弱虫バケッチャとおかしなハロウィン

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作者:ぴかちう
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読了時間目安:21分
「やーいやーい、弱虫バケッチャー!」
「図体は大きいくせに、態度はへなちょこだなー!」
「うぅ……」

 僕はバケッチャ。どこにでもいるような、普通のバケッチャなんだけれど……。
 一つだけ違うのは、大きさが特大サイズっていうこと。なのに、性格は内気。
 そんなギャップは周りから変に思われたみたいで、よくこうやってからかわれている。

「こらーっ! やめなさい!」
「げっ、ボクレーだ! 逃げろー!」

 と、僕をからかうポケモンたちを追い払うポケモンが。
 このポケモンはボクレー。僕の唯一の味方であり、親友だ。

「大丈夫だった、バケッチャ?」
「うん、おかげさまで……ありがとう」
「どういたしまして」

 僕はいつもボクレーに守られている。でもいつかは、僕だけでからかってくる奴らに立ち向かいたい……そう思っている。


「森の中で何してたの?」
「きのみ集めを……」
「なるほどね。今から帰るところ?」

 僕は黙って頷く。

「なら一緒に帰ろ!」
「……! うん!」

 僕とボクレーは小さな町に住んでいる。僕の家はこの町の外れの方にある。ボクレーとは家が隣。
 町の外れに家があるのは僕とボクレーだけ。だから仲良くなりやすかったってのもあるかもしれない。

 今は10月下旬。この時期といえばハロウィンの季節だ。
 この町も、ハロウィンの準備で賑わっていた。
 僕としては、ハロウィンの象徴みたいなポケモンである分、いじられるネタが増えるのであまり好きでは無いのだが。

「んじゃ、また明日!」
「ま……待って!」
「? どうしたの?」
「これ……」

 僕は、森で取ってきたきのみをボクレーに差し出した。

「いいの?」
「うん。今日も守ってもらっちゃったし……そのお礼」
「お礼なんていいのに……まあいいや、ありがとう!」

 にこっ、とボクレーは微笑み、きのみを受け取ると自分の家へと入っていった。
 それを見届けて、僕も家に入ろうとしたその時。

「……ハロウィンなんて……」

 どこかから、声が聞こえた。……どういうことだろうか。
 少し気になったが、気にせず僕は家に入ることにした。



 そんなある日の事だった。

「誘拐事件……?」
「そうなんだ。この町で、ポケモンが次々と消えているみたいで……」
「何それ……怖いね……」
「ほんとにね……」

 誘拐事件。町から次々とポケモンが消えていくなんて、誰がやっているのだろう。なんにせよ、用心しなければ、と思った。

 今日も今日とて森へ向かう。森にはからかってくるポケモンがいっぱいいるけど、森にしかないきのみを取るためには、そこに行くしかないのだ。
 ということで森に向かう僕だったが、今日はなんだか様子が違った。
 なんというか、ざわめいている……? その様子が気になるものの、とりあえず僕はきのみを取ることにした。

「あ、弱虫バケッチャだ!」

 ……また、いつものか。きのみを取っていると、またからかってくる奴らが現れたようだ。
 僕は後ろを振り返る。 すると、数匹のポケモンがいた。
 ……しかし、あれ、と思う。いつもより数が少なかったのだ。


「アイツ、連れ去られたんだ!」
「え……」

 まさか。数が少なかったのは、からかってくるポケモンたちの一匹が、誘拐事件に巻き込まれたから……。
 こんなに近くまで魔の手が迫ってきてると思うと、怖かった。
 僕は気をつけなきゃ、とどこか他人事のように思っていたその時。

「なあ、まさかお前が連れ去ったんじゃないだろうな!?」
「……え?」
「ああ! きっとそうだ! オレたちにからかわれて、復讐のつもりでやったんだな!?」
「え……えっ?」

 どういうこと? ……まさか、僕が誘拐犯だと思っているの……!?

「違う! 僕じゃ……!」
「ひえええー!! 逃げろー!!」
「町のみんなにも知らせるんだ!!」
「ま、待って……!」

 行ってしまった。……かなりマズいことになってしまった。
 どうしよう……!


