きのこたけのこ紛争

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作者:エクション
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読了時間目安:29分
こちらはジェードさんの企画、「バトル書きあい大会」という企画に参加させていただいた作品です。
注意事項
・いつにもまして脳みそが溶けている文章
・独自設定
・勝手な解釈
・キャラ崩壊の可能性
・きのことたけのこの闘争
以上のことを踏まえて、それでも大丈夫という方がいたら読んでいただけたら幸いです。
「うぎゅう……暇だ……暇すぎてヒマナッツになるぅ……」
ここは、とある救助隊が持つともだちエリアの一つである“南の孤島”。そこで白と赤の体色をした、首に鮮やかな色をした種を紐で下げている一匹のドラゴンポケモン、“ラティアス”が仰向けに浮かびながら腐っていた。
「お兄ちゃん……帰ってこないよぉ……帰ってきてよぉ……!」
どうやら原因は彼女の兄の不在にあるようだ。彼女の兄は現在救助隊の仕事に出向いているらしく、一匹残されたラティアスは暇を持て余して発酵しているまっ最中である。ちなみに現在の季節は夏で、気温は30℃40℃とまでは行かないにしてもそこそこ暑い時期なのだが、仰向けから後ろに傾き始めて1:1:√2が読み取れそうなぐらいに斜めになったラティアスはそんなものなど気にならない程に虚無感に苛まれているようだ。
「もうこの際お兄ちゃんじゃなくてもいいから誰か来て……」
ついに体が顔から地面と垂直になり始めたラティアスが悲痛な声を漏らす。自分からどこかに遊びに行こうという考えに至らないのは、一昔前に“奈落の谷”というダンジョンに落ちてしまったことがトラウマになってしまったからだろうか、それともお兄ちゃんが過保護でシスコンなせいで遊びに行くなとか言われてしまったのだろうか。どちらも違うことを祈ろう。
「はっ!誰かの気配!」
と、ここでインドアラティアスの願いが届いたらしい。ラティアスが気配を察知した方向を向くと、いつの間にか砂浜にほのおタイプの足についた海水を少し気にしている、兄と思しきキュウコンと、こおり・フェアリータイプの何やら紙袋を口に咥えている、妹のように見えるキュウコンの兄妹が並んでいた。
「こんにちはー、遊びに来ましたよ。ってお兄さんはいないんですね」
「やっほーラティアスちゃん!遊びに来たよ!」
「キューくん!あーちゃんも久しぶり!今すっごく暇してたから助かったよ!」
どうやら彼女達はお互いに面識があるようだ。このキュウコンの兄妹に特に名前はないのだが、どっちもキュウコンと呼ぶのは紛らわしいため、ラティアスがそれぞれにあだ名を付けて呼んでいるいるらしい。
彼女達はお互いに駆け寄り談笑をし始める。
「いやぁ、本当にお久しぶりですね。最近は続いてお仕事をこなしていたから……」
「はへぇ、そうだったんだ!というかそんなにかしこまらなくっても、楽に話して大丈夫だよ?」
「そうだよお兄ちゃん!もしかして伝説のポケモンだからって気にしてるの?」
「僕はこの喋り方のほうが楽なんですよ」
「普段あんなにわたしにベタベタしてるの
「わぁーーーっ!ストップストップ!!言わないでそれ!!!」
「……あーちゃんも結構苦労してるんだねー……」
どうやらキューくんは重度のシスコンのようだ。そしてラティアスの言葉に含まれていた『も』というひらがなから察するに、ラティアスの兄もシュスコンと同類らしい。彼女達が仲良くなっているのもそっちの方面でどこか通じるところがあったからだろうか。
「そーなの!お兄ちゃんったらわたしが一匹で出かけるたんびにどこに行くかとかいつ帰ってくるかとか聞いてくるしこの前なんか木の後ろに隠れて友達と遊んでるとこ見られてたんだよ!?」
「え、ちょっ」
「分かるー!私のお兄ちゃんなんかそもそも一匹で遊びに行くなって言うんだよ!?ほんと信じられない!」
「まっ、あっ、」
「「それでさぁー!!!」」

