春うらら

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作者:立花愛瑠
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読了時間目安:3分
ポケモンと卵がテーマのお話です。
そよそよと吹く春風や小鳥のさえずりに心地よさを感じる私が大好きな季節。
新生活への期待と不安が入り混じる複雑な胸中もこの時期ならでは。
眼下には、艶を纏った斑点模様の物体が一つ。そう「ポケモンの卵」だ。
持ってみるとずっしり腰に来る。それが一つの命を扱っているという重圧からくるものか、はたまた卵の重さからくるものかは知る由もない。
立ち止まっていても仕方がないので、私は卵を孵化装置に移して公園まで歩いてみることにする。
控えめに雲の合間から顔を覗かせたお日様に体がぽかぽかしてくる。手元に目をやると、殻に陽光が反射していて少し眩しい。だがその姿はまるで新たな命の誕生を祝福されているかのようだ。
すっかり雪が解けた道路は歩きやすくて、荷物を抱えた私でも何一つ不自由することなく公園に辿り着くことが出来た。
慣れない重さで心身ともに疲労困憊の私は、適当な木陰のベンチを見つけ一休みしようと腰掛ける。
抱えていた孵化装置を脇にそっと置く。それと同時に今まで一点に向けられていた集中力が四散し、まるで急に五感が研ぎ澄まされたかのように錯覚する。
そよ風を肌で感じながら何を考えるわけでもなく虚空を見つめていると、私の意識は直ぐに傍らにあるそれによって現実に引き戻されるのであった。
卵がこれまでになかった挙動を見せているのだ。激しく左右に揺れたり、少し跳ねたり。この奇々怪々な現象を目の当たりにし、私はただ固唾を飲んで見守ることしかできない。
まもなくしてバキバキッと枯れ枝を踏んだかのような音と共に、渦中の存在がその姿を現す。
私のことを視認し、無邪気な笑顔で見つめてくるのは生まれたばかりの「フシギダネ」だ。
一瞬で心を奪われた私は、全身で喜びを表現しようと勢いよく抱き着いてみせた。
突然のスキンシップに驚きしばらく目を丸く見開いて硬直していたが、やがてそれが好意的なものだと理解すると脱力し私に身を任せてきた。
出会った日のこと何時でも思い出せるように、この子にぴったりの名前それは…
「イブキ、今日から貴方はイブキよ!!」
当然人間の言葉など分かるはずも無いので最初は小首を傾げていたが何回も“イブキ”と繰り返すことで、やがてそれが自身を指す言葉だと理解したのか弾けるような笑顔で、「ダネフッシ!!」と返事をした。
私たち二人を春風が包み込む、小鳥のさえずりは何だか祝福のように聞こえる、今年はもっともっと大好きになれそう。
ご覧いただき誠にありがとうございます。次回もお楽しみに。

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