「えぇっ!? 町のみんなにキミが誘拐犯って思われてるだって!?」
「そうなんだよ……」

 噂が町中に広まる前に、僕はボクレーの元を訪れ、事情を説明した。

「ひどいな……濡れ衣を着せるなんて」
「ボクレーは信じてくれるの……?」
「あったりまえじゃん! バケッチャがそんなことするようなポケモンじゃないってこと、よくわかってるし」
「ボクレー……!」

 これから、町のみんなが僕の敵になるかもしれない。それでも、ボクレーは唯一味方になってくれた。
 ボクレー、本当に君がいてくれてよかったよ……。

「でも、キミが誘拐犯じゃないって証明するには、本当の誘拐犯を探さないといけないな……」
「うーん……」
「……わかった。ボクが誘拐犯探しするよ!」
「えっ!?」

 そんな、そこまでしてもらっていいのだろうか。

「キミは家から出られないでしょ? 町を出歩いたらポケモンたちに何されるか分からない」
「そ、そうだけど……」
「だったらボクがやるしかないじゃん?」

 にかっと笑いながら彼はそう言った。

「そんな……いいの?」
「もちろん! 僕らは親友だろ?」
「ぼ、ボクレぇぇぇえええ!!」

 僕の目から涙がこぼれ落ちる。
 あぁ、ボクレーという親友がいて本当に良かった。心の底からそう思った。


* * *


「ハロウィンなんて無くなればいいんだ!」
「私たちを誘拐してどうする気……?」
「この町からハロウィンが無くなる! オレさまだけがハロウィンを楽しめる!!」

 そう。前のハロウィンのことをオレさまは忘れない。だから今回のハロウィンは……!

「早くここから出してー!!」
「うるさい! 出さないぞ!」
「うわぁぁぁん……」


ハロウィンが終わるまでは、コイツらを出すわけにはいかない。


* * *


 ……ということで、ボク、ボクレーの誘拐犯探しが始まった。
 まず、誘拐犯は何が目的でこんなことをしているのか。目的がなく誘拐をしているなんてことは無いだろう。
 だからまずは、この謎を解かなければ、と思った。
 そのためには……。とりあえずボクは町に出てみることにした。

 ドアを開けて町へ出る。誘拐事件のせいだろうか、どこかポケモンの数が少ないように感じた。

「あ、ボクレー!」

 ボクは町のポケモンの一匹に話しかけられる。

「やあ。みんなは?」
「誘拐されるのが怖いからって家に引きこもってるんだ」
「なるほどね」

「誘拐犯はあの弱虫バケッチャって噂だよ」

 ああ、やっぱり噂は広まっていたのか……。親友の言われようにボクは心を痛める。

「でも、その噂、ぼくはおかしいと思うんだよね」
「え?」
「なんか、家の中にいるポケモンたちも誘拐され始めてるみたいなんだ」
「家の中にいるポケモンまで……!?」

 確かに、そんなことバケッチャには出来ない。特に、彼はあんなに身体が大きいんだもの。隙間からだって入れるわけがない。

「なるほどね、情報提供ありがとう」
「なにをしてるの?」
「本当の誘拐犯探しだよ。ボクはバケッチャが誘拐犯じゃないって信じてるから」

 そう言ってボクは彼に別れを告げた。

 そしてボクはまた情報集めを続けた。

「誘拐犯? 弱虫バケッチャだ! お前も気をつけろよ!」
「バケッチャが誘拐犯よ! 絶対そう!」
「誘拐犯? 知らないなぁ。それより、そろそろハロウィンだね~」

 色々聞いてみたけど、ダメ。みんなバケッチャが誘拐犯だと思ってる。
 ボクは頭を抱える。そんな中、あるポケモンに声をかけられた。

「ねえあなた、誘拐犯探ししてるんでしょ?」

 ボクはコクリと頷く。

「私、見たのよ!」
「見たって何を?」
「誘拐される瞬間を、よ……!」

 それは大発見だ! 早速彼女の話を聞いてみた。

「あれは、私が買い物に行こうとした時のことで――」

 ……話によると、彼女が買い物に行こうとした時、とある家でハロウィンの飾り付けをしている親子がいたらしい。そして、その親子の背後に、何やら輪っかのようなものが現れて……。そこから手がにょっと出てきて、そのまま親子を連れ去ってしまったという。

「私、怖くて声も出せなくて……あの親子を助けられなかったの」
「なるほど……」

 やっぱり。誘拐犯はバケッチャじゃなかったんだ。
 この話はとてもとても参考になった。ここから誘拐犯を暴いて――。



 ガバッ!!



