電気袋組たちのもぐもぐパーティー!

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作者:ぴかちう
読了時間目安:30分
 ここは、森の中にある赤い屋根が目印のお家。この家には、ピカチュウの僕と兄のライチュウ、弟のピチューの三匹で暮らしている。
 そんなこの家で、今日はパーティーが開かれるのだ。主催は僕。そろそろみんなが来る予定の時間なんだけど……。

「誰ひとり来ないな……」

 そう呟くのはちょっとイライラした様子の兄、ライチュウ。時計をチラチラと確認しながら、足をばたつかせている。

「わーい! おしろができたよー!」

 そんな横で積み木遊びをしているのは、弟のピチュー。

「わーっ、凄い! さすがピチュー!」
「呑気だなぁ、お前らは……」

 ピチューを褒める僕に対し、余計にイライラを募らせるお兄ちゃん。

「まあまあ、そろそろ誰か来るはずだよ!」
「だといいが……」

 ピンポーン!

 イライラな様子のお兄ちゃんをなだめていると、玄関のチャイムが鳴る。ほら、ちゃんと来たじゃないか。

「はーい」

 僕がドアを開けると、現れたのはアローラライチュウだった。
 その姿を見た途端、お兄ちゃんの様子がガラッと変わった。

「おぉ! マイハニー!!」
「待たせてごめんね♪」

 そう。このアローラライチュウはお兄ちゃんの彼女さん。アロライさんが現れた途端、イチャイチャし始めるお兄ちゃん。……僕は、リア充め、とぼそりと呟いた。
 それにしても、さっきまでイライラだったお兄ちゃんがクルっと変わって彼女さんとイチャイチャし始めたのには笑ってしまう。

 クルッポー! クルッポー!

 壁にかけてあるマメパト時計が鳴いて、みんなが来るはずの時間を告げた。
 しかし、集まったのは元からいる僕たち兄弟とアロライさんだけ。うーん、しばらくしたら来るだろうか。

 今日、パーティーに呼んだのは僕たち兄弟含め合計11匹。僕、お兄ちゃん、ピチューにアロライさんと、プラスル、マイナン。パチリスにエモンガ、デデンネ。そしてトゲデマルにモルペコだ。
 どこか似たような容姿の僕たちは、普段から家も近く、仲良くしているのだ。

「まあ、時間だし始めちゃっていいんじゃないかー?」

 そう、ぶっきらぼうに言うお兄ちゃん。うーん、本来ならもう11匹いるはずだったんだけどな、と思いつつ、僕らはパーティーを始めることにした。

 僕は前に立ち、みんな(三匹しかいないけど)を見ながら言った。

「これより、パーティーを始めますっ!!」
「「いぇーいっ!!」」

 ぱちぱちと拍手が起こる。ピチューのものだ。
 それに続いて、ヒューヒューと指笛が鳴る。調子に乗ったお兄ちゃんのものだ。

 まあ、こんな感じで始まったパーティー。楽しいものになるといいな!


* * *


「ハイ! マイブラザー! とっておきを持ってきたよ♪」

 アロライさんがそう言って、僕たちにあるものを差し出してきた。

「おっ、これは……!」
「パンケーキだよ♪」

 ふわふわとした、パンケーキ! とっても美味しそうだ!

「流石はマイハニーだぜ!」
「へへっ♪ ミーのオススメのお店のパンケーキだよ♪」
「ありがとな~! 買ってきてくれて!」

 そしてまたイチャイチャする二匹。

「たべていーい?」
「いいよ♪」
「わーい! ありがと、おねえちゃん!」

 そんなイチャイチャをものともせずにパンケーキにかじりつくピチュー。
 うちはいつもこんな感じの雰囲気だ。こんな雰囲気が、良くも悪くも僕は好きだな。

 と、言い忘れていたけど、このパーティーの目的はみんなでたくさん美味しいものを食べよう! というもの。だからアロライさんがパンケーキを持ってきてくれたのだ。
 発案者はモルペコなんだけど、まだ来ないなぁ……。

 ピチューとお兄ちゃん、アロライさんがパンケーキを食べているのに混ざろうとした、その時。

「……ん……?」

 どこからか視線を感じる気がする。視線の先に目を向けるも、誰もいない。
 少し気になるが、気のせいかな、と思い気にしないことにした。


* * *


 ピンポーン!

