消失の凸凹

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作者:襾石ノ杜
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読了時間目安:39分
この奇病の始まりは、いつだったのだろう。

ここまで数多くのポケモンを狂わせ、おののかせ、恐怖へと落とし込ませた、この奇病は。



……『ナッシング病』



誰が名付けたのかは知らないが、そう、呼称されるようになった。


ナッシング病は不治の病。
とても恐ろしい、病だ……!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
………
……



──とある 穴倉──


プラスル「~♪」

マイナン「……」セッセ、セッセ


この穴倉は、僕らの家。


プラスル「もうすぐだね、精 付けてよ!」

マイナン「どうせ僕には、ムリだよ……」


ここで僕ら二匹は今まで、生を育んできた。


プラスル「アタシたちが“生きている証”、残したかったんじゃないんでしょ!? ほら、終わったら練習、練習ッ!!」

マイナン「ちょっと、ノリと勢いで……言っちゃっただけだよ。大それたこと、僕になんか」

プラスル「だ・か・ら、アタシもいるでしょーがッ!?」

マイナン「でもさぁ……」


ウジウジしているのが、僕 マイナン。
対象的にテラテラと明るい彼女は、プラスル。

僕らは、姉弟。
孤児の、凸凹姉弟。


なんで、『あんなこと』を言ってしまったのか…………。


──それは 数ヶ月前


《ポケモンのワザ コンテスト!!》


マイナン「そのまんまでしょ」

プラスル「そのまんまだね」

マイナン「……に、僕は参加するんだ、ねーちゃんッ!!」

プラスル「へ?」


近場の街で行われるという、そのコンテスト。
単純に。技の威力、完成度などを競い合うものらしい。

そして、優勝すれば賞金もたんまりと貰える──


……僕は決めた!

今まで町で雑用、雑用。そんな日々は、この瞬間のために。
こき使ってきたアイツらを見返してやるんだ!!


そして、こんなちっぽけな僕らも『生きているんだ』ということを、思い知らせてやるんだってッ!!!


