兄を超えるために

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作者:ハクロー
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読了時間目安:11分
ジェードさん主催の、ポケモンバトル書きあい大会の投稿作品です。
ポケダンの世界観で執筆してみました。
 「えっと…バッジとバッグは持ちました。これで準備完了かな?」

 探検バッジと探検バッグを装備して、ダンジョンの入口で心の準備をするラティアス。彼女がこれから挑むのは、数あるダンジョンの中で唯一、誰も攻略した記録がない一人での挑戦ダンジョン「神域の山」。
 この大陸で一番高い山と言われており、その頂上には伝説の秘宝が隠されている。それを求めて多くの探検隊が挑戦したものの、ほとんどが失敗に終わっている。

 「お兄様…私一人での挑戦は不安ですが、何とか攻略を目指します」

 昔から一緒に探検隊として活動してきたラティ兄妹は、お互いに戦闘と探索を分担しており、高い戦闘力で敵を倒すラティオスに対して、持ち物の管理や空間把握など、常にサポートに徹するラティアス。
 完璧なコンビネーションで一気に頭角を現したラティ兄妹は、ついに探検隊連盟から、神域の山の挑戦を許可された。
 大方の予想は戦闘で名を馳せたラティオスが挑戦すると思われたが、ラティオスはなんとこれを辞退。そのラティオスからの強い推薦もあって、妹のラティアスがダンジョンへ挑戦することになったのだ。
 早速ダンジョンへ入ったラティアスだったが、意外にも探索は順調に進んでいた。その理由は、このダンジョンにはレベル1スタートがなく、持ち物縛りもないからだ。
 この縛りに苦労した経験もあるラティアスは、自由に戦えることもあって、意気揚々と山を登っていく。途中モンスターハウスに遭遇するも、慌てずに最適な対処で敵を倒して、逆にアイテムを補充できたこともあり、想像以上に探索が進んでいく。

 「これほど歯応えがないと、逆に不安になってきますね。どうして今まで挑戦してきた探検隊は、攻略に失敗したのでしょうか?
 もしかして頂上で待っているボスポケモンが、伝説級のポケモンなのかもしれません」

 そんな不安を抱きながら、ラティアスはどんどん先へ進んでいく。
 そして階層は95Fまで到達して、ラティアスは神域の山の頂上へ辿り着いた。ダンジョンの構造から一気に景色が変わり、大きく開拓されたような広場になっていた。既に太陽は傾いていて、夕陽が空に暁色のカーテンを広げているようだ。

 「ここが頂上でしょうか?確かに景色は大秘宝と呼ぶに相応しいものですが…まさか宝の話は嘘だったのでしょうか?」

 今までの苦労が水の泡にならないことを願い、ラティアスはさらに奥へと進んでいく。しばらく進むと、頂へ続く階段の前に待ち受ける、ポケモンの姿があった。

 「クックック、久しぶりの挑戦者かや?退屈過ぎて死ぬかと思ったわ」

 そのポケモンは、金色の毛並みと九本の尻尾が特徴的な、きつねポケモンのキュウコンだった。
 ラティオスはキュウコンからただならぬ殺気を感じると、すぐさま戦闘態勢に入る。キュウコンは妖艶な笑みを浮かべながら、赤い眼をラティアスに向ける。

 「なるほど、おぬしが兄妹で結成された探検隊の妹か。風の噂で聞いたぞ。
 兄の方はなかなかの力を持ってそうだったが、妹の方はなんとも言い難いのう」

 「ほ、本当にあなたが、この神域の山のボスなんですか?」

 「フフッ、そうじゃ。
 この地に身を置いて数百年、多くの探検隊がわっちに勝負を挑んできたが、どいつもこいつも骨のないヤツばかりじゃ…。あまりにも退屈じゃったから、頂上に財宝が眠るという噂を流して、挑戦者を募ったのじゃ。まあ強いやつと戦えれば、何でも良かったのじゃがな」

 遊んでたかのように、今までの経緯を楽しそうに語るキュウコン。ラティアスは恐怖心を感じながらも、探検隊としての使命感で心を持ち直す。

 「あなたのような存在を放っておくわけにはいきません。私があなたを倒します!」

 「ククク、面白い。わっちを倒せると思っておるのか?その自信、へし折ってやろうかや!」

 いきなりキュウコンはラティアスに向かって、火炎放射を放ってくる。ラティアスはそれをかわして、空中を浮遊しながらキュウコンにミストボールを打つ。
 キュウコンはそれを正面で受けたが、まるで何事もなかったような様子を見せて、ラティアスに火炎放射を放ち続ける。攻撃が当たったのに、まるで効いてないように見えるが、それでもラティアスは攻撃を続ける。
 しかし戦闘が長引くにつれて、火炎放射がラティアスの体をかすり始める。そしてついに、キュウコンの火炎放射がラティアスの翼を直撃する。

 「ううっ…そんな…」

 「空中なら優位に立てると思っておったのか?残念じゃが、おぬしの飛行してる時の動き方を観察しておれば、今のように動く方向を予測して当てることも可能じゃ。片翼がやられてしまえば、自由に飛ぶこともできまい」

 ラティアスは痛みで顔をしかめながら、地面に下りていく。しかしそれでも諦めることなく、ラティアスはキュウコンに竜の波動を放つ。
 キュウコンは冷静に悪の波動で技を打ち消し、電光石火の早さでラティアスに接近する。そして動けないラティアスに対して、キュウコンは右前脚でラティアスの顔を踏みつける。

