ブラッド・リーフと黒種の祭

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作者:要石の森
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読了時間目安:22分
ちいさな め を
ひとり ひとり で そだてて いこう
とある地方のとある町、ポチャタウン。
この町には、『風習』が存在する。

セイヨウ「こら、ペポ! アンタ サボってばかりじゃダメじゃないの」

活発な彼女の名は、セイヨウ。
この町の住民だ。

ペポ「姉ちゃん……だってもう、疲れたよ……」

そして、見るからにサボっているこの少年の名はペポ。
セイヨウの弟である。

二人は『風習』のため、飾り付けに参加しているのだ。

大人たち「こら、ペポ! か弱いセイヨウちゃんにばっか重い物を持たせるなよなー」

ペポ(か弱いったって……。この前 そのか弱いのに腕相撲で負けたんだよ、俺)

セイヨウ「ペポー、一回休憩しよっか」

ペポ「う、うん……」

セイヨウ「……なーんて言うと思ったか、こら! アンタはサボった分、これから動け! もっと働く!!」

ペポ「ひーん……」

その『風習』とは、【クロダネ祭】。
ポチャタウンの、秋の一大イベントなのだ。

ボクレー『クレレー♪』

そんなペポに、彼の手持ちポケモンのボクレーが付き添う。
ペポは思う。

ペポ(……早く祭りでおいしい物が食べたい)

頑張るという思いはないようだ。


その夜──


ペポとセイヨウ、帰宅する。

セイヨウ「アタシ、お風呂沸かして来るねー。アンタ、先に入る? 後に入る?」

ペポ「なんか、疲れちゃった……。少し休むよ、姉ちゃん先に入って……」

セイヨウ「ん、わかった」

ペポ(ふぅ……)バタッ

ペポ、自部屋のベッドに仰向けとなる。
ちょっと目を瞑り、少しだけ休むつもりが、ペポはその内 睡魔に誘われ……。

………
……



???──


ペポ(ん……。こ、ここは……?)

荒れ果てた地。
見捨てられたように人気もなく、草や木の一本も生えていない。しかも所々、黒煙が上がっている。
……ポチャタウンとは比較にならない程だ。

ペポ(……俺はなんでこんなところに……)

ペポは考え込むが、思考が回らない。
……その時。

「…………うぅ、く……しく…………し……く」

ペポ(?!)

すすり泣く、少女らしき声。
ペポは確かに、そんな声を聴く。

「死ん……で……死んで……しまった……」

ペポ(な……なんだ、これは)

やがて、声だけでは無くなる。
ペポの眼前には、その声の主らしき少女の姿。

そして。

少女「アイする……ヒト……」

少女は、とある少年を抱えている。
うなだれているその少年は、少女と何の関係があるのだろうか。

少女「ねぇ……」

ペポ「!」

少女「あな……た。もしか……し…………て」


ペポ「うわぁッ!?」



……
………


翌日──


セイヨウ「なによー、アンタ。飛び跳ねて起きるだなんて! アタシ、そんな大きな声でアンタを呼ばなかったのに」

ペポ(もう! あの夢のせいだ。また姉ちゃんにバカにされたぞ)

ペポ(……でも)

少女「もしか……し…………て」

ペポ(何なのだろう、あの女の子は。……いや、単なる夢だ。姉ちゃんにオドオドしてる、俺の心の表れの夢だっんだ、きっと)

セイヨウ「……」

セイヨウ「ペポ」

ペポ「ん?」

セイヨウ「ちょっとアタシ、今日、なんか、落ち込んじゃってさ……涼んでくるよ」

ペポ「え、あ、うん」

ペポ(涼んでくる……か)

ペポは知っている。
彼女が傷心となると、決まってその言葉を口にし、“あの場所”に行くのだと。

ペポ(……? でも姉ちゃん、今日、落ち込むようなことなんてあったか? だってまだ、俺たちは起きたばっかりだぞ)