プラスル「……プラスル あなた、今日の稼ぎはどうしたの? あと、この漂うきのみジュースの匂いは」

マイナン「やってやるんだ、ねーちゃんぅ」プハァ


僕は、酔っていたのだ。
自分自身のみならず、心身ともに……。


マイナン「……ハァァ…………」


……そして、今に至る。


プラスル「今日のご飯は、焼きそばだよー。ミリンを加えて、元気が出るようにニンニクもちょいちょいと」

マイナン「なんだか、食欲ないや……」

稼ぎ金を飲み代に使ってしまった後ろめたさ。
なんでこんなことを口走ってしまったんだという後悔。

僕はマイナン、ネガティブなポケモンなのだ。

プラスル「でも、どうせ優勝するんならさ。“でんきショック”や“10まんボルト”とかを超えるよーなヤツをさ。繰り出してみたいよねー」

ねーちゃんはプラス思考。時々それがウザったい。

マイナン「うん、食べたら練習するよ、練習……」

プラスル「アンタ、せっかく料理作るんだからさ、もうちょっと美味しそーに食べてよー」

****

プラスル「行くよ、“でんきショック”ッ!!」ビリビリィ

電撃をまとい、プラスルは(練習用の丸太に)ワザを繰り出す。

マイナン「え、えぃ、れんひふぉっく……」パチパチ

僕はと言うと、まず噛んでしまう時点でお察し頂けるだろうか。
ねーちゃんのそれと比べ、もはや僕のはワザと呼べる精度ではない。

プラスル「……アンタ、やる気あるの?」

マイナン「ごめんなさい……」

あぁ、やっぱり僕はダメなのか?
“でんきショック”なんて、初歩中の初歩なワザだぞ。優勝なんて、夢のまた夢じゃないか。

プラスル「でも、まだまだ大会までは期間あるよね。アンタのゼンリョク……こんなもんじゃないでしょ?」

マイナン「え?」

プラスル「まずは、この“でんきショック”を徹底的にマスターしよッ! 基本は大事、おろそかにしちゃいけないよ!!」

マイナン「は、はい……」

プラスル「あーもう始まった、都合が悪くなると敬語になる…………。でもアンタの個性でもあるよね、変わってるし、可愛い!! ……だから頑張ろッ!!!」

マイナン「ムリに褒めなくてもいーよ、ねーちゃん……」

貶してから褒める、ねーちゃんの戦法。


──やがて。


マメパト「プラスルちゃんにマイナンくん。夕刊をお届けに来ました……が、汗びっしょりですね。なにかあったのですか?」

プラスル「ん、もうそんな時間?」

練習に夢中になっていると、いつの間にか夕方に。

プラスル「……後で、読もっと……。ほらマイナン、もっと!」

マイナン「と、とりあえず夕ご飯にしよーよ、ねーちゃん。明日もほら、僕 仕事あるし……雑用が」

プラスル「……それもそうだね。あ、献立考えてなかった……。ま、作ってればなんとかなるでしょッ!!」


プラスルねーちゃんは、どんな時でも前向きだ。
料理が好き。渋めな趣味だと、ポケモンの川柳も。

一方の僕は……仕事で培った技術と言えば、清掃ぐらい。
毎回ど派手にブッ散らかすねーちゃん。特に料理の後始末は僕がやっている。

凸凹姉弟。
きちんと役割分担し、毎日を暮らしていれば、きっと何か良いことがあるハズ。毎日代わり映えなどせず、このまま死んでいくのみ。

前者の考えはねーちゃん。後者は僕の持論だ。


……だからねーちゃんは、嬉しかったんだと思う。

まさか僕の口から、酔った勢いとはいえ、『大会で優勝する』だの前向きな意見が聞けたことに……。


プラスル「案外、それがアンタの純粋な性格なのかもね」

マイナン「よしてよねーちゃん、僕はネガティブだから、ネガティブ…………」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
………
……



──とある 病院──


「アンタなんて……早く消えちゃってよ!」

「失礼ですが、そのお言葉は患者様にとって」

「いいの、もう彼は…………」


「アタシの知ってる彼じゃないんだからッ!!!」


涙ぐみながら、“患者”に暴言を浴びせるポケモン。
必死になだめる看護師。しかし、その効果はないようだ。


「…………」


“患者”の表情を読み説くと、泣こうとでもしているのだろうか。しかし、だとしても彼には、泣けない一つの理由があった。
決して薄情なワケではない。流す涙が物理的に「存在」しないのだ。

いや、涙『だけ』ではない。



その患者の病は、【ナッシング病】──




……
………


──翌朝──


プラスル「おはよー、マイナン。で、いってらっしゃいッ!!」

マイナン「あぐあぐ」

寝起きに一枚パンを口へと突っ込まれ、僕は目覚める。
なるほど寝坊したか。

マイナン(いつもプラスルが起こしてくれるもんだと思って油断した! というか昨日の特訓で疲れてたんだ)

脳内の中での言い訳云々は世間様には通用しない。
僕はとにかく、猛ダッシュにて職場へと向かうのだ。

****


──ポケモンレスキュー(有)


マイナン「すすすみません、寝坊しました!!」

スリープ「あぁマイナン君か、寝坊かぁ。……出勤時間より、前に。一周周って、偉いんじゃないかな」

マイナン「え、……あれ、出勤時間より早い……?」

スリープ「だって、あさっての今だから」

マイナン「ぁ」

昨日、まる一日眠っていたというワケだ。

スリープ「まぁ、疲れてたのかい? もしかして今度やるとかいう なんちゃら大会にでも向けて、特訓していたとか」

マイナン「ぅ……」

この職場に(雑用として)務めて、一週間余り経つだろうか。前の職場よりポケモン同士の関係が良く、社長のスリープさんも、気さくで話しかけやすい。

……お金、あんまりもらえないけど。

スリープ「(有)だからね、(有)。大変なんだ…………」

マイナン「(株)を目指して頑張りましょう…………」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ポケモンレスキュー(有)は、その名の通り、スリープさんの『困っているポケモンを助けたい!』という理念の元、彼が一大発起して立ち上げた会社だ。

マイナン「今日の依頼はなんですか?」

スリープ「『夢を見なくなって困っている、助けてほしい』というモノだ。よくありがちな、有り触れたもの」

スリープ「……というワケではないんだ、今回のケース」

マイナン「え?」

スリープ「どうやらその『夢』が、その依頼者の場合 ……根本から消滅してしまっているらしい」

スリープさんは悪夢を喰らうことを得意としている。
その彼が言うのだから、間違いではないのだろう。


──そして 数時間後


スリープ「はぁー……」

がっくりとした様子のスリープ。
……依頼を『失敗』したのだ。

マイナン「珍しい……スリープさんでも失敗することがあるんだ。ましてや僕なんて」

スリープ「一々卑屈するんじゃない。しかし、さっきも言った通り……夢が根の本から消失している。今回は謎が多い」

スリープさんは懸命にその依頼主の夢を探り出そうとしたのだが、欠片も見出すことができなかった。

つまり、どういうことかというと、そのポケモンは良い夢だろうと悪い夢だろうと平等に。


……もはや見ることが叶わない、身体になっていたのである。


スリープ「しかしあのポケモン、何か妙だったな。夢の件抜きに、その…………『喋り方』、が」

マイナン「……辻褄が合わなかったり、途中つっかえたりと、正直大丈夫かな? とは思いました」

スリープ「! もしかすると」

マイナン「どうしました?」

スリープ「昨日の夕刊、読んだか? 最近話題になっているらしいんだ。悪い意味で……。半信半疑だったんだが、仮にあのポケモンがそうだとすると、腑に落ちる面が多々ある」

マイナン(……??)


