進化戦隊! ブイレンジャー!

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 暦2768年 ポケモニア王国 

 その国の王であるカイリューのセント王は名君として知られ良政を引き、世界は平和だった。
 彼は若くして誰からも尊敬され、そして称えられた。その地位は揺るぎないものだった
 支持率は常に90%を超え、彼の発案した法案は必ずと言って良い程、満場一致で可決されていた。

 だがしかし…… いつの世にも“悪”は存在するのだった。

 王の三番目の息子であるハクリューのディクリアがセント王に対して謀反を起こして、政権を奪ってしまった。
 セント王はあっというまにディクリアの側近でありその配下の天才科学者フーディンのサイスの手にかかり、
 彼の発明した強制退化装置によってミニリュウに退化させられ、処刑されて命を亡くした。
 そして、ディクリアは兄弟であろうが反対するものは片端から退化させて、国から締め出した。

 「進化を許されるのは一部の者だけでいい、そしてこの国に私が王として君臨する!」

 と、ディクリアはサイスの発明した強制退化装置と、同じく発明した進化妨害電波装置によって、
 徹底した進化規制を行った。進化前では進化後には敵わないものである。
 かくして力による絶対支配を確立するのだった。

 その横暴を見た月の丘の女神クレセリアは大いに嘆き、5匹のイーブィ達に自分のすべての力を与えた。
 それはこの世の悪を打ち倒すときに「ブイチェンジ!」の掛け声で、己の進化系へと変身する力。
 そして…… 女神クレセリアは、その5匹の伝説の力を受け継ぎし戦士達をこう名付けたのだった。


 その名は “進化戦隊 ブイレンジャー” !!











 ……という話だと思ってます。





   《 進化戦隊! ブイレンジャー! 》


 子どもの頃にはよくかくれんぼをして遊んでいた。おにごっこもしていたけれど、私が好きな遊びはかくれんぼだった。
 かくれんぼが好きな理由は、単に隠れる場所を探すのが得意なことと、隠れた友達を見つけ出すのが得意なことだった。おにごっこが好きじゃない理由は、やはり走ることが好きじゃなかったこともあった、足が遅いというわけでもないのだがなんとなく逃げる追うが好きになれない。

 なんて、そんなことはどうでもいい、なぜなら今はそれどころじゃないのだから。

「はあ、はあ、はあ、……」

 私は追いかけられて、息を切らしながら走っていた。
 ああ、それにしてもなんで私は追いかけられているのだろうか?
 必死に走るうちに疲れ果てて、どのあたりから追われているのかも、思い出せなくなっていた。
 追いかけられる心当たりもないし悪いことも……、
 いや、確かに悪いこと一つや二つくらいしたかもしれない、たとえばおやつをつまみ食いしたり、そのくらいなら……。
 後ろをちらりと振り向く。
 追ってくるのは灰色の体にごっつい岩肌、相手を突くためだけにあるような大きな角、種族はサイドン。そんなヤツが後ろから、どすんどすんと大きな足音を立てて追跡してくる。
 おにごっこは嫌いだらか、足は速いわけでなく遅い方だった、それでもここまで追いつかれずに逃げ続けられるのは、追いかけているアイツが鈍足だからなのだろう。
 しかし、さすがに体力の限界に近づいてきた、足がだんだん動きにくくなってきて、じりじりと距離が縮まっていた。もう捕まるのも時間の問題だろう。

 ……もうだめだ、最後の望みを託すべく、残った力を振り絞って叫んだ。

「だれか……誰か助けてくださ~い!!」

 そのとき!