 チャイムが鳴る。また誰か来たようだ。

「はーい」

 ドアを開けると、現れたのはプラスル。その後ろにマイナンもいた。

「ピカチュウ! 遅れてごめんね!」
「プラスル、マイナン! いらっしゃい!」

 僕は二匹を迎え入れた。

「おっ、プラマイの二匹も来たんだな!」
「プラマイのおねえちゃんやっほ~!」
「やっほー、ピチューくん!」

 プラスルが笑顔で挨拶する。その後ろのマイナンは俯いて暗い顔をしている。

「ごめんね、マイナンが自分がパーティーなんかに行っていいのかなって感じで……」
「…………」

 このマイナンはネガティブ思考のポケモンだ。それをプラスルが励ます、というのがいつも。

「ほーらー、元気だしてよマイナン! 大丈夫だって!」
「うん……」

 それは今日もそうだった。ポンポン、とマイナンの肩を叩くプラスル。それによりマイナンはちょっと顔を上げた。

 プラスルとマイナンの二匹は幼なじみ。家が向かいで、小さい頃から一緒に遊んだりしていたらしい。
 今は、色々とあったらしく二匹は一緒の家に住んでいる。

「プラスル、その持っているものはなんだい?」

 アロライさんがプラスルに向かってそう尋ねる。

「これはね、料理を作るための材料だよ!」

 と言って両手いっぱいに提げた袋を掲げるプラスル。
 そこにはたくさんの野菜やきのみが入っていた。

「ピカチュウ、キッチン使っても大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ!」

 僕が承諾すると、プラスルはキッチンに材料を広げ、料理を始めた。……が。

「これ、どうやって使うんだっけ?」

 と言いながら包丁の刃の方を持とうとするプラスル。

「わわわ!! 危ないよ!」

 僕は慌ててプラスルを止める。あれ、プラスルってもしかして……。

「プラスル、まさか料理した事ない……?」
「てへっ、バレた?」

 おっとぉ……。
 プラスルいわく、今日のパーティーでみんなに料理をパーっと振る舞いたかったらしい。けど、プラスル自身、料理をするのは今回が初めて……。

「普段どうやって暮らしてるのさ……」

 僕がプラスルに尋ねる。

「いやー、買い食いとかで済ませてたんだけどさ、マイナンにそれじゃ栄養バランスが偏ってダメだ! って言われちゃって」
「あっ、もしかして、一緒に暮らすようになったのって……」
「そそ。あたしが料理全然ダメだからさー」

 なるほどなぁ、と感心する。
 それにしても、料理が全然ダメってわかってるのにもかかわらず、料理をしようとするプラスルのポジティブさには驚く。プラスルとマイナン、足して2で割ったらちょうどいいのになぁ、とか思ったりした。

 ん、プラスルが料理できない、それを見兼ねてマイナンが一緒に暮らしたということは……。

「ねえ、もしかしてマイナンって料理得意なの?」

 いきなり名前を呼ばれてビクッと驚くマイナン。

「ま、まぁ……できるっちゃできる……」
「めちゃくちゃ上手いよ!!」

 マイナンの言葉を遮って、叫ぶプラスル。マイナンの方を見ると、大声で褒められて赤面していた。

「ほーん、じゃあ、マイナンに料理を作ってもらえばいいんじゃないか?」

 奥の方から、今までの話を聞いていたお兄ちゃんがそう言った。

「ミーも食べてみたいなぁ、マイナンちゃんの料理!」

 続けてアロライさんもそう言う。

「わ、わかりました……頑張って作ってみる……」

 小声でマイナンがそう言った。そして、プラスルが持ってきた材料を使って、料理を始める。
 先程のプラスルとは全然違い、慣れた手つきで包丁を持ち、野菜などを切っていく。