「お菓子!お菓子買ってきたから食べましょう!!!ほら紙袋からだしてっ、お願いします!!!!!」

涙目になってきたキューくんの魂の叫びが孤島に響く。どこか通じるどころか完全にシンクロしていた二匹の方を見てみると、揃ってにやにやした顔でキューくんの方を張り付いたかのように見つめていた。彼女達なりの復讐のつもりなのだろうか。
「はーいお兄ちゃん。もうこれ以上聞きたくないもんねー」
「……」
「あーっ、ここに私のお兄ちゃんもいたらもっと面白かったのになぁー!」
「やめて差し上げなさい!!!」
恥ずかしさでヤケになってきたキューくんはあーちゃんから紙袋を奪い取り、自分の食べるお菓子だけ取って島の上の方へと逃げていった。
「きゃっ、ひどーい!」
「うわぁ〜、サイアク〜」
「泣きたいけど確かに今のは僕が悪かった!ごめんなさい!!!」
妹たちの方こそ見ないがなんかもうシュスコンが哀れで仕方がない。ボロにボロを重ねてキューくんの心はもうボロボロである。女の子怖い。
「ん〜、もうちょっと仕返ししたいけどまあいっか!ラティアスちゃん、わたし達もお菓子食べよー!」
「うん!さぁーって一体何がある、か……」
あーちゃんに言われてラティアスはシュスコンが置いていった紙袋を拾い、その中身を見て固まった。
「うん?ラティアスちゃんどうしたの?」
「これ……」
「キノココのやまだね」
「テッカグヤのさとじゃないの……?」
「は???」
「は???」


**********


「……こないな」
この時、妹二匹に精神をズタボロにされて島の小高いところでポッキーを一匹ポキポキ食ってるキューくんには分からなかった。きのことたけのこの間の溝はどれほど広いのか、そしてそれを踏まえず、片方のお菓子のみを買った時にどのような惨事が起こってしまうのかを―――!
次の瞬間。


ちゅどーーーーーん!!!!!


「ぐふえ!?えっ何なんの爆発!!?」
いっ、妹たちのいたところからなんか衝撃波と爆発音が飛んできた!?いやまって、あの子ら何してるの!!?
「おーい!なにやっ
「“れいとうビーム”!」
「“ミストボール”!」
「ねえほんとになにしてんのお!!?」
さっきまであんなに仲よさげに僕のこといじめてたのになんであんな喧嘩してるの!?
「お兄ちゃん!こいつたけのこの回し者だった!こいつは絶対に始末しなければならない!!お兄ちゃんも手伝ってよ兄妹でしょ!!!!!」
妹が冷気を吐き続けながら訳の分からないことを言って協力を求めてきた。
「兄妹だからってどっちも狂ってるとは限らないでしょこのきのこ信者!ほらキューくんあの狂信者を正気に戻すために今こそ頑張るときだよ!!!」
ラティアスさんも霧の玉を負けじと打ち続けながらアホみたいなことを訴えてきた。狂ってるのはどっちもですよ?
「どっちでもいいでしょう!!!」
「「ふざけているのか!!!!??」」
やだ!妹たち怖い!!きのこたけのここわい!!!
「隙あり!“マジカルシャイン”!!」
「うわっ!?汚い流石きのこ汚い!!しかし甘いわぁ!!!“サイコキネシス”!!!!!」
「なっ!?動けなくしてくるとは卑怯なり!!これがたけのこのやることかぁ!!!」
「……流れ弾飛んでくる前に避難しとこ……」
キューくんは最初は突然の爆発に驚いたが、目の前で展開されている漫才を見て少し落ち着いたというか、呆れてきたようだ。己の安全を確保するために手頃な石の建造物の影に身をかk
「“ミストボオオォォル”!!!」
「“ふぶき”!!!」
気合の入ったラティアスのミストボールの軌道をあーちゃんが押し寄せる吹雪で強引に軌道を変え……



ボールを石の柱にシューーーーーウッ!!!超!エキサイティン!!!!!



「さあ盛り上がって参りましたぁ!対戦カードは我が自慢の妹フロストキュウコン対伝説のポケモンラティアス!!タイプ相性的には妹の方が有利ですがこの勝負どうなってしっまうのでしょうかあーーーっ!!?」
もういいやどうせだし楽しもぉ!!!!!


