耳かきピカチュウ

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作者:悪戯な秋雨
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読了時間目安:6分
 最近マジで耳かきにハマってる。


 トコトコと、自分の背後から何やら足音が聞こえる。随分と聞きなれた足音だ。チャウ、と呼ばれた気がして振り向くと、そこには俺の相棒のピカチュウがいた

「どうしたんだ? ごはんならさっき一緒に食ったろ」

 俺の相棒はずいぶんと大食いだ。大食漢、と言えば聞こえはいいが、尋常じゃない量を食べる。ただ、それに合わせてものすごく運動しているから太ってはいないけど。もう少し食べる量を減らしてほしいな、とは思う。ただ、今の相棒の気持ちはご飯じゃなかったみたいだ

「ん? なんだコレ」

 相棒がずいっと俺に向けて差し出してきたのは、とある雑誌の1ページだった

「なになに? ポケモンの耳かき専門店、大好評? お前、これ行きたいの?」

 どうやら当たっているらしい。ふわふわな首をコクコクと動かし自分の意思を伝えるピカチュウ。可愛い。可愛いが、それはそれとして問題がある

「いやでもなあ、連れてってはやりたいけど、ここ、結構遠いし、もう夜だからなあ」

 晩御飯を食べ終わった午後8時。この手の店は大体もう閉まっている頃だ。それに、よく見るとここから車で1時間も行った先に店がある

「さすがに今日行くのは無理だぞ相棒」

 露骨にしょんぼりした顔をするピカチュウ。明日あさイチで連れて行ってやるかと考えていた時、ふと思い出した

「そういえば、ポケモンの耳掃除用の道具買ってあったなあ」
「ちゃあ?」
「店には連れてってやれないけど、俺がやるのでもいいか? 流石にダメ?」

 恐る恐る聞いてみると、しかしどうだ。随分と相棒の顔が上機嫌な物に変わっていく。尻尾を揺らし、良いよ、と答えられた気がした

「そんじゃ、ちょっと道具持ってくるわ」

 あんなにちょこんと行儀のいい相棒を見るのは久しぶりだ










「ほら、おいで」
「ぴか」

 言われんでも、と俺の膝の上に飛び乗ってくる相棒。重い。太ったんかコイツ。俺は二言ある男だ。前言撤回も早いぞ

「ぴぃか」

 早くしろ、と怒られてしまった。へいへい今やりますよっと

 まずは耳の周りと内側の上の方を少し濡らした布で拭いていく。相棒の耳はピンと立っているうえに、静電気のせいで埃がたまりやすいらしい。いつもはポケモンセンターで見てもらっているが、今回は俺をご所望だしな

「んじゃ、始めるぞ」
「ぴっ」

 スッと目を閉じるピカチュウ。よし。ご期待に添えてやりますか

「えーっと、まずは耳の内側の浅い部分から・・・」

 インターネットで調べた正しい耳掃除のやり方を実践することにしよう。なになに? まずはコットンに垂らしたイヤーローションで汚れを浮かせるのか

「そんじゃ拝見・・・おお、意外とたまってる、のか? ちょっと見えないな」
「ぴい?」
「ん? ああ、大丈夫だ。ほら、動くなよ」

 耳の中に小さく切ったコットンを入れていくと、相棒の表情が変わる。少しびっくりしていたが、次第に受け入れ始めると、リラックスした顔を見せた

「お~、コレだけでも結構取れるな・・・。見る?」
「ちゃあ~」

 どうでもいいらしい。残念

「ちょっと待ってろよ」

 数秒待つ。今のうちに次の準備だ。ちょっとたのしくなってきたな

「よし。本丸行くぞ」

 え~っと、まずは耳かきの背面で耳を押すように、か

「ちゃ」
「ん~? ここがいいのか~?」
「ぴっ」

 随分とご満悦顔だ。よしよし、このまま進めよう

「ここから少しずつ奥に・・・慎重に、ゆっくりとぉ・・・?」

 カサッと、相棒の耳の中で音がする。相棒もそれに気が付いたのか、小さく鳴いた

「今取るからな~」

 懐中電灯を取り出して、耳の中を覗き込む。おお、若干見えづらいが、確かに耳の中に垢がたまっているのが分かる。あまり大きくはなさそうだし、取るのは大変じゃないだろうな

 耳かきを持ち直して、耳の奥へと潜り込ませる。少し鋭くなった部分を垢と耳の隙間に差し込んで、ゆっくりとそぎ落としていく。そんなことする必要ないのだが、なんとなく耳垢は砕かずに取り出したくなってしまった。ハマってしまったかもしれない

「ぴぃぃぃいいい~~~~」

 相棒が今までそんなに聞いたことのない声を上げる。顔はもうご満悦を通り越して恍惚としている。そんなに気持ちいいか。よしよし、嬉しい限りだ


バリッ


「おわっ! すげえ音した!」
「ピッ!」

 こそぎ落とす手に力を込めたその瞬間の出来事に、俺も相棒もびっくりする。これが取り出せれば完璧だろうな

 耳掃除の道具箱からピンセットを取り出し、耳かきから持ち替える。実は昔からこういうのあこがれてたんだよな~などと思いつつ、相棒の耳の中へと入れた

「お、あったあった。あんまり奥まで差し込まないようにして、と。ゆっくりゆっくり・・・!」

 ズゾッ、ザザザッと少し大きな音がする。取り出せるまでもう少しだ

「うおぉ・・・。思ったよりも大きいのが取れたな」

 ティッシュの上にこぼれた物を見て、少し感慨にふけってしまう。素晴らしい摘出手術だった。だが、まだ終わりではない

「ちょっとひやっとするぞ~」

 濡れ綿棒を使って、耳の中を保湿していく。蒸れさせたら駄目だが、適度な保湿は耳には非常にいいらしい。ほーん

 最後に乾いた綿棒でくるくるっと周りを軽くこする

「よし、これで終わり。ピカチュウ・・・?」

 寝てるよコイツ。そんなに気持ちよかったか?

「ぴぃ・・・」

 相棒の表情は笑っている。どこか満足げだ。本当はもう片方もやろうと思ってたんだが、まあいいだろ


 楽しかったな。頼まれたら、またやってやってもいいかもしれない、な










 私も誰かの耳掃除したいわ

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