スリープ「「……『ナッシング病』という、流行りの病気なんだが……」」


****


【なくなる恐怖 ナッシング病】


 ここ数日間、謎の奇病が流行している。その奇病に蝕まれし者は、あらゆるモノが『なくなる』のだ。

 それは今までの思い出であったり、培った技術であったり……自らの内臓器官であったり、万物 例外なし。

 『なくなる』が平仮名表記なのは「亡くなる」と「無くなる」を掛けた意味合いである。
事実、生に結び付くモノが無くなった結果、亡くなる実例が既に存在している。

 誰が最初に呼び始めたのかは知らないが、この病気は
『ナッシング病』の名で定着している。

 ナッシング病の治療法は、現在の所 確立はしていない。
正に、不治の……病…………。


------------------------

マイナン(……ナッシング、病…………)

スリープ「夢がなくなる。語力もなくなる。決してありえないことではない。念の為に依頼者には、専門機関の受診を勧めることにするか…………」


マイナン(よかった、僕や身近なポケモンがなってなくて)


原因不明の奇病。僕が一番恐れるのは環境の変化。

そんな病気になり、日常を送るのに支障が出てしまうのならば。
僕は多分、自身の性格と相まって、生きるのを諦めてしまうかもしれないからだ。



──数時間後


マイナン「ただいまー」ガチャッ

プラスル「あ、マイナン! 今日も特訓だよ、特訓!!」

マイナン(……もう、忘れてくれないかなぁ)

マイナン「? ところでねーちゃん、それは……?」

彼女は、腕に包帯を巻いていた。

プラスル「あ、これ? ……ちょっと昨日の特訓でね、痛めちゃって。負傷だよ、優勝者の特訓に付き合った名誉の…ね!!」


プラスルはプラス思考。マイナンはマイナス思考。
それでいいのだろう、それでこそ凸凹姉弟なのだから。


マイナン「今日は特訓止めよ、僕……寝るよ」

プラスル「え? ご飯は?? お風呂は???」

マイナン「ねーちゃんの作るご飯はおいしいよ。お風呂、一緒に入るのは恥ずかしいけど……嫌ってワケじゃない。でも」


……なぜか、眠いんだ。

どうしようもなく、もう、寝てしまいたいんだ…………。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
………
……


その夜、僕は夢を見た。
(夢自体の内容は覚えていないのだが)


湧き上がったのは、謎の消失感。



目を覚ますと、瞳からは大量の涙。




ふと心をよぎるのは……例の『ナッシング病』。





……もしかして、僕はなにかを『なくした』のだろうか。






それとも……現在進行形で『なくしつつ』あるのだろうか…………。


****


──翌日 ポケモンレスキュー──


スリープ「やはり昨日の依頼者は、『ナッシング病』だったらしいんだ。まだ軽度のレベルだが、これからどんどん、彼の病症は進行していくことだろう」

マイナン「最終的には、命をも『なくす』……」


なんだったのだろう、昨日のあの体験は。

でも心配させるワケにもいけないし、言わないべきだろうな。


マイナン「じゃ、早速お部屋のお掃除を」

スリープ「いや。今日はちょいと付き合ってもらいたい。先日以降、『ナッシング病』の疑いのある依頼が山のように届いてしまっていてね」

マイナン「爆発的に増加しているのか……ナッシング病は」


──恐らく僕とて、例外ではない。


スリープ「今日はその遺族の方に、お話を伺う機会を得たんだ。なにか、手かがりが掴めるやもしれない」

マイナン「遺族……」


マイナン(僕がナッシング病かどうかも、わかるだろうか。あの尋常ではない消失感。僕はゼッタイに、なにかを『なくしつつある』……!!)



****


──遺族の住まい


ラランテス「ようこそ、ポケモンレスキュー様。私の話が、それ程までお役に立てるのなら……」


僕らを出迎えてくれたのは、ナッシング病により夫を失った 遺族のポケモンだ。

マイナン(……)

そして、僕らは応接間へと案内され。

スリープ「……心中お察し申し上げますが、お話の方を」

ラランテス「……このピアノ」

スリープ「?」

彼女、応接間の隅の、破壊痕の残るピアノに言及する。

ラランテス「夫は、ピアノの講師でした。こんなカマを生まれながらに持ち、手先が不器用な私にさえも、手取り足取り優しく教えてくれた……そんな夫、でした」

スリープ「……それで」

ラランテス「この本棚の学本 一つひとつ、夫の大切な物でした。その振り子時計も、あのソファーも、皆揃いに揃って……」


ラランテス「夫の中から、『なくなって』いきました」


マイナン&スリープ「「!!」」


ラランテス「最初に失ったのは、自身の職業について。何を生業としていたか……ピアノの知識も」

マイナン(『なくなった……』)