**********


くっ、まさかあーちゃんが我らが敵だったとは!そうであればあーちゃんであれど容赦はしない!徹底的に叩きのめす!!!
「“りゅうのはどうちぇ……!!!」
「ふっ……」
何ぃ!?避けようとしない!!?なめられているのk

フォン

「かっ、かき消された!?」
「ああっとラティアスさんまさかのタイプ相性を全く考えていない一撃ーーー!!!それほどまでにヒートアップしているのでしょうか!?」
「はっ!?」
そうだった!あーちゃんはキュウコンなのにこおり・フェアリータイプのアナザーボディだった!!!くそう完全に忘れて
「“ふぶき”!!!」
「っ、そんなもの避けてしま……ッ!!?」
正面から押し寄せる風の並から逃れようと上空に急旋回するが、その先にさえ押し寄せる壁のような吹雪が私を待っていた。これは……っ
ひっ、『広い』!!ふぶきの範囲が!圧倒的にッ!!!
「うぐぅ!!!」
「ふはははは!見たか!これがきのこの力!!!」
「特性“ゆきふらし”の影響で天候があられ状態になってるからですね!でもきのこの力にしようとする妹かわいい!!!」
「くっ、ふー……」
ふざけた解説だが地味にキューくんのおかげで少し冷静になってきた。空を見上げると、いつの間にか広がっていたこの島の上空を埋める灰色の雲から氷の粒が降り注いでいるのが分かる。そうか、今あられ状態なんだ。だからふぶきがあんなに強大になってたり思ってる以上に消耗してたんだね。

……

「いやムリムリムリムリムリ!!!勝てるわけ無いって!!!!!」
「今更気づいたかラティアスちゃん!諦めてきのこにひれ伏すがいい!!!」
「ふざけるな!私は絶対に屈しない!!!」
「あぁっと今一瞬このクソみたいなバトルが終わるかと期待しましたが現実はそんなに甘くはなかった!やっぱ希望的観測って当てにならないや!!ファ○ク!!!」
そうかそうか、とあーちゃんがぼそっといったのがいやに耳に響いた。
「ならワタシも奥の手を使わせてもらうね!“オーロラベール”!!」
「ッ!奥の……て……?」
奥の手、すなわち切り札。一体どんな強力なわざが飛んでくるのかと身構えたが、そのわざ名を宣言した時に起こった変化といえばあーちゃんの周りに綺麗なオーロラが輝き始めたぐらい、正直拍子抜けだ。
「まだ何が起こったのか理解してないの?全くこれだからたけのこh
「“ミストボール”!!!!!」
あいつっ!たけのこを侮辱しやがった!!!許さない!!!!!
また避けようともしないし!たけのこをなめたこと後悔させてy
「その程度?」
「なっ……」
嘘、ミストボールがあのオーロラにあたった瞬間、かき消された……?
「えー、オーロラベールは周囲の冷気を凝縮させてオーロラに見える障壁を作り出すわざですね!ちなみに実際のオーロラの発生条件と寒さはなんの関係もありません!!!」
「ちょっとお兄ちゃん!そういうこと言わないでよ!!」
「えっ、あっそうかこれ地味にラティアスさんにヒント与えてるのk
「これは全部きのこの加護だからそれっぽいこと言わないでよ!!!」
「クソほどどうでもいい理由ありがとう!やっぱ解説続けるわ!!!」
「“サイコキネシス”ッ!!!」
なんか二匹で喋ってる今がチャンスだ。さっき崩れた柱をサイコキネシスであーちゃんにぶつける!これだけの大きさならいけるはず!!
「おっと、“ふぶき”!!!」
「うぐっ!!?」
私に吹きつけるあられと風が一層強くなった。それに、石柱が押し返されて……


ブォン


「……あああっ!!!」


**********


苦しい。

そして、悔しい。

たけのこは揺るぎなき存在だと思っていた。

きのこ如きに屈するはずがないと思っていた。

けど、実際は?

きのこはあーちゃんに力を貸している。

それに対し、たけのこは?


