君と旅の途中 (ヌオーVSフタチマル)

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ジェードさん主催の「ポケモンバトル書きあい大会」エントリー作品
ヌオーVSフタチマルです。
「対戦よろしくお願いします」
「対戦よろしくお願いします」

 相手のポケモンはフタチマル。やる気満々のようで手に持ったホタチを構えて、決めポーズをしている。飼い主に似るっていうけど彼ととても気が合いそうな子だ。
 対するこちらの私のポケモンはヌオー。やる気は……あるのかどうかは判断が難しいが。私には分かるぞ、あれはやる気のある目つきだ。

「フッ、1ターンキルで終わらせてやるぜぇっ!!」

 対戦相手の彼は、身体を斜めに構えて人差し指を突き立てて上体を微妙にちょっと捻るという、自分で考えた決めセリフと決めポーズをする。
 よほど気に入っているのか毎回これをしてくるが、本当に1ターンキルされたことは1度しかない。


「帆太刀 【青海波斬り】」

 ホタチから水がほとばしるような青い光が伸びて太刀の形になる。フタチマルの基本ワザ[シェルブレード]だ。
 私がヌオーに[のろい]を指示すると、ヌオーはピタリとそのまま静止して顔を一切変えずに。曲線状の軌道を描くその斬撃を真顔で受ける。


「帆太刀二刀流 【算木乱れ斬り】!!」

 フタチマルは2つ目のホタチも取り出して、[シェルブレード]の二刀流で、×印を何度も描くように連続で斬りつける。
 いきなり二刀流ではなく最初に一刀で斬りかかったのは、ヌオーが水無効特性を持つ可能性を想定していたのだろう。几帳面なことをするものだ。
 ヌオーは攻撃に合わせて[のろい]を使って、あがった防御力で受けとめる。そして受けたダメージを回復するために[じこさいせい]。


「竜殺しの蒼刃が邪を貫き、凍てつく世界に封印される。光よ舞え!【竜破壊剣りゅうはかいのつるぎドラゴンバスターブレード】!!」

 いきなりワザ名のネーミングセンスが変わった。和風はどこにいったんだ。
 ホタチからスカイブルーの光、たぶん[れいとうビーム]で剣を作っているのだろう、氷ワザの剣だからドラゴンタイプには抜群になるということで、竜破壊剣ドラゴンバスターブレードかな?
 ヌオーはそれを受けとめて。そして[じこさいせい]で回復させる。


 バトルとは強く恐ろしい相手に傷だらけで立ち向かわなければならない、そんな心が折れそうな時に、トレーナーがポケモンに出す指示というものは、後ろから「がんばれ」と背中を押す声援のようなものだ。
 だから、ポケモンのテンションが上がるような言葉、例えばとびっきりカッコいい技名を叫んでやるというのは有効な戦術……らしいけど。
 かっこ、いい……のか? 恥ずかしさが先に来ない? ちょっとよくわからないな。


「飛べ、駆けよ、引き裂け! 音速の緊急出動スクランブル! アサルトモード! 【決戦闘機バトルギアエアロスラッシュ】!!」

 ホタチの先に激しい空気の渦を発生させて、それを一本の剣の形に集約させる。あれは[エアスラッシュ]だろうか、空気が切り裂く刃を持つホタチを持って、大きく跳躍して戦闘機の急降下のように真空の刃で上から叩き切る。
 ヌオーはそれを受けとめる。そして[じこさいせい]。

 先ほどから防御と回復ワザしか使えてない。
 攻撃に移りたいがタイミングがさっぱりわからない。防御と回復をやめて攻撃に移ると、いつもそこで攻撃を受けて負ける。
 だからと言って、回復を連打していても回復が追い付かなくて削られ負けるし、どうすればいいんだろう?


