犬吠埼ヒソカは戯れたい

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作者:立花愛瑠
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読了時間目安:11分
仲間大会の宣伝用に書いた小説です。

[世界観、登場人物]
・巻村コトハ 主人公 女の子
・犬吠埼ヒソカ 謎の大会「わんわんカップ」の主催者 男性
・舞台「シント・ベゴーラタウン」の「ナナツホシスタジアム」
※実在の人物や団体とは一切関係がありません。
私は、今日とある大会に出場するために外出している。目指すは「わんわんカップ」が開催されるシント・ベゴーラタウン。今はこの日の大会のために特別運行されている電車に乗り目的地へと向かうその最中だ。

私が乗っているのは「ポケ鉄」の愛称で親しまれている、正式名称「ポケモン鉄道」が管理する列車。この電車は、動力の全てをでんきタイプのポケモンが発する電気エネルギーで賄っている。日ごとに代わる担当のポケモンたちを観察するのが通な楽しみ方だ。

「お飲み物や、スイーツ、お菓子等はいかがですかー?」
特別列車ということで、車内食を販売する清楚な雰囲気を纏ったお姉さんがカートを押しながら隣の車両から現れた。

老若男女で賑わう車内では、ニビあられ、いかりまんじゅう、おいしいみず、ミックスオレ等様々な注文で溢れかえっていた。私はアローラ地方産きのみ100%使用の、きのみジュースを注文する。豊富な品揃え、流石特別車両。私の中で、益々大会に対しての謎が深まる。

シント・ベゴーラタウン。実際に行くのはこれが初めてだ。ロトムスマホでその町のことを検索してみても、住所とスタジアムの外観に変な形をした石のオブジェの画像しか出てこない。普段はあまり観光に行く人もいないのかな、大会は町おこしの一環なのかな等、漠然とした考えが浮かぶ。

森林地帯を抜け、目的地が近づいてくると、車窓から見える景色は段々と荒々しい岩肌が目立つ殺風景なものとなっていった。まもなくして眼前に町が見えてきた。
まず目につくのは切り立った山の上にそびえ立ち、圧倒的な存在感を放つナナツホシスタジアム。そして石造りの建物が立ち並ぶ、風情ある街並み。

「ご乗車ありがとうございます。まもなくシント・ベゴーラタウンに到着します。お忘れ物ございませんようにお気を付け下さいませ。」

私は座席周りを見て、忘れ物が無いことを確認する。
ほどなくして、電車が駅に停車する。まだ見ぬ世界に胸を躍らせながら、私は駅に降り立つ。

駅舎のつくりは必要最低限の非常に簡素なものだ。それに、普段は利用者があまりいないのか無人駅だ。
改札を通り抜けると、石畳を敷き詰めた道が町中まで続いている。
町の入り口らへんには、二対の石像が目視できる。気になったので近くに寄って詳しく見てみる。

片方はイーブイ、もう片方は雨蛙を模したものだった。厄除けなのかな、狛犬的な?
後で聞いた話だけど、このカエルの石像は「かえるちゃん」や「かえるん」といった愛称で親しまれており、ご利益があると拝みに来る人もいるらしい。

石像を後にして私は町の中央へと向かう。そこは黒やねずみ色を基調とした建物が多く、素朴な印象を受ける。ポケモンセンターも町の景観に配慮したデザインとなっている。

「うーん、大会前に腹ごしらえでもしておこうかなぁ。」
一通り町中を見て回った私は、中でも比較的手ごろな値段のレストランに入る。

「いらっしゃいませ!!一名様ですね。こちらのお席へどうぞ。」
店員さんに案内され、窓際の席へと移動する。

「よーし、長旅お疲れ様、出ておいで、エラ」
「がうわ がうっ!!」
この子はポチエナの「エラ」。今回の大会は犬ポケモンのみ参加可能ということで連れてきた。
「私は、ホウエンラーメンを頼むけど、エラはいつも通り3種のブレンド灰色ポロックでいい?」
「ががうっ!」
エラの承諾を得て、店員さんを呼び注文を済ませる。15分ほど待つと店員さんが注文した物を運んできた。

「お待たせしました。ホウエンラーメンと灰色ポロックを注文のお客様ですね!!ごゆっくりどうぞ。」
ホウエンラーメン、手ごろな値段と安定した味が魅力、店によって材料や調味料が微妙に違うが、ベースとなる味の部分は一緒だ。
そして、エラはブレンドしたポロックを好んで食べる。

「いっぱい食べて、今日の大会頑張ろうね!!」
「ががうっが がうーが!!」
私の呼びかけに応え、自信ありげに鼻をフンッと鳴らして見せた。

私とルルはご飯を食べ終えると、お会計を済ませ店を出る。そして、大会へエントリーするために、ナナツホシスタジアムへと向かう。

息を切らしながら、スタジアムへと続く険しい階段を登り詰める。
「流石町のシンボル、近くで見ると迫力あるなぁ。」
私はその大きさと、醸し出す雰囲気に圧倒されながら建物の中へと歩みを進める。

ロビーに差し掛かると、そこには大会参加者であろう沢山のトレーナーとポケモンの姿があった。
私は、早速受付カウンターへと向かいエントリーを行うことにする。

「本日はわんわんカップへお越しいただき誠にありがとうございます。お名前とご住所、事前にエントリー登録をしたポケモンを確認させていただきます。」
私は、受付の方の指示に従い手続きを進めていく。
「確認が取れました。ラウーラタウンからお越しの、巻村コトハ様と相棒のエラちゃんですね。手続きは以上となります。開始時間まで今しばらくお待ちください。」