ラランテス「その後は、本、時計、ソファー。自身のモノだと認識ができなくなった。私との記憶も、私が誰なのかも。仕舞には……泣くこと…すらも…………」

スリープ「……それは、心苦しかったですね。しかし、あなたのこの語りが、多くの」

ラランテス「……病気に苦しむポケモンを、救うと?」

スリープ「──はい」

ラランテス「…………だったら、夫はそのポケモンたちの人身御供になった、とでも……?」

スリープ「!」

不穏となる空気を裂くかのように。


ラランテス「……こんなヒドい話が。
返して……夫を、ストライクを…………返してよッ!!」


彼女の怒声が、応接間全体に響き渡った。


ラランテス「なんでストライクが……居なくならなきゃいけなかったの!? バカげたこの病気のせいで、夫はどんどん……アタシの知っている彼じゃなくなっていった!!!」


結婚祝いに、夫が購入したピアノ。
夫が大切に、調整していたピアノ。


──それを。


ストライク「ウオォッ!!」バギャッ

ラランテス「な、なにやってるの……あなたッ!!?」


突然に、彼は自ら壊しにかかったのだ。


ストライク「こんなもの……オレは買った記憶がないぞッ!! 応接間にこんな邪魔なもの…………置くんじゃないッ!!!」

ラランテス「じ、邪魔な……も…の…………?」

彼の、その一言が。

ストライク「うっ……そもそもお前……お前は『誰だ』? ここは、『何処だ』……??」


コワい。
どんどん自分が、自分では『なくなって』いる。


ストライク「う……。
うわあぁぁぁぁァァァァァァァァァァァアッ!!!!」



ガ シ ャ ア ン ッ ! ! !



ラランテス「……! …………!!」



叩き壊された、ピアノ。
その前の、彼の発言。

……今の彼の、存在自身。


ラランテス(ストライクは、もう…………)


ポロッ──


垂れるのは、一滴の涙。
私の心を真に傷つけたのは、一体、その中のどれだったのだろう。



《今の夫は、もう、夫ではない》



そう悟ると、急に楽になった……気がした。
どちらにしろ逃げ道は、それしかなかったのだ。


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ラランテス「! ……ごめんなさいね、いきなり……取り乱してしまって……」

スリープ「い……いえいえ。本心からの独白、本当にありがとうございます」

ラランテス「でも……」

スリープ「で、でも…………?」

ラランテス「これだけは言えます。あの病気は、生ある者に死よりも残酷な結末をもたらす、恐ろしい難病です」

スリープ「ラランテスさん……」

ラランテス「最期の間際の夫に対し、私は暴言を浴びせ続けました。『早く死ねばいい』だの、『せいせいする』だの……ヒドいですよね。でも、そうしなければ、私までもがおかしくなりそうで」

マイナン「……おかしく、なられる?」

ラランテス「あの夫は夫ではない、と。もう私の知っている夫は遠くへと旅立ってしまった。『ナッシング病』を発症した、あの時から……。そう思い、彼の存在を否定し続けなければ……と」

マイナン(当事者にしか、わからない苦悩……か)

スリープ「そしてあなたは、遺族年金の受け取りを拒否し続けているとか。その理由も、今語られた事に直結しているのですか?」

ラランテス「……私の夫は先程も申し上げた通り、私が看取った“一ナッシング病患者”とは別のポケモンです。善意の心で看取っただけ。決して、私の夫では……ないのです…………。あっていいハズがない」

スリープ&マイナン(…………)

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スリープ「ありがとうございました。それでは私共は、おいとまを……」

ラランテス「……待ってください。最後に一つ」

マイナン「?」

ラランテス「彼は発症初期の頃、こう言っていました。
『激しい消失感が自分を襲う。毎日毎日、やるせない気持ちが自身を支配しているんだ』──」

マイナン(……!!)


僕は一体、なにをなくしつつあるのだろうか?


マイナン(わからない。でも、このままだったら、僕は……)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
………
……



──僕らの洞穴──


プラスル「お帰りー、マイナン! 今日はね、がんばって色々と作ってみたんだッ!!」ズィッ

マイナン「……」

ずらりと並ぶ、プラスルの手料理。

マイナン「すごいね……」

プラスル「冷めない内に食べちゃってよ! で、その後に、ワザの特訓……しよッ?」

マイナン「特……訓……。
…………ねぇ、僕には無理だよ、僕はねーちゃんみたいに」


明るくない。
料理ができない。
たくましく生きることなんかできない。
もしかしたら、原因不明の難病かもしれないし。


……なんで僕だけが、なくなる恐怖を常に抱えてまで、姉にジェラシーを感じてまで…………。


マイナン「──やらなきゃ、いけないんだッ!!?」


プラスル「!?」


マイナン「…………あ」

声に、出てしまった。

プラスル「マイ……ナン…………?」

マイナン「いや、僕は…………」

プラスル「ね、プラスル……アタシなにか、怒らせるようなこと、言っちゃったかな…………? 一緒に頑張ってさ、コンテスト……優勝しようよ…………。ねぇ…………」


マイナン「だからそんなのもう、どうだっていいんだッ!!」


プラスル「え……」

マイナン「大体、ウザったらしいんだよ! ねーちゃん……僕は酔った勢いで、出たくもないコンテストにこんなバカげた宣言をしただけなんだッ!! ……真に受け過ぎなんだよッッ!!!」

