第一回恋愛談義

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作者:竜田もち
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読了時間目安:9分
愛というものは、愛(いと)しくて 愛(うつく)しくて 愛(かな)しくて、とても尊いものだと思うのです。

ヨノワール視点
それぞれの恋愛観をぐだぐだ話すヨノワールとセレビィ。
二次創作、星の調査隊の世界線。
(セレ→ジュプ→主)


 世界に太陽が取り戻された。部下であるヤミラミ達に加え事情を知るジュプトル、セレビィとともに時限の塔の復興を祝っていた。宴は盛り上がった。ヤミラミ達は宝石入りのブリーのワインを飲み、ジュプトルはその空気に当てられ潰れていた。

 私も久々に羽目を外したようだ。いや、あのディアルガ様の前で外せなかったのか。珍しく体が火照っていた。酒の気を抜かないまま、ディアルガ様のもとへかえるわけにはいかない。夜風に当たりに行くと先約がいた。桃色の体が月に照らされている。

「邪魔するぞ、セレビィ。ジュプトルの介抱をしなくていいのか?」
「ヨノワール!? 本当に邪魔しにきたのね!? ……ジュプトルさんが飲んでたわけじゃないから大丈夫でしょ」

 ただでさえアルコールで赤い顔をさらに赤くするセレビィはからかい甲斐がある。セレビィがジュプトルに惚れていることは知っている。こんなにもあからさまだというのに、あの朴念仁は気づかないらしい。

「それで、ジュプトルにはその想いを伝えなくてもいいのか」
「アラ、貴方もそんな話をするのね」
「多少は嗜みはするさ」
「……本音は?」
「目の前でイチャつくのはやめろ」
「うるさいわね! 気づかれないんだもの! しょうがないでしょ!?」

 セレビィは大声で叫んだことに気づき、会場を振り返る。先程と変わらない風景に安心したのか、ほっと息をついて恨みがましく私を睨んだ。

「そんな顔してたら愛想尽かされるぞ」
「ほんと貴方きらい」

 からかいすぎたか、月を見て目を合わせてくれなくなった。

「かつての奪い合いの世界ではない。もう制約をつけなくてもいいんじゃないか?
太陽を取り戻すというお前達の目的は達成した。太陽のある世界にいるという奇跡も起きた。今更何を迷っている」
「……私達は時の流れが違う。生きる長さが違う。……貴方、わかってて言ってるんでしょ」
「……ん?」
「……え?」

 予想外の言葉と表情に妙な空気が流れる。

「……えっと、もしかして、ディアルガとヤミラミしか知り合いいないの?」
「は、なぜそうなる!? いや、他にもいるぞ!? ポリゴンとか……」
「それって仕事仲間じゃない!? しかも長生きするタイプの!」

 セレビィの言葉が何故か胸に刺さる。酔って少し不安定になっているのか。このままだと私の交友関係の話になってしまう。なんとか話を戻そう。

「ああいや、お前が言わんとすることはわかるぞ」
「ホントでしょうね?」
「同じ時を過ごすのが短いだけだろう、私からしてみれば些細なことだ」
「十分重要なことでしょ」
「だからこそ、伝えなくていいのか、と言っている」
「……貴方に言われるとは思ってなかったわ」

 セレビィにじっと見られる。さらりと流れる風が木の葉を揺らした。

「お前は私を長生きと言うが、ディアルガ様の方がずっと長生きだ」
「……あ」
「いつか私が体を保てなくなっても、ディアルガ様はずっと塔にいらっしゃるだろう。だから、私が生きているうちにこの忠誠を示している」
「……うん」
「もう一度聞く、その想いを本当に伝えなくていいのか」

 2度目の質問は誤魔化されなかった。ゆっくりと答えを待つ。セレビィは月を見上げて瞬いた。

「……できないわ」

 私はてっきりジュプトルがわかるまで伝えるものだと思っていた。セレビィは俯いて、顔が見えなくなった。

「それは何故だ?」
「だって、そんなの、だめだわ」
「駄目?」
「だって、ジュプトルさんは、あのニンゲンのことが好きなんだもの」
「……んん?」
「会えない相手と比べられるなんて、むり」
「……その、すまないが、」
「なによ」
「ジュプトルは、あのニンゲンのことが好きだったのか……?」

 初耳だった。ジュプトルはあのニンゲンのことが?好き?だと。好きの意味が混ざっているのではないか。だが、セレビィの様子を見る限りは間違っていないのだろう。目を見開いて、私の言葉に声を出せずにいる。

