』

 我の目の前に炎の壁が立ちはだかり、気が付けば四方を炎の壁で囲まれている。
 二回目の火炎の攻撃は、かえんほうしゃを外したのではなく、[ほのおのうず]で我を拘束するつもりだったのだ!
 壁の向こうから声が聞こえる。
「焔を纏って突撃!!」
 炎の壁を突き破って、炎に包まれた九尾が[フレアドライブ]で突進してきた。かわすことができずにはね飛ばされたものの、バランスを戻して空中で静止する。
 この程度の炎では我の龍皮に傷をつけることはできない、だが思いのほか熱かった。いったい何が起こったのじゃ。先ほどよりも体毛が膨らんでいる九尾の姿を見て、その謎に気づいた。

『そうか、炎を貰っておるのか』

 九尾の特性『貰火』。
 炎を受けるとそれを吸収して自分の炎にする。最初の自分への自傷攻撃を吸収して『貰火』したというのか。
 その貰火を受けてその火力を高めて、危険を覚悟で混乱したまま火炎疾駆をした。
 混乱したままで……? こんな複雑な戦術を意識がおぼつかぬ状態でやったと?
 否違う、そもそも混乱はしていないのでは?
 すぐに自力で解き放ち、混乱した演技で思い通りに戦いを進めていたのではなかろうか?
 ぐぬぬ、油断しおった。もしそうだとするならば、完全に騙されていたのだっ!
『……うぬ、いかぬいかぬ』
 つい熱くなり、うっかり本気になりかけてしまった。だが、我をこんな気持ちにさせたならば、――もう決まっておろう。

『もうよい、我の負けじゃ』
「え?」
『願いを叶えてやろう。確かに感じ取れたぞ、愛の力というものを』
「あ、ありがとうございます」
 男は感謝の言葉を言い、隣にいる九尾も嬉しそうだったが、同時複雑そうな顔をしていた。

 願いを叶えてやりたくなるような見事な戦いぶりだった!
 確実に一撃を与えにいこうとする試合運びもさることながら、幻術による混乱をあれだけの短時間で解除する精神力、それはやはり願いを叶えてやろうとする愛の力という他あるまい。
『さあ、近う寄れ。多少の痛みをともなうかもしれぬが、我慢しろよ』
 我は男の頭をわしづかみにして、一気に精神波動を注ぎ込む。

「うわあああああああああああああ」


 気を失った男の姿を見て、我は呟く。

『さて、これからどうしようか。 のう?』





*************


[――××さん……××さんっ!]
「う、うーん……」

 男が目を覚ますと、そこには亡き妻の姿があった。
「本当に、本当にお前なんだよな? 僕の好きな料理は」
[魚の香草焼き。でも、骨を外しておかないと怒る]
「……外してたの?」
[焼けば骨が消えるわけないでしょ]
「あ、ありがとう。 ……よかった! 間違いなく君だっ!!」
 男と妻は泣きながら再会を喜び合い、共に抱き合った。

[夢幻鳥さん、横で見ていてどうなることになるか心配でしたが、私の願いも聞いて下さり、どうもありがとうございました]
 男の妻は朱き夢鷲竜に深々と礼を言う。
『おヌシはこれで良かったのか?』
[はい、まあ苦難もあるかもしれませんが、夢幻鳥さんが出来るすべてをしてくださりましたので、これ以上は要りません]
『そうか』




 朱き夢鷲竜は、仲良く池を去っていく男と、九尾の姿を見送っていた。

 九尾の九つの尾の一本一本には魂が収まるとされる。一尾につき100年で一頭九尾で1000年とされ、九尾は非常に長い寿命を持つのは複数の命を持つからだと言い伝えられる。
 おそらくその死の直前に近くにいたのだろう、九尾はその魂を拾い上げており、尾の一つには男の妻の魂が宿っていた。九尾自身も彼の悲しみに心を痛めていて、自分が代わりに成おうとしていた。
 そこで朱き夢鷲竜は、男の記憶から九尾のものを削除して妻に差し替えた。さらに九尾が妻に見えるようにし、九尾の言葉が理解できるようにした。
 そして九尾の方にも、尾に宿っていた妻の心を九尾の心と混ぜあわせて一緒にし、自身を人間の姿に化かす幻術を与えて習得させた。

 常人には分からないが、狐の幻術を見破れる者であれば、女に化けた狐が男を誑かせているように見えてしまうだろう。
 あの一人と一匹がこの後、どのような運命をたどるのか? 浅慮な朱き夢鷲竜は深く気にすることはなかった。
 一人と一匹は幸せに暮らすことになるのだろうと信じていた。


男→ピュア
妻→男が何をしだすか横で見ていて怖かったけど、ラティアスが自分の要望を聞いてくれてほっとしている。
ラティアス→ポンコツ ちなみに一人称の読み方は我(われ)
キュウコン→女の子。心を混ぜたと言っても、大部分はキュウコンの心なので妻の記憶を受け継いでいるだけに近い。

はたから見ると、キュウコンと結婚した人になる。

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