プラスル「べ……つに…………アタシは」

マイナン「逆になんでそこまで、ねーちゃんはコンテストにこだわるんだよ! 生きた証? 見返してやる? 僕のこれらの言葉のためか?……自分の言葉ながら、虫唾が走るよ!!」


ねーちゃんの泣き顔を見るのは久し振りだし、心が痛むが、もう、どうだっていい。
こんな自分勝手な自分なんて……消えてなくなれ。


マイナン「ありがとう、ねーちゃん。でもって、さよならだよ」

プラスル「ま、待って……どこか行っちゃうの……マイナン?」

マイナン「どうだっていいだろ、そんなことッ!!」

プラスル「……!」


その後の会話のやり取りは、あまり覚えていない。


些細なことに敏感になり過ぎて、反応が過剰で、そんなことは、重々理解している。

ただ、ラランテスのケースと逆のことをしただけだ。


こういう風に。
こちらからふっかけ ケンカ別れでもしておけば、一方的ではあったが……プラスル、彼女の思いも、少しは緩和されるのではないかと。


あるいは、彼女の性格上 逆効果だったのかもしれないが…………。


マイナン「う」


しかし。
どうやら、僕の取った行動は、僕自身の中においては、『大失敗』だったようだ。



マイナン「ぅ……わ。
…………うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」



再び、この抑えきれない消失感。

僕はまた一つ、『モノ』を、なくしたのだから──



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
………
……



──翌日 ポケモンレスキュー


スリープ「本当に、ここを?」

マイナン「……はい」

辞表を出す。
今の僕には、ポケモンを救うことなどおこがましい。

スリープ「……君にも、余程の事情があるのだろう。ムリに、止めはしないが……」

マイナン「すみません。ありがとうございます……。そして、他になにか……?」

スリープ「この間の依頼主。ほら、最初の。その親族が、君に会いたがっているそうなんだ」

マイナン「……依頼主の、親族……?」

スリープ「まぁ、行ってみるといい。場所は○△病院。そこに依頼主が入院しているし、親族もお見舞いに来ているとか」

スリープ「……」


気になる。行って、みようか。
他に行くアテも、ないし……。

****


──○△病院


紹介された病室へ、行ってみると。

ムンナ(親族)「初めましてマイナンさん。以前、祖母の悩みを聞いてくださったとか。本当に、感謝をしております」

どうやら、依頼主の実孫らしい。

マイナン「そんな、僕はなにもできなかった。ただ、本当に、悩みを聞いただけなんです」

ムンナ「謙遜なさらないで下さい。彼女にとっては、それだけで本当に救われていたんです。……こんな風に、病状が進行したとしても」

ムシャーナ(依頼主)「……」


依頼主は、車椅子に座っていた。
発語もなく、無表情。視点も虚ろだ。


ムンナ「夢から始まり、そして今に。彼女にとっては、現状そのものが、覚めることのない悪夢の連続体なのかもしれませんが」

マイナン「なんで、流行ったのか……こんな病気。多くのポケモンが毎日のように発症し、苦しみ、そして、なくなっていく…………」

ムンナ「病気自体は仕方がありません。誰しもがなるものですから。それが治療法が確立されていない、新種の病というだけです」

マイナン「しかし、ナッシング病に侵された者は、もはや、以前の面影など全くなくなる。まるで囚人の扱いだ」

ムンナ「多くの場合、それが当たり前なのでしょう。かつてのそのポケモンとのギャップ。奇天烈な行動。見放すのも、無理はない」


ムンナ「……それでも、私は、彼女の側に寄り添っていたいのです」


マイナン「…………それは、どうして?」

ムンナ「どんなに忘れられても、彼女は私を愛してくれた……ただ一匹の、ポケモンなのですから」

マイナン「……」

ムンナ「彼女には、本当に世話になった。……彼女は好きでナッシング病になったワケじゃない。どれだけ変貌しようと、彼女を私は愛し続けます」


……その時。


ムシャーナ「ムンナ……?」


一同「!」

……。

依頼主が、一言、確かにその名を呼ぶ。
しかし、後に続く言葉は発せられず、また幾ばくかの時が経過したのである。

マイナン「今の、は」

ムンナ「……。なにかの、拍子でしょう。それ以上でもない、以下でも。…………でも、嬉しいです」

マイナン「?」

ムンナ「彼女に名前を呼ばれるだなんて、久し振りのこと……でしたから…………」

------------------------

………
……


互いに礼を言い、その病室を後にする。

もう、会うことなどないのだろうな。
近い将来、新聞の隅っこの方にでも、小さく死亡記事が載せられるだけだろう。

マイナン(……なのに)


同じナッシング病の患者なのに、ラランテスの場合と こうも捉え方が違うとは。

どうせなくなるのならば、冷たく接するべき。彼は彼ではない。
最期の瞬間まで、愛し続ける。それが、彼女のため。

一概にどちらの考え方にも、正誤を付けることはできない。
どちらが正しいとか、恐らくは ないのだろう。


ただ、僕は。ただ。


《そんなのもう、どうだっていいんだッ!!》


あんなに尽くしてくれたねーちゃんに対し!!