 「翼をもがれた鳥は、地を這いつくばるしかできぬ。所詮おぬしは、兄がおらぬと何もできない、その程度の存在というわけじゃ」

 屈辱的なことを言われたラティアスだったが、彼女自身も薄々感づいてはいた。
 探検隊になりたいと言ったラティオスに、ついていくような形でラティアスも探検隊に入った。ずっと兄の背中を追いかけるだけの毎日で、一緒にいればいつか追いつけるとラティアスは思っていた。
 しかしラティオスは、どんどん探検家として有名になっていくのに対して、ラティアスは特に周りから評価されることもなく、力の差はどんどん離れていった。それでもラティアスは、兄を支えたいという一心で、彼の後ろを離れることはなかった。
 なぜならラティアスは、兄のラティオスを一番理解していたから。どんな困難に陥っても、最後には必ず勝つ姿がそこにあるから。そんな姿を見て、私も勇気をもらったから!

 「まだ…私は…諦めない!」

 ラティアスはサイコキネシスを使って、踏みつけているキュウコンを吹き飛ばす。その間にラティアスは、ガラスのような羽毛を使って、光を屈折させて透明化をする。

 「くっ…小癪なまねを。時間稼ぎをしたところで、わっちには勝てぬ」

 キュウコンが見失っている間に、ラティアスは自己再生で体力を回復する。

 (お兄様に頼ってばかりじゃだめ…。どうやってこの状況を覆すか考えないと!)

 近くの岩陰に隠れながら、ラティアスは探検バッグの中身を探る。

 リンゴ・ばくれつのタネ・あなぬけの玉。

 使えない物しかないように見えるが、ラティアスは何かを考えついたようだ。意を決したラティアスは、再びキュウコンの前に出る。

 「クックック、覚悟はできたようじゃの」

 「はい、もう勝つためには…これしかありません!」

 ラティアスはキュウコンに向かって、ばくれつのタネを投げつける。しかしキュウコンは、火炎放射でそれを燃やす。タネは爆発して、お互いの視界が遮られる。

 「くっ、なんじゃこの煙は!?」

 「ばくれつのタネは、その名の通り衝撃を与えると爆発する。火に当たったら、それこそ想像以上の大爆発で周りが見えなくなるわ」

 煙が辺りを覆う中で、ラティアスはバッグからあなぬけの玉を取り出す。もちろんこれは、そのまま使用して逃げるためではなく、別の用途で使うため。
 しばらくすると煙が消えて、キュウコンの目の前には、あなぬけの玉を掲げるラティアスの姿があった。

 「な、何をしておるのじゃ!最上階エリアでは玉の効果は消える!それくらい知らんのか、愚か者め!」

 キュウコンは火炎放射を放とうとするが、その直前に強烈な光が視線を襲う。ラティアスが玉を掲げてた理由は、太陽光を玉で上手く反射させて、キュウコンに向かってそれを発射することだった。

 「あ"あっ…目が!おのれ、卑怯な手段ばかり使いおって!」

 「何とでも言ってください。私は勝つためにこの作戦を考えたわけですから」

 視界を失って焦るキュウコン。その隙をついて、ラティアスはキュウコンに近づき、しねんのずつきをぶつける。
 顎にヒットした影響で、怯んでいるキュウコンに追撃をしようと、ラティアスはサイコキネシスを使って、キュウコンの自由を奪って攻撃を続ける。壁に叩きつけたり上空から地面に落としたりなど、ラティアスの攻撃はキュウコンの戦意が喪失するまで続いた。

 「な、なぜじゃ…。このわっちが、なぜ負けたのじゃ…?」

 「私自身も不思議よ。どうしてここまで諦めずに戦えたか。
 それはやっぱり、お兄様のおかげなんだと思う。いつも私のサポートを褒めてくれて、多くの作戦を一緒に考えてくれたから。
 だから私は、咄嗟にさっきの作戦を考えついて、それを実行する勇気も振り絞った。戦闘力ではあなたの方が強かったし、もしかしたら逆だったかもしれない…」

 「…ククク、そうかや。それだけ聞ければ十分じゃ、おぬしの勝ちじゃよ」

 満足したような表情で倒れるキュウコン。それを見届けた後、ラティアスは頂へ続く階段を登る。そしてその先に待っていたのは、古びた石碑だった。

 「これが宝でしょうか?アンノーン文字で書いてますね。どれどれ…

 『頂きに辿り着きし者よ。宝とは、己の経験と知識なり。
 この地に眠る悠久の時を渡りし宝を、自らの力とするが良い』

 …もしかしてこれって!」

 石碑を読み終えたラティアスは、これがどういう意味を表すのかをすぐに理解して、階段を下りて倒れ込むキュウコンに近寄る。

 「そういうことなんですね!あなたこそがこの神域の山の…!」

 「…クックック、すぐに理解するあたり、おぬしも侮れんやつじゃのう。
 まあよい、おぬしとの旅なら、退屈することもなかろう」


 そしてその後…

 「まさか新しく仲間が増えるとはな…。まあでも、そういうことなら歓迎するぜ。兄のラティオスだ、よろしく」

 「ふむ…おぬし、なかなか強そうで退屈しなさそうなやつじゃな。気に入ったぞ。
 わっちはキュウコンじゃ。数百年を生きた経験と知恵を、この探検隊のために使ってやろうかや」

 「えへへ、まさか探検隊に入ってくれるなんて…凄く嬉しいです!
 改めまして、私は妹のラティアスです。一緒に色んな世界を見て行きましょう!」


 新たな仲間を加えたラティ兄妹の冒険は続く…。
対戦カード A
キュウコン(原種)VSラティアス

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