 一瞬、何が起きたかわからなかった。ただ、何者かに掴まれた感覚だけがあって……。

 ドサッ。

 ボクの身体が乱暴に地面に叩きつけられる。
 ハッと周りを見渡す。そこには、町のポケモンたちがたくさんいた。
 そして、ボクの目の前には……。リングを持った、小さな見知らぬポケモンが居た。


「フフ、誘拐犯探しなんてさせないぞ!」
「お前は……!?」
「フッ、オレさまは"フーパ"だ!」


* * *


 ボクレーが誘拐犯探しをすると言ってから数日。最後に話をしてから彼の姿を見ていない。
 少し心配になり、周りに気をつけつつボクレーの家を訪ねてみることにした。ドアの前に立ち、窓から様子を伺ってみるが……。そこには、ボクレーの姿はなかった。
 だとすると、聞き込み調査だろうか? 町を見渡してみるが、そこには誰もいなかった。
 僕が誘拐犯扱いされる以前に、そういう扱いをしてくる奴らがいなくなっている。……おかしい。
 でも、全部全部誘拐事件のせいだろう。

 そういえば、今日はハロウィンだ。ハロウィンだっていうのに、町には誰もいない。
 あぁ、おかしなハロウィンだな、と思った。

 でも、ほんとに誰もいないのだろうか。僕が町の様子を見ようとしたその時。

「よお、誘拐犯さん」
「だ、誰だ……っ!」

 僕は声のする方を振り返る。そこには、変なリングを持ったポケモンがいた。

「あなたは……?」
「オレさまは"フーパ"。オマエを捕まえるためここに来た」
「捕まえる……まさか、誘拐犯……!」
「その通りだ」

 案外小さいポケモンが誘拐犯で驚いたが、おそらくその小さな身体にかなりの力を持っているのであろう。

「オマエが最後の一匹だ。おとなしく捕まるんだな」
「くっ……」

 そう言うとフーパは腕をこっちに伸ばしてくる。僕はそれを避け、フーパを睨みつける。
 と、フーパが手に持つリングの中から、声が聞こえてきた。これは……町のポケモンの声?
 その中には……なんと、ボクレーの声もあった。

「お前……ボクレーまで……!」
「ボクレー? ああ、誘拐犯探ししてたやつか。目障りだから誘拐した」
「なんだとっ……!」

 ひどい。僕の大切な親友にそんなことするなんて……!
 リングの中からは様々な声が聞こえる。

「バケッチャ、助けてくれ~!」
「誘拐犯扱いしてたのは謝るから……!」
「今までからかっててごめん! でも、お前しかいないんだ……!」

 ……確かに、からかわれてたり誘拐犯扱いされてたりされていたのはつらかった。
 けど、今、みんなを、ボクレーを助けられるのは僕しかいない。
 勇気を出して、みんなを助けなきゃ……!

「フッ、オレさまのことを倒せるかな?」

 フッと笑うと、フーパは僕に向かって技を出してくる。単にバトルのぶつかり合いでは、僕に勝ち目はないだろう。なら……!

「フ、フーパ! お前の目的はなんだ!」
「目的ぃ? そんなの簡単に言うわけないだろ?」
「くっ……」

 目的がわかれば、なにか解決するかもって思ったんだけれど。やっぱり教えてもらえないか……。
 と諦めかけたその時。

「ハロウィンだよ!」

 フーパが持つリングの中のボクレーがそう言った。
 ハロウィン? どういうことだ……?

「きっとハロウィンをめちゃくちゃにしたかったから、誘拐なんてことしたんだ!」
「なっ……言うな!」

 なるほど。フーパの台詞と表情を見るに、図星のようだ。
 すごい、ボクレーは核心までたどり着いてたのか。でも、それを知ってしまったから捕まえられた……そういうことかな。

「うるさいうるさいうるさい!」

 フーパはそう言うと、誘拐されたポケモンたちと繋がるリングの口を閉じてしまった。これではもうボクレーの声も聞くことができない。
 僕とフーパの、一対一の勝負だ。
 と、フーパが突然リングの中へ消えていく。と思ったら、次の瞬間。
 僕の横にリングが出てきて、フーパが僕に向かってそのまま突っ込んできた。