……何もしていないじゃないか。


私はどうして今までたけのこを信じていたのだろう。

きのこだって意外と美味しいかもしれないじゃないか。



もう

つかれた



きのこに屈しよう。

きのこを崇めよう。

きのこで生きよう。

そうすれば、きっとあーちゃんともまた仲良くなれ

         キラッ


「……?」


=====================


『お兄ちゃーん、なーにー?』
目の前でいつしかの私とお兄ちゃんの姿が浮かんでいる。これは一体いつの話なのだろう。
『ラティアス、今日はちょっとこれを渡しておきたくて』
『わぁっ!綺麗な種だね!!』
お兄ちゃんがあそこにいる私に差し出した種はすごくふしぎな模様をしていた。あれは、なんだったっけ?
『そうでしょ?これはね、“○○○○のタネ”っていって……』
『食べてみていい!?』
『言うと思ったけど駄目!』
『えーっ!!?』
少しずつ、そのときの記憶が蘇ってくる
そうだ、確かあの種を使うときは……


『それはラティアスの身に、本当に危険が迫った時に食べるんだ。きっとラティアスの力になってくれるはずだよ』


『「……うんっ!!!」』
記憶の私と現在の私が重なる。それと同時に目の前の景色も薄れてくるが、もうこれ以上過去を見つめる必要はない。向き合うのは、私がずっと首から下げていた種。


=====================


そうだ、これだ。

お兄ちゃんから託された、本当に大切なときにしか使えないこの種。この斜めにしましまが入った模様……






ものすごくたけのこを縦に切った時の断面に似ているではないか!!!






私は今までずっと一匹で戦っているのかと思っていた。

もう見放されてしまったのかと思ってしまった。

ああ

でも


たけのこはずっとそばで私を見守ってくれたんだね……


覚悟を決めよう。

もう、終わらせよう。

きのこなんてふざけた邪神を、私……いや、私“達”の手で、

打ち砕こう!!!

「今こそ……“たけのこのタネ”を食べる時!!!」


**********


「ふうっ、倒したかな……」
あーちゃんはいきなり柱が飛んできたときはどうなるかと思ったが、天候操作の影響もありその攻撃を火力で押し返すことができた。押し返された柱に直撃されたラティアスは、墜落したかのように高度を下げていっている。
少しやりすぎたかな、とあーちゃんは少し反省s

        カッ!!!

「えっ!?」
「おおっと……?」
あーちゃんが……

紫色の丸いなにかに、包まれていく……?

       ピシッ
         ガキィン!!!



「まだ……負けていない!!」


割れた紫色の球体の中から、体の赤いところが紫色になって、手が大きく変化したラティアスちゃんが飛び出してきた!?
「うそ、なんで!!?」
「めっ、“メガシンカ”……、もしかして“かくせいのタネ”w
「たけのこのタネ!!!」
「たけのこのタネらしいですね」
まさかたけのこにはあんな力があったとは……
いや、そうだとしても、
「きのこはたけのこに負けるはずがないんだよ!わたしにはオーロラベールがある!!」
それに、オーロラベールはあられがある限り貼り直せる。まだあられの有効時間はあるし、もし切れてもまた
「“サイコキネシス”!」
ラティアスちゃんを中心に空間が歪んだような気がした。
次の瞬間、わたしを囲う光の壁が薄くなった。
「っ、わざが強力になってる!?」
「おおっ、これはすごいですね!」
いや、この程度ならどうとでもなる。貫通してこないぐらいならまた貼り直せばどうとでも



「……うっ、うまく貼れない!?ラティアスちゃん一体何をしたの!!?」
「それならさっきキューくんが解説してたよ!」
それを聞いてわたしはお兄ちゃんの方を見る。
「……ん?僕???」
「お願いお兄ちゃん何が起こったのか教えて!!!」
「えっあっはい!えーっと、上見てみたら分かるかも!!!」
「上………っ!!?」

あられの雲が、消えてる……!?

「多分だけど、ラティアスさんはサイコキネシスであられ雲を『圧縮』したんだと思う!あの黒い点がその雲だ!!!」
「そんな……」
「油断したね?」
「あっ……!!」
しまった。バトルの最中なのにお兄ちゃんの方を向いちゃった。急いでラティアスちゃんの方に首を向けると、向こうはもう口に青紫色のエネルギーを溜めていた。だめだ、対応できない!
「終わらせるッ、“りゅうのはどう……」
        パリィン
「っ」
ああ、オーロラベールが完全に破れちゃった……、まずい、体制をたてなお