……あの日のことを、後悔している。



「あ、マイナンさん……ですね?」


マイナン「……え?」

そんな時、病院のスタッフに呼び止められる。


「話を聞いて、来られたのでしょう? 貴女のお姉さん……町中で倒れ、緊急搬送されたのですよ?」

マイナン「……ねーちゃん、が?」



「彼女は……この病気、聞いたことはありますかね?
──『ナッシング病』ですよ。しかも、かなり進行しています」



マイナン「「!?!?!?」」




……そう、いえば。


《……後で、読もっと……》


ねーちゃんは、新聞にナッシング病の記事が載っているのを、知っていたんだ。だから、目を逸らした。


《いつもプラスルが起こしてくれるもんだと思って油断した!》


ねーちゃんは……僕の起きる時間を忘れていた。
いや、既に、記憶から『なくしていたんだ』。



《……ちょっと昨日の特訓でね、痛めちゃって》



──プラスルの病室


マイナン「……ねーちゃんッ!!」

プラスル「……。
……マイナン…………?」


ねーちゃんを一目見る限りは、病衣を着せられ、ベッドに臥床させられている程度で。
“あの日”から、外見上は彼女にさしたる違いは見当たらない。


……当然あの腕の『キズ』も、まだあるハズだッ!!


……バッ!!


マイナン「……!!」


……包帯を取ると、そこには、大きなヤケドの痕……があった。


------------------------


──あの日、マイナンが帰宅する前のこと


プラスル「……マイナンには、頑張ってもらわなきゃ! ……えーっと、このレシピ、あれ、どう作るんだっ……け…………」

自分にできることは、料理を作って彼に精を出してもらうこと。
特訓に付き合い、彼に実力と自信をつけてもらうこと。

……自分の分まで、マイナンに、『生きた証』を遺してもらいたい。

自分は確かに、生きていたのだから。
生きているの……だから…………。

コンテストの晴れ舞台は、正に、うってつけだったのだ。

プラスル「!」ジュッ

しかし、突然の手足の倦怠感。
ダランとなった腕が熱せられた調理器具へと当たり、火傷となる。

……しかし、恐ろしいことには。

それに伴うハズの痛みが、なかったのである。

プラスル(……)


言えない、このことは。

心配は、させたく、ない──


------------------------

マイナン「ねー……ちゃん…………」

プラスル「アタシ、気づいたらあなたが、いなく……なってて……。それで、町に、いるかなって…………」

あの時の記憶すらも。

プラスル「黙っててゴメンね……マイ……ナン…………」

マイナン「僕は」


黙っていたのは、僕だって一緒なんだッ!!


僕が感じたあの消失感は、プラスルが失われていくことへの表れだったんだ。

僕らは姉弟。通じるものがあったから。


マイナン(早とちりし、本当に病気だったプラスルの事態に気付くことができなかった! 僕は……バカだッ!!)

プラスル「本当に、ごめんね……」

マイナン「……」

プラスル「お姉ちゃん、失格だよね……」

マイナン「……ねーちゃん、本当は僕、側にいてやるべきなんだろうけど。薄情だと、思うだろうけど。それでも僕には……やらなくてはいけないことがあるんだ」

プラスル「え……?」

マイナン「大丈夫、それが終わったら戻って来る。僕は『生きた証』を……全世界のポケモンたちに見せつけてやるんだ!!」

プラスル「……なに、を……?」


しかし そう言い残し、マイナンは、病室を後にしてしまう。


プラスル(『生きた証?』
どこか……で、そんな言葉を……耳にしたような……)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