数分後 タウン──


大人たち「わっせ、わっせ!」

大人たち「うぉっ、風で飾りが飛ばされる!!」

大人たち「ほら、そこに木の葉のアーチを置く! そこにはそうだな……」

ポケモンたち『パッチャ~~♪』

今日も町では、住民とポケモンたちが協力し合い、クロダネ祭の飾り付けに励んでいる。

大人たち「子供たちに配る菓子類も発注したぞ! ペポとかが盗み食いしないように、見張っとかないとな!!」

ペポ「なにが“ペポとか”だ!」

大人たち「ハハハ、ごめんごめん」

ペポ(まぁ、もう何個か“いただいた”けど)

ボクレー『ケド♪』


……ガリッ!


くすねたアメを噛み砕いた後、ペポは微力に微力ながら、飾り付けに加わった。


町長「おぉおぉ、頑張っとるのぉ若い衆。ハッハッハッ!」


大人たち「お、町長! ご足労様です!!」

ペポ(ん、見学か……)

ボチャタウンの町長。
彼は熱心な活動家であり、このクロダネ祭のような行事には、積極的に顔を出すのだ。

ペポ「どうも、町長」

町長「おぉ、ペポか! 久しいな、しばらく見ない間にたくましく……はなってないな。身長は……」

ペポ「2日ぶりで、伸びるわけがないでしょ」

町長「そうかそうか、たった2日だったか!」

ペポ(……ったく、この人はおどけてるのかすごい人なのかわからない)

恐らくは両方なのだろう。
村長の家系はこのポチャタウンを一から築き上げた、偉大なる一族だと言うのだから。

……それに。

町長「ところでペポよ。2日ぶりに姉のセイヨウとも話したいのだが……どこに居るのかな?」

ペポ「……姉ちゃんなら、『永紅の大樹』のところに居ると思います」

【永紅の大樹】

タウンの中心広場にそびえる樹のことだ。
驚くべくはその大樹。なんと一年中、その葉は紅葉なのだ。
『永紅』の名はそこから来ており、特に祭りの時期には、一際 鮮やかに紅葉を色付かせる。

ペポ「ちょっと呼んできます。おーい、ねーちゃあーーん……」テクテク

大人たち「ペポ、あれで走ってるつもりかねぇ」

町長「……フフ、若い……若い。本当に……若いというのは良いことだのぉ」


大広場 永紅の大樹──


セイヨウ(……)

ペポ「ねーちゃーんぅ、迎えにきたぞー」

セイヨウ「! ……ペポ!!」

ペポ「え、どうしたんだよ、そんなに……驚いて」

セイヨウ「う……」

セイヨウ「うぇええぇぇぇえーーん……」ガバッ

ペポ「え」

セイヨウ、ペポに抱きつき、さめざめと泣きじゃくる。

ペポ「ちょ、ちょっと……」

ペポ、赤面。

ペポ(そんなに落ち込むことがあったのか……? 姉ちゃん、こんな強気な姉ちゃん……が……)

セイヨウ「……あ!」

ハッとした様子で、セイヨウがペポを見つめる。

セイヨウ「ご、ごめんね。ちょ、ちょっと……ね。イヤな夢を見ちゃって。ごめんね……ペポ、ごめんね……」

ペポ「あ、うん、どういたしまして」

その言葉はないだろうと、彼は言った後に思うのだが。

ペポ(……夢?)

セイヨウ「なんかさ、アンタと同じような男の子が、死んじゃってる夢。で、アタシと同じような女の子が、それを抱えてるの……」

ペポ「!」

ペポ(俺が見た夢と、同じ!? ……単なる偶然か?)