「すごーい! ミーも料理はからっきしだから尊敬しちゃうな~」

 アロライさんがマイナンを褒める。明らかにキョドった様子をしつつ、料理を続けるマイナン。なんだか微笑ましい。


* * *


「で、出来ました……!」

 しばらくして、テーブルの上に並べられた料理を見て、僕たちはびっくりした。
 これは……プロ。プロ級の出来だ。上手いなんてもんじゃない、見た目や匂いからわかる、マイナン、かなりのやり手だ。

「おいしそー! おねえちゃん、たべていい?」

 ピチューがワクワクした様子で尋ねる。マイナンはこくりと頷く。

「それじゃあ、いただきます……!」

 みんなで一斉にぱくりと料理を口に運ぶ。
 その瞬間。頭に浮かんだのは、『美味しい』を通り越して『幸せ』の一言だった。

「うめえ!!」
「美味しい~♪」
「ぼく、こんなにおいしいりょうりはじめてたべた!」

 みんなが口々にマイナンの料理を褒める。……この家の料理を作っているのは僕で、ピチューにこんなことを言われてしまったが、こんなことを言われても何も言えないくらい、マイナンの料理は素晴らしいものだった。

「さっすがマイナン!」

 ポンポンとマイナンの肩を叩くプラスル。……いつもこんな料理が食べられるなんて、羨ましい。

「マイナン、ほんとに凄いよ。もっと自信もって!」

 僕もマイナンに声をかける。マイナンは照れた様子で、「ありがとう」と小さい声で応えた。


* * *


 ピンポーン!

 マイナンの絶品料理を食べている途中に、またチャイムが鳴った。

「はーい」

 料理を食べる手を止め、出迎えをする。現れたのはパチリスだった。

「遅れてごめんなさい! 買い物してたら遅れちゃって……!」
「なるほどね、さあ、入って入って」

 パチリスは、入った途端目を丸くした。まあ、絶品料理がずらりと並んでいたらそうなるか。

「これはどなたが作ったんですか?」
「マイナンだよ!」
「凄い! 凄いです、マイナンさん……!」

 パチリスも、マイナンを褒める。さっきから立て続けに褒められて、マイナンはオロオロしている。

「パチリスも、食べて……!」

 小さい声でそう言うマイナン。パチリスは「いいんですか!?」と目を輝かせた。

 案の定、料理を食べて感動しているパチリス。本当にすごいな、マイナン……。

「そうだ、わたしはみなさんにお菓子を作ろうと思って来たんです」

 そう、パチリスが言った。

「おかし!! おかしがたべられるの!?」

 わぁっと喜ぶピチュー。

「ふふ。今から作るので待っててくださいね」

 マイナンの作る料理には敵わないと思いますが、と小声で付け足すパチリス。確かに、あんなのの後に何かを作るのはハードルが高いなぁと思った。あぁ、僕もこれからはもっと腕によりをかけて料理を作らなければ……。

 パチリスは、買ってきた材料でお菓子を作り始める。
 しばらくすると、ふわりといい匂いが漂ってきた。これは楽しみだ。

 かき混ぜた生地を型に流し込んでオーブンに入れる。ケーキを作っているようだ。

「焼き上がるまで、もうちょっと待っててください!」


* * *


 ケーキの焼き上がりを待ちつつ、マイナンの料理を食べていると。

「ここら辺からいい匂いがするなぁ~」

 と、なんと勝手に家に上がってくるポケモンが!

「き、君! どこから入ってきたんだ!」

 このポケモンは……ゴンベ!

「えー? あ、ここ他のポケモンの家だぁ!」

 やっと、気がついたようだ。それにしても、どこから入ってきたんだろう、とゴンベが歩いてきたルートを辿ると、僕たちの家の壁に、穴が開いているではないか……!

「ちょっと! なに穴開けてるの!」
「え? ぼくは穴なんか開けてないよ?」

 きょとんとした顔のゴンベ。本当に何も知らなそうだ。……一体誰がこんな穴開けたんだろう……。
 はあ……ここ、修理しないとなぁ……。


 チン!