「ぐあっ……」
「オレさまの得意技、"いじげんホール"だ!」

 攻撃をもろにくらってよろける。やっぱり、強い。
 ……図体ばかり大きくて、弱虫な僕にみんなを助けられるのだろうか。ふと、弱気になってしまう。

 このままじゃ、僕も捕まってしまう。でももう無理だよ……。
 諦めかけた、その時。

「諦めちゃダメだよ!」
「えっ……!?」

 どこからかボクレーの声が。
 声のするほうを見ると、フーパのリングが光り出して、また捕らえられたポケモンたちとの繋がり口が開き始めている。

「今、みんなを助けられるのはキミしかいない! ボクらも今出ようと頑張ってるけど、こうやって声を伝えるので精一杯だ!」

 ボクレーは必死に力を振り絞って、僕に声を伝えてくれているようだ。

「大丈夫。キミなら大丈夫! だってボクの親友だろ?」
「ボクレー……!」

 ボクレーの声を聞いて、勇気が出てきた。大丈夫。僕は、大丈夫!
 もう弱虫なんて言わせない……!

「しぶといやつらだな……えい!」

 フーパがまたリングの口を閉じてしまった。でも、もう大丈夫。僕は、負けない……!

「フーパ!」
「……なんだ?」
「フーパはどうしてハロウィンをめちゃくちゃにしようと思ったの?」
「そんなの教えるわけないだろっ!」

 そう言って技をこちらに繰り出してくる。大きい身体で避けるのは大変だが、僕は精一杯それを避けた。

「チッ……」

 聞いても答えてはくれないだろう。なら、こちらが考えればいい。
 どうしてハロウィンをめちゃくちゃにしたい? もしかして、過去のハロウィンで何かがあった……?

「君は、ハロウィンが嫌い?」
「ああ、嫌いだ! あんなオレさまを痛めつけた悪いイベント……!」

 フーパはハッとした顔をする。つい口を滑らせてしまったようだ。
 やっぱり、ハロウィンに何かあったんだ。

「ねえ、僕に教えてくれない?」
「お、お前なんかに教えるわけないだろ?」
「君を助けられるかもしれないんだ!」

 僕がこう言うと、フーパがピクリと反応した。が、しかし、また技の構えに入ってこう言う。

「お前なんかにオレさまを助けられるわけない!」

 またもや繰り出される技を避け、僕は言う。

「前のハロウィンは、楽しくなかった?」
「楽しかった訳ないだろ!? だからハロウィンが嫌なんだ!」

 うーん。フーパがハロウィンを嫌だと思った理由はなんだろう。

「前のハロウィンに何があったの?」
「さっきから聞いてばっかでうるさいんだよっ!」

 そうしてまた技を繰り出してきた。今度は避けられず命中。痛いけど、ここでへこたれていられない。
 フーパは、前のハロウィンで何かあったせいでハロウィンを嫌いになった。でも……なら。
 楽しいハロウィンをすればいいじゃないか。

「ねえ、フーパ! 僕と一緒に楽しいハロウィンをしない?」
「楽しいハロウィン? そんなのあるわけないだろ!」

 でも僕は、楽しいハロウィンと言ってフーパが一瞬反応したのを見逃さなかった。

「したいんだよ……ね?」

「楽しい……ハロウィン……。……したい。したいよ」

 フーパから戦意がなくなった。僕はそのまま話しかける。

「前に何があったか、教えてくれる?」

 フーパは黙って頷き、話し始めた。

「あれは、何十年も前のことだ――」

 何十年も前のハロウィンの日、フーパはこの町に現れた。ハロウィンというイベントに興味があったからだと。その時のフーパはこの姿ではなく、もっと大きい姿だったという。
 ハロウィンで賑わう中、フーパが現れると、みんなはそれを見て怖がった。フーパの見た目はいかつくて、そのせいで町のポケモンたちを脅かしてしまったらしい。
 ただ単にハロウィンを楽しみたかっただけなのに、怖がられたのが嫌になって、フーパは暴れた。そして、町のある一匹のポケモンにより、フーパは封印されたらしい。そして、この小さい姿になり、何十年も眠っていたんだと。
 そして現在。目が覚めたフーパは、この町に復讐に来た……。
 これが全てだそうだ。

「ただ、楽しいハロウィンがしたかっただけなんだ……」

 反省している様子のフーパ。

「……とりあえず、街のみんなを出してあげてもらえないかな?」

 コクリと頷くと、フーパはリングの中から町のポケモンたちを出し始めた。

「バケッチャ……! 本当にありがとう!」
「ボクレー! よかった……」

 でも、これで一件落着ではない。フーパも、助けてあげないと。

「ねえみんな、聞いて!」

 みんなの目がいっせいに僕に集まる。

「みんなで楽しいハロウィンをしよう!」

 楽しいハロウィンをする。もちろん、フーパも一緒に。それがフーパのためになるだろう。
 でも、フーパは戒められてこの姿になっているんだよな……。元の姿に戻してあげたいけど……。