「……はあっ!? 貴方、私より先にあの子達に会ってたでしょ!? なんで気づかなかったの!?」
「いや、意外というか、なんというか。親愛の意味でなく?」
「〜〜!? 貴方も大概ね!」

 何も言えない。今まで色恋沙汰には無縁だったのだ。

「……ジュプトルさんは、あのニンゲンに憧れてたのよ。それはいつからか、恋から愛に変わった。私はそれを知っている。私は、覚えているから、だから、あの子達が一緒にいることを許せたの」

 思い出しているのか、すっと緑の目を細めた。月が雲に隠れて、少しだけ暗くなる。

「……本当は、同じ時を過ごせるあの子達が羨ましかったの。あの子達が愛し合うのが、嬉しくて悲しかった。
過去を変えることで同じ時を終われることを望んでいたの……なんて、ひどいわね。お酒のせいかしら、忘れて頂戴」
「……そうだったのか」

 私が思い出す彼らの姿は、いつもボロボロだった。太陽を見るのだと豪語して、力の差がある私から命からがら逃げる姿。私は敵対していたから、戦う姿しか知らなかったのだ。その感情を知っていても、彼らへの扱いは変わらなかっただろうが……。

「随分と面白そうな話をしているな」
「は」
「え」

 ふたりして何も言えない空気を流していると、思わぬところから声がかかった。覆っていた雲は流れて月が顔を出す。声がした方を見上げれば、空間の歪みから輝く青い宝石が現れた。

「ディ、ディアルガ様!? 何故ここに!?」
「改めなくとも良い。今宵は無礼講だ」
「は、はあ」

 心臓が飛び出るかと思った。突然現れて無礼講と言われ、すぐに対応できるものではない。後ろでヤミラミ達の歯ぎしりが聞こえる。呑気そうで羨ましい限りだ。

「それで、塔を離れて何しにきたのよ」
「言っただろう、面白そうな話だと」
「さして面白い話ではないと思いますが……」
「お前に関してはな。長いこと塔に居るから平和になった今ならば、そろそろ見初めた者でも出てきて番でもできるかと思ったが、やはり期待を裏切られた」
「つがっ!? いえ、私には必要ないかと」
「言われてるじゃない、ヨノワール」
「笑うなセレビィ!」

 笑いを堪えるセレビィがプルプル震えている。ディアルガ様は不満気だ。私の忠誠はディアルガ様に捧げたのだから仕方ないでしょう。セレビィは一呼吸置いて、ディアルガと向き合った。

「貴方、そんなこと思ってたのね」
「意外か?」
「私、狂っていた貴方しか知らなかったもの」
「これから知れば良い。時の妖精よ、世界は広いぞ」
「ウフフ、そうするわ」

 微笑んで答えるセレビィにディアルガ様が満足そうに頷く。

「さて、宴には私も参加しても良いな?」
「……はっ。ブリー、マゴ、チイラ、ノメル、チーゴ、各種取り揃えております。おいっ、お前たち起きろ! ジュプトルもだ! ディアルガ様がいらっしゃったぞ!」
「無礼講でいいというのに」
「んん、なんだ、うるさいぞヨノワール」
「……ン、ウィッ、ディアルガ様ッ!?」
「ウィッ!?」
「……は、ディアルガ!?」

 てんやわんやと会場が騒がしくなる。ディアルガ様に器を用意しなければ。酒が回らぬようにゆっくりと向かうすがら、セレビィが言い聞かせるように呟いた。

「……そうね、いろんなことを知って、ちゃんと向き合わなきゃ」
「セレビィ」
「私、ジュプトルさんよりもずっと長く生きてるのに、彼より世界を知らないのよ」
「……」
「目的のために必要ないものだからと知らないフリを続けていたの。切り捨てられたら楽だったのに、暗黒の未来を変えたい太陽を取り戻したいと願う桃色のセレビィわたしであるためには不可欠な感情だった。もう、いいのよね。延ばし延ばしにしてきた代償を払わなきゃね」
「……ああ、そうだな」

 騒ぎの中のジュプトルのもとへセレビィは飛んで行った。彼女なりに区切りを見つけたのだろう。幾分スッキリとした顔で笑っている。

 混乱したままやまだ寝転がっているヤミラミたち。色とりどりに転がるきのみとジュースにむせ返る香り。頭を抑えるジュプトルと、寄り添うセレビィ。そしてそれらを見下ろすディアルガ様。

 決して美しいものではないが、私にはどうもうつく しく見えてしまうようだ。

「うむ、まずはこのブリーのを飲むとしよう」
「は、少々お待ちください」

 宴はまだ終わらない。
未来組幸せになってくれ。

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