──数日後──


スリープ「あなたがナッシング病になったと聞いて、ビックリしましたが……。マイナン君、ウチを辞めて。そして今も行方知れず。一体、彼はどうしたんでしょうか」

プラスル「マイナン……」

こんなアタシに愛想を尽かし、出ていってしまったのだろうか。

スリープ「あ……この大会、今日からだったんですね」

その時、テレビで『ポケモンのワザ コンテスト』の模様が中継されていた。

……のだが、様子がどこか、可笑しい。

司会「な、なんですか……あなたはッ!!」


???『ゲキョ、ゲキャア…………』


スリープ「ア、アイツは……『ザ・ゴースト』ッ!?」

プラスル「ざ・ごーすと?」

スリープ「世の怨念の集合体であり、ありとあらぬるものに対し憎しみを抱いている……そんなポケモンだが、ヤツがこんな大会に純粋な気持ちで参加するハズがない」

ザ・ゴースト『我のような闇ある限り、この大会のような光もまたありけり。あぁ憎い。全てが憎い。今すぐにでも、この大会を潰してくれよう!』

既に多くの出場者が、ザ・ゴーストの闇に呑まれ、リタイアしていたのだ。


そんな、時。


「待ってよ……まだ、僕の順番が控えていたのに……」


ザ・ゴースト『ぬ、貴様は……?』


スリープ「!」

マイナン「か……彼は!!」


マイナン「僕の名は……マイナン! とある信念の元、この大会へと参加した!! この大会を潰させてたまるものか……勝負だッ!!!」


ザ・ゴースト『やれやれ、面白い。その眼に宿る光……わが闇が僅かも漏らさず真黒に塗り包んでくれるわッ!!』

スリープ「マイナン……本当に出場していたとは! いやそれよりも……あのザ・ゴーストに勝てるのかッ!?」

プラスル「マイナン……」


ザ・ゴースト『……ギラレファーーッ!!』ブンッ


スリープ「“シャドーパンチ”! マイナン、避けるんだッ!!」


マイナン「……」


スリープ(な、なにをやってるんだマイナン? なぜ、避けようとしない……!?)


──ビリィッ!!


ザ・ゴースト『ゲグャ』

プラスル「!」

ザ・ゴースト『き、貴様……』


マイナンは、ゴーストの拳に“でんじは”を浴びせていた。


マイナン「ムダに動き、的を増やす……。戦いでやっちゃあいけない愚策だ! そして喰らえ……“でんきショック”ッ!!」

ザ・ゴースト『ヌワッ……』

ザ・ゴーストは痺れる拳に気を取られ対応が遅れる。
そして。


ザ・ゴースト『バビラガァ~~ッ!!?』バリリィッ


スリープ「なるほど、やった、マイナンのワザが炸裂したッ!!」

マイナン「“でんきショック”……ただの基本技と侮るがなよ。僕はこよ数日間、このワザを鍛えに鍛えて来たんだ。このコンテストで優勝するためにッ!!」


そう、このワザを……。


プラスル「……マイナン」

ザ・ゴースト『ムワァムワァ、お前のその表情……確かに確固たる思いがありそうだな。しかし我の、このワザはどうかな……』ベロンッ

マイナン「!」

スリープ「ザ・ゴーストが、己の舌を……!?」

マイナン(しまっ──)

気づいた時にはもう遅く。
ザ・ゴーストは会話の最中、舌を死角よりマイナンの背後へと伸ばしていたのだ。


グ ィ ン ッ ! !


マイナン「ぐわあァ……」ギッチンギッチン

スリープ「ザ・ゴーストの舌が、マイナンを螺旋状に包み込み……強力に締め付けているッ!!」

ザ・ゴースト『さぁ我に降伏しろ……さすれば汝の誇りと引き換えに、その命は助けてやるッ!!』

マイナン「『降伏』、だと……?」

そんなの……。


マイナン「……誰がするかッ!!」


ザ・ゴースト『ヌグ……この地力』

マイナンは、尚も怯まず ゴーストの舌を千切ろうとするのだ。

ザ・ゴースト『俄然興味が湧いてきたぞ……貴様を駆り立てる、その原動力ッ!!』

マイナン「うぅ……」

マイナン、攻撃より開放される。が。

スリープ「……恐らはマイナンの身体は、今の締付けによりダメージが尋常ではない。“でんきショック”……まだ放てるか……?」

マイナン「まだだ、まだ……“でん」


ザ・ゴースト『バカの一つ覚えはやめるんだーーーッ!』パバババ


マイナン「ウォッ……!?」

ザ・ゴースト、発動中の電撃に対して謎の波動を繰り出す。

スリープ「あ……あぁッ!!?」

マイナン(“でんきショック”が……)

なんとマイナンの電撃が、鋭利な刃物へと具現化したのだ。

ザ・ゴースト『我の悪意の波動をぶつけ、その攻撃を無力化させた。そしてもらうぞ その電撃ッ!!』

マイナン「ぐがっ……」グサッ

プラスル「! マイ……ナンッ!!?」

その具現化した電撃のサーベルが、マイナンの身体に深々と突き刺さる。

ザ・ゴースト『死に体だな、もはや無理だ。我の最終奥義をもって、貴様を葬ってやろう!!』

マイナン「……」

ザ・シックゴースト『さぁ』


マイナン「僕、は……。まだ倒れるワケにはいかない。全世界の……ナッシング病の患者のため……にも」


プラスル「マイナン……?」

ザ・ゴースト『……あの病気か。フフフフフフフフ。我の撒き散らした、あの病気のため……か。お前の原動力は。なるほど……な!』

マイナン「ま、まさか……お前ッ!?」

ザ・ゴースト『我は、光あるもの全てを滅ぼしたいだけなのだ。その一環として、あの病気を蔓延させた』

マイナン「!!!? ……どれほどのポケモンが被害を被ったか……わかっているのかッ!!?」

ザ・ゴースト『それこそが我の悦び。それこそが我の生きる糧。さぁ逝こうぞ。……ギラレーーーッ!!!』ゴムァゴムァ

ザ・ゴースト、悍ましい異音と共に、地面に黒い渦を創り出す。

スリープ「あの渦へ、マイナンを葬り去るつもりだッ!!」

ザ・ゴースト『この渦こそ、貴様の墓穴よーーーーッ!!!』

マイナン「……死ねるか、こんなところで。ねーちゃん……今こそ、見ていてくれッ!!」


──ボワァッ!!