「助けてくれと声を聞きっ!」
「光の速さでやってきたっ!」

 驚いてその声のする方向を見れば、小高い丘の上に5匹のポケモンが立っていた。

「風よ!」
「大地よ!」
「おおぞ――……」

 そのまま立ち止まって、その5匹組に「誰なの?貴方達は!」と相槌をうてれば嬉しかったが、後ろから追ってくるサイドンは立ち止まることなく私のことを追ってくるからそうも行かない。 まあ当然だ。
 5匹のポケモン達は私がまだ追いかけられているのは華麗にスルーしつつ、何かのセリフを言いながら、ぞろぞろ丘を下りはじめる。
 ブースター、サンダース、シャワーズ、グレイシア、ブラッキー、と どうやらイーブイの進化形の集まりのようだった。

「火が呼ぶ!」
「水が呼ぶ!」
「雪が呼ぶ!」
「稲妻も僕を呼んでいる!」
「悪を倒せ!と俺をよぶ」
「世界の平和を守るため」
「世界の破壊を防ぐため」
「愛と真実の……」

 これは……いわゆる、戦隊ヒーローなのだろうか?
 セリフが長い、ヒーローの決め台詞というものは、それはたいてい長めのセリフがあるイメージがあるが、実際はそんなに長くはない。長い=かっこいいという認識は偏見でしか無く、視覚効果エフェクトの映像に掛ける時間が長いだけであって、セリフだけを抜き取ると意外に短い。子どもには言いやすくかっこいいスピーディなセリフが一番なのだろう、最近の例で言えば豪快チェンジ!とか。あと最近の戦隊ヒーローってその敵も含めて若手のイケメンを積極的に採用して登場人物の性格のレパートリーも豊富だよね、あれって子どもやお母さんどころか腐女子までも取り込む気満々じゃないのかな。
 ……と長々と私がヒーローに関して語っていられるのには理由がある。
 既に追いつかれてしまい、サイドンに縄で縛りつけられているのだ、なぜ彼が準備良く縄を持っていたかは気にしてはいけないのだろう。
 ヒーローと思しき彼らは口上も終わりに入ったのかそれぞれ使えるはずの無い技名を叫びながら、自らの名を名乗る。

「その聖なる炎はすべてを燃やす! ブースター、ブイレッド!」
「放て反物質、叫べ僕のボルテッカー! サンダース、ブイイエロー!」
「汚物は消毒だ、シャボン・スプレー・バブル光線! シャワーズ、ブイブルー!」
「絶対と言う言葉は絶対零度のためにあり! グレイシア、ブイホワイト!」
「世界の悪を殲滅させろ、黒い悪を噛み砕け! ブラッキー、ブイブラック!」

 言い終えて満足したところで、5匹はわらわらと
「ごーひーきー」
 あらかじめ決めてあったのだろう、自分のポジション
「そろってー」
 に向かって、早足で並びだす。
「わーれ―――」
 シャワーズとサンダースの場所が逆だったことに気がついたようで、慌てて並び直す。
「れーら!」
 そこでやっと横一列に並び終わり


『進化戦隊ブイレンジャー!!』


 びしっぃ と5匹で左右対称なポーズを決めた。

「紹介しよう!」
 とすかさずブイイエローのサンダースが一歩前に出て、誰にも頼まれて無いのに勝手に解説をつける。
「進化戦隊ブイレンジャー、それはこの世の悪を倒すべく正義のために戦い続ける正義のヒーロー達、疾風のように現れて疾風のように去っていく、謎に包まれた戦隊、その正体は誰も知らないのだっ!」
「何だよ、わけが分からないよっ!」
 縛られたまま私はツッコむのだが、そんな言葉に答えることなくサンダースは話を続ける。
「僕達が来たからにはもう安心だ、ところで君には僕達ブイレンジャーについての質問は無いかな? やさしいお兄ちゃんがなんでも答えてあげるよ!」
「……あのー 私、既に追いつかれてしまって、いまサイドンに捕まってしまってます。ヒーローだったら速く助けに来てくれると、それはとってもうれしいなー」
「ふむそうか、ブイグリーンとブイパープルとブイピンクはどこか? とか質問をしてくれると思っていたが」
「……確かに気になるかも」
 しまったつい反射的に。
 ついどうでもいいことを口にしてしまうのは私の悪い癖だ。
「グリーンは今募集中、ピンクは逃げた、パープルは死んだ」
「へー。    ええ?!」
「そこのサイドンよ」
 その驚愕の発言内容もたいしたこと無かったことかのように、おそらくリーダー格らしきブースターがすっと前に出る。
「穢れない乙女の瞳を湿らすなど言語道断横断歩道。紳士たるポケモンは麗しき乙女を追いかけまわすものではない、優しく抱きとめてあげるものだ。そんな乙女を弄ぶ悪しき者、この俺、ブイレッドが許さん! 覚悟しにょ」
 噛んだ。
「さあ、お前の罪を数えろ! 全てを焼き尽くす業火よ、今こそ焼き尽くせ! 必殺奥義! 火炎放射ぁぁ!!」
 おおっと、必殺奥義というほどでは無いと思うが、ブースターが吐いた炎の槍が一直線に向かう!  が