セイヨウ「アンタが死んだら悲しいなってアタシ思っちゃって……アタシさ、落ち込んだ時はここに来るんだ」

真っ赤な紅葉を見てると、ブルーだった心が癒やされるから。
だから決まって、ここに来るんだ。

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セイヨウ「町長が?」

ペポ「うん、話したいことがあるんだって」


町長「──そうじゃよ」


ペポ&セイヨウ「……え!?」

『町長、いつの間に!?』と二人が言葉を発する間もなく。

町長「若いのは良いことだ。さすがにペポを追い越すことはできんかったの。なーに、茶目っ気じゃよ、茶目っ気」

セイヨウ「なんですか? 町長。ペポを追い越すって……別にアタシに話すことなんて、ペポに聞かれていても」

町長「いやいや、お主はもう精神的には充分大人。まだ未熟な子どものペポには聴かれたくないのじゃ。つまり大人の話し合いじゃよ、ペポ」

ペポ「どう……いう」

町長「『離れていなさい』、ということだ」

ペポ「!!」

町長のいつものおどけた態度とは違う、鋭い目つき。
その目つきに、ペポは驚く。

ペポ「じゃ、じゃあ、離れているよ……」

町長「あぁ、なーに、そんな大したことではないから。な、セイヨウ」

セイヨウ「? え、は、はい」

ペポ(……?)


その夜──


ペポ(姉ちゃん、遅いなぁ……。もう夜だぞ、そんなに町長との話が長引いているのか)


……バタン。


ペポ(お)

セイヨウ「……ただいま、ペポ」

ペポ「?」

『まだ落ち込んでいるのか』と思ったが、あの泣きついてきた時からは、様子が少し違うとペポは感じる。

まるでセイヨウは、何かを『覚悟』したような、悲しげではあるが、そんな凛々しい表情を湛えているのだ。

ペポ「り、料理作ったからさ、食べなよ……姉ちゃん」

セイヨウ「おー、ありが……ゲッ」

コイキングの頭が載ったパイらしいものや、きのみを焼いて煮て炒めたらしい盛り合わせ。
恐らくは水以外のもので炊いたのであろう、紫色のライス。
デザート?には、キャンディの盛り合わせだ。

ペポ「クロダネ祭っぽく、仕上げてみたんだ! ボクレーも頑張ったんだからね!」エヘンッ

ボクレー『ラネ!』エヘヘンッ

セイヨウ「……食欲ないから、今はそのアメだけ頂くよ。あとは冷凍でもしといて……」

ペポ「えー?!」

………
……



寝室──


セイヨウ「美味しかったよ、アメ」

ペポ「それ以外も美味しかったんだけどなぁ」

隣り合わせで、二人はベッドに入っている。

ペポ「『ふしぎなアメ』くすねたんだ、大人たちから」

セイヨウ「アンタそういう技術はあるよね。……もうちょっと、料理の方もレベルアップさせなよ」

……。

セイヨウ「ねぇ、ペポ。アンタ病気になったこと、覚えてる?」

ペポ「病気?」

セイヨウ「あぁ、やっぱ覚えてないんだ。呆れた。アンタ……死にかけたのよ?」

ペポ「お、俺が?!」

セイヨウ「あれはね──」

数年前。
アンタがまだ、今以上に未熟だった頃。

ペポ〈ハァ、ハァ……〉

当時流行っていた伝染病。
高熱。いくつもの発疹。体中の脱水。下痢や嘔吐。
それらの症状が、アンタを襲ったのよ。

セイヨウ〈ペポ! しっかりして、ペポ……ペポッ!!〉

──アタシたちは、『孤児』だった。

ペポ「……うん、で……。町長に面倒を見てもらって、僕たちは生きてきたんだ」

町長には、恩がある。

セイヨウ「……でもその町長でも、アンタの病気を治せるお医者さんは……見つけられなかった」

ペポ「え……」

セイヨウ「……でもアタシは、希望を捨てれなかった。アタシは……祈ったの」

セイヨウ(神様……!)

どうか、どうか!
ペポを、ペポを治してあげてください……!!