「光と闇、ここに交わる。仄暗き宵闇を彷徨う混沌が織りなす二重螺旋マトリックス!!  双剣技ツイン・アーツ!! 【宵明けの境界閃デイブレイク・ダスク・ホライズン】」

 一本目のホタチからは光の刃、二本目のホタチからは闇の刃が伸びて、手にした二つの相反する力によってフタチマルの顔は歪む(演技?)。そこから駆け寄っての二連撃、一回目の光の刃はうまく防御できたが、二回目の闇の刃は防ぐことができず、大ダメージを受けてしまったが、すぐに回復。
 おそらく二本目の闇の刃は悪タイプ技だと思うが、つじぎりっぽくは無かったな、なんだろう……?
 あとで確認したらあれは[ダメおし]らしく、二連撃の後半に叩き込むことで威力アップしていたらしい。へぇ~
 ただのワザに名前をつけているわけじゃなくて、ちゃんと練られたワザになって威力も名前負けしてないあたりがめんどくさ過ぎる。


「フフフフ……」
 一人でワザ名を叫んでいるのはいたたまれないし、少し付き合ってあげた方がいいかな、こちらもノッてやろう。
「それしきの攻撃、私の無王ヌオーの前にはすべて無力! 無駄だ、すべてをゼロにして、この顔のように『無』にしてやろう」
「…………」

 えっ?何言っているのコイツ引くわ、な顔をされた。
 まって
 まって
 いやまあ、自分だけで楽しんでいたらなぜか突然相手もノッてきたら、どう反応していいか硬直するものだけど、反応を期待した私が悪いけどっ! 損した気分っ!

「……ええと。もうこの子にはワザが通じないようだし、ポケモン変えたら? 物理攻撃じゃ倒せないよ」
「いや、このままで行く。こいつで倒せなければ他でも無理だろうし」
「何か草ワザ、くさむすびは使えないの?」
「軽いヌオーにはあまり効かない」

 はぁ、そうなのか。


「……さて、これで解放条件は整った」

 あ、続けるのね

「解放条件は、属性の異なる剣技五種類以上! 五つの剣が揃いし時、幻の六本目の封印が解かれる!」

 うーむ…… どんどんセリフが長くなってくる。これだけのたくさんのセリフを噛まずにすらすら言うことができるということは、夜一人で頑張って読む練習をしてきたのだろう。しかし申し訳ないがさすがにこれ以上の攻撃を受け続けるわけにもいかない。
 私はヌオーに反撃の指示を送った。

 ホタチの先から神々しい光が放たれる。発動条件的には「とっておき」っぽいが、ここで発動されるワザはおそらく聖なる剣、その効果は『相手のすべての効果を無視して貫通する』、のろいによって上昇した防御力もすべて関係なく、無かったことにして貫く。
 さすがにこれだけは黙って受けるなんてことはできない。


「Great EXTRA skill起動 ここに顕現せよ!! 【因果を失いし聖剣デウス・ジ・エクス・キャリバー】!!!!」



  ゴスッ







 攻撃を受ける直前に発動させてきたのろいの効果で、大幅に上がっていた攻撃力で繰り出した、ヌオーの[10まんばりき]のアッパーカットは、フタチマルが降り下ろした[せいなるつるぎ]をカウンターしてクリティカルヒットし、フタチマルの体は真上はるか空へと飛んでいった。

 そして地面に落ちて、気を失う。

 あれだけの大技を立て続けに出していた相手に疲れがあったこともあるかもしれないが、今回は運がよかったと思う、ちょうどいいタイミングで迎撃が当たったからで、もし相手の攻撃がこちらに届いてしまっていたら負けていただろう。
 ワンターンキルで終わらせてやると言われたけど、どうやら私の方がワンキルしてしまったようだ。

 ……5,6,7,8,9,10  よし、と
 審判のいない野良バトルの場合は、相手が倒れた後に10秒待つことになっている。
 今回は私の勝利だ。

「対戦ありがとうございました!」
 拙作「君と夏の終わり」(https://pokemon.sorakaze.info/shows/index/2703/)の主人公の、若気が招いた掘り起こされたくない黒歴史のころの話になります。
 ジムバッジも2つ以上手に入れて初心者も卒業して、自分だけのバトルスタイルというものを求められた頃、男の子にはこういう時代があるんだ……。
 必殺技名こそアレですが、ちゃんとした形に仕上げられるあたりに彼のトレーナーとしての素質の高さを感じられる。
 彼が夜な夜な考えた「ぼくのかんがえたさいきょうのひっさつわざ」の実験台に、彼女はなってくれました。

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