 効果はいまひとつのようだ。

「え、そんな」
 サイドンには炎技は半減だから当然だ、あまり効かない。
「僕達も加勢するぞブイレッド! 魔法の射手サギタマギカ 連弾セリエス 雷の十万矢フルグラーリス・ハンドレットサウザンボルトォ!!」
「ガイアが私にもっと輝くと囁いている…… 呼び覚まされよ、シークレット・フォース!」
「無言・即殺! 俺は悪を削除する者なりっ! 輝け我が剣、輝斬一文字っ!」
「突進でぶっとばす まっすぐいってぶっとばす」
 他のメンバーも加勢して10万ボルト・秘密の力・居合い斬り・突進を繰り出すのだが、当然ながらどれもあまり効果は無い。
「なんだと…… 全然、きかないなんて!」
「ヤツのロックスーツは化け物か?!」
 あわあわと慌てはじめるブイレンジャー達。
「ふははは」
 と勝ち誇った声でサイドンは言う。
「そんな技で大丈夫か? 俺にはお前達がその技を使うことなどするっとまるっとお見通し! 既に対策済みだ!」
 いや大丈夫じゃない、問題だ。 見通して無いだろうし、対策じゃないし、それにお前らたぶん初対面だろう!

「地震っ!!」
 大きく地面が揺さぶられてサイドンの反撃が始まる。
「うわ~~~~!」
「ぐぁぁ~~~!」
「あががががっ!」
「なんだこの防御は、しかも効果はバツグン、おいおい……これでは俺の勝ちじゃないか。さあ不幸のメロディを奏でるがいい、これがメガトンを超えたメガトンパンチ」
「ひょ?」
「《ネガトーン・パンチ》!!」
「ブイブラック! 上だっ!」
「え、うわ~~~~!」
「ぐぁぁ~~~!」
「きゃぁぁぁぁ!」
「アッ――――!」




 ……いや、
 しかし、ここで黙ってやられては、それは戦隊ヒーローじゃないだろう。
 正義の戦隊ヒーローだったら、やっぱりねぇ
「こうなったら……」
 こうなったら?
「みんなで力を合わせるしかないでしょ!」
「そうブイレンジャーは愛と強さのケダモノ、いやタマモノ」
「おう! ここで決めなきゃブイレンジャーがすたる!」
「気合のワザ見せてあげるわ!」
 ふ、そうこなければ、今はそういうシーンは無くなってしまったが、たった1匹の敵を5匹でフクロ
 ……もとい、協力して倒すのは《戦隊モノの美学》だ。奴を倒すには個人プレーでは駄目、皆の力を1つにするのだ!
 ブイレンジャー5匹は、横一直線に並ぶ!

「俺のこの手が」
「真っ赤に燃える!」
「勝利をつかめと」
「轟き叫ぶ!」
「私のこの手が」
「光って唸る!」
「お前を倒せと」
「輝き叫ぶ!」
「幸せつかめと」
「轟き叫ぶ!!」

『爆熱! てぇぇぇっだぁぁぁすぅぅぅけぇぇぇぇっ!!!!!』

 ブイレンジャー達がお互いに手を打ち付けあい、光を帯びていく。

「これは……まさか、てだすけ?! だと?!」

 いや、普通のてだすけなんかじゃない! 5匹同時使用だ!
 仲間の攻撃を1,5倍に倍増するてだすけの重ね合わせ!
 それを五匹だから1、5の5乗で…… えっと……

 単純計算でも、7,6倍っ!!