「チェイン」


「ッ!!?」
ラティアスちゃんがすぐに次のわざを打とうとしてる!?くっ、このままじゃ避けきれない、


「……りゅうせいぐん”!!!」


「りゅうせいぐん……?ドラゴンタイプのわざをなん
ブツッ


**********


「うっ、う〜ん……」
頭がぐわんぐわんしている。あぁ、そうだ。ラティアスちゃんに負けたのか。でもなんで……?
「あっ、起きた!キューくん、あーちゃん起きたよ!!」
「ほんとですか!?」
ラティアスの呼びかけにゴキブリ並の速度で反応したシュスコンは、ピラミッドの迫る壁トラップレベルの勢いで妹に迫った。
「良かった……ほんとによかったよぉ……」
「うわっ、えーっと、お兄ちゃん、気絶することなんかよくあるんだからそんなに気にしないで……う〜ん」
目の前でめっちゃ涙目になってる兄をさらっと受け流しつつ、あーちゃんは己が気絶する前の記憶を手繰り寄せて何があったのかを思い出そうとする。
「確か、りゅうせいぐんに当たって……えっ、でもなんでわたしりゅうせいぐんで気絶したの?」
「そ゛れ゛は゛ね゛ぇ゛……!」
「お兄ちゃんいい加減その顔やめて!気持ち悪い!!!」
ずううぅぅんといった擬音が、心が海よりも深く沈んだといった表現がこれほどまでによく似合うリアクションもなかなか見られないだろう。親愛なる妹からドストレートなコメントを致命傷に受けたシュスコンは目に見えないはずの負のオーラを放ちながら、体の向きをあーちゃんから百八十度回して「キモチワルイ......キモチワルイッテ......」とぶつぶつ言い始めた。それにともないなにやらざっざっという音がキューくんのほうから聞こえ始めたのだが、まさか己が埋まるための穴を自分で掘っているのではなかろうか。
「えっ、えーっと……私が代わりに説明するね!」
ここでキューくんのフォローに入らないラティアスもなかなかなド畜生だと考えられる。
「キューくんの話によると、私があの時食べた種、たけのkじゃなかったかくせいのタネは食べたポケモンを“かくせい状態”にするらしくって。その状態のときにれんけつしたわざを繰り出すとタイプ相性をごり押せる、んだっけ?」
「キモチワルイッテイワナクテモイイジャン......シンパイシタダケナノニ......」
「だってほんとに気持ち悪かったんだもん……」
「……」
「ストップストーップ!無言で砂浜掘るスピード上げないで!!本当に埋まろうとしn


「おまえら?」


ビクッと、その不意に聞こえてきたおぞましい声に三匹は同時に肩を震わせ、ゆっくりとした動きでその声がした方向へと首を傾ける。
そこには三匹と辺りを交互に見回して苦笑いしている、彼らが所属する救助隊のリーダーのピカチュウと、先程までのキューくんとは別方向のどす黒いオーラを放っている、ラティアスより一回り大きく、赤い部分が青色になっているドラゴンポケモン、“ラティオス”が三匹を地面に縫い留めていた。
ラティオスの隣にちょこんと立っているリーダーにつられて辺りを見てみると、夏だっつーのにそういう雪山でもない限り冬でも見られないぐらいの雪が積もっていたり、地面なんか抉れていないほうが珍しい。石の柱なんか真ん中からへし折られていて、先っぽの部分は粉微塵に生まれ変わっていた。
「えーっと、これは……」
「あー……」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ
「……はぁ」
リアクションはそれぞれ様々だが、その三匹の間に漂う絶望感は彼らから離れたところで見守っているピカチュウからでもばっちり感じ取れた。なんかもう心中お察ししますとしか思えない。

そして

ラティオスの口から

三匹のポケモンを裁かんとする言葉が発せられた。
「何があったのか、ゆうっくり話してもらおうか???」


**********


「……それで?」
「ええ……」
「お前はキノココのやまがないことでキレて??」
「うん……」
「そしてあーはそれに食い下がって???」
「はい……」
「それでこのボコボコ雪景色が出来上がったと?????」
「「「……そういうことです……」」」
「お前ら馬鹿か?」
ラティオスが向こうの三匹に質疑応答をして、その話を要約してくだらないと一括した様子を、この救助隊のリーダー、“ヒカル”はラティオスから数歩下がったところで見守っていた。ちなみに彼が見守っている対象は、座り方は全く違うはずなのにその肩を落として佇まう様はどこか正座のような何かを彷彿とさせる三匹だけではない。
「いまんとこはそれっぽく雰囲気作れてんな……まー変なとこもあるけど」
彼は愉快な三匹を叱っているラティオスの方も気にかけていた。何があったのかを説明するのは限りなくナンセンスなので三分ぐらい前のラティオスとヒカルの様子を回想にて見ていただこう。