 そんなこんなで、オーブンの音が鳴った。ケーキが焼きあがったようだ。

「えっと……ゴンベさんも食べていきますか?」
「えっ、いいのぉ!?」
「はい!」

 ゴンベは大喜びした。まあ、食いしん坊で匂いにつられてきただけで、悪いことはしてないしいいか。

 パチリスがケーキの仕上げをして、マイナンの料理を食べ終え、片付けたテーブルの上に置く。
 パチリスもパチリスで、見事なケーキを作って見せた。マイナンもパチリスもすごい。

「「いただきます!!」」

 切り分けたケーキをみんなで食べる。うーん、美味しい。
 甘ったるくなく、すっきりとした味わい。とても美味しいケーキだ。食べ進めていくと、何やら酸味のある味わいが。

「アクセントとして、ナナシのみを入れたんです」

 なるほど。だからすっぱい味がしたんだな。

「うわあああああ!!」

 と、叫び声が。ゴンベのものだ。

「どうしたんですか!?」
「ぼく、すっぱいの苦手なんだよぉ……!」
「えっ! すみませんっ……!」

 パチリスが謝るが、もう遅かった。ゴンベはケーキのすっぱい部分をもう食べてしまっていた。そして、なんと身体がブルブルと震えている。

「おいお前、大丈夫なのか……!?」
「だめ、爆発しちゃうぅ……っ!」

 ちゅどーんっ!!

 ……ゴンベは、あまりのすっぱさに、"じばく"してしまったようだ。……家の中は悲惨な有様。あの赤い屋根まで吹っ飛んでしまった。

「あーあ……」

 ゴンベは"じばく"を使ったせいでぶっ倒れている。
 さっきの穴だけでも修理するの大変なのに、この爆発でもっと大変なことに……。

「すみません、わたしがすっぱい味を入れなければ……!」

 ぺこぺこと謝るパチリス。「仕方ないよ」と声をかけた。
 うん、これは誰も悪くない。仕方ない、仕方ない……。
 僕んちのお金が飛んでいくのは仕方ない……うぅ……。


* * *


 ぶっ倒れたゴンベを寝かせ、とりあえず今できる限りの家の修復をみんなでした。

「はっ!」

 その途中でゴンベの目が覚め、事を理解すると土下座で謝ってきた。
 大丈夫だよ、と僕がなだめる。そうして、ゴンベを含め、みんなで復旧作業を続けた。すると。

 ピンポーン!

 チャイムが鳴る。出ると、そこにはエモンガがいた。

「なんかデカい音がするなって思ったらここかよ……」
「え、エモンガ。いらっしゃい……こんな有様だけど……」

 スタスタと入ってくるエモンガ。家の有様を見て、うげぇっと唸った。

「さっきまでパンケーキとか料理とかケーキとかあったんだけどね……」

 エモンガは、ごめんなさいと謝るゴンベを見て、察したようだ。

「ぼく、修理できるポケモン探してきますっ……」

 と言って、ゴンベは家から出ていってしまった。

「最悪のタイミングで来ちったみてえだな……」

 しかめっ面をするエモンガ。うーん、申し訳ない。

「ところで、エモンガはどうして遅れてきたの?」

 こう訊くと、「悪いか?」とふてくされた顔で言うエモンガ。単純に気になっただけ、と付け加えると、小さい声で「このパーティーにオレは合ってないから」と言った。
 合ってない? どういうことだろう……。