スリープ「!!」

ザ・ゴースト『ジ、ジョワ……この……発光現象…………!?』

プラスル「マイナンの身体が、オーラのような眩きを放っている……。これが、マイナンの……ゼンリョク」

プラスル(……!)


その時、プラスルは取り戻した。

マイナンのために特訓に付き合っていたこと。
彼がいなくなったあの日のこと。
とても、寂しい想いに駆られたということ。


……『なくしたもの』を、少しだけ。



マイナン「“でんきショック”の高みへと……。うおぉ…………」

ザ・ゴースト『や、やめろ…………』


マイナン「スパーキング……。
ギガボルトォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」ビリリビリィッ



ザ・ゴースト『!?!?!?』


マイナン(ねーちゃん、これが僕の……ゼンリョクだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!)


ド……ドォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!



ザ・ゴースト『……ベギラガァァァァァァァァァァアッ!!?』



──ボッ!


全身全霊の巨大な大電撃が、ザ・ゴーストに直撃。
ザ・ゴーストの身体は爆発四散し、そのまま……消滅した……。


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マイナン(ハァ、ハァ……)

司会《な、なんということでしょう……。見事ゴーストの野望を喰い止めたのは、ルーキー マイナン選手だぁぁぁぁぁぁッ!!!》

スリープ「いたんだ司会」

司会《他の選手は病院送りに……。ならばこのコンテストの栄光ある賞、贈るのに相応しいのは…………。無論、ゼンリョクを我々に魅せつけてくれた……》



《《マイナン選手だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!》》



マイナン「……」

プラスル「なんかまぁ、結果、オーライだね」

司会《マイナン選手、一言、今のお気持ちを!》

マイナン「……。
僕は、この大会で得た賞金を……全額。ナッシング病に苦しむ患者のため、寄付をしたいと考えています」


一同「!!!」


マイナン「……僕は以前まで、投げやりな生き方をしてきました」


それが変わったきっかけは、酔った上でのとある一言。
しかしその一言が、僕を嫌々ながらも駆り立てた。
支えてくれる姉のことを、ウザったいと思うこともあった。

その結果、衝突したこともあった。

しかし『ナッシング病』。
この病気に出会ってから、僕の考えは少しずつ変化していく。

その病気になったポケモンは、なにもかもが『なくなる』。
そんなポケモンに対して、僕らはどう向き合っていくべきか?

……『いなくなれ』と罵ったり、『最期までかくあるべき』と付き添ったりと。

なにが正しいのか?
それは、一概には決めつけられなかった。

しかし僕は、僕の繰り出したこのワザは。
そんな『ナッシング病』の姉と共に、特訓したワザが元だ。
彼女が病になった後も、僕は単身一人、彼女の思いを込めて この数日間特訓に明け暮れた。

彼女の意志は、僕のワザに受け継がれ、邪悪の根源たるザ・ゴーストを打倒できた。コンテストにも優勝できた。

これだけは言える。
これこそ、彼女の『生きた証』なんだ!


マイナン「そして僕の生きた証は……この賞金を元に、ナッシング病の完全治療法を確立させること。ナッシング病の消滅……。根本の原因がいなくなったとしても、未だ苦しむポケモンは絶えない」

マイナン「ナッシング病の消滅こそが……僕の生きた証となるんだ!
やったぞ、僕は……ただの雑用係じゃないんだーーーッ!!」

スリープ「最後思いっきり私情入っちゃってますね、マイナン君……でも、彼らしい、か」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
………
……


──そして


プラスル「マイナン……」

マイナン「ねーちゃん」

(……)

プラスル「……じゃ、帰ろ!」

マイナン「え?」

プラスル「……お医者さんから、少しだけ許可が出たの! 私たちのお家に帰ろうよ! で、美味しい料理、いーっぱい作ってあげるからねッ!!」

マイナン「ハハ、ありがとう……無理は、しないでね」

プラスル「で、新しい仕事も早く見つけよーね」

マイナン「……ハハ、そーいや今ボク、無職だったっけ……」

………
……


二匹の生きる証がある限り、きっといつまでも この凸凹姉妹は、幸せに暮らしていけることだろう。

たとえ、どんなに変わり果てようとも。
思う気持ちがあれば、どんな難事だって──

------------------------

………
……


消失の凸凹 ~完~

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