==========


『うーっし、今日は早めに終わらせれたし午後は全部空くな!』
『それでなんで僕についてくるんですか?』
普段とは違う珍しい組み合わせで、そしていつもより救助依頼が早く終わったヒカルとラティオスは、ヒカルがラティオスの背中に乗る形で南の孤島へと向かっていた。
『たまには南の島でバカンス気分も……いいじゃん?』
『まあ別にいいですけど……というか、なんかヒカルさん変わりましたよね、前はそういうのあんまり興味がなかったというか……』
『まーなんか色々あったn


ちゅどーーーーーん!!!!!


『うわあ!!?』
『だぁーっもう!人が話してるときに被せてくんじゃねえ!!!』
いきなりの爆発音にラティオスは肩をはねさせ驚き、ヒカルは図太く爆発に文句を言った。
『なんでヒカルさんそんな肝が据わってるんですか!?それに音がした方向って……!!!』
『……お前らが住んでるとこだn
『早くっ、なんでもいいから向こうの様子確認してください!早くッ!!!』
ヒカルからその言葉を聞くや否や、ラティオスは反射的にサイコキネシスでヒカルをぐわんぐわんとぶんまわし己の顔の前へと持ってきた。
『おぶっ、ちょ、落ち着け、サイキネで揺さぶんなっ、おいシスコン聞いてんのか!!?』
ヒカルのあまりよろしくないスイッチが一つ押される。
『あっ、すっすみません!!!』
『……興奮すると周りが見えなくなんのさっさと直せよ?』
『はいぃ……』
ラティオスに注意しながらも、ヒカルはラティアスの要求に答えるようにバッグからみとおしメガネを取り出し、それを目に装着して孤島の様子をのぞき込む。
およそ夏とは思えない白銀の世界が広がってた。
『ぶふっ、……んーっとだな』
『何か分かりましたか!?』
ヒカルはラティオスに向こうで起こっていた愉快なことを分かりやすく簡潔に伝える。
『フロストキュウコンとラティアスが喧嘩してる』
『えっ?なっ、なんで……』
『知らね、んでもんふっ結構島大変なことになってんぞ?』
『えっ???』
『覗いてみるか?』
『……』
ラティアスはヒカルから差し出された紫色のレンズをのぞき込んだ。
『なんでこんなことになってるのお!!?』
『てっとり早いのは当人に聞くことだろうなぁ』
恐らくラティオスの真意とは平行線を動いている返答をヒカルはしたが、ラティアスはその言葉をちゃんと拾い上げた。が、
『ええっ、でもあのやばそうなところに聞きに行きたくない……』
普段は結構頼りになるのになんでこういうときはヘタレになるかなとヒカルは表情を曇らせ、

そして何かを思いついたように、いたずらな笑みを浮かべて指を鳴らした。
『……そうだな、お前も少し、心の方向で成長してみようか?』
『え?』
ヒカルの心の内を汲み取れないラティオスに、ヒカルはついさっき思いついた考えをラティオスに打ち明ける。
『いやいやいやいや!無理です!僕にはできません!!!』
想像以上にヘタレな返答が帰ってきた。
『そんなんじゃ駄目だっつってんだろ!時には心を鬼にして馬鹿野郎どもを叱ってやらないと、あいつらのためにもならねえぞ?』
『でも……僕、今までそんなこと……』
『じゃあ練習すれば大丈夫だろ』
ものすっごく適当な解決案をヒカルは軽率に口走った。
『えぇ……』
これにはラティオスも渋反応である。
『俺が言うと説得力皆無だけどこういうのは雰囲気が大事だからな。なんかそれっぽい冷ややかなオーラ醸し出してみてくれ』
『見本はないんですか……?』
『んなもん俺が知ってるとでも?』
『クソがぁ!!!』
『おーそうだそれそれ、そんな感じで向こうに対してイラついてたらそれっぽいのは出てくるぞ』
『……はっ、もしかしてヒカルさんはそれを教えてくれるためにわざと……』
『いや具体的に教えれるの皆無なのは事実だけど?』