「えっと……エモンガさん。ここに余りのケーキならあるんですけど、いかがです?」

 パチリスがそう言う。しかし、エモンガはそれに対しこう言った。

「いらねえ。オレ、甘いの好きじゃねえし」

「ナナシのみが入ってて、すっぱいアクセントもあるんですよ」、とパチリスが言うも……。

「オレ、すっぱいのも嫌いなんだ」

 と、エモンガは言う。

「……なにか甘くもすっぱくもない料理、作ろうか……?」

 と、マイナンが口を開いた。マイナンの料理だったら、と思ったが……。

「オレ、辛いのも苦いのも渋いのも苦手なんだよ!」

 エモンガは叫んだ。叫び声に驚いたのか、マイナンは縮こまってしまう。

「ちょっと! そんな叫ばなくてもいいじゃない!?」

 プラスルがエモンガに向かって言う。

「だーかーらー来たくなかったんだよ! オレは爆発音が気になって来ただけ、パーティーなんか呼ばれても行くつもり無かったんだ!」

 エモンガはこう言い放った。うーん、そう思ってたのか……ちょっとショックだ。

「まあまあ、落ち着いて……」

 アロライさんがエモンガをなだめようとする。が、エモンガはその手を振り払った。

「しーらねっ! オレ、帰るわ!」

 と言ってエモンガは帰ろうとする。

「待って!」
「あ?」

 そう止めたのはなんとマイナンだった。

「私の料理、騙されたと思って食べてみて……!」
「だから、オレは好き嫌いが多いんだって……」
「お願いだから……っ!」

 マイナンは必死に叫んだ。マイナンにも色々思うところがあるのだろう。僕としても、エモンガにもパーティー楽しんでほしい。

「はいはい、わかったよ……」

 エモンガも思いとどまってくれたようだ。
 早速、マイナンはキッチンへ向かう。エモンガを納得させられる料理を作れるのだろうか……。


* * *


「出来たよ……!」

 と言ってテーブルの上に出されたのは、カレーだった。

「カレー? オレ辛いのも無理って言ったよな……」
「いいから、食べてみて……!」

 ううむと唸りながら、エモンガはスプーンを口に運ぶ。すると。

「え、うま……!」

 エモンガの目は、キラキラと輝いていた。

「こんなに美味いカレー食ったことねぇ……!」

 よほど美味しかったのか、カレーをガツガツとかっ込むエモンガ。

「カレーがマイルドになるように、モーモーミルクを入れてみたの……! ほかにも……」

 と、マイナンが色々喋るが、専門的なものが多くてなんにもわからなかった……。まあ、マイナンが本当にすごいということはわかった。

「私、料理に自信がついたかもしれない……!」

 マイナンは、そう、目を輝かせながら言った。そう思ってもらえたなら、今日のパーティーは開いてよかったな、と思った。


* * *


「ごちそうさまでした!」

 ご満悦な表情のエモンガ。マイナンも嬉しそうだ。

 ……と、かなり前に感じた視線と同じようなものがまた僕を襲う。また振り返ってみるも、やはり、誰もいない。
 そうして、周りをキョロキョロを見回すと……!

「えっ、ちょっと……!」
「ん、どうしたピカチュウ?」
「また、穴が開いてる……!」
「えぇっ!?」

 さっき開いた穴とは違うところに、また穴が開いてるではないか……!
 疑ってはなかったが、やっぱりゴンベではなかったのだな、と思う。となると、この犯ポケは誰だ……!?

 新たに開いた穴を覗くが、誰もいる様子ではない。となると、犯ポケはまた新しい穴を作ってる可能性があるな……。
 家の中をくまなく見渡す。すると、また違う穴が見つかったではないか!
 そこに開いた穴は小さく、僕では入れなさそうだ。となると……。

