ジェードさん主催、ポケモンバトル書きあい大会エントリー作品。
にらみつける。
にらみつける。
とにもかくにもにらみつける。
バトルは戦う前から始まっている。どす黒いオーラを放ちながら、これでもかとにらみつける。はじめはつんとすましていた森梟も、臆したのか顔のフードをきゅっと閉めてしまった。何か意味があるのかと言えばそういうわけでもない。どちらかといえば特殊攻撃が得意。メインウエポンの「もえあがるいかり」は、オーラを敵にぶつける彼だけの技。にらみつけるのも元々そういう顔をしているだけで、技として覚えているわけではない。要は気合いだ。「己は強い。向かってくるのならば容赦はしない」という気迫で相手を縮こまらせることが狙いだ。気持ちは多少なりとも戦いに影響する。
さて、十分威圧したところで試合開始。そして、終了。
あまりの速さに度肝を抜かれたと共に、彼の目の前が真っ暗になった。
相手がにらみつけてきていることはわかっていたから、相手の目を見ないようにしていた。いくら特殊攻撃の方が得意と言っても、必ずしも特殊技ばかりを習得しているとは限らない。万が一にもそれが「にらみつける攻撃」で、かつ物理型だった場合、後のバトルに影響しうるためである。フードで顔を隠したのも同じ理由。相手の顔を見ないように、そして相手に顔を見られないように、フードの隙間から急所を探る。オーラの発生源はどこだ。狙えば一撃で落とせる場所はどこだ。狙いを付けたら、あとは最速で弓を射るだけ。相手が全方位にオーラを放つ前に。そのために、顔を隠しつつもじっと様子を伺っていた。
結果は良好。相手は一撃で沈み、勝利のガッツポーズもなく速やかにボールに戻る。そのはずだったのだが。
黒いファイヤーが倒れたのを見届けた時、全身からがくりと力が抜けた。あれほど警戒して避けていた気迫にやられたというのか。否、ファイヤーがにらみながら発していたオーラにあてられたのだ。
やられた、と思った。同時に、なんてすごい奴だ、とも。
対戦カード
D:ジュナイパーvsファイヤー(作中ではガラルのすがた)