………
……


セイヨウ「……その後、アンタの病は治った。アタシのちっぽけな祈りが、カミサマに届いたのだと思った」

ペポ「そんな……ことが……」

セイヨウ「でも、そんな迷信染みたことだけじゃない。町の大人たちも、アンタのことを懸命に看護し続けた。アンタが完全に治るように、応援続けたのよ」

ペポ「町の……大人たちも……」

セイヨウ「アタシの想いだけじゃない。町のみんなの想いがあって、今アンタは生きている」

セイヨウ「──ペポ、元気でね」

ペポ「え……」

『元気でね』

何故 姉は、そんな今生の別れのような言葉を発するのだろうか。
ペポは、嫌な予感がした。

ペポ「姉ちゃ──」

セイヨウ「……」クー…クー…

しかし姉は、既に寝入っていた。

ペポ「…………」

今、ペポの顔付きは変わった。
愛する者を護ろうとする、漢の顔となった。


数日後──


タウンの中央広場で催される、クロダネ祭。

大人たちが屋台を出しているのはヒメリをアメでコーティングしたものや、ナナにチョコをトッピングしたものなどのお菓子。

そしてそれらを貰おうとする子どもたちは、ゴーストタイプのポケモンの仮装姿だ。
恥ずかしがる子もいれば、ある掛け声で元気よくねだる子もいる。

『トリック・オア・トリート!』と元気よく言えば、お菓子は無料で貰えるのだ。

その他にもおどろおどろしい骨やカボチャの玩具や、鮮やかなイルミネーション。それらで飾り付けられた広場は、今年も大いに賑わってた。

ペポ「おー、美味しいなチョコナナは。ジャンケンに買って3本ももらっちゃったよ」

……。

ペポ(姉ちゃんは……)

実は祭り当日、セイヨウは家から忽然と姿を消したのだ。
祭りを楽しむ素振りを演じつつ、不穏な姉の安否を案じ、捜索する。

……その時。

ペポ(……うっ)

当然、ペポの脳裏に映像が浮かぶ。

ペポ(な、なんだ……!?)

ペポの意識は、その映像に引きずり込まれた……。

………
……


少年〈じゃあ、行ってくる……愛する人〉

少女〈……えぇ〉

ペポ(この人……たちは?)

恐らくは恋人同士であろう、その二人。
少年は、『行ってくる』と言い少女の元を離れる。


ブウゥン……。


ペポ(!)

〈やつらを倒せ! 滅ぼすのだ!!〉

〈負けるわけにはいかぬ! 討ち取れぇ!!〉

ペポ(これは……)

場面変わり、どこぞやの紛争と思わしき場。
大人たちが、武器を持って争っている。

少年〈う……〉ドサッ

ペポ(!)

その中に、あの少年がいた。
少年、攻撃を受け……倒れ込む。


ブウゥン……。


更に場面が移り……。

少女〈……なんで。どうし……て……〉

既に物言わぬ少年を抱く、少女。

ペポ(! もしかして、この少女と少年は……あの時の……夢の?)

ペポは周りを確認する。
確かにあの時の荒れ地だ。

荒れ地となった原因は紛争によるものだったのか、と彼は考える。


ブウゥン……。


ペポ(今度は……どこだ……。ここは……)

荒廃した、とある地。
そこに、一つの“芽”が咲いている。

そして……。

ペポ(!)

ザシュッ!

先ほどの女性と思わしき人物が自ら首を刎ね、その血は……。

ペポ(え……)

芽に降り注ぐ……血。
その芽は、真紅に染まっていた。


ブウゥン……。


ペポ「うっ……」

元いた広場に、意識が戻る。

《向かいなさい……》

ペポ「っ……!?」

そしてペポが耳にする、美しき謎の女性の声。

《あの芽が育った木こそ、『永紅の大樹』。向かいなさい。あなたの愛する人は、そこに居ます》


……
………

ペポ(……行かなきゃ)

声を聴いたペポ、大樹の元に向かう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ペポ「……」

立て看板があり、そこには『祭りの用具保管のため、立ち入り禁止』とある。

ペポ(そんなの知るか!)バキッ

看板を破壊し、ペポは先に進む……。


そして 永紅の大樹──


ペポ「!」

セイヨウ「うっ……うぅ……」

町長「ぬぅ……ペポ!?」

なんと町長が、セイヨウの首を締めているのだ!

