オチのない水道水の話

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作者:円山翔
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読了時間目安:4分
 水道水をコップに満たして、ぐっと一杯。
 私の朝はこうして始まる。だが、相棒はどうも気乗りがしないらしい。ちゃんと沸かしてカルキを抜かないと、口にしようとしないのである。ペットボトル飲料を買うのと、家で湯を沸かす光熱費と、どちらが安く済むのだろう。わからないから、とりあえず湯を沸かして麦茶を煮出している。カルキが残っていた方が日持ちはするらしいのだが、私と相棒とふたりいれば3リットルでも足りないくらい。それにカルキの味が残るからなのか、水出し麦茶は飲んでくれないから、仕方なしに沸かしている。夏は冷たい方がいいから、氷もたくさん作っておく。残念ながらうちの冷蔵庫には自動製氷機なんてものはないので、型に氷を入れて少しずつ作る。晩のうちに作っておけば次の朝には使えるのだが、いかんせん量が少ない。作れて1辺2センチほどの方形のものが10個程度だ。作ってためておけば良いのだが、容器に張り付いて取れなくなるからあまりやらない。そんなことをしなくても、相棒はふぶきをうまく調節して勝手に冷ます。そして私の分は冷ましてくれない。薄情な奴めとぼやいても見向きもしない。仕方なしに作ったなけなしの氷で冷ましたまだ温い麦茶を飲む。夏でも温かいお茶の方が喉を潤せるらしいので、これはこれでいいのかもしれない。相棒に頼んだって、氷を作るために冷凍ビームを使ってくれることはないのだから。
 たまにペットボトルのおいしいみずを買って帰る。私の相棒はこれが好きで、2リットルを一気に飲み干してしまう。おかげで私が飲む分なんて残らない。ちょっとちょうだいよとコップを差し出すと、顔に水を吹きかけられた。これは私の水だ。お前は水道水でも飲んでいろと、そう言いたげなじっとりとした目で私を見た。仕方がないから、私は水道水を飲む。
 住む場所によっては、カルキの匂いに息が詰まりそうになることもある。だがそれもほんの一時のことで、しばらく飲み続ければ慣れてしまう。これが適応力というものなのだろうかと思うと、私は相棒よりも適応力があるのかもしれない。そう言って自慢したら、みぞおちに体当たりを食らって悶える羽目になった。
 飲み水に関してはうるさい相棒だが、水浴びの水はどこの水でも気にしない。家のシャワーだろうが外の噴水だろうが滝だろうが池だろうが海だろうがお構いなしに入っていく。ついでに水に溶けて私を困らせる。モンスターボールも万能ではないのだ。ちゃんとポケモンのいる方向に向けてボタンを押さないと反応しない。だから相棒と一緒に水場へ行った後は、おいしいみずを買ってこなければならない。ペットボトルを見せれば向こうから勝手に戻ってくる。どこまでも現金な相棒であった。

 こんなことなら水道水も飲めばいいのに。そんなことを口にすればまた水を吹きかけられるので、この話はこれくらいで締めることとする。

 バシャッ

……そうでなくとも、相棒は機嫌が悪いと私を水浸しにするのだから。

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