「あの!」

 一匹のポケモンが声をかけてきた。

「フーパを封印した"いましめのツボ"、私、知ってます……!」
「えっ!?」

 その子は、フーパを封印したポケモンの子孫なのだそう。僕はフーパを見る。

「みんな、怖がらない……?」

 町のみんなは頷いた。すると、フーパは目を潤ませ……。

「うわぁぁぁん! ごめんなさい……オレさま、悪いことしたのに……」
「大丈夫、みんな許してくれてるよ、ね?」

 僕はみんなに呼びかける。

「そうだそうだー!」
「みんなでハロウィンを楽しもうー!」

 みんなも同じ意見のようだ。

「みんな……ありがとう……!」

 フーパは、にっこりと笑った。



「ここだよ」

 いましめのツボの在処を知っているという子についていくと、森の奥地にたどり着いた。そこには、祠のようなものがあり、見るとそこにはツボのようなものがあった。
 フーパは深呼吸をし、それに触れる。すると……。



ピカッ!



 眩い光が当たりを包み込む。光が収まると、そこには大きな魔神のようなポケモンがいた。

「これが……フーパの本当の姿……」
「本当に怖がらない?」
「うん! かっこいいじゃん?」
「……ありがとう!」



「それじゃあ、みんなでハロウィンだー!!」
「「おおーっ!!」」

 僕の掛け声とともに、みんながわーっと盛り上がる。
 お菓子をたくさん用意し、仮装をし、みんなでわいわい楽しむ。

「フーパ、楽しい?」
「うん、とっても!」

 フーパはにかっと笑い、そう言った。

「それはよかった!」

 それを見て、僕も微笑む。


「バケッチャ!」
「ボクレー!」

 ボクレーに話しかけられる。

「バケッチャ、すごいよ。みんなを引っ張って。もう弱虫なんかじゃないね」
「えへへ、ありがとう。でも、ボクレーがいなきゃ、僕はダメだった」
「そんなことないよ!」
「そんなことある。ボクレーの声で勇気づけられたんだ」
「そっか。ボクが力になれて嬉しいよ」

 僕らは二匹で微笑みあった。

 ハロウィン祭りもクライマックス。と、フーパがリングから何かを取り出して……。

「わぁーっ!! お菓子のシャワーだ!」
「すごい、すごい! フーパ、ありがとう!」

 リングから大量のお菓子を取り出し、降らせているようだ。子どもたちは大はしゃぎ。
 フーパも嬉しそう。
 みんなが楽しいハロウィンができて、良かったなぁ。僕も、これからはハロウィンを楽しめそうだ。


 夜が明け、11月1日。子どもたちが寝た後、僕らは片付けをやっていた。そのときフーパのリングが大活躍だった。

 片付けが一通り終わり、僕らは休憩をした。すると、フーパがみんなに声をかける。

「なあ、みんな……」
「どうしたの?」
「オレさま、この町にいても……いいかな?」

 周りを見渡し、フーパは言った。

「オレさま、悪いことしちゃったけど……その償いとして、色々頑張るから……お願いしますっ……!」

 大きな身体でぺこりとお辞儀をし、フーパは言う。
 一瞬の静寂が訪れる。そして、町のみんなが次々に声を上げ始めた。

「もちろん!」
「いいぜいいぜー!」
「みんな……!」
「もちろん僕も、OKだよ!」
「バケッチャ……!」

フーパは目を潤ませながら、言った。

「本当に、ありがとうっ……! よろしくお願いしますっ!!」


 こうして、またいつもと同じような日々が始まった。
 でも、いつもと違うのは、町の仲間にフーパが増えたことと……。

「あ、バケッチャだ」
「あ、やっほー。みんな」
「今日も元気?」
「うん!」

 僕がからかわれなくなったこと。
 あの一件を通して、僕は弱虫じゃなくなった。僕の力をみんなが認めてくれた。
 だから、僕はもうからかわれなくなった。

「バケッチャ。また森にいたんだ」
「ボクレー! うん、きのみを取ってたんだ」
「そっかそっか。じゃ、一緒に帰ろ!」
「うん!」

 こうして、町のみんなはこれからも仲良く暮らしていったとさ。





おしまい

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