「ピチュー! そこの穴に入って、様子を見てきてくれないかな……?」
「ぼく? わかった、いってみる!」

 と言って、ピチューは穴に入っていった。すると……。

「ピチュ~ッ!!」
「デデネェ〜ッ!!」

 叫び声が、ふたつ聞こえる。ひとつはピチューで、もうひとつは……。

「デデンネ!!」

 ピチューが穴から出てくる。その奥にいたのは、デデンネだった。
 まさか、穴開けの犯ポケって……。

「ちぇ、バレちまったかぁ。穴開けるの楽しかったんだけどな~」

 確信した。穴開けの犯ポケ、デデンネだ。

「ど、どうしてこんな事したの……!」
「えー? イタズラするのって楽しいじゃん?」

 悪びれる様子も一切無く、口笛を吹いているデデンネ。僕は、カチンときた。

「デデンネ! なんてことするんだ! 僕たちの家が、僕たちの家が……!」
「しらなぁ~い」
「ぐぬぬ……」

 トラブルメーカーってもんじゃねえぞ。ガチの問題児だ……。なんでこんなことするんだよう。

「修理してくれるポケモン探してきたよ、ってええっ!?」

 ゴンベが帰ってきたようだ。だが、増えた穴に驚いた様子。

「犯ポケはデデンネだったよ……」
「そ、そうだったんだ……」

 と、ゴンベが連れてきたというポケモンを見る。このポケモンは……。

「おっす! ドテッコツでごわす!」
「ドッコラーでやんす!」

 ドテッコツ。そしてそのお供のドッコラー。めちゃくちゃ頼もしそうだ。

「ちゃちゃっと修理しちゃっていいでごわすか?」
「あ、はい。お願いします……!」
「了解でごわす!」

 と言うと、ドテッコツとお供のドッコラーはあっという間に僕たちの家を修理してくれた。
 プロってすごいなぁ、としみじみ思う。


「終わったでごわす!」
「やんす!」

 赤い屋根も元通り。穴もきちんと塞がって、爆発が起こったなんて思えないくらい綺麗になった。

「ありがとうございます!!」

 ……まあ、お金は結構したけどね……。ドテッコツたちを見送ると、僕の視線はデデンネにいった。

「デ、デ、ン、ネ~?」
「なんだよ、悪いか?」
「悪いに決まってるでしょ! なんで他の家の壁に穴開けて悪くないと思ったのさ!」

 叱っても、反省する気が無さそうだ。どうしよう……と思っていたその時。

 ピンポーン!

 チャイムが鳴る。そこに居たのは、トゲデマルだった。

「あぁ、トゲデマル。いらっしゃい」
「本を読んでましたら、いつの間にかこんな時間になっていたのですわ」

 トゲデマルは、なんと、豪邸に住むお嬢様。なんともマイペースなポケモンだ。

「どうされたのです?」
「いやぁ、デデンネが僕たちの家の壁に穴を開けちゃって……」
「ふふ、デデンネはピカチュウのことが好きなのですわね」

「「……は?」」

 僕とデデンネの声が重なる。

「はぁ!? おいら、ピカチュウのことなんかす、す、すきじゃねぇ……っ!」
「好きだったら、こんなことやらないはずだよ……!」
「好きな子には、ちょっかいをかけたくなるもの。そうでしょう? オホホ……」

 トゲデマルはこう言う。いやまさか、と思ってデデンネのほうを見ると、顔を赤くしている。
 え、ほんとにそうなの……?
 オホホと笑うトゲデマル。僕はどうすれば……。

「とりあえず、謝った方がいいと思いますわ、デデンネ」
「……わーったよ……ごめん、ピカチュウ……」

 トゲデマルに諭され、一気に大人しくなったデデンネ。

「あ、うん……いい、よ……」

 僕もこう言わざるを得なかった。
 甲高い声でオホホと笑うトゲデマル。うーん、恐るべし。

 と、また変な視線が。デデンネのものでもない。怖いなぁ……。
 視線のする方を見ても、やっぱり誰もいない。なんなんだろうか……。


* * *


 ピンポーン!

 チャイムが鳴る。これが最後かな。
 ドアを開けると、息を切らしたモルペコがいた。

「遅くなってごめん!」
「おぉ、モルペコ、いらっしゃい……」

 と、モルペコの後ろに誰かいる。なにやら磯の香りがするが……。

「アタシ、ここに来る途中でワナにひっかかってるバチンウニを助けたのよ!」
「あ、どうも……」

 モルペコの後ろにいたのは、バチンウニだった。あぁ、海の近くに住んでいるバチンウニだから、磯の香りがしたのか。

「な、なるほど……バチンウニも一緒にパーティーを?」
「ううん、食べる!」

「「えっ」」

 僕とバチンウニの声が重なった。た、食べる……?