ペポ「! ボクレー!!」

ボクレー『クレァーーッ!!』ドガッ

ペポ、咄嗟にボクレーに命じ、町長を攻撃する。

セイヨウ「ケホッ……」ドサッ

セイヨウの身体は、地面に落ちる。

町長「邪魔立てを……看板があったハズだが」

ペポ「どういうことだ町長! なんで……姉ちゃんを」

町長「クックッ……正確には、『町長』ではない。私は……」ボワンッ

ペポ「!」

そう言うと村長の口から黒い煙が現れ、その煙は次第に形を造っていく。

……その煙塊は……。


煙塊『我の名は、ブラック・シード……』


悍しい声で、煙塊は名乗った。

ペポ「ブラック・シード……!?」

B・シード『お主らがクロダネ様などと奉っているのが、その我よ。ゲムアゲムア……』

セイヨウ「な、なんて汚い笑い声……」

町長「うぅ……」

倒れている町長と、セイヨウ。

ペポ(ふ、二人を……助けなきゃ)

B・シード『ゲムアゲムア、なぜセイヨウを襲ったか? ……話は変わるがこの大樹……。なぜ一年中紅葉を維持しているか……わかるか??』

ペポ「な、なに……?」

B・シード『……紅葉ではない。この葉の色は、血の色なのだ。生贄共の、血の……な!』

ペポ「!!」

当時ここは、紛争により滅んでいた。
その戦争で死んだ人間たちの怨念により、我は生まれた。

B・シード『我が……芽が……咲いたのだ』

ペポ(あの……映像の……?)

B・シード『? 知っているような顔をしているが……。まぁいい、つまり我の本体たる『大樹』が成長すると共に、この町も栄えた。いや大樹の力により、この町は繁栄したのだ!』

ペポ「なんで……姉ちゃんを殺そうとした!」

B・シード『フン。大樹が永紅たるには、生贄の力が必要なのだ。若者の血が……だから殺すのだ。そのためにしばしその町長に乗り移ったのだが』

ペポ「そんな……」

B・シード「ゲムアゲムア。さぁ……ここで、愛する姉と共に死ね、ペポ!」

ペポ「うっ……!」


……その時。


『そうは行きません。ブラック・シード!』

ザアァァ……。

ペポ「!!?」

B・シード『グ……グアァァッ!?』

……“雨”が降った。


タウンでは──


大人たち「え、雨が降って来たぞ!?」

大人たち「おいおい、これじゃあ今日の祭りは中止だな……」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