 ただし攻撃技を使わないと、意味が無い。

 サイドンの地震!!!

「ぐはぁ!!」
「ぎゃ~~~!!」

 サイドンの暴れる!!!












 砂煙がおさまると、サイドンのみが立っていた。
 ブイレンジャー達は思わぬ強敵サイドンの激しい攻撃の嵐によって、地に伏せていた。
 地震の攻撃範囲は敵味方関係なく全体、だから本来戦いとは関係ないはずの私も、地震の巻き添えを受けていた。
 あまりのブイレンジャーの不甲斐なさを呪った、ちょっとだけかっこいいと思ってしまったあの感動を返せと言いたい。ココデオワルハズガナイノ。
「つっ! 強い……」
「これが進化石の扉の選択か。エル・プサイ・コングルゥ…!」
「くそっ、このままじゃ満足できねぇよ」
 ブイブラックの言葉にブイホワイトは静かに答える。
「そうね、ここはアレしかなさそうね」
 アレか?
「ああ、使うしかないようだ」
 アレだな?
「あまり使いたくないのだけど……仕方ないね」
 おお、出るのか? 戦隊物定番且つお約束の最終必殺技が!!
 さて巨大ロボの出陣か?
 それとも新兵器を使うのか?
「さあ、みんな行くぞ!」

 スーパーせんたいヒーローは、ちきゅうのへいわをまもるせんしだ!
 くるしいときも、かなしいときも、ひとりじゃかなわないけれど、
 なかまとちからをあわせて、わるいやつらをやつけるんだ!

 そんな私の期待にこたえるように彼らは、5匹で手を重ね合わせ必殺技の掛け声を叫ぶ!
「純情進化の炎の力!」
「輝く進化の弾ける力!」
「岩をも砕く進化の激流!」
「大地を揺るがす進化の怒り!」
「夢見る進化の底力!」
 そして5匹の間に筒状のものが作り出された。

『受けてみなさい!』

 声と同時にその筒状の何かが一直線に飛んできた。










 ……私のところに。

 筒状って……もしかしてバトン……? バトンって……?
「禁術《バトンタッチ》だ……! さあ諸君、俺が逃げるのを止められるかな……?」
「逃げるが勝ちよ! ここは一時撤退なんだから! 戦略的撤退!」
「大丈夫さ、今の君ならば勝てるだろう」
「忘れまい いつも心に 輝きを……あでぃう」
「さらばだ、またあおう、っははははは!」
 そういって、ブイレンジャー達はあっという間に逃げ去ってしまった、普通に走って、ダイナミック直帰しやがった……。
 そして、二匹だけが残された。

「…………」
 むむ、すごい殺意を感じる。今までにない何か熱い殺意を。
 視線……なんだろう向いている確実に、着実に、私のほうに。

 それは確認するまでも無い、サイドンだ。
 さっきまで私を追っていた、サイドンだ。

「……ククク」
「……?!」
「ふふ、フハハハハハ!!」
 サイドンが笑い出した。
「見たか! あの無様な姿を、さてと……そろそろ観念してもらおうじゃないか」
 サイドンの怖い顔に竦んでしまい、動けない。
 もう誰にも頼れないのに逃げられない、そもそも私は縄に縛られているのだったから逃げられないのは当たり前だけど。
 ああ、もうダメだ……。


