Wisterias〜ハロウィンの夜に〜

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作者:太陽
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読了時間目安:8分
見ていただきありがとうございます。
ポケ二次ハロウィンという企画用に投稿させていただきました。
「太陽」としては新しい挑戦をした小説となっております。
よろしくお願いします。
「ハッピーハロウィン!!」

 ここはポケモンだけが住む街。
今日はハロウィン。ゴーストタイプのポケモンたちが一斉に集まったり、他のポケモンに仮装したり……年に一回のスペシャルなイベントだ。

 ピカチュウのお嬢様、トウカの家でも祖父母や親戚たちを集めてパーティーをしている。
だが……。

「お母様、今日学校でね……」

「ごめんね。今日はおじいちゃんたちと話したいからまた今度ね」

「はい。分かりました」

 作った笑顔で返事したあと、トウカは逃げるように自分の部屋に移動し、ドアを閉めた。そして、彼女の顔が寂しげな表情に変わる。

「…………」

 最近、母親であるアローラライチュウのフジノが構ってくれないことをトウカは気にしていた。
理由は分かっている。父親のライチュウ、トウジの突然の死だ。
トウジは仕事が忙しく、週に一回しかトウカと接する機会がなかったが、フジノと共に大切に育てられた。
特にお嬢様ということもあり、両親はむやみに怒らず、褒めて伸ばすタイプだったことから、トウカ自身はかなり真面目な良い子に育った。
だが……トウジが亡くなってからはフジノの態度が一変し、トウカに冷たく接するようになってしまった。


――――――――――――――――――――


(わたくしはもう、どうしたらいいか分かりませんわ……)

 彼女はそう思いながら無意識に、トウジの部屋に来ていた。

(お父様……)

 父親が恋しくなったのか、今までの出来事を思い出すように部屋の壁を触りはじめた。
すると突然、触れていた壁がバサッ! と布のように落ち、中から服が出てきた。

「えっ……!?」

 真っ白でスタイリッシュな……これはタキシードだろうか。同じく真っ白なシルクハットも付いている。

「これは一体……」

「トウカ様、見つけてしまったのですね……」

「!?」

 聞いたことのある声に驚いたトウカが振り向くと、彼女の執事であるスリーパー、ノボルがそこにいた。

「じいや! どうして……」

「わたしは分かっていましたよ。トウジ様が亡くなられてから、トウカ様がずっと悩んでいたことを。だから、様子を見に来ていたのですが……やれやれ。トウカ様に、真実を話すべき日が来てしまったのですねぇ」

「……知っているのですね。じいやは。お父様が亡くなった時のことを……」

「ええ」

 フジノからはトウカにトウジが亡くなったことは『不慮の事故』としか伝えられてなく、真実は知らなかったままだった。

「話してくださいませ。お父様のことを……」

「はい。トウジ様は……怪盗をやっていたのです」

「怪盗……!?」

「驚くのも無理はないでしょう。トウジ様は怪盗『ウィステリアス』として色んな宝物を盗んでコレクションしていました。時にはお金や金塊も盗んだり……その一部がトウカ様たちの食事等にも使われておりました」

「ウィステリアス……私もテレビや雑誌で聞いたことがあります。まさかそれがお父様だったなんて……」

 怪盗『ウィステリアス』は、この街で一番有名な怪盗だった。盗みの成功率は高く、度々テレビや雑誌に載るほどだ。

「わたしは執事の傍ら、そのウィステリアスの助手も務めておりました。そして……トウジ様はいつものように宝物を盗もうとした途中で暗殺者に銃で撃たれ、亡くなられたのです……」

「そういうことだったのですね……」

 真実を知ってホッとしたような、まだモヤモヤするような……トウカの心の中は複雑な気持ちになっていた。

「今まで隠してて、トウカ様もさぞ、つらかったでしょう……わたしも言いたかったのですが、トウジ様が最期に言っていたのです。『真実を自ら知るまでは、家族には黙っていてほしい』と……」

「…………」

 トウカの目には涙があふれていた。
しばらくノボルとの無言の時間が続いていたがその後、涙を拭き、真剣な顔つきになり……。

「お嬢様?」

「……じいや。決めました。私……怪盗になります」

「……!?」

 トウカの唐突な決意に、ノボルは目を丸くしながら驚いた。

「あんなに大切に育ててくれたお父様が、こんな最期を迎えてしまったことが、悔しくてたまらないのです。お父様の思いを、無駄にしたくない。だから……娘である私が二代目『ウィステリアス』を引き継ぎたいと思ってますわ」

「トウカ様……怪盗は、危険なことです。あなたもいつ、誰かに殺されるか分かりません。それでも……やるという覚悟がおありですか?」

「はい。今このまま家にいても苦しくなるだけ……なら、怪盗として死んだ方が、私としても本望ですわ」

「……分かりました。トウカ様の決意、しっかりと受け止めましたよ。微力ながら、わたしも協力させていただきます。では……」

 ノボルは持っていた振り子を、トウカの目の前でゆら、ゆらと揺らす。

「あなたは今日から、二代目『ウィステリアス』です……二代目『ウィステリアス』です……」

「…………」

 揺れる振り子をじっと見つめていると、トウカの目の前がかすみはじめ、ゆっくりと倒れた。


――――――――――――――――――――


「キャーーーーッ!!」

「うわーーーーっ!!」

 ガシャン! という大きなガラスの音と先ほどまで楽しそうにしていたポケモンたちの悲鳴が聞こえる。ハロウィン一色だったニュース番組も慌てて中継に切り替えたりとパニック状態になっていた。

「このクリスタルは、このアタシ、怪盗『ウィステリアス』がいただいていくわよ!」

「ウィステリアスだと……!?」

「ウィステリアスは数ヶ月前に亡くなったはずでは……?」

「いや待て、声からしてメスだぞ!」

 ノボルの催眠術により、一人称や口調が明らかに変わったトウカ……もとい怪盗『ウィステリアス』が姿を現す。初代である父親とは違い、ピンクのタキシードとシルクハットに包まれている。
街のポケモンたちが戸惑っている中、ウィステリアスは続けて話した。

「アタシは初代の思いを引き継いだ二代目、怪盗『ウィステリアス』。ハロウィンの夜にお邪魔したわね。これからはあたしがこの街のお宝を奪い取るから、覚悟してちょうだい! では、良い夢をBonne Nuit!」

 そう別れを告げたあと、トウカは投げキッスをする。

「二代目ウィステリアス……謎の魅力があるな」

「俺、ファンになっちゃいそう!」

「おいおいよせよ、怪盗だぞ?」

 彼女の色気に、オスのポケモンたちはメロメロ状態だった……。


――――――――――――――――――――


 ――お母様、黙って出て行ってしまってごめんなさい。
でも私……いえ、アタシは怪盗として生きていくことに決めました。
お父様の分まで、まだ見たことない外の景色を見に行くから、だから……。
わるい子で、いさせてください――
大切に育てられた分、裏切られてショックだった経験、あなたはあるでしょうか?
ハロウィンという日に生まれた小悪魔の活躍は、もしかしたらこれからも続く、かもしれません。

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