エントリーを済ませた私はエラと最終確認を行うことにする。
「現状分かることは、相手も犬ポケモンを出してくるということ。恐らく素早さの勝負になるわ。スタミナの配分を意識すること、攻撃を食らっても落ち着いて立て直すこと、今までの練習を思い出して普段通り戦えばきっと勝てるわ!!」

「がおーん!!がおうっ!!」
私の呼びかけに呼応しエラが、やる気があると言わんばかりに吠えて見せた。

「本日はお忙しい中、ご参加いただき誠にありがとうございます。私が、本大会の主催者 犬吠埼ヒソカです。自慢の犬ポケモンと一緒に沢山楽しんで思い出を作っていってください。」
丁寧な言葉遣いや立ち振る舞い、その身なりからは育ちの良さが感じられる。

主催者の男性が挨拶を終えると、私たち参加者はバトルコートへと案内された。
コートは幾つもあり、同時進行で複数のバトルを行えるらしい。

「巻村コトハ様はこちらのコートで試合をお願いします。」
いよいよ、試合開始だ。緊張してきたなぁ。私もエラも武者震いしている。

「お、最初の対戦相手は貴方ですね。さっきの挨拶熱心に聞いてくれていたよね。コトハちゃんにエラちゃんよろしくね!!」
「こちらこそよろしくお願いします!!主催者さんが相手だからって手加減はしませんし、負けるつもりはありませんから。」
「おー、そうこなくっちゃ。んじゃそろそろ始めよっか。」

「いけ、エラ!!」
「いけ、あさひ!!」

意気揚々とボールから飛び出してきた二匹の犬ポケモン。
相手が繰り出したのは、こいぬポケモンのイワンコ。薄茶色のカールした尻尾に、縦長楕円形な空色の瞳が印象的だ。
今は姿勢を低くし、鋭いまなざしでこちらをにらんでいる。

対して今回私が共に戦うのは、かみつきポケモンのポチエナ。灰色で艶やかな毛並みが目を引く。半円型のその瞳は威勢の良さを感じさせる。
私の足元で、グルルルル…と低い声で唸りながら相手を威嚇している。

「先手必勝、いくわよエラ、かみつく!!」
先に静寂を破ったのは私とエラ。相手の喉元をめがけて脇目も降らずに飛び込んでいく。
目にもとまらぬ速さで距離を詰められたあさひは虚を衝かれ技をもろに食らう。
そして、その衝撃で一瞬ひるんでしまうが、すぐに体勢を立て直してエラを振りほどく。

休む間もなく、あさひが反撃してきた。そのあまりの速さにエラはたじろぐ。そして避ける間もなく、いわおとしがエラに直撃する。その衝撃で体がポーンと宙に投げ出される。地につく既の所で、何とか体勢を立て直し着地する。

おかしい、さっきまではこっちが素早さで圧倒していたはずなのに…
私は相手の急激なスピードアップに違和感を覚え動揺を隠せないでいた。してやったりと満足げな表情を浮かべる彼は上機嫌に語りだす。
「あさひの特性はふくつのこころ。技でひるむと素早さが上がるのさ!!」

技の追加効果が裏目に出たか。先の展開を想像し、心に一抹の不安を感じる。

「この技を見破ることはできるかな?あさひ、かげぶんしん!!」
たちまち、そのつぶらな瞳の獣は4匹にまで数を増やす。

「落ち着いてエラ。本物は一匹だけよ。それに分身からの攻撃はダメージを伴わないから。」
ポケモンはトレーナーの感情の揺れ動きを敏感に察知する。私は悟られぬように、なるべく落ち着いた口調でエラに語りかける。
それと、私には確信があった。エラの並外れた嗅覚を用いれば本物を見破ることは可能だという。

「エラ、かぎわけるからのとっしんよ!!」
試すかのような表情でこちらを見守る4匹の獣。しかし分身の完成度はエラの嗅覚を欺く域には達しておらず、容易に本体を見破ることに成功する。

ゴツンッ!!!!

両者の額がぶつかり合い、鈍い音が周囲に響く。純粋な力と力のぶつかり合い。小細工なしの勝負では相手のほうが上手。鍛え方が違う。まるで本物の岩を押しているかのようにびくともしない。
「エラ、戻って来て。」
初撃こそ相手の隙を上手くついて攻撃することが出来たが、そこからは終始相手のペース。いいように遊ばれているという印象。

「そろそろかな。仕留めろ、あさひストーンエッジ!!」
地面が隆起しそれが鋭い岩の形を成して、恐ろしい速度でこちらへ向かってくる。
「ダメッ!!エラ避け…」
無慈悲にも、刃は腹を直撃する。
「エラ、大丈夫!?」
私は勝負の途中であることも忘れ、気づけばエラに駆け寄っていた。一時的に気絶しているだけのようだ。
「きゅうしょは外して技撃ったから、すぐ目覚めるはずや。早いとこポケセンに連れて行ってあげな。対戦ありがとさん。」
「あ…ありがとうございました。」
呆然と立ち尽くす私に、男は律義に挨拶をして、その場を去って行った。
私の大会デビューは、苦い思い出となるのであった。

「先制攻撃しかけられた時は内心めちゃくちゃ焦ったわ。あの子とポケモンこれから伸びるぞー。追い抜かれんように、気を抜かず修行せんとな。」
男はそうつぶやき、二回戦へと向かった。
ご覧いただきありがとうございます。次回もお楽しみに。

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