現代式ポケモンバトル【令和2年3月改訂版】

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作者:ジェード
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 ポケットモンスター、縮めてポケモン。彼らは不思議な生物だ。仕事の相方として、また生活のパートナーとして。はたまた、人間や世界を支える大いなる存在として。我々の歴史と生活に強く根付いてるのは、言うまでもない。
 そのポケモンと、切っても切り離せない関係にある興行がある。そう、ポケモンバトルだ。トレーナーとポケモンが一丸となり、頂点を争い合う。ポケモンリーグでは毎年、熱狂的なまでのトーナメントが行われている。
 この魂の凌ぎ合いに、昨今このような苦情が、リーグ委員会に寄せられていることを、ご存知だろうか。「運ゲー」「一部の強いポケモンが強いだけ」「ルールがガバガバ」「結局、僕が一番強くて凄いんだよね」といったものである。彼らの言う事は一理ある。ポケモンにも、種族差や個体差は紛れもなく存在し、また『まひ』や『怯み』の追加効果が、試合結果を大きく左右する試合も無数にある。過去のリーグ戦に於いても、ダークライとラティオスを使ったトレーナーが、とあるリーグで無双してしまい、あまりの塩試合っぷりに炎上した……なんてケースもあるくらいだ。
 これは由々しき事態である。確かにポケモンバトルの歴史自体は浅く、ルールについて深く考察され、突き詰められた訳ではない。これほどの国民的興行であるにも関わらず、ルールの歪みによる不公平な勝敗はゼロではない。これでは、選手・観客共に失礼にも程がある。
 そこで、私は立ち上がったのである。今こそ、“現代式ポケモンバトル”を実践し、公平な試合を行うのだ!





「という訳で、今日は君たちに私の考案したルールで対戦してもらおうと思います」
 今日集まってもらったのは、ゴージャスボール転売ヤー。ではなく、ガラル地方のチャンピオン公認トレーナー・マサル君。そして、ホウエン地方から招いた、メガラティオスで空を飛び回っては、『りゅうせいぐん』をシューティングゲーム的な気分でブン撒いてた、センリさんの息子・ユウキ君である。
 どうせなら強者同士、そして異なるバトル文化の混合試合で試したいからこその、この人選だ。二人とも、殿堂入りを果たした立派なトレーナーである。
「何でまた急に、まあ、いいか。オレ、マサル。よろしくな」
「おう! ガラルってすっげー遠いじゃん! 今度案内してくれよな!」
 二人の強者は、早速気が合ったようだ。お互いの出身地やら、旅の話、自分と戦った悪の組織あるあるを話している。
 あまり気にした事がなかったが、何故、何処もヤバそうな組織が巣食っているのだろう。まあいいか。今の私がしたいのはバトルである。
「じゃあ、二人ともフィールドに付いてね。勝負は1on1、判定は私がプログラミングした、審判ロトミちゃんがしてくれます」
『お任せくださいロト!』
 ホウエン出身のユウキ君には、この審判ロトミちゃんは新鮮に映ったようだ。少年らしく目を輝かせては、やる気十分に構える。一方のマサル君は、やたらと落ち着いている。場に出す一体を早々と決め、頭の帽子を被り直す。