「うに丼にするの! 美味しそうでしょ?」

 ポケモンを、食べる……? それ、色々アウトでしょ……。
 バチンウニも、ガタガタ震えている。そりゃ、食べられるなんて言われたらそうだろう。

「なによ、うに丼食べられないってわけ!?」

 と、モルペコが怒りだした。すると、モルペコの姿がまんぷくもようから変わり、はらぺこもようになった……!

「う~ら~らぁ~!!」

 怒ったモルペコが、"オーラぐるま"を繰り出してくる。あっ、これはまずい……!
 僕はとっさに、モルペコに"ほっぺすりすり"をした。
 ダメージを受け、動きが止まるモルペコ。

「誰か! モルペコに食べ物を!」
「さっきのカレーの残りがある……!」

 マイナンがカレーを持ってきて、モルペコに食べさせる。
 すると、モルペコは無我夢中でカレーにがっつき始めた。
 しばらくすると、身体の模様が再びまんぷくもように変わった。

「ぺこぉ~、満足ぺこぉ~」

 満足そうな様子のモルペコ。もう、バチンウニをうに丼にすることなんて忘れてそうだ。とりあえず、事件解決、かな?


* * *


 これにて、呼んだメンバーは全員揃ったことになる。と、いうことで。

「改めまして、パーティーを開催しまーすっ!」
「「いぇーいっ!!」」

 最初にやった時よりもいい反応。やっぱりパーティーはたくさんポケモンがいなくっちゃ!