少女『これは、“私たち”の悲しみ。お前の生贄となった私たちの……悲しみの涙! お前が忌み嫌う感情の現れなのです!!』

B・シード「グ……ここは退く! だがペポ、お前にしばしの猶予をやる! 」

ペポ「!」

B・シード「セイヨウかペポ、どちらかの命を我に捧げよ!! さもなくば……この町の住民を皆殺しにする!!」


ボワァァ……。


そう言い残し、ブラック・シードは去って行った。


数時間後 ペポの家──


町長「……そんなことが」

セイヨウ「どうやら町長、数日間の記憶がないみたい」

ペポ「……姉ちゃん」

セイヨウ「ペポ……アタシでよかったのに。ブラック・シードに言われたの。ペポや他の皆が生きるこの町を支えられるのなら、アタシで」

ペポ「……違うんだ、姉ちゃん」

セイヨウ「え……?」


『アタシの想いだけじゃない。町のみんなの想いがあって、今アンタは生きている』


ペポ「姉ちゃんは前にそう言った。それは正しくて、同時に逆のことに言い換えられる」

ペポ「──僕らがいるからこそ、この町は生きているんだ。決して生贄なんか出しちゃいけないんだ」

セイヨウ「ペポ……」

ペポ「すぐ帰ってくるよ、姉ちゃん。『ブラック・シード』の弱点の目星は付いている」

セイヨウ「ペポ……」


ペポ「『じゃあ、行ってくる……愛する人』」


あえてあの言葉を言い、ペポは大樹の元に赴いた。


永紅の大樹──


B・シード『ペポか。ゲムアゲムア。ほう、お主が生贄となるか……』

ペポ「俺の答えは……」

ペポ「──これだ! いけ、ボクレー!!」

ボクレー『ボクゥーーッ!』

B・シード『ふん、愚かな。無駄だ……ゲムアーーーッ!!』ドォッ

ボクレー『クレーッ!』ドカッ

互いに、体当たりだ。

ボクレー「……ゥ」

ボクレー、苦悶の表情を浮かべる。

B・シード『ムァーーーッ!!』ムギュッ

ボクレー『レレェ……』

ブラック・シード、ボクレーの身体を締め付けにかかる。

B・シード『ゲムアゲムア、やはり我の方が地力は上……諦め……』

B・シード『……!?』

だがブラック・シード、ペポの姿が消えていることに気づく。

ペポ「……俺なら、ここだよ」

B・シード『き、貴様……いつの間に!』

ペポ「スリとか得意なんだ。……気配を消すことが、得意だから……」

B・シード「お前、なにを……」バッ

ボクレーを離し、ブラック・シードはペポに飛びかかろうとする。

ペポ「気になっていた。この本体を燃やせば、ブラック・シード……お前はどうなるか!!」

B・シード『や、やめろぉ……』

ペポ「──お前は滅びる!!」ボオォッ

『永紅の大樹』が、燃え上がった。

B・シード『ゲ……ゲムアーーッ!?』

ペポ「だからこそ……お前はこの木を永紅とし、神格化させた! 手を出す輩を居なくするために!!」

B・シード『うおおおぉぉっ! やめろ……やめろぉ!! 貴様……私がいなくなったら……この町は』


ペポ「──僕らが支える」


この町は、今を生きる者たちが支えるんだ。
住民が支え合わない町など……元から滅びるべきなのだから。

B・シード『グ……グゲキャア厶アァァァアァッ
!!』

ボオォォ……。

ペポ「……」


後には、燃え尽きた木の残骸が残った……。


「ペポ……ペポ……」


ペポ「!」

ペポ(この声は……)


クロダネ様「ペポ……私です。クロダネです」


ペポ「! でも、クロダネ様は、あのブラック・シードじゃあ」

クロダネ様「あのような名を騙る者ではない。私こそ、あなたが夢でみたあの少女。恋人を無くし、世を儚み最初の生贄となった……“クロダネ”です」

ペポ「そうだったのですか……」

クロダネ様「私たちのような悲劇を出してはいけない。ペポ、あなたの言うとおりです」

住む者が支え合えば、町は滅びない。

クロダネ様「私もいつまでも、この町を見守っています。私が大好きだった、この町を……」

……。

ペポ「クロダネ様……」

………
……



数日後──


セイヨウ「クロダネ祭、延期になっちゃったね。そういえば町長、なんか苦しそうだったけどどうしたの?」

ペポ「町長にさ、あの俺の料理を食べさせたんだ。なにせ取り憑かれていた分、栄養付けさせなきゃと思って……やっぱ、傷んでたのかなぁ」

セイヨウ(それ以前の問題だと思う)

あれから二人は、元気そうだ。

ペポ「……大樹のあった所、さすがに何もないのはどうかなと思って新しく芽を植えたんだ」

セイヨウ「なんの木の芽?」

ペポ「ヒメリの木と、ナナの木」

セイヨウ「……食べれるものばっかじゃん」

ペポ「ヒメリアメもチョコナナも食べれるし、いいと思うよ。で、水やりは住民で交代交代で」

セイヨウ「交代交代かー。メンドくさいよ」

ペポ「これもさ、住民で協力し合ってるってことだから! この小さな芽を……」

ちいさな め を
ひとり ひとり で そだてて いこう

ちいさな まち には
ひとり ひとり の おもい が いきて いる

そして そだった おおきな き は
ひとり ひとり の おもい の あらわれ なんだ

《ボチャタウン 童謡》

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
………
……


ブラッド・リーフと黒種の祭 ー完ー
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