 とそのとき

「……!? な、その光は、っ! まさかお前は!」
「えっ?」
 ふと、自分の体を見ると、薄く光輝いていた。
「これって……ひょっとして、てだすけの効果?」

 ――大丈夫さ、今の君ならば勝てるだろう

 そのブイブルーの言葉が思い出される。
 そうか……
 ということは……
 体に力が漲っていく感覚。
 力を入れると自分を拘束していた縄が音も無く千切れ落ちる。

  5つの力が組み合わさり作られた。
  1,5の5乗の力。7,6倍ということ。
  いや、今の私はそれ以上の力だ……。

 今の私なら、何でもできるような気がする、目の前の敵を倒す事だって、空も飛ぶことだってできる気がしてきた。
 中途半端はやめよう、とにかく最後までやってやろうじゃん。
 私には沢山の仲間がいる。決して一人じゃない。
 信じよう。そしてともに戦おう。これが最後に残った道標。
 奇跡も魔法もあるんだ、後悔なんてあるわけない、もう何も怖くない。

「まさか……こいつ、バーストしたのか……? 名を名乗れ!」
「わ、私の名前は……えーと……そ、そう!」
 私は、ふと頭の中によぎった名前を、同じく頭によぎったセリフと共に言い放つ。

「ムーンクレセントパワー! メイクアッープ!」

 その瞬間、私の体の光が一層輝きだす。自身が伝説の美少女戦士へと、変身していく感覚。
 無駄に長いセリフなどいらない、目を開き煌びやかな視覚効果エフェクトを輝かせる。
 この胸を騒がせる想いが瞬を駆け抜けて紅蓮の碑を描く、研ぎ澄まされた生命だけその眸に――

「愛と正義だけが友達の、月の都の護り神、『アルテミス仮面』! 三日月に代わっておしおきよ!」

 き、決まった! 我ながらかっこよく言えた……!
 しかもキメポーズまでばっちり!
 小さい頃に頑張って必死に練習した努力が実ったぞ!

「アルテミス仮面だと……。そういえばむかし師匠から聞いたことがあるぞ、月と太陽が何度も空を通り過ぎるときに月の丘の女神の加護を受けてこの世界の悪を粛清する伝説の戦士が光臨すると。お前がその伝説の戦士だったというのか!」
「ふっ」
「そうだ、せっかくだからお前に冥土の土産に教えてやろう! 俺の名前はサ=イドンだ、……しかしその名前も今月でおしまいか」
「今月でおしまい……?」
「そう、来月、俺結婚するんだ。いい嫁さんでなぁ、俺にはもったいないくらいだよ、婿養子じゃ尻に敷かれると友人は言うんだが、俺はそんなことは構わないさ、だってアイツのこと大好きだから、そういえば今日に限ってアイツ、嫌な予感がするって引き止めていたなあ、そんな心配いらないって言ってきたけど、まあ結婚したら今の仕事をやめて、もっと安定した職を探すつもりだから……っと、余計な話だったな。 ヒハハ! 来いよ! おいこら! かかってこいや!」
「感じる……ヤツの底知れない強さが…… しかし、今こそすべてを終わらせる時……!」
「アルテミス仮面よ、戦う前に一つ言っておくことがある、お前は俺を倒すためにブイレンジャーと協力する必要があると思っていたようだが、別に協力しなくても倒せる!」
「な、なんだって?!」
「さっきまでお前を追いかけていたのは単なる趣味だ、あとは俺を倒すだけだな クックック……」
「フ……上等だ、私も一つ言っておくことがある。私はもともと悪者に滅ぼされた特殊な血統を持つ名家の唯一の生き残りで、ブイレンジャーと共に世界を平和に導く設定だったような気がしていたが、別にそんなことはなかった!」
「そうか」

 その鋭利なこと雷電のごとく
 その迅速なこと陽光のごとく
 その堅固なこと岩石のごとく
 その過激なこと烈火のごとく
 信じる道を突き進めば、斬り拓けない道は無いんだ!
 よっしゃぁぁぁ!!

「ウォォォ いくぞォォォ! くらえ、新必殺電光石火!」
「さあ来いアルテミス仮面! 俺は実は一回電光石火を受けただけで死ぬぞぉぉ!」







  ごん















 グアアア! こ、このザ・イシアタマと呼ばれる俺がこんな小娘に…… バ、バカなァァァ!