==========


とかいうことがあったのだ。実はラティオスが妹を本気で叱ることは、彼が生まれてから初なのである。先程俺が苦笑いをしたのも雰囲気作りのための演出だ。
愛称をつけて呼ぶことが前提のあだ名を無理やり愛称抜かして“あー”と言っていたり甘いところはまだあるが、雰囲気に関しては上出来だ。ラティアス達が違和感などを感じる様子は全く見られない。というか完成度高すぎてこっちまで背筋が伸びてくる。もしかして演技ではなくガチで怒っているのではなかろうか?
しかし、ここでラティオスの目線の先が後ろに向く。
「ヒカルさん。リーダーからもなんか言ってやってください」
「……えっ、俺?」
台本なんかあるはずないので、まさか自分に白羽の矢が立つと思っていなかったヒカルは突然の振りに素っ頓狂な返しをする。
「えー……、別に俺が住んでる訳でもないしどうでm
「なんか言わないとサイコキネs
「いやぁー君たちね!駄目じゃないかこんなことしちゃあ!!もうほらっ、あれなんか原型とどめてないじゃん!!!やるんならもうちょっと被害のでないところでやらないとね!!!!!はあい!!!!!!!」
なんとも頼りないリーダーだなぁ、とヒカルが口答えした時に一瞬希望の光を見出した三匹はリーダーの高速手のひら返しを受けて再度うつむく。
「……まあ、話を聞いた限りだとキューは被害者だな。楽にしていいぞ」
「あっ、はいぃ……」
結構頭に血が上っているラティオスだが、根は公平な性格をしているようだ。それともまだ彼の良心が誰かを怒ることに抵抗しているのか、ことを冷静に分析して怒るべきでないポケモンを説教対象から外した。
「あっ、じゃあわたしもついでに……」
「まってよあーちゃん!そっち行くんなら私m

「誰がお前らも楽にしていいと言った?」

突き刺すような声が二匹を再び縫い止める。キューくんの方を見てみると、例のヒカルに「どんまい、そんな日もあるって」と慰められていた。
「「あっちに行きたいなあ!!!」」
「ああ、話が終わったら気が済むまで行くといい。というかラティアス、首に下げていたはずのかくせいのタネは?」
内心では『あいつっ、僕の妹を取りやがって!後でコ○ス!!!』とはらわた煮込んでいるラティアスだが、彼はここで雰囲気をぶち壊してはいけないということをちゃんと理解しているのでわざと自分の感情とは真逆のことを口にし、ついでに彼が普通に気になっていることをラティアスに聞いた。
そしてラティアスは目をそらす。
「あっ、あの種?いやぁー、たけのこのためだったから仕方ないよねー……」
「……そんなことで、あの種を???」
震えた声でラティオスは妹に尋ねた。
しかし妹さんはこれに対し、
「なっ!?そんなこととは聞き捨てならないよ!私はたけのこの尊厳を守るために奮闘したというのに!!そもそもあの種の形状はたけのこを縦に切った時の断面と完全に一致していた!!!あの種は他でもない、たけのこの、たけのこによる、たけのこのための種だったんだよ!!!!!それに
「あーっ、うん!もう分かったよ!!!」
半ば逆ギレ気味な妹の支離滅裂な主張を聞いてラティオスは流石に疲れてきたようだ。素が出かかっている。
「……はぁ、なにか甘いものがほしい。キュー、余ってるのはあるか?」
疲れた頭には糖分がよく効く、なんてことをどこかから聞いたのを思い出したラティアスはそう聞きながらキューくんに向き直った。
「あっ、はい!どうぞ!!」
差し出された紙箱を見て、ラティアスが固まった。
「ポッキー……」
「あぁー、もう無事なのこれしか無いんですよね……」
「……トッポは買った?」
「とっぽ?なんですかそれ??」
「あ゛っ???」
「えっ???」
「おい待て落ち着けこの状況でブチ切れられると俺まで被害こうm
公平とは何だったのか。
妹達に馬鹿かと言い放った兄はとんでもなく馬鹿な理由をもって、かくせいのタネを頬張ったラティアスのそれよりもずっと強力な隕石群をシュスコン(とついでにヒカル)に降り注がせた。
やっぱり兄と妹は似るんですかね!

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