『ソレでは、バトルスタート!!』
「頼むよ、エースバーン!」
「よし! 君に決めた!」
 二つのボールが、中身を解放する。エースバーンとライボルト。さて早速、地方色の出る試合になりそうだ――と思ったその時。ロトミちゃんによる、タイムの合図が入る。
『ボールの投入は危ないのでヤメテクダサイ。必ず、静かニボタンを押すヨウニ。ソレから、ユウキ選手。ポケモンの種族を、必ず宣言シテクダサイ』
「え、えー……」
「面倒くさいけど、まあ……そっか」
 バツが悪そうに、二匹に近寄ってボールに戻す二人。ライボルトとエースバーンも、つい先ほどまでお互いに睨み合っていたというのに、何だかそれをぎこちなく詫びるようにして、トレーナーの元に戻る。
 さて、仕切り直しだ。二人も再びボールを持ち直し、いつもの癖で投げそうになったマサル君は、慌ててボタンを押しては前のめりになる。
「行け、エースバーン!」
「頼むぜライボルト!!」
 今度こそ、対峙するエースバーンとライボルト。ロトミちゃんに監視されながらも、その登場タイミングはピッタリだ。
「……フッフ、見てろよマサル! これがホウエンのバトルだ!」
 ユウキ君が力いっぱいに掲げたのは、メガバングル。ライボルトの持っていた“ライボルトナイト”と呼応すると、その姿はもはやよく知るライボルトではない。場を圧倒する威圧感。“いかく”にて歴戦のエースバーンをも、目を見張らせる。
「噂に聞くメガシンカか。燃えてきたな、エース」
「だろう! ようし、『ほうで……』」
 と、いい所だが審判ロトミちゃんの介入だ。またもや、困惑するメガライボルトにエースバーン。
『ピピーッ!相手ヲ “いかく”するナンテ、スポーツマンシップに欠ける行為デス。メガライボルト選手、その目付きヲ、ヤメテクダサイ』
「えぇ……」
 トレーナーの気持ちがポケモンにも伝わったらしい。メガライボルトが、予防接種に連れて行かれる時のワンパチの目をしていた。なるほど、流石は心を通わせるメガシンカ使いだ。
『デハ、試合を再開シテクダサイ!』
 何となく、見つめ合っては頷き合うトレーナー同士。お互いにため息を吐いては、試合再開だ。
「っと気を取り直して!『ほうでん』!」
「エース、『ふいうち』」
 メガライボルトの素早く広範囲な攻撃。その俊敏さはエースバーンをも凌ぐ。しかし、華麗なコーナリングで電撃をかいくぐっていくエースバーン。掠りともせずに、メガライボルトの足元を掬った。特性“リベロ”にて火力の上がった『ふいうち』はなかなか手痛いだろう。
『ピピーッ!!』
 審判ロトミちゃん、またもや怒りのタイムである。なんかもう、慣れてきた二匹は小石を蹴り出したり、毛繕いを始めている。
『“ふいうち”ナンテ、スポーツマンシップに欠ける行為ハ禁止デス。エースバーン選手、卑劣ナワザデス! ダメゼッタイ!!』
「ふーん」
「そっかー」
 ロトミちゃん審判を見るにつれて、二人のテンションと目が死んでいくのが分かる。段々と、立ち姿すらテキトーになってきた。
「にばば?」
「……らいらい」
 なんかもう、フィールド内の二匹に至っては世間話をしている。「暇だね」「もはやダルい」そんな声が聞こえてきそうだ。小石をリフティングするエースバーンに、それを眺めているライボルトは欠伸混じり。
 正確な審判・ロトミちゃんによるミリ単位の位置調整による再現を終え、試合は十分かかって、ようやく再開の運びとなる。
「えーと『10まんボルト』」
「……『とびはねる』でいいや」
 メガライボルトに近接戦闘を挑んだエースバーンには、『10まんボルト』を躱す術は皆無に近い。フィールドごと焼き焦がすような電撃が、エースバーンを襲った。しかし、追撃の余地を与えず『とびはねる』にて空中に回避する。
 空高く跳ねたエースバーンによる、急転直下の攻撃がメガライボルトを襲う――その時。
『ピピーッ!! タイム!タイムタイムタイム!!』
「に、にばーーーァ!!!」
 急に聞き慣れた警笛が鳴り、勢い余って盛大に着地に失敗するエースバーン。その『とびはねる』を喰らわせるはずのメガライボルトに、駆け寄られては、心配されていた。
 一方のトレーナー同士は、あの初めの熱気は何処へやら。
「なんかもう、聞かなくても分かる気がする」
「アレじゃない? “相手のわざをかわせるなんて、スポーツマンシップに欠けマス!”」
『フィールド上空5メートル以上の飛行及び、跳躍ニハ、ペナルティが課されマス!』
「えー、あー……そっちかー」
 あのさ、そういうゲームじゃないんだよ君たち。【分かるかな? ポケモンバトルウルトラクイズ! 】じゃないの。正解してもタウリンとか貰えないから! ただの公平なポケモンバトルなの!!
「ていうかペナルティ? オレのエースバーン、もうほとんど攻撃手段が残ってないのに……」
「確かに」
『……デスが、わざを外してしまった為、アディショナルタイムにて、メガライボルト選手に『とびはねる』相当のダメージを与えてクダサイ』
 そう、わざの当たり外れも考慮せねばなるまい。『かげぶんしん』でも使用しない限り、全てのわざは当たる前提なのだ。じゃないと、運ゲーで苦情が来るからね。
「『とびはねる』相当って何だよ」
「ライボルトには効果いまひとつだし、弱火で良くね?」
「そうだな。エース、『かえんボール』……弱火で」
 普段通りに、小石を蹴り着火させていくエースバーンだが、見慣れた火の玉になる前に止める。弱々しくライボルトに向かっていく。わざとらしく、ヘロヘロの軌道の火炎に当たりにいくライボルト。
 「なんかスマン……」というように耳を下げたエースバーンに、「気にするな」というような呆れ顔のライボルト。両者は戦意を失くしたままにトレーナーの元に戻っていく。
「これでいいっすか」
『デハ、両選手ハ元の位置に着キ、試合ヲ再開シテクダサイ!』


 その後も、厳格な審判・ロトミちゃんによる試合は続いたが――。
『“アイアンヘッド”で怯マセルのは、公平性ニ欠ケマス!!』
『“ほうでん”による、麻痺ハ公平性ニ欠ケマス!!』
『“オーバーヒート”ニヨル攻撃ハ、危険ナノデ、必ず宣言ヲシテクダサイ!!』
『“キョダイカキュウ”ハ、観客ニ危険ガ及ぶ可能性ガアルノデ、配慮シテクダサイ!!』

 ロトミちゃんによる審判と、厳格な調整。再三に渡る警告に従い、死にゆく目をしたポケモン達。二匹を取り巻く、ぎこちない空気。それらを眺めていた私と二人のトレーナーの心は――自然と一致していた。
「……もうコイントスで良くない?」
「分かる」
 型があるからこその型破り、型がなくては型なし。それは、まさにルールに雁字搦めにされ、まともな試合など出来ぬこの事であった。
「やっぱりルール改訂しなくていいや!!!」
 運ゲーバンザイ、種族差なんて構わん。もう知らん。ポケモンバトルは楽しんでナンボだ!!
Twitterにて主催した企画、『ポケモンバトル書きあい大会』投稿作品です。
お題B エースバーンVSライボルト

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