 ……なんて。

 うまい展開になると思っていた、そんな瞬間が私にもありました。
 私ってほんとバカ、普通に考えれば、威力たったの40のちゃっちいノーマル技で、ミスター物理受け地面岩タイプのサイドンなんかに勝てるわけ無いじゃないか、浅はかなだった。普通にレベルを上げて物理で殴れば良かったよ。
 そうだよね、ここまでの文章で私の種族も名前も出てきていないって、つまりただのモブじゃないですか勝ち目無いよ。しかも、アルテミス仮面だなんて、大手のパクリな名前を名乗った時点で権利的な死亡フラグだよ、社会的に抹消されるよ、ハハッ! せめてウサミミ仮面様にしておけば良かったかなぁ。
 けどそれは自分が大人でありコドモであるという事の誇りだ、痛みを知らない子供が嫌い。心を失くした大人が嫌い。優しいものが好き。

 結局、あのブイレンジャーからのてだすけの効果は受けられなかったみたいだ、電光石火の技が当たる前にその効力が切れてしまったかもしれないし、ただ体が光ってテンションが上がっていただけだったかもしれない。
 ただの電光石火は、サイドンのカウンターパンチによって、地面に沈んだ。
 遠ざかった意識の中で、「世界に平和はおとずれない、おとずれなぁぁいっ!!」というサイドンの声が聞こえていた。
 サイドンに背負われてどこかに連れて行かれているようだった。


 もしもできることでしたら、今度こそは普通の正義の味方に助けてもらいたいです。









  ブイレンジャーの勇気が世界を救うと信じて……!

  ご愛読ありがとうございました!

  あきはばら博士の次回作にご期待下さい!








―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    あとがき


 正義のヒーロー達を主人公にすえた熱い王道バトルを書いてみました。
 王座に就き進化したカイリューの暴君ディクリアによってブイレンジャー達の故郷が燃やされディクリアへの戦いを誓うシーンから始まり、ディクリアが呼び覚まし悪に染めて差し向けた伝説ポケモンとのたくさんのバトルが繰り広げされましたね。
 特に、被虐的なエムリットことMリット戦、出落ちに定評があるテラキオンことテラワロスキオン戦、狂気的な愛を語るセレビイことヤンデレビイ戦は必見です。様々な伝説ポケモンとの立て続けのバトルを豪華に描くことで、良い作品になったと思います。5匹全員で 「エヴォリューション・レザルト・バースト・ゴォレンダァ!」 と叫ぶシーンは書いていてテンションが上がりました。
 作中でブイホワイトが使っていた《氷結蹴り》はちょっと分かりにくかったかもしれませんが、いわゆるブリザードクラッシュみたいな技です。 あと、分かりにくいといえばブイイエローが使っていた《デンジエンド》ですが、あれは両腕に強い電気を帯びさせてクロスに敵を切り裂く技です。元ネタは古い作品からですから伏せますがピンと来たら一人でニヤけて下さい。
 ブイレンジャーの合体技《クワトロユニオン・インパクト》からブイレッドの必殺技《ブースターローリングクラッシュ》への流れは我ながらかっこよく書けたと自負しております。
 もしかしたら、女神クレセリアの性格にびっくりした人も多いかと思います。シリアスなキャラかと思いきや「オホホホホホホホ 甘いわねボク、正義の味方は正面突破あるのみよ!」とか言っちゃう高飛車女王様口調のツンデレですから、実は最後のシーンで彼女は少しだけデレています、要チェックです。
 私個人的に一番好きなキャラはブイブルーです、ほらいつでもクールで和やかな彼の口調って癒されますよね、彼の性格は楽天家とか馬鹿とか考えている読者は多いかもしれません、まあたしかに前者は合っているかもしれませんけど後者は違います、彼はその言動と反して細かいところまで目が行き届く影の頭脳派なのです。
 次点でブイイエローですね。副リーダーとしてレッドのサポートをする見事な二枚目キャラとして戦闘面でも安定した強さを見せ付けていました。私はあのブイレッドとの連携技《オーバークロスデンジ》を放つシーンが好きです。

 ブイレンジャーの活躍はいつまでも貴方の胸にあります。




 あでぃう

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