「私たちは」
「料理を作りますね!」

 と言って、マイナンとパチリスは料理を作り始める。

「ねぇ、あたしも料理学んでみたい!」

 そう言うのはプラスル。

「いいですね! 教えますよ!」
「プラスルも一緒に、やろ……!」

 そう言って、プラスルも混ざって料理を作り始めた。

「まだかな~」

 最初は楽しくなさそうだったエモンガも、料理にわくわくしている様子。よかったぁ。

「早くしろ~おいら待てないぞ~」

 デデンネがせかす。

「まあまあ、ゆっくり待つのですわ」

 それをなだめるトゲデマル。

「マイハニー、かわいいぜ!」
「そう言うユーも素敵よ♪」

 ライライカップルはまたもやイチャイチャしてる。爆ぜろ。

「ほーら、こっちおいで~」
「わー!」

 追いかけっこでピチューと遊んでいるモルペコ。はらぺこもようにならなかったらいいお姉さんなんだけどなぁ。


「出来ましたよ~」
「あたしもちょっと手伝ったんだ!」
「おぉ~」

 こうして、マイナンたちが作った料理が並べられる。

「「いただきまーす!」」

 みんなで声を揃えていただきますを言ったあと、一斉に食べ始める。が。
 一口食べたところで、トゲデマルが手を止めた。

「どうしたの? 美味しくない……?」

 マイナンが恐る恐る訊く。

「わたくし、ダイエット中なのですわ」
「ええーっ!!」

 ダイエット中だからといって、それ以上食べないトゲデマル。美味しかったですわ、とだけ言って、席を立ってしまった。
 それをぼーっと眺めるマイナン。

「も、もったいない!」

 そう言ったのは、ゴンベだった。

「ぼく、食べてもいい?」
「え、あ、いいけど……」
「ありがとう!」

 そう言うと、ゴンベはがーっと一気に料理を平らげた。さすがは食いしん坊。恐るべし。

「すっごく美味しいです……!」

 そう口にするのはバチンウニ。いやほんと、食べられなくてよかったなと思う。

「神じゃん! うめ~」

 トラブルメーカーデデンネもご満悦のようだ。まあ、根は悪いやつじゃないからね。

「やっぱ最高~!」

 好き嫌いが多いエモンガでも大絶賛な絶品料理。

「よかったぁ……!」

 作ったマイナン、そしてプラスルもにこにことしている。

「わたしが作ったお菓子も食べてくださいね……!」

 そう言うのはパチリス。「はーい」とみんなが応えた。それに対し、パチリスが「ちゃんと、すっぱくないようにしてますから」と付け加えた。

「マイハニー、あ~ん!」
「んっ! 美味しい♪」

 イチャイチャするライチュウの二匹。もう慣れてきた。

「美味しいものがいっぱい食べられて幸せ~!」
「ほんとにね~!」

 モルペコもピチューも幸せそう。


 いやぁ、みんなそれぞれパーティーを楽しんでくれて本当によかったよかった。

 と、今までで一番近く視線を感じる。痺れを切らし、僕は言った。

「あの、誰ですか。出てきてくれませんか!?」

 空気が動いたのを感じた。やっぱり、誰かいる。
 視線の方を見てみると、ぼんやりと影が浮かんできた。
 そこから現れたのは……。

「……ずっと、覗き見しててすみません……」

 僕に似た容姿の、とあるポケモンだった。そのポケモンとは……。

「ミミッキュ……!」

 そう、ミミッキュ。

「んあ!? 誰だ!」
「やだ、こわい……」

 誰だと警戒するお兄ちゃん、泣き出すピチュー。
 まあ無理もない。ミミッキュはお化けみたいな見た目だ。怖いという先入観を持っても仕方がない。
 けど、僕には悪いポケモンではないように感じた。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 小さな声で謝り続けるミミッキュ。

「お、落ち着いて。みんなも怖がらないで」

 僕は、ミミッキュに話しかける。

「どうして覗き見してたの?」
「えっと……みんなでパーティーしてるのが楽しそうだったから……」

 ほら、やっぱり。何か悪さをしようとして来た訳では無いんだ。

「君もパーティーに混ざりたいって思ったんだね?」

 こくりと頷くミミッキュ。
 僕は、みんなに呼びかける。

「ねえ、ミミッキュもパーティーに混ざってもいいかな?」

 みんなは顔を見合わせる。

「お願い……します……」

 そう言ってぺこりと頭を下げるミミッキュ。
 しばしの沈黙。

「いいんじゃないですの?」

 口を最初に開いたのはトゲデマルだった。

「そうね、いいと思う」
「ミミッキュも一緒に盛り上がろうぜ!」

 すると、次々に肯定的な意見が出てくる。

「みなさん……!」

 と、ピチューがミミッキュの前に出てきた。

「こわいとかいって、ごめんなさい……」

 そして、ミミッキュの前で謝った。

「いえいえ、むしろ、ボクの方こそ驚かせてごめんなさい……」

 お互い謝りあって、和解した!

 ミミッキュも混ざって、パーティーだ!

「いぇーいっ!! みんな、楽しんでいこうぜーっ!!」
「「おーっ!!」」


* * *


 そんなこんなで、僕らは盛り上がりまくった。そして、とうとうお開きの時間。

「みんな、今日はありがとう!」
「楽しかったよ、ありがとねピカチュウ!」
「いやいや、みんなのおかげだよ!」

 そう言って、僕はドアの前で手を振ってみんなを見送る。
 最後まで残っていたのは、ミミッキュだった。

「えっと……ボク……」
「ミミッキュ。これからは君も僕たちの仲間だ!」
「…………!」

 ミミッキュは驚いた様子でこちらを見る。

「これからも、よろしくね! ミミッキュ!」
「わぁ……! ありがとうございますっ……!」

 ぺこりとお辞儀をし、タタタッとミミッキュは帰っていった。

「みんな帰っちゃったね」
「そうだな。マイハニーが帰っちまって寂しいぜ」
「うん、さみしいね……」

 ぽつんと残されたピチューとお兄ちゃんと僕の三匹。

「家、入ろっか」
「だな」

 そう言って、僕たちは家の中に入っていった。


* * *


 その日の夜。僕はベッドの中で今日のことを振り返っていた。
 いやぁ、楽しかったなぁ。色々ドタバタもあったけど、とても楽しかった!
 また、みんなで集まって楽しみたいな。そう、思った。

 とりあえず、色々あって楽しかったけど、疲れたから今日は早く寝るに限る!
 おやすみなさい!!

 こうして、僕たちの楽しいパーティーは幕を閉じたのでした。





おしまい

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